俺が履くのはキッズサイズのガールズローファー 4


 その後、ホタルは聡一郎を家に連れ帰り、少しの間、彼女をこの家に泊めてやってほしいと母親に願い出た。聡一郎が弟の英二郎にレイプされていたことは詳しく説明しなかったが、ホタルの母は聡一郎の浮かない顔からのっぴきならない事情を察したようだった。
「もちろんいいわよ。聡ちゃんは小さい頃からうちの家族みたいだったもの。いつまでだってここにいていいし、うちの子になりたいって言うなら必要な手続きもしてあげるわ。遠慮しないでね」
「いえ、さすがにそこまでは……でも、ありがとうございます。しばらくお世話になります」
 こうして聡一郎はホタルとルリの部屋で寝泊まりすることになった。さして大きくない子供部屋で三人が生活するのは少々狭いが、二人の同居人は嫌な顔ひとつしなかった。
「今日からソーイチお兄ちゃんが一緒なの? 嬉しいな!」
 ルリは大喜びだった。小児用のブラウスとチェックのスカートを身に着けた聡一郎の小さな体を抱え、嬉しそうに何度も何度も回転してはしゃいでみせた。
「はは……少しの間、お世話になるよ。よろしくね、ルリちゃん」
 抱っこされながらルリの繊細な髪を撫でていると、ホタルが聡一郎の軽い体を奪い取った。部屋の隅の二段ベッドに腰を下ろし、耳元に口を寄せてくる。
「聡一郎、寝るときはどこで寝たい? 普段、ルリはこのベッドの下の段、私は上で寝てるんだけど」
「どこでって……このベッドは二人が使うんだろ? 俺は床に布団でも敷いて寝るよ」
 聡一郎にとっては自明のことだったが、ホタルは彼女の体をきつく抱いて首を振った。
「駄目、あんたは私と一緒に上で寝るの。寝ぼけて落っことしたりしないから安心して」
「なんだよそれ。お前と一緒に寝るなんて……」
「口ごたえは許さないわ。これでも心配してるんだから……」
「ホタル……」
 顔を伏せて抱きしめてくるホタルに、聡一郎はそれ以上何も言えなかった。
 おそらく、ホタルの胸の内には、自分が目を離している間に聡一郎が苦しんだという自責の念があるのだろう。聡一郎にとってはそんなことは全くなく、ホタルに相談もできず自分自身を袋小路に追い詰めた己が悪いとしか思えないのだが、ホタルはそんな聡一郎の見解を認めないに違いない。
 聡一郎は渋々うなずき、ホタルの提案を了承した。
「わかったよ。今日から俺はホタルと一緒に寝る。ベッドが狭いだろうけど勘弁な」
「そんなの気にしないわ。あんたたちの体が入れ替わる前は、よくルリを抱っこして寝てたんだもの」
 まだ初等部女児の制服を着たままの聡一郎を抱えて、ホタルはベッドの上に横になった。聡一郎も抵抗せず、さんざん心配をかけてしまった恋人の好きなようにさせてやった。
 ホタルの柔らかな胸に顔を埋めると気持ちが安らぐことに、聡一郎は驚いた。ルリの体になるまでは、ホタルの体と接触するとたちまち劣情を催し襲いかかっていた聡一郎だが、今やそんな若い男の欲望は影を潜め、頼れる大人の庇護を受ける幼い童のそれに酷似した安心感を自覚してしまう。
 たった二ヶ月ほどでなんという内面の変わりようか。
 英二郎に犯されているときもそうだった。女としてセックスをすることに、現在の聡一郎はさして抵抗を感じなくなっていた。ホタルに助けられてようやく弟の玩具からは解放されたが、自分の心が一般的な男子高校生のものから変化しつつあることに変わりはない。
(元の体に戻らない限り、俺の心……考え方や感じ方は元には戻らない。そして、元の体に戻る方法はない……少なくとも、今のところは)
「聡一郎?」
 無言で考え込む聡一郎を不審に思ったホタルが、不安げな表情で彼女の顔をのぞき込んできた。聡一郎は手を振って誤魔化す。
「いや、何でもない」
「二人だけで仲良くしてズルい! あたしもまぜて!」
 横からルリが割り込んできた。首から下が聡一郎の体になった九歳の幼女は、力強い手でホタルが抱きかかえている聡一郎のプリーツスカートをぐいぐい引っ張る。聡一郎が愛用している女児用ショーツが顔を出し、カラフルなフルーツのイラストが丸見えになった。
「こ、こら! 何するんだ !?」
「だって、あたしだけ相手してもらえないんだもん! そんなのイヤ! あたしもホタルお姉ちゃんやソーイチお兄ちゃんと仲良くするの!」
「わ、わかった、わかったから! スカートが破れる!」
「そうね、ルリだけのけ者にして悪かったわ。これからこの三人、一つの部屋で仲良くやっていかないといけないものね」
 ホタルは半ば呆れた様子ながら、ルリのたくましい体を受け止め、姉妹でひしと抱き合った。狭いベッドの中で三人の男女が仲睦まじく戯れると、ささくれだった聡一郎の心も多少は和らいだ。
「それにしても、ルリちゃん、少し汗臭いな……俺の体ってこんな臭いだったっけか」
 トレーナーとジーンズ姿のルリに密着すると、十七歳の少年のかいた汗が聡一郎の鼻を刺激する。もとは自分の臭いだったというのに、今は他人のものにしか思えない。現在の聡一郎にとって自分の体臭とは、第二次性徴を迎えつつある幼い童女の体がほのかに放つ蕾のような香りなのだ。
「えー、臭う? じゃあお風呂! ソーイチお兄ちゃん、あたしと一緒にお風呂に入ろ!」
「わあっ !? ちょ、ちょっと待って!」
 ルリに軽々と持ち上げられ、聡一郎は短い手足をばたつかせた。今のルリがその気になれば、嫌がる聡一郎を無理やり浴室に連れ去るなど容易なことだ。ルリと共にいるだけで、彼我の腕力と体格の違いを嫌でも自覚させられる。
「お風呂はあとにしなさい。お父さんも帰ってきたみたいだから、先にご飯よ」
 ホタルにそう指摘されて風呂への連行は免れるも、代わりにダイニングへと拉致される。姉妹の両親はルリの太い腕の中に納まった小さな聡一郎に目を丸くしていたが、しばらくこの家で生活するのであれば、こういった光景は日常のものになるはずだ。聡一郎は赤面し、ルリに頼んで食卓の椅子に座らせてもらった。
 話好きな四人家族に聡一郎が加わり、夕食は賑やかで楽しいものになった。ビールを飲みながら、「息子がいる家ってのはこんな感じかな」と笑うホタルの父親に、聡一郎は「今は小さな女の子ですけどね」と返して、自分が着ている初等部の女児の制服を見せつけて笑い返した。
 急に聡一郎を預かることになったホタルの両親としては、やはり彼女の心の内が気にかかるのだろう。元の体に戻れないことを特に気にするでもなく笑い飛ばす聡一郎の態度に、二人ともひとまず安堵したようだった。
 夕食のあと、聡一郎との入浴を強硬に要求するルリを苦労して説き伏せ、聡一郎は独りで風呂に入った。この二ヶ月ですっかり慣れ親しんだ女子小学生の肢体を丁寧に洗いながら、聡一郎は自分の考えている内容を頭の中で言葉にしてまとめていった。そして風呂からあがると子供用のパジャマを着て、自分のあとに浴室に向かったホタルとルリが戻ってくるのを待った。
