姫の体は誰のもの 2

 アイザック王国には火山が多く、その噴火は国家にたびたび被害をもたらしていた。
 国を建てた初代国王フィリップスは、隣国との戦に勝利した帰り、火山の噴火に巻き込まれ、城に戻ることなく命を落とした。
 またあるときは、国で二番目の大都市が溶岩に飲み込まれ、一夜にして消滅した。
 今でも、国の南東部では複数の火山が小規模な爆発を続けており、絶え間なく降り注ぐ噴煙のために限られた植物しか育たない。
 建国以来数百年に渡って火山に悩まされているアイザック王国だが、その恩恵が皆無というわけではなかった。
 地中のマグマは地下水を温め、それが温泉という形で地表に噴きあがる。水量豊かな源泉は、人々に飲泉や入浴の習慣をもたらし、国の各所に保養地がつくられた。
 城にも当然、そうした水脈の一つが引かれ、王族のみならず、兵士や従者たちも浴場の使用を許されていた。
 第二王女マリアと第三王女エリザベスが供を連れて専用の浴場に向かったのは、夕餉の後のことだった。
「ヒルダ、あなたも一緒にお入りなさい。わたくしたちの体を洗ってほしいの」
 白と黒のメイド服を身にまとったエリザベスは、プリンセス・マリアの淡緑色のドレスを着た眼鏡のメイドにそう言った。
「はい。心得ました……」
 姫君たちやメイドの体は、依然として入れ替わったままだ。
 十三歳のエリザベスの首から下は、二十八歳のヒルダの体に。
 二十八歳のヒルダの首から下は、十六歳のマリアの体に。
 十六歳のマリアの首から下は、五歳のミンティの体に。
 そして、魔族の女の体になった庭師の娘ミンティは、牢に閉じ込められていた。
 行方不明になったエリザベスの身体を捜しに行った魔術師ジェシカは、いまだ城に戻っていない。何らかのトラブルに巻き込まれたのかもしれない。明日、兵士たちにより捜索が行われる予定だった。
「今日はいろいろなことがあって疲れましたわね。しっかり汗を流さないと」
 首から下がメイドの体になったエリザベスは、ヒルダの手を借りて着慣れぬメイド服を脱ぎ、艶かしい裸体をマリアに見せつけた。いまや第三王女の体の一部となったヒルダの乳房は、前方へと張り出し、自身の重みでわずかに垂れ下がっていた。
「ベス、あなた……本当にヒルダの体になっちゃったのね」
「ええ、お姉さま、そうですわ。わたくし、大人の体になりましたのよ」
 口を開けて呆けるマリアに、エリザベスは微笑んだ。
 五歳の幼女の体になったマリアは、背丈が今のエリザベスの半分ほどしかない。そんな姉の前にかがみ込むと、エリザベスはマリアの服を脱がせはじめた。
「あっ。何をするの、エリザベス?」
「何って、決まっていますわ。今の可愛らしいお姉さまは、おひとりで服をお脱ぎになるのも難しいでしょうから、手伝って差し上げるのです」
「や、やめなさい。それはヒルダの仕事でしょう? ああっ、ダメっ」
 マリアはじたばたと暴れたが、五歳の姉が二十八歳の妹に抗うことなどできはしない。小さな身を持ち上げられ、下着を剥ぎ取られる姿は滑稽だった。
 日頃はマリアが幼いエリザベスを可愛がっているというのに、今は反対だった。
「姫様がそのようなことをならさずとも、お手伝いでしたら私が致します」
「結構ですわ。わたくしたちは先に参りますから、ヒルダも早くいらっしゃい」
 エリザベスはマリアを抱き上げたまま、浴室に足を踏み入れた。
 王族のみ使うことを許された豪奢な浴場は、湯気でその全てを見渡すことができない。
 エリザベスは小さな姉を椅子に座らせ、桶で湯をかけてやった。
「やめて、ベス。このくらい自分でできるわ」
「いいえ、そういうわけには参りません。わたくし、いつもお姉さまに小さい小さいと可愛がっていただいておりますもの。そのお返しに、今日はお姉さまをたっぷりと可愛がって差し上げますわ」
「そんな……確かに体はミンティのものになっちゃったけど、私はあなたのお姉ちゃんなのよ。これじゃ、立場が逆じゃない」
「仕方がありませんわ。わたくしたち、体が別人のものになってしまいましたもの。今のお姉さまのお姿を拝見して十六歳の王女様だなんて、誰も思いませんわ」
 エリザベスは膝立ちになり、背後からマリアを抱きしめた。二十八歳の巨乳が二人のプリンセスの体に挟まれ、豊かな弾力を示す。
 変わってしまった自分たちの肉体を思い知らせるエリザベスの行為に、マリアは常の明朗さもどこへやら、すっかり妹に気圧されて怯えていた。
 そこに、ドレスを脱いで裸になったヒルダがやってきた。
「お待たせしました、マリア様、エリザベス様。今、お体を洗って差し上げます」
 ヒルダは海綿を手に取り、二人の王女の前に立った。瑞々しい肌が湿り気を帯び、夜の灯を受けて輝いていた。
 やや垂れ下がりつつあるエリザベスの乳とは異なり、恥らうことなく前を向いた立派な乳。股間の茂みはまだ薄く、白い肌には染み一つない。
 そんなプリンセスの無垢な身体に、眼鏡を外した黒髪のメイドの頭部が載っていた。十六歳の第二王女マリアの美しい体を、今は二十八歳のメイドが所有していた。
 エリザベスは姉から離れ、ヒルダを手招きした。
「お願いするわ、ヒルダ。まずお姉さまを洗って差し上げて」
「畏まりました。失礼します、マリア様」
 ヒルダは石鹸で泡だった海綿を用い、丁寧にマリアの肌を洗う。普段と変わらず甲斐甲斐しく自分の世話をするメイドを、第二王女はいつになく不機嫌な顔で眺めていた。
 無理もない。ヒルダの首から下にあるのは、マリア自身の体なのだ。いくらジェシカのしわざとはいえ、マリアにしてみればメイドに大事な身体を奪われたという思いがあるのだろう。
 洗い終えたヒルダに短い労いの言葉をかけると、マリアは早々に浴槽に飛び込んだ。
「お姉さま、大丈夫ですの? お風呂の底に足はつきますか」
「うるさいっ! このくらい大丈夫に決まってるでしょう!」
「あらあら、ご機嫌斜めですわね。それじゃヒルダ、次はわたくしをお願いね」
「畏まりました、エリザベス様」
 姉をからかって上機嫌のエリザベスは、椅子に座って忠実なメイドに身を委ねた。
 肉づきのいい手足に泡をまぶしてもらいながら、エリザベスは街での出来事を思い出す。
(ジェシカに気持ちよくしてもらうの、最高でしたわ。またああいうことをしてみたい……)
 信頼する女魔術師の手ほどきを受け、生まれて初めて淫らな経験をしたエリザベス。
