憎んで嫌って君と僕 3


「私の記憶をどこまで見たの?」
 朝の尋問の再開だった。令良は急に息が苦しくなって動悸がした。全身から汗が噴き出した。
「な、何の話だよ。僕は何も知らないよ……」
「嘘ね」
 月彦は即座に見破った。「私はあなたの記憶を見たわ。見たっていうか、思い出したっていうか……入れ替わったままでいると、多分、体が覚えてることを自由に思い出せるようになるのね。どんな親のもとに生まれて、どんな育ち方をして、どこで誰と過ごしたか……。体が入れ替わってからたった一日しかたってないのに、私はあなたのことをほとんど何でも思い出せるようになったわ」
 月彦の声は硬い。彼も令良と同様に緊張しているようで、汗ばんでいるのが見てとれた。
「僕の記憶を思い出したって……そんなことができるわけないだろ。僕の記憶はここにある。たとえ体が入れ替わっても、僕は何も忘れやしないさ。君だって……」
「そして、おそらく記憶を見れるのはあなたも同じ。あなたは私の頭の中から記憶を自由に引き出して、今日一日、私になりすました。朝、お弁当を作ってくれたときも、学校で先生にあてられたときも、アルバイト先で知らないはずの人たちと一緒に働いたときも……あなたは私の記憶を勝手に思い出して、怪しまれずに私のふりをしたに違いないわ。今朝は時間がなくて追及しなかったけど」
「そんなことしてないよ」
「お願いだからとぼけないで」
 月彦は食い下がった。「私にはそれができるし、あなたにだってできるはずよ。今日ずっとあなたを観察してたけど、そうじゃなかったら説明のつかないことばかりだったわ。あなただってもう誤魔化しきれないって思ってるでしょ? 正直に話してよ。話しなさいよ」
(何だか、まるで浮気がバレて彼女に怒られてる彼氏みたいだな。誤魔化すのはもう無理か……)
 泣きそうな顔の月彦に両肩をつかまれ、令良はとうとう観念した。「嘘をついて悪かったよ」と謝罪し、自分が令良の記憶を自在に引き出せることを白状した。
「昨日の晩、君が僕の家に帰ったあとからかな。君の記憶が思い出せるようになったんだ。着替えの場所、毎日ちゃんと洗濯してること、学校にお弁当を作って持っていってること……君が普段どうやって生活してるのか思い出したおかげで、夕べはまったく不自由しなかったよ。学校でも、バイト先でもそうだった」
「やっぱりあなたもそうだったのね。おかげでお互いになりすますのは不自由しないけれど……」
「でも、君の記憶が勝手に見えちゃうのは怖いな。自分の記憶なのかどうかもあやふやになる」
「そうね。自分が自分じゃなくなってしまいそうで怖いわ」
「僕はもう、自分が半分くらい令良になってるんじゃないかって思ってるよ。僕の心と私の記憶と……このまま元に戻らずにいたら、もっといろいろ混ざっちゃいそうだ」
「それで、あなたは私の記憶をどこまで見たの? 絶対にそれだけじゃないでしょ。たとえば子供の頃のこととか……」
 月彦の瞳には恐怖の色が見てとれた。
 いまや思い出すのも苦痛となった、幼い日の令良の記憶。
 それは絶対にひとには知られたくない秘密だろう。そんな重大な秘密を、自分は無礼にも盗み見てしまったのだ。
 だが、もはやこれ以上隠し通すことはできまい。令良の中の月彦は嘆息し、夕べ見た夢について語った。
「全部見たよ。小さい頃の君がお父さんにいつも殴られてたことも、体じゅう傷だらけになって雨の日に外に放り出されたことも、君が役所の人に嘘をついてお父さんをかばったことも、君のお母さんがお父さんを殺して自殺したかもしれないってことも、それが原因で小学校、中学校とずっといじめられてたことも……全部だ、全部。僕は君の全てを見た。見てしまったんだ」
「最悪! どうしてそんなひどいことするの !? 誰にも知られたくなかったのに!」
 月彦は涙を流し、悔しそうに壁を殴った。何度も何度も殴りつけ、手の皮が剥けて血が出るほどだった。