「二人とも、大事な話があるんだ」
 そう切り出した聡一郎は、不安げな顔のホタルが見守る中、風呂あがりで火照った顔のルリと向かい合った。
 フリルとリボンが豊富にあしらわれた派手なピンク色のパジャマを身に着けた、身長百二十センチ強の聡一郎。Tシャツと短パンを身に着け、体毛の濃い手足を自信たっぷりにさらけ出した、身長百七十センチ超の少年のルリ。もしもルリが機嫌を損ねて暴力を振るえば、聡一郎にまず勝ち目はないだろう。威圧感を抱くほどの体格差がある相手を見上げ、聡一郎は穏やかに微笑んだ。
「ルリちゃんは俺の体になって、今までどうだった? 顔はそのままで、首から下の体だけが俺と入れ替わっちゃったわけだけど」
 ふた月前のあの日を思い出し、聡一郎は自分の平らな胸に手を当てた。
 普段と全く何も変わらないあの日の朝、ルリと共に駅から出てきた聡一郎は、遅刻しそうになり慌てて走り出した。それからのことはあまりよく思い出せないが、気がつくと聡一郎はルリの小柄な体になって、初等部の女子のブラウスを着てチェック柄のプリーツスカートをはき、黒いキッズサイズのガールズローファーで地面を踏みしめていた。
 どうやら聡一郎が駅から学校にたどり着くまでのほんの十分ほどの間に、二人の首が挿げ替わったものと推測された。遅刻の心配のなかったルリはゆっくり歩いて登校したから、聡一郎がルリと別れて走り出した時点で既に肉体交換が完了していたのかもしれない。
 とにかく、原因不明の現象により聡一郎はルリの体になり、ルリは聡一郎の体になった。入れ替わった原因が今もわからない以上、元に戻る方法も不明のままだ。現在の医療技術では、人間の首を切断して他人の体に移植するのも難しいという。
 残酷な話だが、もはや元に戻ることは不可能と言っていい。元の体を取り戻すという淡い希望を抱き、辛い現実から目を背けてこれ以上生活するのは難しいだろう。
 聡一郎もルリも、もう二度と元の体には戻れない。それを今の聡一郎は理解していたし、おそらくはルリもなんとなく気づいているだろう。
 そうした前提を踏まえて、入れ替わった当時は男の体を嫌がって泣きじゃくっていたルリに、聡一郎は現在までの心持ちの変化を訊ねたのだった。
「うーんとね……最初は怖くて泣いちゃったの。急に体が大きくなって、あたしがあたしじゃなくなっちゃったもん。本当に怖かったよ。でもね……」
 ルリは自分の両手を見つめた。テニスで鍛えられた男の手をルリが所有し始めてから、既に二ヶ月以上が経過していた。
「ソーイチお兄ちゃんの体になったあたしを、ホタルお姉ちゃんやクラスの皆がニコニコして助けてくれたの。そうしたら気持ちが楽になって、だんだん入れ替わったことが気にならなくなっていったの。ホタルお姉ちゃんはあたしにエッチなことを沢山教えてくれて、あたし、お姉ちゃんのことがどんどん好きになっていったの。よくわかんないけど、あたしの体でいたときの『好き』と、この体になってからの『好き』は違う気がする。お姉ちゃんともっともっとエッチなことをして、もっともっとお姉ちゃんを可愛がってあげたいなって思ったの」
 見つめていた両の手のひらを自分の股間に持っていくルリ。それを見ていたホタルは頬を赤らめ、「もとはと言えば私が悪いのよ。純真なルリに私が変なことばっかり教えたから……」と懺悔した。
「今はどう思ってる、ルリちゃん? まだ元の体に戻りたいって思う?」
 ルリを見上げて聡一郎が問うと、ルリは人差し指を己の口元に持っていって考え込んだ。
「そりゃあ、元に戻れたら嬉しいよ。ソーイチお兄ちゃんにこの体を返してあげたいなって思うし。でもね……ホントのこと言うと、あたしは戻れなくても大丈夫なんだ。この体でも楽しいことはいっぱいあるし、エッチなことをしてホタルお姉ちゃんを喜ばせてあげられるもん」
 おそらくは、それがルリの正直な気持ちなのだろう。元の体に戻れなくてもいいと彼は言った。
 聡一郎は笑顔でうなずいた。ルリの意向が自分とほとんど変わらないものだと確認できてほっとしていた。
「そっか……じゃあ、ルリちゃんは大丈夫だな。あとは俺の気持ちの問題だけど……実は俺も、気持ちの整理はだいたいついてるんだ」
「聡一郎?」
 ホタルが横から声をあげたが、聡一郎の視線はルリの顔に向けて固定されていた。
「俺も、二度と元の体に戻れなくてもいい。一生ずっとこの体のままでも、それで泣いたり落ち込んだり自暴自棄になったりはしない。俺もルリちゃんと同じで、今はこの体でいることがそんなに嫌じゃないんだ。できることならルリちゃんにはこの体を返してあげたいけど、俺自身は元の体でもこの体でもどっちでもいい。二度と元に戻れないっていうなら、一生この体のままでいたって別にいいんだ」
「そんな……そんなの駄目よ。絶対おかしいよ」
「おかしいとかおかしくないとかじゃない。元に戻れないのなら、受け入れないといけない。俺もルリちゃんも」
 首が挿げ替わった二人の男女は同じ結論に達したようだった。
 入れ替わった原因も元に戻る方法もわからない以上、現実を受け入れるしかない。元の体への執着を断ち切り、今の体を自分のものと考えて前向きに生きていかなくてはならないのだ。それが、この二ヶ月で聡一郎がたどり着いた答えだった。
「じゃあ、ルリちゃん。今からお別れ会をしよう」
「お別れ会? お兄ちゃん、どこかに行っちゃうの?」ルリはきょとんとした。
「違うよ。俺はしばらくこの家に厄介になる。もう英二郎とは一緒に暮らしたくないんだ。少しばかり部屋が狭くなって悪いけど、俺はこれからこの部屋で二人と一緒に生活したい。俺はどこにも行かないし、ルリちゃんもどこにも行かないよ」
「じゃあ、お別れ会って何なの?」
「自分の体とのお別れ会だよ。今までありがとうって言って、自分の体にバイバイするんだ。俺は今ルリちゃんが持ってる、俺のものだった高校生の男の体に。ルリちゃんは俺が今使ってる、小さな女の子の体に。『これからはもう自分の体じゃなくなって、完全に相手のものになるんだよ』って宣言してお別れするんだ」
 聡一郎は自分の言葉を噛みしめながらルリを……十七年間自分のものだった少年の体を持つ女児を見つめた。
「ほら、自分が今使ってる体が本当は自分のものじゃないって、やっぱりおかしいだろう? どうせ元に戻れないんだったら、元の持ち主に気兼ねせず、好きなように今の体を使った方がお互いのためになると思う。そのためにお別れ会をするんだ」
「えーと、つまり……あたしもソーイチお兄ちゃんも、今使ってる体を自分の好きにしていいってこと?」