 思春期を迎えたばかりの彼女には強すぎる感覚が、無垢なプリンセスの心を揺さぶっていた。
「ヒルダ、お願いがあるの」
「はい、何でございましょう?」
「わたくし、ヒルダに自慰の仕方を教えてほしいのです」
「姫様っ !?」
 ヒルダは目を剥き、手に持っていた海綿を床に落とした。
 生真面目なメイドがショックを受けるような、下品な用語を自分が口にしている。その事実に上気しつつ、エリザベスは肩越しにヒルダを見つめた。
「ジェシカから聞きました。大人の女性は自らの手で大事なところを刺激し、自分を慰めるのだと。わたくし、今は大人の女性になっているわけですから、ぜひヒルダにその方法を教えていただきたいのです」
「ひ、姫様がそのようなことをなさる必要はございません。どうかお聞き分けを」
「いいえ、わたくしは教えてほしいのです。どうしてもお嫌ですか?」
「いけません。そのようなこと、絶対にいけません」
 当たり前だが、ヒルダは頑なだった。とんでもないことだと何度も繰り返した。
「私は姫様のお世話を致す身です。そんな私が、姫様に淫猥な知識を吹き込んだなどとあっては、末代までの恥でございます。どうかご勘弁を」
「そうですか、では仕方がありませんわね。昔からわたくしの世話をして下さっているあなたに、こんなことを申したくはなかったのですが……」
 エリザベスは体の向きを変え、ヒルダと正面から向かい合った。
「ヒルダ、わたくしはあなたと体を交換しました。首から下がわたくしの体になったあなたは、こう申しましたわね。わたくしの体を責任もって預かると」
 珍しく厳しいエリザベスの物言いに、ヒルダの顔から血の気が引いた。
「は、はい……確かにそのように申しました」
「では、わたくしの体は今どこにあるのです? 城の者たちが申すには、わたくしの大事な体は恐ろしい魔族に奪われ、行方知れずというではありませんか。安易に自分の体を手放したわたくしにも非はありますが、あなたが任を全うできなかったのも事実です。違いますか?」
「い、いいえ……重ね重ね、申し訳ございません。全て私の落ち度でございます。こうなったからには、どのようなお咎めを受けようとお恨み致しません……」
 気の毒なほどに青い顔をしてうなだれるヒルダ。第二王女の大事な肉体を信頼して預けられたにも関わらず、彼女はその期待を裏切ってしまったのだ。たとえそれがジェシカの魔術のせいであろうと、厳しく罰せられるべき事態だった。
 エリザベスはそんなヒルダの頬に手をやり、顔を上げさせた。
「わかっていただいたなら、それでよろしい。ヒルダを罰するつもりはありません。その代わり……今だけ、わたくしの我がままを聞いて下さいますね?」
「姫様……」
 ヒルダの非を責めたて、自分の言うことを聞かせる。そんな王女の意図を察して、ヒルダは無念の涙を流した。
「心得ました。たとえ末代までの恥となろうと、今は姫様の仰る通りに致します」
「では、わたくしに自慰の仕方を教えると、この場で誓いなさい」
「はい。エリザベス殿下に、私めが自慰の仕方をお教え致します……」
「よろしい」
 機嫌を直したエリザベスは、自らの巨大な乳房を両手で持ち上げ、元の持ち主であるヒルダに見せつけた。
「それで、どのようにすればよろしいのですか? この大きな胸を手で刺激すれば、気持ちよくなれるのでしょう?」
「は、はい……失礼致します」
 抗う意思を無くしたヒルダは、椅子に座ったエリザベスの背後に回り込み、その豊かな乳を揉み始めた。
 ボリュームのある乳房が自在に形を変え、エリザベスに不慣れな感覚をもたらす。
「んっ、変な感じがしますわ。おっぱいが熱いの……」
「姫様、気持ちようございますか? では、こうするといかがでしょう」
 乳房の周辺から搾るように揉んでいたヒルダの指が、次に硬くなりはじめた乳首を狙う。黒く染まった二十八歳の乳頭に爪を立て、音を立てて掻きむしった。
「んんっ、敏感な乳首ですわね。声が我慢できなくなりそうですわ……あんっ」
 エリザベスはメイドのヒルダの身体で悶える。そんな第三王女を愛撫しているのは、第二王女マリアの肢体を己の所有物にしたヒルダだ。女たちの肉体は主を替え、新たな持ち主によって性の玩具にされていた。
「いかがですか、姫様? 私の体は乳首が弱いのですが」
「ええ、ヒルダ。あなたのおっぱいはすごいわ。こんなに大きくて敏感だなんて。教えて下さい。どうして大人の女性の胸はこんなに大きいのですか?」
「それは、赤子にミルクを飲ませるためでございます。赤子は母親のミルクを飲んで育つのです」
 興奮しているせいか、ヒルダは顔を赤くして答えた。
 王女の乳房を責める動きが、心なしかスムーズで大胆になっていた。エリザベスに性の手ほどきをしているうちに、少しずつヒルダの罪悪感が薄らいできたのかもしれない。指の腹で黒い乳頭を押し潰し、遠慮なくこねくり回してきた。
「ああっ、あんっ。赤子にミルクを? では、今のわたくしも胸からミルクを出すことができるのですか」
「いいえ、まだ出ませんわ。ですが、お腹に赤子を宿し、母親になればミルクが出ます」
「まあ……そうだったの。知りませんでしたわ。わたくしがお腹に子を宿せば……」
 止まない性感に顔を真っ赤にしながら、エリザベスは感嘆の声をあげた。
 脳裏にうっすらと浮かんでくるのは、亡くなった母、王妃の顔だった。
(お母様……わたくしは、立派な女になりました。この胸も、このお尻も、もう小さな子供ではありません。次はわたくしが子を産み、母になる番ですわ……)
 大人になった嬉しさを胸中で母に報告していると、ヒルダの手が胸を離れ、股間へと滑り込んできた。エリザベスは驚きに息を引きつらせる。
「きゃあっ !? ヒルダ、そこはっ」
「失礼致しました。こちらもご奉仕して差し上げます」
 今やヒルダのものになったマリアの指が、今やエリザベスのものになったヒルダの陰毛をかき分け、女の入り口をさぐりあてた。
「ああっ、ヒルダ……」
「いけませんわ。姫様の可愛らしいお声を聞いていたら、私も妙な気分になって参りました」
「構いません。お好きになさって……」
「だ、駄目っ! 駄目ぇっ!」
 二人が熱い眼差しで見つめ合っていると、そこに割り込んでくる者がいた。ヒルダに身体を奪われた第二王女のマリアである。
「やめなさい、二人とも! いったい何をしているの !?」
