少年梓 2

 空はやや曇っていたが、秋分を過ぎた太陽はまだ雲間から光を浴びせ、紅や茶色に染まった木々を色とりどりに照らしていた。教室の一角では机や椅子に座った数人の女子が楽しそうに話している。
 どの生徒もこの学校の制服である紺のブレザーを羽織り赤いネクタイをつけていて、暗い緑がかったスカートには縦に白線が幾筋か走っていた。少女たちはかしましく話に興じ、時折大声で笑っている。
「えー、あれまだ出てないの? 発売日、先週って言ってたじゃん」
「延期だってさ。直前になってトラブルだとか、ダメダメだよねー」
 その中に一人だけ異分子が混じっていた。
 すらりと伸びた脚に男子用のチェックのスラックスをはいているので、恐らく男なのだろう。しかしその顔は女子特有の柔らかさに溢れ、赤いリボンでくくったポニーテールも男子とは思えない可愛らしさをかもし出していた。
 二年C組、安井梓。少し普通でない男子中学生である。
 女装趣味でもあるのだろうか、明らかに女子の顔と声、髪型をした彼は、多少の違和感をにじみ出しながらも何とか女子のグループに溶け込んでいた。
 ふと、女子の一人が言い出した。
「……いっつも思うけどアキちゃん、梓にくっつきすぎじゃない? そんなにベタベタされたら、目のやり場に困るよー」
 ニヤニヤ笑って一人の少女をからかい始める。対象になったのは、ウェーブの髪を背中まで伸ばした眼鏡の女子だった。少し小柄だが胸は人並みにちゃんとあり、スタイルも良い方だろう。アキと呼ばれた彼女、尾崎亜紀子は少し頬を赤らめて返した。
「そ、そんなことないよ……ねえ梓」
「え? えっと……」
 水を向けられた梓は言葉を詰まらせた。
 彼は亜紀子の机に腰を下ろし、椅子に座った彼女の手を机の上でそっと握っている。意識せずに自然にした振る舞いだったのだが、相手はそうはとらなかったようだ。話に乗って別の女子、茶髪のボブカットの童顔の少女が呆れ顔で口を開いた。
「仕方ないよ。梓とアキちゃん、似合いの夫婦だしさ。まったくいつもいつもおアツいことで、ご馳走様です」
「み、みーちゃん!」
 真っ赤になった梓が大声をあげた。
 梓と亜紀子を冷やかすように周囲が笑っていると、騒がしい声と共に教室に数人の男子生徒が入ってきた。一人を除いて全員が、梓と同じ男子用の制服を着ている。
 その先頭の、いかにもお調子者といった感じの少年が彼女らに話しかけてきた。
「……おや、またマダムたちは安井夫妻をいじって遊んでるんですか。いくら彼氏がいないからって、ラブラブカップルに嫉妬してはいけませんな」
「うるさいわね、邪魔しないでよ佐藤。あんただって彼女いないくせに」
 みーと呼ばれたボブカットの少女、青木未由が不機嫌な声で言う。しかし佐藤は彼女の前に足を運ぶと、うやうやしく頭を下げた。
「なんだったら、俺がお相手に立候補してもいいんだぜ?」
「あんたと? バッカみたい。バカがうつるからあっち行け!」
 シッシッと未由に追い払われ、彼は芝居がかった動作で嘆くと、さっきまで一緒だった男子のグループの一人に抱きついた。
「ああ、健太郎。助けてくれ、青木が俺をいじめるんだ……」
「こら栄太、くっつくな! 気持ち悪い! 離せ!」
 それは奇妙な女生徒だった。スカートから伸びる脚はすらりと整っており、ブレザーの胸元にも中学生には不相応に大きな二つの膨らみがあるというのに、その顔はどこからどう見てもただのスポーツ刈りの男子にしか見えないのだ。
 山田健太郎。梓と一緒でやはり普通でない女子中学生である。
「何だよー、触らせてくれたっていーじゃねーか。うちのクラスの女どもは皆ケチだからさ、お前だけなんだって」