「その通り。これからは俺もルリちゃんも、オナニーやエッチをするときにいちいち相手の許可をとることはしない。英二郎のやつに脅される原因にもなったしな。これから俺は好きなときに好きなだけこの体でオナニーをするし、ちょっと考えにくいけど……もしも気が向いたら、ルリちゃんの知らない男とセックスだってするかもしれない。でもルリちゃんは俺のオナニーやセックスに対して怒ることはできない。だって、もうこの小さな女の子の体は完全に俺のものになるんだから。もちろんルリちゃんも同じで、その体でチンポをしごいたりその辺の女の子とセックスしまくっても俺は何も言えない。だって、もうその男の体の所有権は百パーセントルリちゃんのものになるんだから。自分の体とバイバイするっていうのはそういうことさ」
「お兄ちゃんが、あたしの知らない男の人とエッチ……そんなのイヤだよ」
「あくまでたとえ話さ。俺だってその辺の男とエッチなんかしたくないし、もちろん英二郎ともしない。でも、もししたくなったら俺はルリちゃんにいちいち断らず、この体で好きなだけエッチする。俺もルリちゃんが誰とエッチしても文句言わないからさ。わかった?」
「うん、わかった。これからはお兄ちゃんがその体でエッチなことをしても、あたしは文句言わないよ」
「本当にいい? 正直に言って、ルリちゃんは可愛い。もしも俺と入れ替わらずに大人になってたら、すごくモテたと思う。もしかしたらそのうち好きな男の子ができて、以前の俺とホタルみたいなカップルになってたかもしれない。でも、それはルリちゃんが女の子のままだったらの話だ。俺にこの体を譲って男になったら、そういうわけにはいかない」
「いいよ。あたし、女の子でいるの諦める! その代わり、お兄ちゃんも男の子でいるの諦めてね?」
「ああ、約束するよ。もう俺は男に戻れなくてもいいんだ。ルリちゃんの代わりに女の子になって、女の子としての人生を送るよ。だって、ルリちゃんみたいな可愛い子に女の人生を譲ってもらうんだからな。女の子でいることから逃げられない」
 わずかに震える声で聡一郎は宣言した。
 自分たちはもう元の体には戻れまい。二度と元の体に戻れないのであれば、いっそ戻ることを諦めてしまった方が、これからの人生を有意義に過ごせるに違いない。それが聡一郎の出した結論だった。
 首から下が九歳の女児になった、十七歳の自分。聡一郎は奇妙奇天烈な今の自己を受け入れ、元の体に戻ることをルリと共に諦めるのだ。これまでの人生を否定しかねない発想で、胸の中の喪失感は言いようもないほど大きいが、晴れやかな気持ちも確かにあった。
「ルリちゃん、もう一度訊くよ。この可愛らしい女の子の体が完全に俺のものになるっていうのは、やっぱり嫌かな?」
「ううん、そんなことない。あたしはそのちっちゃい体が大好きだったけど、これからはお兄ちゃんに好きなように使ってほしいよ。自分の体とのお別れ会……うん、いいよ。お別れ会、やろう」
 ルリはあっさりと表現していいほど容易に現状を受け入れた。受け入れられないのは、むしろ姉のホタルの方だった。
「なによ、自分の体とのお別れ会って……二人とも、本当にそれでいいの? もう元に戻れないから諦めるなんて、そんなのおかしいよ」
「おかしくなんかない。元に戻れないならすっぱり諦めるしかないだろ」
「でも、まだ入れ替わって二ヶ月くらいじゃない。諦めるのが早すぎるよ。もうちょっと待って、元の体に戻る方法をいろいろ探してからでも……」
「じゃあホタルに訊くけど、諦めなければそのうち元に戻れるのか? 何年先に戻れるんだ? 来年か、再来年か、十年先か? あと何回病院に行って面倒くさい検査をすれば元に戻れるんだ?」
「そ、それはわからないけど……でも、いつかきっと……」
「ホタルが言うように、いつまでも希望を捨てずに諦めないのもいいかもしれない。でも、その間にこの小さな女の子の体はどんどん大人になっていくんだ。生理だって始まったし、胸もほんのちょっと膨らみはじめてる。将来はホタルよりスタイルのいい綺麗な体に成長するかもしれない。俺の首がついたままでな。そんなになっても元に戻れない現実を受け入れずに、毎日泣いてばかりいるってのはかなり辛いと思う」
 何度も自分に投げかけた疑問をホタルにぶつけ、聡一郎は自分が着ているピンクのパジャマの前を開いた。「ルリちゃん、服を脱いでもらっていいかな? 俺も裸になるから」
「うん、わかった」
 二人は寝間着を脱ぎ捨て、素裸になって向かい合った。本来の自分の体がすぐ目の前にあっても、二度とそれを所有することは叶わない。ならば、いっそ新しい体で新しい生活を始めるべきだった。これから何ヶ月、何年と経過してからも、お互いの体を指さしてその所有権を確かめあうのは不毛で、およそ意味のない行為だ。ここで未練を完全に断ち切ることがお互いの将来に資すると聡一郎は考えたのだ。
 カーペットの上に裸で腰を下ろしたルリの前に聡一郎が立つ。適度に筋肉がつき引き締まった四肢、広い肩幅、そしてだらりと垂れ下がった黒いペニスを見回し、少年だった幼女は感謝を示すために頭を下げた。
「俺の体……今まで世話になったな。俺は俺の体のままホタルと一緒になって、ずっと仲良くやっていくつもりだったけど、生憎そうはいかないみたいだ。もう俺は俺の体とはお別れだ。ルリちゃんが俺の代わりに俺の体を使いこなしてくれるから、これからは俺じゃなくてルリちゃんの力になってやってくれ。ホタルは俺のチンポが大好きだったけど、ルリちゃんのチンポになってもホタルを可愛がってやってくれよ」
 聡一郎の目に一筋の涙がこぼれた。理性では元の体に戻れないことがわかっていても、感性がそれを百パーセント受け入れるのはやはり難しい。それでも、自分を納得させなくてはならなかった。これからの生活を有意義なものにしていくために。
「じゃあ、さよならだ。俺の体……」
「あたしも、自分の体にバイバイするね」
 ホタルは聡一郎の前でしゃがみ込み、聡一郎の脳が支配する九歳の女児の肢体を隅々まで観察した。入れ替わってからのわずか二か月間でさえ、ルリの知らない変化が体に起きている。
「生まれてから今までずっと一緒だった、大切なあたしの体へ。あの日のあのとき何が起きたのか全然わからないけど、あたしのちっちゃな体はもうあたしのものじゃなくなっちゃいました。ソーイチお兄ちゃんの提案で、あたしの体の所有権? は、全部ソーイチお兄ちゃんにあげて、代わりにソーイチお兄ちゃんの男の子の体を貰うことになりました。今までありがとう、あたしの体。ソーイチお兄ちゃんはあたしよりずっとずっと物知りだから、これからあたしの体が大人になってもうまく使って大事にしてくれると思います。じゃあね、バイバイ、あたしの体」
 小さな聡一郎と大きなルリは顔を見合わせると、素裸でひしと抱き合い、自分のものだったかけがえのない体との別れを惜しんだ。固く抱擁を交わす恋人と妹の姿に、ホタルも涙を流した。
「どうして聡一郎とルリがこんな目に遭わないといけないの? 神様はどうしてこんな意地悪をするの? こんなの酷すぎるよ。私の知ってるいつもの二人を返してよ……」
「いいんだ、ホタル。俺もルリちゃんも、別にこの世からいなくなるわけじゃない。ただ人生をほんの少し方向転換してやり直すだけだ。ちゃんと頑張ったら、これから明るくて幸せな生活を送ることだってできるさ」