 首から下が五歳の幼児の体になってしまったプリンセスは、エリザベスとヒルダが淫らな行為を楽しんでいるのにようやく気がつき、慌てて止めに来たのだった。
「何って、ヒルダに大人の女の心得を教授してもらっていたのですわ。今のわたくしは子供ではありませんもの。このくらいのこと、存じておかなければなりません」
 真っ赤な顔で飛び跳ねる姉に、エリザベスは不敵な笑みを向けた。いつになく余裕を見せる妹に、マリアは明らかに気圧される。
「そんなの駄目っ! 体は大人でも、ベスはまだ子供でしょう !? ヒルダも、私の体を使ってはしたないことをしないでちょうだい!」
「申し訳ございません……」
 謝罪するヒルダに、エリザベスは鷹揚に手を振った。
「構いませんわ、ヒルダ。お姉さまのおっしゃることは気になさらないで。だって子供の言うことですもの」
「な、何ですって !? ベス、あなた……きゃあっ !?」
 怒り心頭に達したマリアが怒声をあげようとしたそのとき、エリザベスの手がマリアの小さな体を持ち上げた。
「何するの、ベス! お姉ちゃんを放しなさい!」
「いいえ、放しませんわ。聞き分けのない子供には、お仕置きが必要ですわね」
 マリアを抱えたエリザベスはその場に立ち上がると、マリアの両足首を握って逆さまに持ち上げた。頭を下にして宙吊りになったマリアは、悲鳴をあげて暴れだす。
「やめなさい、ベス! 危ないでしょう !?」
「暴れたらもっと危ないですわ、お姉さま。わたくしが手を放せば、お姉さまは頭から落ちてしまいますもの」
「は、放しなさい……ううっ、放して。頭がクラクラするの……」
 長い間風呂に入っていたこともあり、逆さ吊りにされたマリアは、たちまち頭に血が上る。赤い顔がますます赤くなっていった。
「ベス、お願い……もうやめて」
「まだまだですわ。いつもわたくしを馬鹿になさっていたお姉さまには、もう少し苦しんでいただきませんと」
「そ、そんなあ。私、もう限界よ……ううっ」
 やがて、マリアはうめき声をあげて失神してしまう。エリザベスは姉が完全に気を失ったことを確認すると、浴室の外の涼しい場所に寝かせてやった。
「さあ、ヒルダ、続きと参りましょう。わたくしにもっと大人の体のことを教えて下さいな」
「承知しました、姫様。今夜はお気が済むまで、お付き合い致します……」
 二人は抱き合い、どちらからともなく唇を重ねた。そして互いの体をまさぐり合う。
 邪魔者のいなくなった浴室からは、しばらくの間、女たちの嬌声がやむことはなかった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

「お兄ちゃん、こっちに来て」
 自分を呼ぶ声に、イワンは顔をあげた。
 見張りの任務が始まって、二時間ほどだろうか。退屈な仕事に嫌気がさしてきた頃だ。もたれかかっていた壁から離れ、イワンは牢屋の奥へと向かった。
 じめじめして薄暗い空間の隅に、ひとりの女が座っていた。
「ねえ、お兄ちゃん。あたし、まだお外に出られないの?」
 女はイワンに訊ねた。コウモリを思わせる黒い翼と、先が尖った黒い尻尾を持つ女だった。露出度の高い黒革の衣装をまとった身体は豊満で、男であれば誰もが見とれてしまうほど魅力的なプロポーションだった。
 だが、セクシーな肢体とは裏腹に、その顔はどう見ても四、五歳の幼児のものだった。黒い髪を三つ編みにしたあどけない幼子の顔。このちぐはぐな外見の女のことを、イワンはよく知っていた。
「ああ、まだダメみたいだ。外に出たらいけないよ、ミンティ」
 女の前でかがみ込み、イワンは質問に答えた。女の名はミンティ。イワンと旧知の仲である庭師の娘で、彼女が生まれたときから知っている。素直で可愛らしいミンティのことを、彼はとても可愛がっていた。
「えー、まだなの? つまんない……」
「もうちょっと我慢してくれ。もう少ししたら、きっとお許しが出るはずだから」
 自分でも信じていないことを、イワンはミンティに言い聞かせた。これは先ほどから幾度と無く繰り返されてきたやり取りで、彼自身うんざりしていた。だが、今のミンティを外に出すわけにはいかなかった。
(何せ、今のミンティは悪魔の体になってるんだからな……)
 イワンはミンティの幼い顔の下に視線を向けた。黒い翼と尻尾を生やしたその体は、明らかに人間のものではなかった。
 得体の知れない魔術のせいで、ここにいるミンティの体は、首から下だけが正体不明の女悪魔と入れ替わってしまったのだ。
 いくら庭師の娘の童女といえども、その体は魔性の者。野放しにするのは危険だった。
 そのため城に仕える魔術師に強力な結界を張ってもらい、こうして牢に閉じ込めて見張っているのだ。罪人用の足輪と長い鎖に繋がれたミンティの姿を見ると心が痛むが、それも元に戻るまでの辛抱だ。
「あたし、もうイヤだよー。ここから出して、お兄ちゃん」
「ダメダメ。もうちょっとだから、我慢しておくれ」
「そんなこと言われても、もう我慢できないよ。それに、なんかさっきから体がムズムズするし……」
 ミンティはもじもじして太ももを擦り合わせた。顔は幼女でも体はグラマラスな魔女のもの。刺激的な光景に、イワンは思わず唾をのんだ。
(いかん、いかん。何を考えてるんだ。相手は子供だぞ……)
 我に返って目を背けるイワン。牢の入り口へと戻り、見張りを続けなくてはならないと思い出した。立ち上がってミンティに背を向けた。
「お兄ちゃん、どこに行くの?」
「あっちで見張りの続きだよ。俺はお城の兵士だからな。ちゃんと仕事をしないと怒られるんだ」
「えー、そんなのやだよ。ここにいて、お兄ちゃん」
「ダメダメ、もうちょっと我慢しろってば。朝になったら、お前の親父さんを呼んで……」
 口に出そうとした言葉を、イワンは途中で止めた。背後から奇妙な気配を感じたのだ。
 さして武道の心得のないイワンだが、今は名状しがたい不穏な気配をひしひしと感じた。
「な、なんだ?」
「……ねえ、お兄ちゃん、こっちに来て」
「どうした、ミンティ? そんなに怖い声を出すなよ……あはは」
 冷や汗をかいて、イワンは背後を振り返った。夜の闇の奥に、赤い二つの光が見えた。それは一対の瞳だった。
「お兄ちゃん、もう一度言うよ。こっちに来て」
 妖しい眼差しと甘い囁きがイワンを呼ぶ。悪魔の体になったミンティの誘いを、彼は断ることができなかった。鍵を取り出して牢を開けると、おぼつかない足取りで、ふらふらとミンティの前まで来てしまう。