「俺は嫌だっ !!」
 健太郎は必死の形相で佐藤栄太を振りほどいた。
 小学生のときいきなり女の体になって以来、男に触られるのは彼女にとって恐怖と嫌悪でしかなかった。しかし友人はやはり男子ばかりで、女子のグループに入る勇気はない。その辺りが健太郎の複雑なところであろう。
「……まったくもー、何してんだか……」
 梓は机に座ったまま、戯れる栄太と健太郎を眺めていた。
 彼女の首から下は、元は梓の体だった。そして梓の体は健太郎の。
 二人が入れ替わってもう二年以上になるが、梓も健太郎もそれぞれ異常ではあるが、それなりに平和で充実した毎日を過ごしていた。

 放課後、梓は家に帰ると普段着に着替えてまた出かけた。
「じゃ行ってきまーす」
「梓、どこ行くの?」
「アキんち。今日はみーちゃんも来るんだって」
「そう」
 ほどけた靴ひもを玄関で結びながら、母親と言葉を交わす。灰色のトレーナーにボロボロのジーパンと、あまり女の子の家に行く格好には見えないが、息子になった娘に母親は何も言わず、黙って梓を見送った。
 亜紀子の家では既に二人が梓を待っていた。
「それにしても、みーちゃんが来るなんて珍しいね」
 出してもらったクッキーを口に運びながら、梓が言う。相変わらずここの家の紅茶は美味い。亜紀子の母親は紅茶とクッキーを出してすぐ去って行ったが、やはり亜紀子の母親らしく上品で優しそうな女性だった。彼女も将来ああなるのだろうか。
「うん。私がアキちゃんにお願いしたの」
 未由は家に帰らず直接ここに来たらしく、制服姿のままだった。童顔のくせに発育が良く、体全体にむっちりとした肉感があるが、決して太っているようには見えない。
 亜紀子はそんな未由と梓を見ながらにこにこ笑っている。彼女はもう着替えたようで、刺繍の入ったピンクのブラウスとベージュのニットスカートという装いだった。
 裾から見える恋人の足を、梓は目を細めて眺めている。
 男になって二年、最近は女の体に欲情することもよくあり、彼の密かな悩みの種となっていた。
「それでね、梓……」
 未由は両手を胸の前で組んで、何か言いにくそうにしている。その様子に梓はギクリとし、身を起こして未由を見つめた。
「梓――みーちゃんの初めて、もらってあげてくれない?」
 もじもじしていつまでも言い出せない彼女に、亜紀子が助け舟を出した。
 ……やはり。
 梓は大きく見開いた目で未由の顔を覗き込んだが、やがてため息を一つつき、座り込んだ姿勢で絨毯に後ろ手をつき顔をあげて上体をそらした。
「……はぁ、またなのぉ?」
 疲れた声で梓がつぶやく。その拍子に長いポニーテールがまさしく馬の尻尾のように揺れた。
「さっちーとジュンと坂本さんと、えーと……二学期に入ってから何人目よ、もう……。あたしは周りの子のバージンを全部もらわないといけないの?」
「だって、梓だと皆が安心するんだもん。初めては怖いけど、梓ならいいんだって。自分が男子よりよっぽどモテてるの、わかってるでしょ?」
「別にあたしはモテたい訳じゃないんだけどなぁ……」
 はらりと垂れる前髪をかきあげ、梓がぼやいた。
「それじゃ始めるから、梓もみーちゃんも服脱いで」
 立ち上がった亜紀子が促すと、未由は頬を朱に染めてブレザーを脱ぎだした。
 ――スルスル、パサッ……。
 友達がネクタイ、スカート、シャツと一枚ずつ順に脱いでいく有様を、梓は見た目だけは冷静に観察していたが、本当は今にも未由に飛びかかりそうだった。
(み、みーちゃんの体……やっぱりボリュームあるなぁ……。ブラジャーもぱんつも派手だし……ひょっとしてあたしのため?)