「そうだよ、お姉ちゃん。あたしもソーイチお兄ちゃんも、もう泣いたり落ち込んだりしないよ。だからお姉ちゃんも泣かないで」
 宣言は終わった。聡一郎は九歳の女児の体になることを受け入れ、ルリは十七歳の少年の身体を得ることを受諾した。これからは聡一郎が風呂あがりに鏡を見ながら自慰にふけっても、ルリが文句を言う権利はないのだ。反対に、ルリが同様のことをしても聡一郎にそれを咎めることはできない。お互いの肉体の所有権を相殺した小学生と高校生は、今後は元の体への未練を断ち、新しい身体で前向きに生きていかなくてはならなかった。
「じゃあ、俺もルリちゃんも完全に体の所有権を交換した証拠に、今からオナニーするよ。俺のものになったこの体でオナニーするところをルリちゃんに見ててほしい。それで、できたらルリちゃんにもオナニーするところを見せてほしい。それでもお互い納得できるようなら、元の体のことはすっぱり諦めよう」
「オナニー? うん、わかった! あたし、お兄ちゃんのオナニー見せてもらうね」
「よし。じゃあ、こっちを向いてくれ」
 聡一郎はベッドに腰かけると、ルリに目の前の床に座るよう指示し、開脚して股間をさらけ出した。素裸の九歳の女児の陰部にルリは食い入る。色の薄い小さな割れ目は今まではルリの大事な体の一部だったが、これからは聡一郎の所有物だ。
「よく見ててくれ……俺の子供マンコ、こういう風になってるんだ」
「うわあ……あたし、自分のアソコをこんな風に見たことないよ」
 肉づきの薄い大陰唇を左右に開き、小さな膣口をルリに見せつけた。綺麗なピンク色をした表面が透明の蜜を少しずつ分泌し始める。もはやこの幼い女性器が完全に聡一郎のものになったという宣言、そして自分のものになった陰唇をルリに披露していることが聡一郎を興奮させた。
「もう濡れてきちまった……ルリちゃん、自分が手放したロリータマンコを見物する気分はどうだい?」
「うん、まだおケケも生えてないし、穴も小さいし……本当にここにおチンポが入るの? あたしのおっきなおチンポ入れたら壊れちゃいそうだけど」
「大きさにもよるけど、ちゃんと入るよ。英二郎のやつのはそんなに大きくはなかったから。最初はきつくて痛かったけど、すぐにハメられるのに慣れちまったよ。でもルリちゃんのは大きすぎるからどうかなあ……?」
 聡一郎は勃起し始めたルリの陰茎に目をやり、生唾を飲み込んだ。十七歳の力強いペニスが聡一郎のヴァギナとごく近い距離にあった。入れ替わった男と女の性器が向かい合い、淫らな汁を垂れ流していた。
「もっとよく見せて! あたし、お兄ちゃんのおマンコをもっと見たい!」
 ルリは頬を紅に染め、聡一郎の秘所に釘付けだ。その大きな手が盛り上がった牡の象徴に添えられていた。本人の意思か無意識ゆえか、慣れた手つきで己のペニスをしごき始めるルリ。自らの膣口を指先でこね回す聡一郎に対抗するかのように、息を荒くしながら男らしいマスターベーションを開始した。
「ああっ、あっ。おチンポ、すごい……お兄ちゃんのおマンコ見ながらオナニー、すごいよう……」
「俺もだよ。ルリちゃんに見られながらマンコをかき回すの、最高だ。はは……」
 聡一郎は舌なめずりをし、ルリに見せつけるため熱心な自慰に励んだ。鼻の穴を膨らませて肉びらを擦る手つきが激しさを増していく。幼い体は未熟な性感帯への刺激を快楽に変える能力を備えつつあった。入れ替わった当初は無垢で汚れを知らなかった童女の肉体は、聡一郎と英二郎の二人により女として開発されつつあった。
 十七歳の少年の肉体を奪われ、代わりに九歳の幼女の肢体を手に入れた聡一郎。今や頭部以外の肉体の全てが小学三年生の女子児童に変わり果てた彼女は、元の自分の体の前でぬかった肉の道を押し広げ、興味津々のルリを誘惑した。
 細い指が肉壺をかき回すと、汗ばんだ繊細な肌が桜色に染まる。はちきれんばかりに膨張した目の前のペニスを物欲しそうに眺めながら、聡一郎は大胆にルリに自慰を見せつけ、新しい身体の所有権をアピールした。この好色な女児の体を返すつもりのない聡一郎にとって、自分を指で慰めることはもはや罪深い行為ではなかった。見られていることに対する興奮、そして秘所をもてあそぶことで得られるエクスタシーが、聡一郎の心身を熱くしていた。
「ああっ、ルリちゃん、すごい。俺の体がどんどん気持ちよくなって……イク、イクっ」
「あたしもイっちゃう。お兄ちゃんのオナニー見てたらもう我慢できないの」
 手足を痙攣させて絶頂にのぼりつめる聡一郎を、羨ましそうにルリが見つめた。もしも体が入れ替わっていなければ、本来ルリがこの幼い女体を保有し、大人の女性に至る階段を一段ずつのぼっていったはずだった。それが全て台無しになり、ルリは初花を知ることもなく男の体になってしまった。自分が賞味するはずだった女の喜びを前にして、嫉妬の感情が湧き上がっても不思議ではない。
 だが、ルリが一瞬見せた羨望の視線は、すぐに血走った牡の眼差しにとって代わられた。幹を握った硬く大きな手を前後させ、親指の腹でえらの張った亀頭を力強くしごき上げるリズミカルな動きは、初潮を迎えもしなかった童女とは思えない堂に入ったものだ。姉のホタルに教えられたマスターベーションを聡一郎に披露し、オルガスムスに喘ぐ彼女に男の終点を見せつける。
「お兄ちゃん、あたしもイクよ。あたしの熱いの、お兄ちゃんにぶっかけるからね」
「ああ、頼む。俺の体にかけてくれっ」
「ああっ、すごいの。イク、あたしイクっ」
 可愛らしい声で鳴き、ルリは尿道口から灼熱の樹液を解き放った。聡一郎のものだったスペルマが、ルリのものだったきめ細やかな肌に撒き散らされる。幼いフェロモンを放つ体に牡の臭いを浴びせかけ、ルリは一度は手放した体の所有権を再び取り戻そうとする。自分の体として所有するのではなく、自分の女として支配しようというのだ。
「ああ、すげえ……ルリちゃんのザーメン、熱いよ……こんなにぶっかけられたら、俺、妊娠する……」
 この牝の体はお前のものだとルリに力強く宣告され、聡一郎は狂喜した。下腹の疼きが体全体に広がり、心地よい幸せが理性や現実感を遠くへ追いやってしまう。早く女として犯されたいと思った。聡一郎はとろけた顔でへたり込み、同じような表情のルリと笑いあった。
「はあ、はあ……ああ、すげえよ。たくましいルリちゃんのチンポを見ながらオナニーするの、たまんねえよ……」
「あたしもすごいの。お兄ちゃんのちっちゃなおマンコにズボズボしたいって思いながらシコシコするの、とっても気持ちいいんだもん……」
 男と女は視線を合わせ、同じタイミングでうなずきあう。これから何をするかは明白だった。
「俺、ルリちゃんとしたい……セックスしたい。俺のスケベなロリマンコにルリちゃんのぶっといチンポをハメてほしい」