「ミンティ……俺を呼んだか」
「うん、呼んだよ。あたし、退屈だからお兄ちゃんと遊びたいな」
「ああ、わかった……じゃあ、俺が一緒に遊んでやる」
 鎖に繋がれた魔女を見下ろすイワンは、既に正気ではなかった。魔族でも指折りの魔力を誇る大悪魔の誘惑に、魔術の心得もない兵士が抗えるはずもない。ミンティに命じられるがまま彼女を拘束していた鎖を外し、自らの鎧と服を次々と脱ぎ捨てていった。
「あたしね、ちょっとずつわかってきたんだ。この体の使い方が」
 自分の唇をなめ回し、ミンティがつぶやいた。その表情はあどけない幼女のものではなかった。男の精をすすり、堕落と快楽の道に誘い込む淫魔の顔だった。
 首から下が女悪魔になったミンティは、裸になった兵士を優しく抱きしめた。
「ねえ、お兄ちゃん。あたし、さっきから体がムズムズするんだ。どうしたらいいの?」
「ああ、任せろ。俺が何とかしてやる……」
 すっかり理性を失ったイワンは、ミンティの革の衣装を剥ぎ取り、悪魔の裸体をさらけ出した。形の整った見事な巨乳に舌を這わせると、幼女は甘い声をあげた。
「ああ……お兄ちゃん、気持ちいいよ……」
「ミンティ、こんなに大きなおっぱいになりやがって。子供のくせに、なんてやつだ」
 イワンは魔女の柔らかな肌を味わい、乳房の先端を口に含む。唇をすぼめて肉を吸うと、五歳の女児は満足の吐息をついた。
「ああっ、すごい。おっぱい、吸われてるよう……」
 本来であれば、今から十年以上たってから経験するはずの男女の営み。ジェシカの魔術によって淫蕩な女悪魔の肉体になってしまったミンティは、魔族の本能の赴くがまま、それに没頭していった。
 未知の感覚に戸惑うミンティを、イワンは巧みに責め、その心に女の喜びを刻みつけた。乳をたっぷり吸ったあとは、可愛らしい唇を味わい、熟れた秘所に指を這わせた。女性器に指を入れられる初めての経験に、ミンティは体をくねらせて悶えた。
「な、何これ、すごい。あたし、おかしくなっちゃうよ……」
「気持ちいいだろう、ミンティ。今からお前を、俺の女にしてやるぞ」
 イワンはそう言うと、ミンティに接吻し、その口内に舌を差し入れた。互いの唾液を絡め合い、獣のように互いを貪る。わずか五歳の幼女を相手にしているとは、とても思えなかった。口と口とを繋げたまま、汁の滴る膣内に指を抜き差しして、魔女の性感帯を刺激した。
「ああっ、お兄ちゃん、お兄ちゃんっ」
「見ろよ、これ。ミンティが可愛いから、こんなになっちまった」
 横たわって悶える少女の鼻先に、イワンは己の性器を突きつけた。雄々しく反り返った男の一物に、ミンティの視線は釘付けになった。
「すごい、大きい。これは何なの?」
「これはチンポだ。これをお前のここに入れて、思いっきり気持ちよくしてやる」
 正気を失った兵士は、童女の股間を愛しげに撫で回した。悪魔の本能に突き動かされたミンティも、頬を赤く染めてイワンを待ちわびているようだ。やがて女の脚が大きく開かれ、そこに男が分け入った。
「入れるぞ、ミンティ」
「うん、いいよ……ああっ、入ってくるっ」
 挿入はスムーズだった。充分に濡れたサキュバスの膣は喜んでイワンのペニスをくわえ込み、肉ヒダを絡ませる。
「すごいぞ、ミンティ。お前のここ、なんて感触なんだ」
 ゆっくりと腰を前後させ、イワンはミンティの膣内を味わう。幾重にも連なる肉の壁が、己の意思を持っているかのようにうねり、陰茎に吸いついてくるのだ。人間の女のそれとは似ているようでまるで異なる内部の感触に、たちまちイワンは虜になった。
(これが悪魔の体……なんて気持ちがいいんだ)
 浅い部分で抜き差ししたあと、亀頭で子宮の入り口を小突き、また浅瀬に戻る。えらの張ったイワンのものは肉汁ごとミンティの壁をえぐり、敏感なヒダを外へと引きずり出そうとする。ぞくぞくするような快感がイワンの背筋を走り抜けた。
「気持ちいいよ、ミンティ。俺、おかしくなりそうだ」
 イワンは鼻息も荒く、可愛がっていたはずの童女を容赦なく犯した。はち切れそうなほど膨張した肉の棒が往復するたびミンティは喘ぎ、大人の女の体で体験するセックスに酔いしれた。鼻水を垂らして喜ぶ子供の顔の下ではボリュームのある乳房が弾み、イワンの目を大いに楽しませた。
「た、たまらんっ。ミンティ、お前は最高だっ!」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ」
 ミンティはイワンの体にすがりつき、自分から腰を振って更なる交合を求めた。いまだ初潮も迎えていない、無垢な少女とは思えなかった。肉と汁のたてる淫猥な音が暗い牢の中に響き、ゆらめく炎が妖しく蠢く二人の影を壁に映した。
 名のある女悪魔の身体は、今や年端もいかぬ人間の娘に所有され、一介の兵士にもてあそばれていた。どれほど強大な魔力や腕力を持っていようと、頭部を別人のものと挿げ替えられてしまっては、無害で艶かしい女体でしかない。イワンは魔族と化したミンティとのセックスに篭絡され、欲望の赴くままにミンティを犯した。もしもこれが公になればただでは済まないだろうが、すっかり誘惑に負けてしまったイワンは危機感の欠片もなく、ひたすら熟れた女体をむさぼった。
「ああ……すごいよ、お兄ちゃん。あたし、とってもいい気分なの」
 激しい交わりは、ミンティにも新たな変化をもたらしているようだった。未知の感覚に戸惑っていたはずの童女は、今は嬉しそうな笑みをたたえ、熱い視線をイワンに注いでいた。その表情は既に無垢な少女ではなく、立派な女のものになっていた。
「お願い、お兄ちゃん。もっとして。もっとあたしを気持ちよくして」
「うおおっ !? 中の動きが……お、おお、おおっ」
 丸みを帯びた腰を上下させ、イワンを翻弄するミンティ。大の大人がたった五歳の幼女に手玉にとられていた。ますます高ぶる快楽に、イワンはなすすべもなく飲み込まれていった。
「おおっ、出る。ミンティ、出るぞっ」
 とうとうこらえきれなくなったイワンのものから、熱の塊がほとばしった。きつく体を密着させ、濃厚な子種をたっぷりとミンティの奥へと流し込む。己の生命そのものが抜け出ていく錯覚をイワンは覚えた。
「あはあ……あたしの中に、お兄ちゃんのおつゆが出てるよ。おいしい……」
 ミンティは満足げに舌を鳴らし、初めての膣内射精に酔いしれた。赤く染まった瞳が妖しく輝き、イワンの姿を映し出した。