 彼のジーパンの股が盛り上がっていくのを亜紀子がこっそり盗み見ている。
 親友だった梓と結ばれ、晴れて恋人になった彼女であるが、根が優しいのか、単に梓を困らせたいだけなのか、よくこんな相談を持ちかけてくる。おかげで彼はクラスの女子の半分と性交を済ませてしまっているが、亜紀子の人徳のおかげか、彼女と梓の間に割って入ろうとする者はいなかった。
 梓とて十年以上女の子として過ごしてきたため、初めての行為に対する怖さだとか生理の苦しさだとかはよくわかっている。
 顔は可愛く体はたくましい梓は、今や学校中の女子の憧れとなっていた。
 ちなみに役所には既に申請を済ませ、彼はもう戸籍上も男になっている。そこのところはかなり心配したが、なぜか役所の対応は妙に馴れたもので、健太郎ともども梓は、今までとは別の性別として生きていくことになった。
 衣類も健太郎と全て交換し、今ではブリーフやトランクスにも違和感を覚えないし、外で尿意を催せば周囲を確認して、茂みや木陰に立ったままで用を済ませることもある。顔は相変わらず女のままでひげが濃くなることもなかったが、身なりや手回りに関しては、かなりだらしなくなってしまった。
 こっそり可愛い下着やアクセサリーを集めている健太郎と比べても、梓はずぼらでいい加減になったと言えるだろう。
 あれからあの少年とは会っておらず、今のところ元に戻る見込みは全くなかったが、今また女の体に戻りたいかと聞かれれば大いに悩むところだ。
 最近は背も伸びて筋肉もついてきたし、第一この体でないと亜紀子と男女として付き合えない。
 ずっと親友だった亜紀子のことが、今の梓は愛しくて仕方がないのだった。

 ベッドの上に、靴下だけ残して裸になった未由が恥ずかしそうに横たわっている。
「梓……」
「みーちゃん……」
 彼は意を決して、穴の開いた自分のジーパンをすり下ろした。高く盛り上がったトランクスの先端に未由が驚きの視線を向ける。さらに梓がトランクスも脱ぎ捨てると、未由はハッとしてベッドの上で後ずさった。
「す、すご……男の子って、そんなになっちゃうの…… !?」
 上を向いて勃起した梓の陰茎に、好奇と畏怖の目が注がれる。実際に比べたことはないが、同年代の少年よりやや大きいだろう。
「うん、じゃあいくね、みーちゃん……」
 梓は興奮した様子でベッドに寄りかかり、未由の体を抱き寄せた。肩をつかんで顔を引き寄せ、優しく彼女の唇を吸ってやる。
「ん、んん……」
 ファーストキスかどうかは知らないが、少女は嫌がりはしなかった。舌を入れるのはまだ早いだろうと、梓は触れ合った唇をパクパクさせて、もったいぶるように未由の口唇を挟んでやった。
 その勢いのまま体を抱きしめる。年齢にしては大きめの双丘が梓の胸に当たってぷにぷにした肉の感触を伝えてきた。
「んんっ……あ、梓ぁ……」
 まだ体はブルブル震えていたが、少なくとも緊張は解けたようだ。
 彼はにっこり笑い、未由の体を抱いたままうなじにふっと息をかけた。
「あっ……や、ダメ……梓……っ!」
 未由の目が閉じられ、切なげな声が漏れる。
「あはっ――みーちゃん、ここ弱いんだ……」
 梓は少女の体を回転させ、今度は背後から乳房を刺激し始めた。豊かな肉の塊が男子の手のひらで大胆に揉まれていく。
「あ……梓……そ、そんなにしたら――むぅっ…… !?」
 不意に口を塞がれ、未由の声が止まる。
 目を開けると、ごく至近から亜紀子が悪戯っぽい目でこちらを見つめていた。
(……アキ、ちゃん…… !?)
 どうやらいつの間にか前に来ていた彼女にキスをされているらしい。
「むっ……ちゅ、ちゅぱっ……」
 亜紀子は梓と違って遠慮もせず強引に舌を侵入させ、未由の口内を気ままに犯す。歯や舌をペロペロ舐められる感触に彼女は首を振って逃げようとしたが、そんなことで亜紀子から逃れられるはずがない。
 ――ジュルッ……。
「……んんっ !!」
 大量の唾を口腔に送り込まれて未由の体が強張ったが、すぐ目の前の亜紀子の瞳はこれを飲めと彼女に無言の圧力をかけてきた。
 ――ゴクン……。
 結局未由が亜紀子の唾液を飲み干すと、桃色のブラウスの少女は笑顔で離れた。
「……おまじない。これすると、梓のおちんちんが気持ち良くなるんだよ?」
 確かに彼女の言う通り、未由の体のあちこちから熱と欲求が高まってくる。未由が熱い目で亜紀子を見上げたとき、ちょうど梓の指が硬くなった乳首を挟んだ。
 ――コリッ!