「あたし、シャセーしてもおチンポが収まらないの。あたしも早くお兄ちゃんのおマンコにハメたい。お兄ちゃんをあたしのおチンポでわんわん泣くくらい犯して、あたしのお嫁さんにしてあげたい」
「じゃあ、しようか」
「うん、しよう」
 首が挿げ替わった二人はベッドの上で抱き合い、互いの唇を重ねた。聡一郎が舌を入れてルリの口内を舐め回すと、ルリも負けじと、情熱的な動きで舌を絡めてくる。八歳差の少年少女は飢えた獣のような必死さで相手を貪ると、名残惜しく口を離して下腹部に視線を下ろした。
 ルリの大きな体と密着し、聡一郎の小さな心臓は破裂しそうだった。今までになく気分が高揚していた。
 ホタルの彼氏と、ホタルの妹。ひと月前までまったく恋愛感情のなかった二人が、これから初めての性交に至るのだ。それも、お互いの大事な肉体を永遠に交換したうえで。
「こんなのイヤだあ。私の聡一郎が、ルリの彼女になっちゃうなんて。こんなのってないよ……二人とも、ホントにエッチでスケベで最低最悪のやつらなんだから。あっ、ああんっ」
 二人の後ろで、半裸になったホタルがかん高い声をあげた。二人を見守っていた女子高生は、それぞれのマスターベーションを見て自分を抑えることができないようで、半裸になって壁にもたれ、ひとりで自分を慰めていた。
 今こそ結合のときだった。仰向けに寝転がった聡一郎の腿を持ち上げ、ルリが狙いを定めた。長大なペニスは児童の体には明らかに大きすぎる。挿入すればへその上まで届いてしまいそうな若い生殖器が、聡一郎の小さな割れ目に接吻を果たした。それだけでか弱い童女の身体は震えあがり、ルリを喜ばせるのだった。
「いくよ、お兄ちゃん。あたし、もう我慢できないの。お兄ちゃんの狭くてきつそうなおマンコに、あたしのぶっといおチンポ、ホントに入れちゃうよ」
「ああ、きてくれ。狭くて小さな俺の中に……ああっ、うぐっ」
 念願の挿入の感覚に、聡一郎は舌を出して苦しんだ。児童の膣には大きすぎる一物だった。英二郎のものとは比較にならない巨大な肉の塊が、聡一郎の肉壺を埋め尽くした。
 少年だった幼女の顔が桜色の苦悶に染まった。ようやく息を吐き出した途端、ズン、ズンという力強い抜き差しに襲われ、再び呼吸困難に苦しめられる。聡一郎は手足を折り曲げ、全身でルリという男を受け入れようとした。
「うぐ、太い……うっ、ううっ。でも、悪くねえ」
「すごい。お兄ちゃんのおマンコ、キツキツでとっても気持ちいいの。あたしのおチンポをギュウギュウに締めつけてくる。ああ、たまんないよう」
 ルリは恍惚の表情で、かつて自分が所有していた膣を前後した。自分の半分以下の体重しかない聡一郎の細い腰をつかみ、鼻息荒く彼女を蹂躙する。牝を征服する男の面構えだった。あの突然の性転換からわずかふた月で、ルリは立派な男子になっていた。
「ああ、激しい……ルリちゃん頼む、もっと優しく……おおっ、うおおっ」
「そんなの無理だよ。お兄ちゃんの中、気持ちよすぎておチンポ止まらないよう」
 聡一郎は歯を食いしばり、未成熟な媚肉での奉仕を続けた。焼けついた膣の粘膜が、雄々しい肉槍を食いちぎらんばかりに締めつけた。
 かつて聡一郎がホタルと愛しあっていたときは、これほどまでに激しい力任せの交わりは一度もしなかった。それが、今は女として犯される側に立っている。獰猛な獣と化したルリに躾けられる背徳感は、互いの肉体が入れ替わっていなければ味わえない。
「ああっ、こんなにすごいの初めてだ……んっ、んんっ。んああっ」
「お兄ちゃん、好きだよ、お兄ちゃんっ」
 欲情したルリの可愛らしい唇が聡一郎に押しつけられた。今や恋人同士となった男女は再び睦まじいキスを交わした。温かい唾液を注ぎ込まれ、聡一郎は音を立ててルリの一部を嚥下した。ルリのものだった体にルリの体液が染み込み、色めいた幼女の体をますます熱くさせる。ホタルの男だった聡一郎は、体の上下をルリに侵食され、身も心もルリのものになりつつあった。
 聡一郎が小学生のときこの世に生を受けた、ホタルの小さな小さな妹。ホタルとよく似た顔立ちの、天真爛漫で愛くるしい八つ下の美少女。ホタルと共に温かく見守っていた女の子が、今は聡一郎の体の九割以上を奪い、聡一郎とつがいになろうとしていた。壁を背にして自分を慰めるホタルの目の前で、聡一郎はルリの求愛を受け入れ、九歳の屈強な男の情人になった。
 ねじれた男女の関係が、もはや元に戻ることはない。聡一郎は二度と男の体には戻れず、ルリもまた女になることを諦めた。それぞれの首を挿げ替えられたホタルの彼氏と妹は、自分たちの身に降りかかった災難を受け入れ、性別の逆転したカップルになることを承諾したのだった。
「も、もうダメだ。これ以上やられたら……ああっ、あひっ」
 この二週間、幾度となく繰り返した女の一瞬が聡一郎に訪れた。目の前に幻の桃色の花が咲き乱れ、現実ではない官能の世界へ自分が連れ去られていくのを自覚した。とても快い魅惑の浮遊感だ。
「イクっ、イク。俺、チンポハメられて……おおっ、うおおおっ」
「ううっ、締まる……あたしもダメなの。お兄ちゃん、イクよっ」
 完全にその所有権がルリに渡った肉棒が聡一郎の最も深いところを貫き、女を孕ませる熱いマグマを噴き出した。十七歳の少年の体がそり返り、九歳の童女に思いのまま種つける。先ほど自慰で放ったときとは比べものにならない大量の樹液が聡一郎の膣内に隅々まで染み込んだ。
「ああっ、出る……まだ出る。あたしのおチンポ、止まらないよう」
「あああ……出てる。俺の腹が燃えるう……たまんねえ……」
 ルリが発する情けない声を聞きながら、聡一郎は夢と現実の狭間でこれ以上なく満足していた。犯すルリと犯される聡一郎。互いの両親や級友たちが見たら卒倒してしまいそうな罪深い結合は、聡一郎の心の根元に二度と消えない淫らな印を刻みつけたのだった。
「そ、聡一郎……ルリ……」
 絶頂に至った二人を、ホタルが上気した顔で見つめていた。もはや修正の叶わぬ妹と恋人の人生の変化を前に、ポニーテールの女子高生はただ指で自分を慰めることしかできない。ホタルの顔に現れる切なさと無念さが、聡一郎の興奮をいっそう煽った。
 ずぶりと音を立てて、聡一郎の肉壺からルリのペニスが引き抜かれた。小さな女陰にぽっかり開いた穴から、白濁した粘液が漏れ出てくる。昼間は英二郎の精を受け止めた幼い膣が、今はルリのスペルマを溢れるほどに注ぎ込まれていた。
 生理周期から考えて、妊娠の可能性は決して低くない。半年も経てば、聡一郎は初等部の女児の制服を着た小さな妊婦として高校に通うことになるかもしれない。英二郎の子を孕むのは嫌だが、ルリの……元の自分の子供であれば、産んでもいいと心の隅で考えてしまうのが恐ろしい。
「ふう……ソーイチお兄ちゃん、とっても気持ちよかったよ。おチンポからすっごくたくさん出たの」
「ああ、俺も最高だったよ……この体には大きすぎると思ったけど、やってみるとすごく気持ちいいんだ。こんなの、もうやめられないよ」