「おっ、おっ、おおお……す、吸われる。ふう……」
 長い射精を終えたイワンに、強烈な疲労が襲いかかった。萎えた陰茎を引き抜くと、ミンティの股間に開いた丸い口から一筋の雫が滴り落ちた。
「俺……いったい何してたんだ? まさか、あのミンティと、こんな……」
 イワンの声は震えていた。欲望を満たして落ち着くと、今までの行為の意味を思い知らされる。いくら首から下が女悪魔の体と入れ替わっているとはいえ、ミンティは自分が普段から可愛がっている幼い子供だ。それをこうして手篭めにするなど、決して許されることではなかった。
 しかし、そんな罪悪感や後悔は、すぐに中断させられてしまう。ミンティの細い手が彼のペニスをぐっと握りしめたのだ。
「うっ、ミンティ……何をするんだ」
「どうしたの、お兄ちゃん? 早く続きしようよ」
 と言って、ミンティはイワンの性器を愛しげに扱きあげる。妖しい視線と声音で誘惑されたイワンの一物は、たちまち活力を取り戻した。イワンは慌てて首を振る。
「駄目だ、ミンティ。こんなことをしちゃいけないんだ」
「どうして? あたし、とっても気持ちよかったよ。でも、まだ足りないの。もっともっとお兄ちゃんのおつゆをココに注ぎ込んでほしいの」
 ミンティはへたり込んでいたイワンを床に押し倒すと、汗ばんだ乳房で彼の顔を挟み込んだ。女悪魔の体臭がイワンの鼻腔をくすぐり、再び理性を奪い去る。
 仰向けになった彼の上に、ゆっくりと腰を下ろすミンティ。弓なりにそり返った肉の槍は、またしても彼女の中へと飲み込まれていった。
「だ、駄目だ、ミンティ。もうやめてくれっ」
「いやだよ。あたし、もっとしたい。もっともっとしたいの」
「うっ、また出る。吸われる……あああっ!」
 ついさっき精を放ったばかりだというのに、イワンは間もなく絶頂に至った。やはり同じように、射精と共に、命そのものが吸われていくような感覚に襲われる。
 おそらく、それは錯覚ではない。イワンはようやくそのことに気がついた。自分の生命力が精と共にミンティに吸われているのだ。本人は無自覚だが、ミンティはイワンの命を喰らおうとしているのだ。それがサキュバスの本能だった。
「えへへ……おいしい。お兄ちゃんのおつゆ、すっごくおいしい」
「や、やめてくれっ! ミンティ、離れろっ!」
「もっと出してよ、お兄ちゃん。もっと出して。もっと飲ませて。ほら、もう一回」
「いやだああっ! た、助けて……助けてくれえっ!」
 生命の危機におののくイワンと、何も知らずに快楽にふけるミンティ。夜更けの城内で開かれた二人だけの宴は、いっこうに終わる気配を見せなかった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

「どうだい? あたしの体、見事なもんだろう」
 そう言って誇らしげに裸体を晒すドレッサから、マイクは目が離せなかった。
「ほ、本当に……若い女の体になっちまったのか」
 マイクは震える声で言うと、長年連れ添った妻の肌に触れた。しなやかな肢体にはほどよく筋肉がつき、若さゆえの弾力が感じられた。本来のドレッサの体ではありえない感覚だ。
 マイクは動揺を抑えるために呼吸を整えると、再び妻の姿に目をやった。そこにあるのは、不健康に肥え太った中年女の体ではない。細い手足と腰を備えた、十代後半の少女の身体だった。
 その瑞々しい娘の体に、ドレッサの丸顔の頭部だけが載っているのだ。何度見ても信じられない光景だが、間違いなくこれは現実だった。
「あんた、大変だよ。あたし、こんな体になっちまった」
 夕方、花売りの商いを終えて帰宅したドレッサは、そう言って、自分が着ている派手な赤い衣をマイクに見せつけた。
 明らかに市井の庶民が身に着ける服ではなかった。マイクは記憶の引き出しの中から、それに似た衣装を探し出した。王侯貴族に仕える魔術師の衣だ。
「なんだ、お前、その格好は……」
 変貌したのは服装だけではなかった。マイクに匹敵するほど肥えていたドレッサの体は、今や別人のように細く、きゃしゃになっていた。
 五十女の顔に不釣り合いなしなやかさと瑞々しさを持ったその肢体は、宮廷魔術師カリオストロの娘、ジェシカのものだった。
 肉体交換の魔術が暴走したせいで、ドレッサの頭部は胴体を離れ、代わりにジェシカの体と結合してしまったのである。
「花売りの商売が終わって帰ろうとしたら、お城勤めの女魔術師があたしの前にやってきてね。それからのことはよく覚えてないけど、気がついたら、あたしゃ、この体になってたんだ。この体、きっとあの女のものに違いないよ。ひょっとしたら、魔法で首から下を取り替えたんじゃないかね? だって、この細い腕も腰も、服装だって、あたしのものとは全然違うんだからさ」
 ドレッサの話は、マイクにとってとても信じがたい内容だったが、こうして女魔術師の体になった妻の姿を目の当たりにすれば、信用するほかない。
 ドレッサの体は、若く闊達な少女のものになってしまったのだ。
「体が入れ替わった、と言われてもな……。その魔法使いの姉ちゃん、どうしてお前なんかにその体を寄越したんだ?」
「さあ、知らないねえ。やけに慌ててたみたいだけどさ。それより、あんた……」
 にわかに赤い衣を脱ぎだした妻の姿に、マイクは度肝を抜かれた。
「お、お前、何する気だ !?」
「何って、決まってんじゃないのさ。こんなに若くて綺麗な体になったんだ。いろいろ試してみなきゃ、損ってもんじゃないかね」
 ドレッサは悪びれる様子もなく、全ての衣類を脱ぎ捨て素裸になった。
「ほら、あたしの体をよくご覧よ。なかなかだと思わないかい? この綺麗な体があたしのものなんだよ。とってもいい気分さね」
 細い腰に手を当て、マイクに色目を使うドレッサ。彼女は事態の原因や解決よりも、新しい自分の体の方に興味があるようだった。
「やめろよ。妙な気分になっちまうだろう」
「ふふふ、さすが若い女の体だよ。もうおったててる。こんなに元気なあんたを見るの、何十年ぶりだろうね」
 にやにや笑うと、ドレッサは夫の股間に手を伸ばした。こんな異常な状況にも関わらず、マイクのものは既に硬くなっていた。
「おい。いいのかよ……よくわかんねえけど、それ、ひとの体なんだろ?」
「構やしないさ。あの女、見るからに高慢ちきでいけ好かなかったからね。あの女の体をあたしが好き勝手に動かしてるって思うと、笑いが止まらないよ」