「……ああっ !?」
 悲鳴をあげた拍子に、開いた未由の口から唾液が跳んだ。
「えへへ。みーちゃん、すごいでしょ?」
 嬉しそうな梓の声が耳元から聞こえてくる。その股間には、既に数十人の女を貫いた肉棒が誇らしげにそそり立っていた。
「そろそろ……やっていい?」
 小さな声で梓が決定的な問いを発すると、汗ばんだ未由の顔がコクリと振られた。再び彼女の体を回し、こちらに股を開かせる形で寝かせてやる。
 赤子のおむつを換えてやる体勢で未由の太ももを握ると、じんわり濡れた初物の割れ目が梓に丸見えになった。
 わずかな距離を挟んで、興奮しきった男女の性器が向かい合う。
「梓、優しくね」
 亜紀子の助言が聞こえてくる。梓は口を結んでうなずくと、猛りきった肉棒を未由の下の口にあてがった。
「みーちゃん……いくね……」
 ――ズブ、ズブズブ……。
「あぁぁ……入って……きてるぅ……」
 はやる心を必死に抑え、じれったいほどの速さで挿入していった。
 初めて男を受け入れる未由の中は実に狭く、思いっきり彼を締めつけてくる。ある程度進んだところで、梓は陰茎の先に軽い抵抗感を覚えた。そこで停止し、またゆっくり抜いていく。未由は少し怖がっていたものの、抜かれていく肉棒の感触に軽く声をあげた。
「ん……! あ、ありがと梓……こ、今度は最後まで、お願い……」
「いいけど、みーちゃん大丈夫? もっとじらした方が……」
「梓だからきっと大丈夫……と思う」
 真顔でそう言ってくる童顔の少女にキュンとして、梓のモノが一層硬さを増した。愛液でてらてら輝くそれは、もはや完全に彼の大事な一部になっている。
「ん、わかった……」
 再び未由の膣に狙いを定め、鉄と化した性器が突きこまれていった。
 ――ニュプニュプ……ニュルゥッ……。
「うんっ……!」
 また抵抗を感じるが、今度は引かずに挿入を続ける。
 ――メリ、ブチブチィッ……!
「くあ゙あ゙あ゙あぁぁあぁ…… !!」
 可愛さとは程遠いうめき声をあげ、未由の瞳から涙がこぼれた。食いしばった歯の隙間から、また一筋の唾液が垂れていくのが梓には見えた。少女の体は心配だったが、入れてしまったものは仕方がない。彼は腕と腰に力を込め、じっくりと未由の奥まで侵入していった。
「あ……!」
 やがて、肉棒の先に何かが当たる感覚があった。この中に種を注ぎ込めば、未由は梓の子供を授かるはずだったが、亜紀子のことだから中出ししても孕まないようちゃんとセッティングしているだろう。そうでなければ、彼女は何回妊娠しているかわかったものではない。
「みーちゃん……は、入ったよ……」
「う……うん……」
 未由は辛そうな息を吐き、声を出すのがやっとの状態だった。個人差もあるが、彼女は初めてで感じるタイプではなさそうだ。
 しかし、できればいい初体験にしてほしい。梓はそっと亜紀子に目配せし、未由の口と胸とをいじらせることにした。
「みーちゃん……はふぅ、んむぅっ……」
「んんっ……んん、んむっ !!」
 亜紀子に口を吸われ胸を揉みしだかれ、未由の体が上下共に犯されていく。これで後ろも開発すれば完璧なのだが、亜紀子ならとにかく梓にその趣味はない。
 彼は未由の最深部に突き刺さったままで、二人の痴態を眺めていた。
 入れたまま動かずにいると、結合部から未由の体温が伝わってくる。
 膣の中でまたムクムクと膨れ上がる自分の肉棒を心の中で叱りつけ、梓はひざまずいた姿勢でじっと友達のボブカットの頭を見下ろしていた。
 その間にも、亜紀子の手馴れた責めはうぶな未由を苛んでいく。
「ん、はぁっ……あ、アキちゃあん……」
 いつもしてもらっているからわかるが、あのテクニックは未由には耐えられまい。一体どこであんな知識を仕入れているのか。梓は半ば呆れて恋人の淫らな動きを見守っている。
「ふあぁぁっ !? はっ、やぁんっ !!」
 高ぶった未由の膣が締まり、梓のモノをぎゅっと握りこんだ。
「あ……ダメみーちゃん、それ――!」
 梓が声に出したときにはもう手遅れで、ガチガチに固まった陰茎がブルブルと震え、溜まっていた欲望を盛大に未由の奥深くに吐き出した。
 ――ビクンッ、ドプドプドプ……ビュルルルッッ !!