「お兄ちゃん、大好き。あたしのお嫁さんになって、あたしの赤ちゃん産んでほしい」
「ああ、産むよ。俺、ルリちゃんがお嫁さんにしてくれるのを待ってるからな」
「そ、そんなの駄目よう……聡一郎は私のものなんだから」
 裸で抱き合う二人に涙声で話しかけたのはホタルだった。聡一郎とルリのセックスを見ながら自慰をして何回か絶頂に至ったようで、涙とよだれで汚れた真っ赤な顔で聡一郎をにらみつけていた。
「聡一郎……あんた、それでいいの? あんた小さいとき、大人になったら私をお嫁さんにしてくれるって言ったじゃない。私、あんたのこと信じてたんだよ。もしもあの約束を破ってルリとくっついたら、私、あんたのことを一生許さないから」
「大丈夫だ。ちゃんとホタルに対する責任はとるよ」
 筋肉のついたルリの腕に抱かれながら、聡一郎はかつての恋人を慰めた。下腹部を中心に顔や手足の先に至るまで絶頂の余韻が残り、心地よい痺れと火照りが聡一郎の呼吸を弾ませる。女の体に適応しつつある聡一郎は、この事後の余熱が好きになっていた。
「俺はホタルと別れるつもりはないし、たとえ元の体に戻れなくても約束は守る。俺はホタルのことが今も大好きで、将来は俺のお嫁さんになってもらうつもりだ。大人になったら一緒になろう、ホタル」
「ううっ、うえええ……そんなの嘘よ。あんた、今、ルリのお嫁さんになるって言ったじゃない。嘘つき……聡一郎なんて嫌いだあ……」
 聡一郎とルリの愛しあう姿を長々と見せられたホタルは、すっかり聡一郎への信頼をなくしているようだった。ホタルの立場からすると当然のことではある。
「私のことを好きだ好きだって言うけど、どうせ本音じゃルリとくっつきたいんでしょ? それに、元に戻れなかったら私たち、女同士のカップルになっちゃうじゃない。最近は女同士でも結婚できる、できないで揉めてるっていうけど、私は元通りの男のあんたと付き合いたいよ。それとも、性転換手術でも受ける?」
 ホタルの疑問に、聡一郎は唸った。「うーん、そこまでは考えてなかったけど……でも、ホタルへの責任はきちんと果たすつもりだ。俺が大人になったら結婚してほしい。女同士だって別にいいじゃないか。お互いが納得さえしてたらさ」
「そんなの駄目だよ……私、あんたの心も体も大好きだもの。女同士で結婚してもいいかもしれないけど、やっぱりあんたの男の体がないと寂しいよ。ルリとエッチしたのだって、あんたの体だったからだし……女同士でくっついちゃったら、あんたの子供だって産んでやれなくなる……」
「じゃあ、ホタル。俺と一緒にルリちゃんの子供を産もう。それで何もかも解決するからさ」
「え、あたし?」
 首をかしげるルリに、聡一郎は可愛らしい手で握り拳を作ってみせた。
「俺がルリちゃんの彼女になって、ホタルが俺の彼女になる。そうすれば子供だって産めるし、三人でいつまでも仲良くやっていけるじゃないか。ホタルだって、ルリちゃんとセックスするのは嫌じゃないんだろ?」
「え……な、何を言ってるのよ、そんなの……」
「俺はホタルの恋人で、ホタルの妹にもなる。ルリちゃんもホタルの恋人でホタルの妹だ。どっちもそれでいいじゃないか。はた目には世界一変なカップルかもしれないけど、体が入れ替わるなんて世界中探しても俺たちだけだもんな。元に戻れないのは仕方ないから、せめて俺たちは俺たちなりに幸せになりたいって思うんだ」
「聡一郎……あんた、なんてことを考えるのよう。この馬鹿ぁ……」
 ホタルは再び泣いたが、聡一郎の提案を拒絶することはなかった。聡一郎のこともルリのことも大事に想っているホタルが、二人を捨てて独りになる道を選ぶはずもない。
 聡一郎とルリは泣きじゃくるホタルをベッドに引きずり込み、今度は三人でのセックスに没頭した。無尽蔵と言っていい精力を誇るルリは、同じ遺伝子を共有する聡一郎とホタルの中にかわるがわる挿入して、女たちの味比べを楽しんだ。
 首から下が九歳の女児になった聡一郎。
 首から下が十七歳の男子になったルリ。
 そして、二人のことが大好きな十七歳の女子高生、ホタル。
 元の体に戻ること、戻すことを諦めた三人は永遠の愛を誓い、狭い二段ベッドの中で夜通しお互いの体を貪りあったのだった。

 ◇ ◇ ◇ 

 水泳部の練習を終え、ホタルが更衣室から出てくると、そこにルリの姿があった。ルリはホタルを見つけ、小走りに近づいてくる。
「ひょっとして待っててくれたの?」ホタルは訊ねた。
「いや、委員会で遅くなったから。俺も今来たところだよ」
 ルリは笑ってホタルを見上げた。黒い髪をボブカットにし、初等部の女児の制服を身に着けた女子高生を、赤い夕陽が照らしていた。その顔は幼い童女のものではなく凛々しい少年のものだったが、とうに見慣れてしまったホタルはいささかの違和感も抱かない。
「ホタル、ルリちゃんに迎えに来てもらったの? いつも仲が良くて妬けちゃうわね」
 同じ水泳部の仲間が軽口を叩くと、ホタルとルリに手を振って帰っていく。ホタルは紅葉のようなルリの手を強く握りしめた。
「今日はハードで疲れたわ。じゃあ帰ろっか」
「うん、一緒に帰ろう」
 恋人同士の仲でもある姉妹は手を繋いで歩く。
 首から上は十八歳、首から下は十歳。かつて聡一郎と呼ばれていた奇妙な外見の少女は、現在ではルリと名前を変え、ホタルの家族として一つ屋根の下で生活していた。
 一年前、ルリがまだ聡一郎だった頃、十七歳の聡一郎は首から下の体だけが九歳の女児のルリと入れ替わってしまった。原因はいまだにわからず、元に戻るすべはない。仕方なく聡一郎は男だった自分を捨て去り、女子小学生の体を有する高校生として人生を切り替えることにしたのだった。
 聡一郎の恋人だったホタルにとって、ルリになった聡一郎の選択は受け入れがたいものだった。幼い頃から付き合いのあるホタルと聡一郎は、将来を誓い合った間柄だった。当然、大人になって独り立ちすれば夫婦となり、幸せな人生を送ることを予定していたのだ。
 それから一年。ホタルは入れ替わった二人と共に生活し、特に不満のない暮らしを送っている。聡一郎は名前を変えて女になったが、男のときと変わらず自分に寄り添ってくれている。今までもこれからも同じだった。ルリになった聡一郎のことがホタルは好きで、彼女もホタルを愛している。自分たちの関係についてはそれでいいのだと、今では結論づけていた。
「ホタル、ちょっと待って。こっちに……」
 ホタルと固く手を繋いで廊下を歩いていたルリが、校舎の玄関にある下駄箱の手前で立ち止まった。小さな指で女子トイレを指し示す。
 ホタルはルリの意図を察して不敵に笑った。ルリは便所で排泄がしたくなったのではない。近頃、よく二人でしている遊びに誘っているのだ。
「また? あんたも好きね」
「お前だって好きだろ? あらかじめ準備しておくと、後で絶対良くなるんだよ。あいつも喜ぶし」