 自らの胸を両手でまさぐり、ジェシカをせせら笑うドレッサ。自分たちを襲ったアクシデントを楽しんでいるようだった。
「へへへ……まあ、いいか。据え膳喰わぬは何とやらって言うしな。それにしても、この体、とびきりの上玉じゃねえか。なんてついてるんだ、俺は」
 形のいい乳房をわしづかみにして、マイクは下卑た笑い声をあげた。彼もドレッサが譲り受けたジェシカの体に興味津々だった。
 本来ならば彼が近づくことすらかなわない、地位も才能もある女魔術師の体。その体は今、マイクの妻である中年女の所有物となって、思うがままに弄ばれていた。
「ああ、いい心地だよ。肌も張りがあって、あたしのとは全然違うね」
「まったくだ。いい乳だぜ。もうちょっとデカい方が、俺の好みだけどよ」
 などと勝手な感想を述べると、ドレッサを粗末なベッドに押し倒す。
 少女の清い体は自ら腕を広げ、出会ったばかりの中年男を抱きしめた。
 狭い部屋の中に明かりはなく、街灯の光が窓からわずかに差し込んでくるだけだ。そんな暗い室内で、マイクは久方ぶりに妻を愛撫し、乙女の性感帯を開発した。
「この肌、シミひとつねえじゃねえか。くうっ、たまんねえ」
 ドレッサの肌を舐め回し、各所に唾を塗りたくるマイク。健康な十七歳の少女の体は、父親ほども歳の離れた男の餌食と化していた。
「ひひひ、だんだん気持ちよくなってきたよ。あんまり経験がないみたいだね、この体は」
 夫に陰部を見せつけながら、ドレッサが元の身体の持ち主を嘲弄した。他人の体で淫らな行為にふけることで、倒錯的な興奮を覚えているのだ。
「そうか、良くなってきたか。それじゃ、そろそろお待ちかねだぜ」
 マイクも高揚した声で言った。顔は確かに中年の妻のものだが、その首から下は華やかな乙女の体である。醜い妻ではなく若い美女を抱いている気分だった。
 ドレッサの細い腰を背後から抱え、犬のように四つん這いにする。
 大きく膨れた一物をドレッサの尻にあてがうと、未だ開いたことのない女の扉をこじ開けにかかった。
 たび重なる前戯で、入り口は既に充分な湿り気を帯びていたが、それでも処女の内部が窮屈なことに変わりはない。ジェシカのものだった膣は、初めての侵入者を強く拒んだが、それもはじめだけだった。マイクがぐいと押し込むと、やがて圧力に負け、しぶしぶ彼のものを受け入れた。
「う、ううん……い、痛い。やっぱり生娘だね。ここんところがジンジンするよ」
「うへへ、狭いな。おっ、見ろよ、血が出てやがる」
 結合部から一筋の赤い雫が垂れているのを見て、マイクは歓声をあげた。
 十七年間ジェシカが守り続けた処女は、あっさりと失われた。
 ジェシカの代わりに二度目の破瓜を体験したドレッサは、身を縮めて痛みに耐える。
 処女だからといって、興奮しきったマイクは容赦しなかった。限界まで入れたところで戻り、規則正しい抜き差しを開始する。硬度も活力も欠いた中年男のペニスが、若い膣内を蹂躙した。
「へへっ、この締めつけ、たまんねえな。食い千切られそうだ」
「あ、あんた、もうちょっとゆっくり……ひいっ、激しいっ」
「何を言ってやがる。こんなにいい女の体を犯してるんだぞ。我慢なんかできるかよ」
 すっかり有頂天になったマイクは、執拗にドレッサの中を往復して愉悦に浸った。ドレッサが抗議してもお構いなしだ。獣さながらの荒々しさで妻を犯した。
 一方のドレッサは、はじめこそ大げさに苦しんでいたものの、マイクの強引さに観念したのか、途中から夫に素直に身を委ねるようになった。痛みに慣れてきたのかもしれない。
「ああっ、いい、いいよ。だんだん良くなってきた。おっ、おおっ」
「なんだ、さっきまで生娘だったくせに、もう感じてやがるのか? ふしだらな女だぜ」
 ドレッサの尻を押さえて激しく突くと、女魔術師の細い腰がくねり、マイクを誘惑する。親子ほども歳の離れた少女の体が見せる痴態に、ますます気分が高揚した。
 やがて、下腹に湧き上がった衝動に、マイクは己の限界を悟った。
「もう我慢できねえ。おい、お前、出すぞ」
「え? あ、ああ……」
 ドレッサは承諾とも拒絶ともつかない声で応えた。余裕を無くした妻の体を力いっぱい押さえ、マイクは牡の欲望を解き放つ。
「うお、うおおっ、出るっ」
 久方ぶりの射精だった。マイクの先端から噴き出した熱い樹液が、膣内に打ちつけられた。
「ああっ、出てる。中に染みる……」
「ふう……たっぷり出た。最高だったぜ」
 マイクは大きく息を吐き、満足してその場に横になった。
 ペニスが引き抜かれたドレッサの膣口から、血と体液の混合物がこぼれてきた。ジェシカのものだった身体は元の所有者が気づかぬうちに純潔を散らされ、見知らぬ中年男の子種を植えつけられたのだ。
 ひょっとしたら、妊娠してしまうかもしれない。
 だが、ドレッサもマイクも、子供ができる可能性などまったく気にしていなかった。
「す、すごかったよ、あんた。こんなに激しいのは初めてさ」
 上気したドレッサが、マイクにすがりついてきた。新しい身体で味わう性交は、彼女にとっても満足のいくものだったようだ。
「おう、お前も楽しめたか。そりゃ良かったな」
「ああ、はじめはちょっとばかし痛かったけど、慣れたらなかなかだね。これなら、あんたをもっと喜ばせてやれそうだ。気に入ったよ、この体」
「そうか。その体をくれた姉ちゃんに、感謝しなくちゃいけねえな。へへへ……」
 火照ったドレッサの肌を馴れ馴れしく撫で回し、マイクは下品な笑声をあげた。
 歳をとった妻を相手に、このような素晴らしい体験ができるとは、夢にも思わなかった。何度も何度もドレッサの艶やかな肌に口づけながら、彼は神に感謝した。今まで信仰心など欠片もなかったが、これからは毎日教会に行き、ひざまずいて感謝の祈りを捧げてもいいと思った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 作業の手を止めて外を見やると、もう暗くなっていた。もう店じまいの時間だ。ロイは修理の終わった靴を片付け、店を閉めようと外に出た。
 夕暮れどきの冷たい風が頬を撫で、鼻をくすぐる。昼間は随分と暖かかったが、日没と共に急に冷えた。
「ステファニー、どうしたんだろう。やけに遅いな」
 ロイは愛する妻の名を口にして、自分の店の前の通りを見渡した。
 彼の妻であるステファニーは昼過ぎ、市場まで買い物に出かけた。