「あぁあぁぁぁっ…… !!」
 熱いものが注ぎ込まれる感覚に未由の体が痙攣し、出された子種を残らず搾り取ろうと膣が震えた。
(あぁ、出てる……イイ……気持ちイイよぅ……)
 梓は気持ち良さそうに目を細め、口を開けて虚空へと舌を伸ばした。
 初めて亜紀子と交わったあの日から、梓はすっかりこの快感の虜になっていた。女の膣の中に自分のはちきれんばかりの肉棒をねじ込んで腰を振り、汁をぶちまける行為は何度やっても飽きない。邪魔が入らなければ一晩中でもやり続けてしまう。精力溢れる梓の体は、まだ成長期だというのに貪欲に女を求めていた。

 こうして、無事に未由の初体験が終わった。
 今まで一番よく交わってきた恋人が、熱っぽい眼差しで梓を見つめている。
「うふふ、出しちゃったね梓。気持ち良かった?」
 梓は縦に首を振り、未由の血まみれの陰部からずぶりと彼自身を引き抜いた。
「はぁぁあぁ……っ!」
 意識が残っているのかいないのか、虚ろな目で未由が喘ぐ。自分に処女を捧げた友達の顔は、いつもよりも可愛く見えた。
「……ふぅ……みーちゃん。中に出しちゃって、ごめんね……」
 未由から離れ、ベッドにどっかり腰を下ろす。いつものこととはいえ、やはり多少の心苦しさはある。だが、未由と違い梓はまだ終わっていなかった。
「お疲れ様、梓」
「って言いながら、なんであたしの舐めてるかなこの子は……」
 ベッドの横にひざまずいて彼の汚れた陰茎に舌を這わせる亜紀子に、梓が呆れて言った。
「だって、まだこんなにカチンカチンじゃない……梓ももっとしたいでしょ?」
「う……うん」
 最愛の少女に肉棒をしゃぶられる快感に、梓が息を吐いた。
 まだ肉の宴は始まったばかりである。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 狭い部屋で、半裸になった少女が壁にもたれて座っている。
 細い指が下着を脱いだ股間に伸ばされ、そっと割れ目を撫でていた。
 ――クチュ、プチュ……。
「う、あ……はぁっ……!」
 我慢できなかったのか、少女の声が漏れた。
 短く刈られた男らしい頭から聞こえてくる喘ぎ声は、やはり男のものだ。声変わりも終わりつつある男子の喘ぎ声が、濡れた女陰の音と一緒に部屋に響く。
「ん……すげぇ……はぁっ、これマジ……すげぇっ……」
 ほとんどの同級生よりも豊かな乳房を揉みながら、濡れた膣に自分の指を一本差し入れる。いつも二本は入れているため、問題なくくわえこむことができた。本来なら荒々しい男のモノが入るはずの箇所に、ズポズポと指を抜き差しする。
「んあ……あぁっ……うひぃぃっ……!」
 突然梓の体になって二年が経ち、すっかり女の体にも慣れてしまった。はじめは風呂やトイレで局部を見て驚いていたのだが、洗ったり触ったりするうちに、健太郎はその部分が少しずつ気持ち良くなっていった。
 今では一人になるとついこうしてこっそりと自分を慰めてしまう。汁を垂らした割れ目も、ピンと勃った肉の芽も、今や大事な健太郎の一部だった。
(はぁ、はぁ……こん中にチンポ入れたら……もっと、すげえのかな……?)
 ぼーっとした健太郎の頭がそんなことを考えるが、しかしその勇気はない。健太郎の性器はいまだ男を受け入れたことはなく、純潔を保っていた。男にのしかかられ大事な部分に肉棒を突きこまれるなど、彼女にとっては耐え難い屈辱なのだ。
「うあ……ダメだっ……俺……!」
 彼女は恍惚の表情で激しく自慰を続け、指の動きはどんどん激しく大胆になっていく。
 ――ジュポッ、ズププ……プチャアッ……。
「あ……ひあぁぁっ !! ふぅぅうっ !!」
 欲望のままに自慰を繰り広げていた少女の声が弾け、絶頂を知らせた。
「ああぁああぁぁぁっ !!」
 ――プシャアアァッ…… !!
 処女の陰部から熱い雫がほとばしり、畳に敷かれたタオルを濡らした。
 健太郎はぐったりと畳に寝転がって肩で息をしている。
「はぁ……はぁ、はぁぁ……はぁ……!」
 また、イってしまった。
 その事実に男だった自分の心に嫌悪感が沸きあがったが、すぐに快楽の記憶に塗り潰される。
 あんなに気持ち良かったのだ。いいではないか。どうせ戻れる当てもなし、いずれは自分も女として男に抱かれることになる。
(俺が……女の子……女……)
 健太郎の心を占めるのは恐怖と期待。相反した感情が彼女の心の中で渦巻いている。
「――はぁ……」
 だんだんと熟れていく成長期の女体を持て余しながら、健太郎はひとり切ない時を過ごしていた。


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