「はいはい、わかったわ。エッチな彼氏を持つとお互い苦労するわね」
 ルリの提案を承諾したホタルは、小柄な幼女を女子トイレの個室に連れ込んだ。もう部活動の生徒たちもほとんど下校してしまっていて、廊下には人影ひとつない。手早く済ませ、校門が閉まる前に外に出る必要があった。
 ルリが肩にかけていた鞄の中から、黒い袋に入った器具を取り出した。原色のけばけばしいピンク色に塗装されたシリコンの塊が二つ。大きい方はホタル用で、小さい方はルリが使用するものだ。
「ルリ、こっちにお尻を向けて」
「わかった。じゃあ、頼むぜ」
 女児はうなずき、壁に手をついて小児用のプリーツスカートを自らめくり上げた。十歳の幼い体にはやや似つかわしくないレースの入った桃色のショーツは、ブラジャーとお揃いのセクシーなデザインだった。アニメのキャラクターがプリントされた子供向けの下着はしばらく前に卒業し、現在のルリはやや色っぽい下着を身に着けるようになっていた。
 ホタルはルリのショーツを下ろし、未熟な割れ目に口づけた。たまらずかすかな声をあげるルリを責めたてるように、汗で蒸れた秘所にぴちゃぴちゃと舌を這わせる。いやらしい娘の秘唇はたちまちよだれを垂らし、トイレの床に雫を落とした。
「ああっ、あっ、ダメだって。焦らさないで早く入れて……」
「ふふ、そうね。ホントはもっとペロペロしてあげたいけど、急がないと校門が閉められちゃうものね。お楽しみはあとにとっておこうかな」
 ホタルは残念そうに言い、先ほど取り出したピンク色の器具を手に取った。やや細長い数センチ大の卵状のシリコンは、女性の陰部に挿入するための器具だ。リモコンバイブと呼ばれる淫らな道具をルリの秘所にあてがうと、既に濡れそぼった下の口はバイブを旨そうに飲み込んでいった。
「ああっ、は、入ってきた。くうう、たまらねえ……」
 腰を揺さぶり、バイブに犯される喜びを体で表現するルリ。「よ、よし、交代だ。今度は俺がホタルに入れるからな」
「いいわよ。ああ、私もこんなものを入れられて喜んじゃうなんて……変態だわ」
 体勢を入れ替え、ホタルの膣内にリモコンバイブを差し込むルリ。十八歳の姉と十歳の妹の二つの女体が、サイズの異なる同型の淫具を秘所にくわえ込んでいた。
 教師にでも見つかれば停学処分は免れない不心得な女子高生たちは、いそいそと服装を整えて外に出た。細かな振動を放ちつつ体内の奥へ奥へと潜り込んでくるシリコンの感触を楽しみつつ、ホタル達は道行く教師や友人たちに何食わぬ顔で挨拶し、仲良く下校の途についた。
「それじゃ、始めるわよ。じゃんけんぽん!」
「ああ、俺の負けか……幸先悪いな」
 二人の女子高生は駅までの道のりを、石拳の遊びで勝負しながら歩いた。一定の距離ごとに勝敗を決定し、勝った側は負けた方のバイブのリモコンを好きに操作できるルールだった。多種多様な動きが可能なバイブは、受験生になったホタルやルリにとって大事なストレス発散の手段だ。
「じゃあ、さっそく始めるわよ。えいっ」
「ああっ、あひっ。俺の中で動いてる……ひいっ、ひいいっ」
「ほらほら、もっとしっかり歩かないとバレちゃうわよ。もう遅い時間だけど、周りには顔見知りの同級生や後輩たちも歩いてるんだからね。ただでさえあんたは有名人なんだから、気をつけないと」
 内股になって太ももを震わせるルリに、ホタルはリモコンを操作して淫らな責めを与えた。数百メートル進むまでは、ルリはホタルの玩具だった。恥ずかしそうに真っ赤になって喘ぐルリと、そんな彼女を数メートル先から呼び続けるホタル。そんな二人を、道路を挟んだ反対側を歩く女生徒のグループが不審げな顔つきで眺めていた。
「ひいっ、ひっ、もうダメ……俺、もうイクよ。イっちまうよ」
「ふふふ……ルリったら、こんなところでイっちゃうの? ほら、あそこにいる女の子たちがあんたのことを見てるわよ。ひょっとしたらもう全部バレてて、『小学生の女の子のくせにバイブでイクなんて信じられない』って呆れてるかもしれないわ」
「やああっ、そんな意地悪言わないで……おおっ、イクっ、イクっ」
 とうとう耐えきれなくなったのか、唇の端からよだれを垂らしてだらしなくアスファルトの上に座り込んでしまうルリ。辛うじて失禁はしていないようだが、足が震えてこれ以上歩くことは難しそうだ。
 ホタルは彼女の肩かけ鞄を貰いうけると、二人分の鞄を肩にかけ、小さなルリを背負い上げた。少しずつ成長しつつあるルリの体重は、現在、二十数キログラムといったところか。部活動で疲労した体を叱咤し、ルリをおんぶして先を急いだ。
「す、すまねえ、ホタル……でも、もういいぞ。バイブのスイッチを切って下ろしてくれたら歩けるから……あっ、ああっ。なんでまた入れるんだっ !?」
「しょうがないから、入れたままで歩くのはなしにしてあげるわ。私がおぶるからあんたは歩かなくていいけど、そのかわり家に着くまでバイブのスイッチは入れっぱなしだからね。せいぜい可愛い声で泣きなさい」
「そ、そんな……ああっ、ダメだっ、許してっ。ひいいっ」
 いつまでも終わらないリモコンバイブの責めに、ルリはホタルの背中で甘い声をあげ続けた。
 これはペナルティだった。決められた距離を歩けなかったお仕置きとして、ルリは家に帰るまで淫らな器具の刺激に耐え続けなくてはならないのだ。
「さあ、急がないとね。家で私たちのご主人様が首を長くして待ってるわ」
 背中の嬌声を楽しみつつ、ホタルは数十キロの荷物をかついで歩きつづける。すれ違う通行人から奇異の視線を投げかけられても気にならないが、彼らから注目を集めていることをルリに告げ、その羞恥の反応をうかがうことは決して忘れない。愛くるしい妹となったかつての恋人の重みとぬくもりを感じながら、ホタルはようやく駅に到着した。

 両親が法事で留守にしている家には、聡一郎ひとりだけだった。二人の姉が帰ってきたのは、聡一郎が毎週観ている子供向けアニメが終わる頃だった。
「お帰り! ホタルお姉ちゃん、ルリお姉ちゃん!」
 私服に着替えた聡一郎がドアを開けると、放心した様子で玄関にへたり込んだ女児と、その靴を脱がせてやっている女子高生の姿があった。
「どうしたの? ルリお姉ちゃん、具合悪いの?」
「ううん、違うの。帰りにエッチなオモチャを使ってたら、ちょっと気をやっちゃって……ほら、ルリ、家に着いたわよ」
「ううん……あ、あれ? 俺たち、帰ってきたのか……」
「まったく、あれくらいでだらしないわね。ついさっきも私の背中でいきなり『うおおー』って言って悶えるから、周りに人がいないかってヒヤヒヤしたわよ。私はバイブが動いても、そうそうイったりしないのに」
 ホタルは不敵な笑みを浮かべて、持ち歩いているバイブレーターのリモコンを操作した。かすかな振動の音がホタルの股間から聞こえてきたが、少し顔が赤くなったこと以外の変化はないようだった。どうやら、二人して陰部にバイブレーターを入れた状態で帰ってきたらしい。