 出産も近い妊婦がひとりで外出したり、家事に勤しんだりするのを、ロイはかねてから快く思っていなかったが、ステファニーは働き者だ。家でじっとしているのが嫌だと言って、妊娠する前と変わらない扱いを要求した。
 そんな二歳下の新妻のわがままを、ロイは仕方なく聞き入れ、いつものように外出を許した。
 だが、今日はどうしたことか、いまだステファニーは帰ってこない。普段ならば、とうに帰宅して夕食の支度をしている時間だった。
「心配だな。何ごともなかったらいいんだけど……」
 妻思いのロイは不安を募らせ、何度も店を出ては、暗い通りに目をこらした。ぼんやりした魔術の灯りが照らす街角には、人の姿はない。
 肌寒い夜の街を見張りながら、ロイはひたすら新妻の身を案じた。
「大丈夫だろうか、ステファニー。早く帰ってきてくれ」
 神に妻の身の安全を祈っていると、曲がり角の向こうから白い人影が現れた。
「あれは、ステファニー……じゃないな。あんな格好じゃない」
 ロイは遠目にその人影を観察したが、どうやらステファニーではないようだ。人影は随分と小柄で、袖や裾の長い、白いドレスに身を包んでいた。
 どこかの令嬢なのだろう。成人の体格ではない。まだ幼い少女のようだった。
 明らかに妻ではない。ロイはうつむいて嘆息した。身重の妻のことが心配で仕方なかった。
「ああ、ステファニー。どこに行ってしまったんだ? 早く帰ってきておくれ」
「ロイ……」
「ステファニー !?」
 すぐ近くから自分の名を呼ぶ声に、靴屋の倅は飛び上がった。顔を上げると、先ほどの白いドレスの少女が、ロイの目の前に立っていた。
 ロイは驚愕し、ついで弾けるような笑顔になった。眼前の白いドレスの女の顔は、彼の妻、ステファニーのものだったからだ。
「おかえり、ステファニー! 遅かったじゃないか、心配したよ! 今までどこに行ってたんだい? そのドレスはどうしたの? とにかく、寒いから中に入ろう。お腹もぺこぺこだよ」
 感激して夫が次々と浴びせかける言葉に、ステファニーは応えない。じっとその場に立ち尽くしていたかと思うと、突然、火がついたように泣き出した。
「ロイ、私、私……うわあああんっ」
「どうしたの、ステファニー。何かあったの?」
「ごめんなさい。私、あなたの赤ちゃんをなくしちゃった。うわあああん……」
 涙を流してすがりついてくるステファニーの背丈は、子供のように小さい。ロイは疑問に思った。ステファニーの身長は、もっと大きかったはずだ。
 それに、白いドレスを身に着けた妻の体は、とても妊婦のものには見えなかった。抱きついてくる妻の腹をそっと撫でる。出かける前は大きく膨らんでいたはずのステファニーの腹部は、明らかに平らになっていた。
「このお腹、それにこの服……ステファニーの体、どうしちゃったの?」
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……」
 ステファニーは青ざめた顔で、謝罪と号泣を繰り返す。赤子のように泣き続ける妻の姿は、もうじき母親になる二十歳の新妻のものとは思えないほど幼かった。

「それで……いったい、何があったんだい?」
 店の奥にある寝室で、ロイはステファニーに訊ねた。
 下を向いて立ちすくんだ妻の背丈は、ロイより頭二つ分も小さい。本来ならば、もっと上背があるはずだった。
 新たな命を宿した孕み腹はおろか、長い脚や豊満な乳房も何処かへ消え失せ、どう見ても子供の体格になっていた。それも、白いドレスの令嬢だ。
 きゃしゃで小柄な体型とは裏腹に、顔や髪は日頃のステファニーそのままだった。
 まるでステファニーの首から下の身体だけが、子供になってしまったかのようだ。
 夫の問いに、ステファニーは心底困り果てた様子だった。
「それが、私にもさっぱりわからないの。買い物をして帰ってきたら、途中、白いドレスの犬が私に飛びかかってきて、気がついたらこんな格好に……」
「ドレスの犬? 犬が人間のドレスを着てたっていうのかい。そんな馬鹿な」
 ロイは呆れて首を振った。とても信じられない荒唐無稽な話だった。
「でも、本当なの。茶色い顔の犬が、人間みたいにドレスを着ていたの。手足だって人そっくりだったわ。ああ、そういえばあの犬の格好、今の私によく似てたわ。あの犬、本当に犬だったのかしら……」
「よくわからないけど、とんでもない事件に巻き込まれたみたいだね。でも、僕は嬉しいよ。君がちゃんと帰ってきてくれたから」
「ごめんなさい、ロイ。何が何だかさっぱりわからないけど、私、大事な赤ちゃんをなくしちゃった。もう、私の体に赤ちゃんはいないわ……」
 ドレスの上から己の平坦な腹を撫で回し、再び涙を流す妻を、ロイは強く抱きしめた。
「いいよ、ステファニー、気にしないで。僕はただ、君が無事に帰ってこれただけで満足してるんだ。赤ちゃんがいなくなっちゃったのは寂しいけど、大丈夫。また産めばいいさ」
「ロイ……ううっ」
 ステファニーは夫の腹に顔を埋め、嗚咽した。
「明日、日が昇ったら、父さんたちでもお役人でもいいから、相談に行こう。きっと何とかなるよ。だからもう泣かないで、僕の可愛いステファニー」
「ロイ……お願いがあるの。聞いてくれる?」
 ステファニーはロイの体から離れると、夫の顔を見上げて訊ねた。互いの身長差を実感しながら、ロイは「何?」と訊き返す。
「今の私の体を、よく調べてくれないかしら。私、自分の身に何が起こったのか知りたいの。そうしないと、死んだ赤ちゃんだって可哀想よ」
 と言って、ドレスの袖から腕を引き抜くステファニー。いかにも高価そうなドレスだが、ところどころ泥にまみれ、黒く汚れてしまっていた。
「いいよ、僕が調べてあげる。それに、脱ぐのも手伝わないとね。そのドレス、どうやら一人じゃ着たり脱いだりできないみたいだから」
「それにしても、どうして私がこんな高級なドレスを着ているのかしら? このネックレスの宝石だって、すごく大きいわ。きっと本物よ、これ」
「まるでお姫様みたいだね。よかったじゃないか。君は子供の頃から、お姫様に憧れていただろう?」
「もう、冗談はよして。私はもう子供じゃないわ」
 ステファニーはロイに抗議したあと、ようやく笑顔を見せた。ロイはそんな妻のドレスを脱がせ、露になった裸体をじっくりと観察した。
「うーん……やっぱり、いつものステファニーとは全然違うね。まるで小さな女の子みたいな体だ」
 ドレスの中から現れたのは、明らかに二十歳の妊婦の体ではなかった。せいぜい十二、三歳の少女の肢体だ。腰は細く、乳房の膨らみは非常に乏しい。
 子供の頃の妻の姿を思い出し、ロイは目を細めた。
「でも、顔は元の私のままなのよね?」
「うん、そうだよ。顔はそのままなのに、首から下だけが子供みたいに縮んじゃってる」
「いったい私の体、どうなってしまったのかしら……」
 ステファニーは途方に暮れたが、いくら考え込んでも答えは出ない。陰毛すら生えていない自分の股間を見下ろし、暗い顔で嘆息した。
「やっぱり、私たちの赤ちゃんはいなくなっちゃったのね。最近はお腹の中で暴れるくらい、大きく元気になっていたのに」
「でも、流産にしては変だよ。ただの流産だったら、君の体がこんな風になるわけない。それに、血もいっぱい出るんじゃないかな」
「そうね。ああ、どうしたらいいの? こんな子供みたいな体になってしまったら、あなたの赤ちゃんを産めないわ……」
「落ち着いて、ステファニー。ほら、泣かないで」
 目を潤ませるステファニーを、ロイは優しくなだめた。
「昔から君は泣き虫だったね。お母さんに叱られたとか、友達と喧嘩したとかいっては、泣きながら僕のところにやってきたものだったっけ」
「う……子供の頃の話はやめてって言ったでしょう」
「でも、今の君の姿を見てると、あの頃を思い出すよ。泣き虫の君のことを、僕はいつも、こうして慰めていたよね」
 微笑みを浮かべて、ロイはステファニーの身体に触れた。
「ああっ、そんなところ……」
 一本の筋にしか見えない股間の割れ目を指でなぞると、繊細な肌が震えた。二度、三度と入り口をくすぐり、膨らみかけのささやかな乳房に手を伸ばした。
「駄目よ、ロイ。こんなときに……あっ、あっ」
「敏感だね。こんな非常時だっていうのに、感じてるんだ」
 ロイはステファニーをベッドに寝かせ、王女のように無垢な妻の裸体を愛撫しはじめる。彼女が妊娠してからは控えていた、夫婦の営みだった。
 つんと硬くなった乳首に歯を立てると、ステファニーは熱い息を吐いた。
「ああっ、あなた……駄目って言ってるのに」
「せっかく子供の頃みたいに小さくなってるんだから、昔の呼び方で呼んでよ、ステファニー。その方が嬉しいな」
 ロイが笑いかけると、二つ下の新妻は夫の意図を理解し、耳まで赤くして恥らった。
「だ、駄目よ。私たち、もう夫婦なんだから……」
「まあ、いいじゃないか。ね? 頼むよ、ステファニー」
「だ、駄目ったら駄目なの……」
 はじめのうちは嫌がっていたステファニーだが、幼い頃から自分を可愛がってくれたロイには決して逆らえない。しぶしぶ、夫の提案を受け入れた。
「わ、わかりました。でも、今日だけだからね。お兄ちゃん……」
「そう、それだ。ステファニーちゃんはとってもいい子だね。お兄ちゃんは嬉しいよ」
「お、お兄ちゃんのバカ……あっ、ああっ」
 赤面して頬を膨らませるステファニーの股間に顔を埋め、陰唇に舌を這わせるロイ。毛の生えていない割れ目を彼の舌がなぞるたび、艶やかな嬌声があがった。
「ああっ、お兄ちゃん、お兄ちゃんっ」
「いやらしい子だね、ステファニー。つるつるの子供マンコからエッチなおつゆがどんどん溢れてくる」
 ぴったり閉じた女の扉から、生温かい雫がこぼれ落ちてきた。二十歳の妻ではなく、年端もいかぬ少女を相手にしている気分だった。
 ロイは音をたててステファニーの汁をすすり、愛する妻を散々に泣かせた。
「ダ、ダメ、お兄ちゃん。そんなことされたら、おかしくなっちゃう」
「おかしくなってもいいよ。久しぶりだろ、こういうことをするのは。僕も我慢できなくなっちゃいそうだ。見てよ、これ」
 ロイはズボンの中から雄々しくそそり立った一物を取り出した。表面に血管が浮き出た、たくましい牡の象徴に、ステファニーは息をのんだ。
「すごい、そんなに大きくなってるなんて。お口でしてあげようか?」
「いや、いいよ。それより、こっちを味わいたいな。久しぶりだし」
「きゃっ!」
 ベッドの上に押し倒され、ステファニーは悲鳴をあげた。
 充分に湿り気を帯びた女陰に、黒い肉の槍が突きつけられる。腹側にそり返った硬いペニスの穂先から、先走りの汁が漏れ出していた。
「あ……入れちゃうの?」
「駄目かい?」
「ううん、いいよ。もう一度、お兄ちゃんの赤ちゃんを孕ませてほしい」
 その返事を聞いて、ロイは妻の髪を撫でて微笑した。
「いい子だね、僕の可愛いステファニー。でも、今はやめておこう。君のここは、とっても狭くてきつそうだ。僕の大きなものを入れたら壊れちゃうよ」
「そんな……」
「だから、今夜はこれで我慢して。また今度、ちゃんと楽しませてあげるから」
 言うなり、ロイはペニスの先端でステファニーの割れ目をぬるりと擦った。小さくなった妻の身体が大きく跳ねた。
「あっ、こんな……ダ、ダメ、こんなの」
「そうかい? その顔は、嫌だって言ってないように見えるけど」
 ロイは相手の細い腰をかかえ、女の入り口を亀頭で執拗に摩擦した。女性器の中には決して手をつけず、幼い身体ならではの肌の柔らかさを堪能した。
「あっ、ああっ、あんっ。お、お兄ちゃん……」
「こういうのも気持ちいいだろ、ステファニー。ほら、ほら」
「ああっ、それ以上は……あっ、ああっ、あーっ」
 わずかに顔を出した肉の豆をペニスの先で押し潰すと、ステファニーは体が折れてしまいそうなほど背中を反らし、絶頂に達した。
 細い身体が痙攣し、先走りの汁を塗りたくられた割れ目から体液が噴き出した。
「良かったよ、ステファニー。僕もイっちゃいそうだ。それ、出すよっ」
 妻の昇天に誘われ、ロイも終点に到着する。絶頂を迎えたステファニーにペニスの先を向けると、煮えたぎる欲望を吐き出した。
 プリンセスのように清らかな幼い体に白い雫が降り注ぎ、牡の臭いが染み込んだ。
「ああっ……お兄ちゃん、お兄ちゃん……」
 半ば意識を失ったステファニーが、虚ろな瞳でロイを見つめていた。
 肌のあちこちを白濁液で汚した子供のステファニーを、彼はとても美しいと思った。
 薄暗い部屋の隅には高価な絹のドレスが脱ぎ捨てられ、その上に置かれたネックレスの宝石が、月の光を浴びて妖しい輝きを放っていた。



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