「二人とも、エッチなオモチャで遊んできたの?」
「ふふ、そうよ。家で聡一郎が首を長くして待ってると思って、二人でアソコを濡らしながら帰ってきたの。おかげで、もう準備はできてるわ」
 ホタルは制服のプリーツスカートをまくり上げ、大胆な黒い下着の中から蜜に濡れたリモコンバイブを取り出した。濃密な牝の臭いを放つ粘液がひと筋こぼれ落ち、玄関の床に丸い染みをつくった。
「今日はお母さんたちが遅くなるし、たっぷりしたいでしょ、聡一郎?」
「うん、するする! お姉ちゃんたちに早くおチンポハメたい!」
 鼻の穴を膨らませた聡一郎がズボンを下ろすと、雄々しくそそり立った一物が現れ、二人の女にその威容を見せつけた。表面に血管の浮き出た見事なペニスは、男の体のパーツでホタルとルリが何よりも好きなものだった。
「まだボーっとしてるけど、ルリもしっかり濡れてるわよ。さあ、今日はどっちからしたい?」
 ホタルは初等部女子のスカートを持ち上げ、染みの浮き出たルリの下着を聡一郎に観賞させた。レースの入ったピンクのショーツの向こう側から、十歳の幼い陰唇が淫猥な器具を頬張る音が聞こえた。
「えへへ、どうしようかな? ホタルお姉ちゃんにもルリお姉ちゃんにもハメたいけど……とりあえず抜いちゃうね、コレ」
「ああ、まだ頭がぼーっとして……おふっ !?」
 潤んだ膣からリモコンバイブを乱暴に引き抜かれ、ルリは舌を出して喘いだ。その可愛らしい反応に、聡一郎はルリから犯してやることを決めた。
 軽く体を痙攣させる彼女をやすやすと持ち上げ、聡一郎は背後からルリの両腿を抱え上げる姿勢でペニスを力強く挿入した。ルリの喘ぎ声が即座に悲鳴に変わった。
「ああああっ。いきなりこんなの、ダメだってばあ……」
「そう? ルリお姉ちゃんのちっちゃなおマンコはダメだなんて言ってないよ。あたしのおチンポハメられてとっても嬉しそう。ほら、ほら」
 聡一郎は可憐な唇でルリの耳たぶをくわえ、女児のきゃしゃな体を揺さぶった。子宮口を圧迫する亀頭が膣内を暴れまわり、童女の肉体を苦しめる。帰り道にリモコンバイブで入念にほぐした肉壺は、次から次へと蜜を垂らして聡一郎のペニスを賞味した。
「ダ、ダメだって。ああっ、こんなにされたら……ああっ、あああっ、イクっ」
「ふふ、ルリったらもうイっちゃったの? しょうがないか……今日は帰りにたっぷり遊んだものね。ほら、あーんして」
 白目を剥いて気をやるルリにホタルが口づけ、半開きになった唇の隙間に赤い舌を差し入れる。幼い頃に婚約した二人の女は聡一郎の目の前で情熱的な接吻を繰り広げ、いっそうのペニスの硬化に貢献した。
「んん……ん、ホ、ホタルぅ……ううっ、うああ、もうダメ、またイク。ひいい、イクの止まんねえっ」
「んっ、んっ、ルリぃっ。たくさんイキなさい。ほら、ほら」
「ああっ、締まる。ちっちゃなおマンコがキューって締まって、とってもキツいよう。えへ、えへへ」
 もとは姉妹だった男女は、間に挟まった幼い女子高生の全身を愛撫し、休むことなく責めたてた。とうとうルリは涙を流して失禁し、玄関の床に倒れ込んでしまった。
「えへへ……ルリお姉ちゃん、気持ちよくなって寝ちゃったね」
「そうね、聡一郎。ふふ、今度は私を気持ちよくしてもらおうかしら……まだできるわね?」
「うん! ホタルお姉ちゃん、だーい好き!」
 と、ルリだった聡一郎は後ろからホタルの大きな尻をわしづかみにして、濡れそぼった姉の中に突き入れた。期待の蜜を垂らした肉ひだは最愛の男のものをくわえ込むと、大喜びで締めつけた。
 お互いが初めての相手となり、何年も合体を繰り返した男女の生殖器だ。最高の相性を誇るペニスで膣内をえぐられ、よがり声も我慢せず腰を振るホタルは、精神の幼い聡一郎にとって素晴らしい玩具だった。丸みを帯びた大きな尻を平手で叩き、甘い悲鳴をあげたところを一気に奥までねじ込んだ。
「いやあっ、お尻叩かないでえ。変になっちゃう」
「変になっていいよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんの変なところ、もっともっとあたしに見せてよ。あたしはお姉ちゃんの彼氏でしょ?」
 と、聡一郎。ルリやホタルを力任せに犯し、誰が主なのかを体で理解させるのが彼は好きだった。一年前まで小学三年生の平凡な女児だった少年は、おさげの髪を短く切り、今では線の細い少年のような風貌になっている。男としての自覚も少しずつ芽生え、こうしてホタルやルリと愛しあうのが日課だ。
「あっ、ああっ、聡一郎……すごい、こんなの我慢できないっ」
 尻を真っ赤に腫らしたホタルは、マゾヒストの笑みを浮かべて聡一郎を喜ばせた。どんな我がままでも聞いてくれた優しい姉は、今やどんな我がままでも聞いてくれる淫らな恋人である。聡一郎が衝動的に女を犯したくなったり叩きたくなったりすると、すぐに体を差し出してくれる。
「お姉ちゃん、大好き。そろそろ出すからね」
 二人の女を連続して犯し、射精の欲求が高まっていた。聡一郎はホタルの背中にのしかかり、獣の交尾のような体勢で子宮口にペニスの先端を押しつけた。ほどよくほぐれた子宮の入口が少年の生殖器を大喜びで受け入れ、こりこりした心地よい感触をもたらす。
「ああっ、奥まで……お願い、出して。いっぱいちょうだい!」
「うん、出すよ。出る、出る、ううっ、いっぱい出るっ」
 聡一郎の腰が小刻みに震え、ホタルに心ゆくまで種つけた。熱い樹液を注ぎ込まれたホタルがあられもない声をあげて歓喜する姿に、彼はこの上ない満足感を覚えた。今まで小さな幼い妹としてホタルに守ってもらっていた自分が、今ではたくましい異性としてホタルを躾け、支配しているのだ。
 腰を抜かしたホタルが意識も朧げなルリを抱いて許しを乞うても、三人の浅ましい宴は終わらない。聡一郎は冷たい床にルリとホタルの体を横たえ、いつもそうしているように姉妹の体を交互に貪ろうとした。
「えへへ……二人とも、だーい好き。あたしたちが大人になっても、ずっとずっとこうしていようね」
 と笑って、聡一郎が再びホタルの体に覆いかぶさったときだった。

 異変が起こった。
 三人が肌を重ねる家の中に、奇妙なひずみが発生したのだ。
 瞬時にして空間が歪み、引きつれ、そして裂けた。
 その空間の裂け目は薄紙のように人間の体を引き裂き、ほんの数百分の一秒だけ殺し……そして、本人も気づかぬ内に再び蘇らせた。
 あの日と同じく異常なエネルギーが引き起こした、異常な空間の異常な反応だった。
 聡一郎も、ルリも、ホタルも、その現象そのものを認識することは決してなかった。
 異変から数秒が経過して、体の首から下だけがそっくりそのまま入れ替わったことにようやく気づき、驚き、そして慌てるのだった。


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