 予想以上に激しい反応だったが、心的外傷をえぐられたのだから当然のことかもしれない。令良は青ざめ、激怒する少年を恐ろしがった。
「悪かったよ……でも、勝手に見えるんだから仕方ないだろ。君だって僕の記憶を見たならおあいこじゃないか」
 令良は詫びたが、月彦をなだめるどころか逆効果だった。
「何よその言い草は !? おあいこですって !? これまでずっとぬるま湯に浸かってきたあなたの記憶なんか、見られたって大したことないじゃない!」
「そんな言い方はないだろ! 何がぬるま湯だよ! こっちだって生まれも育ちもまともじゃない君の惨めな人生なんか見せられて、吐きそうなほど不愉快だよ!」
「う、生まれも育ちも……惨めな人生……?」
「だってそうじゃないか! 自分がこの世で一番不幸だって思ってるんだろ!? 嘘なんかついても無駄だぞ、僕は君のこと何でも知ってるんだからな!」
「ち、畜生……畜生、畜生! みんなみんな私をバカにして! 絶対に許さない!」
 月彦は令良を力いっぱい突き飛ばし、畳の上に押し倒した。男にしては小柄で令良よりも背の低い月彦だが、令良の腕を押さえ込む力は驚くほど強く、到底抗うことはできなかった。
 悲鳴をあげようとした令良の頬を、月彦が平手打ちした。自分が殴られたことが信じられず、令良はきょとんとして月彦を見上げた。
(え? 僕、殴られたのか? お父さんに殴られた子供の頃みたいに……)
 頬の痛みと共に、抗うことのできない恐怖が湧き上がる。
 令良が幼い頃に負った心の傷が疼きだした。
 これは自分の記憶ではないと理性ではわかっていても、令良の体はその苦痛を思い出してしまうのだ。
「痛いよ、やめてよ。悪かったから、謝るから……ごめんなさい! ごめんなさい!」
 ぽろぽろ涙をこぼす令良の顔を、月彦は再び打った。そして無抵抗となった彼女のブラウスを引き千切り、ブラジャーに包まれた豊かな乳房をわしづかみにした。弾力のある塊が少年の手の中でたわんだ。
 泣いて許しを乞う令良の乳からピンクのブラジャーを奪い取り、月彦は理性を失くした獣の顔で乳首に吸いついた。令良の両脚の間に体を進め、勃起した一物をズボンの布地越しに令良に押しつけてくる。
「あなたも痛い目を見たらいいのよ。私が味わってきた痛み、苦しみ、悲しみ……のほほんと生きてきたあなたにも教えてあげる」
「そんな……!」
 これから何をされるのかを予感し、令良の顔から血の気が引いた。
 まさか体が入れ替わっている状態で無理やり犯される……レイプされるとは。
「ごめんなさい、許してえ……僕が悪かったから、もう言わないから……ごめんなさい、ごめんなさい……」
 乳を吸われる感覚に喘ぎながら、令良は罪人のように懺悔した。
 何度も何度も謝罪の言葉を吐き続ける少女の口を、同い年の少年のそれが塞いだ。二人の初めての接吻だ。
 目を白黒させる令良の口内に舌を差し込み、月彦は口腔を隅から隅まで舐め回す。
 令良の顔が酸欠と羞恥で真っ赤になった。
「んんっ、んっ。んぶっ、ぷはっ」
「あははは、いい気分だわ。私の顔で私を馬鹿にするからそういうことになるのよ。やっぱりあなたみたいな糞ガキは殴って黙らせなきゃ……うっ」
 その瞬間、月彦の顔からすべての表情が消えた。「私……何やってるんだろ」
 怒りも憎しみも欠落した空虚な顔が、能面のごとく白い。
「何よこれ……私は何をやってるのよ。これじゃ私をさんざん殴ったお父さんと同じじゃない……」
「令良……」
「お父さんみたいになりたくないって……幸せになるために、いい子になるために、頑張って頑張って頑張ったのに……気がついたらお父さんがまた私を殴ってる。どうして? どうしてお父さんはあたしを殴るの?」
 月彦の目からひとすじの雫がこぼれた。それが合図になり、少年の決壊した涙腺は止めどなく熱い液体を垂れ流した。
「うわあああん……! うわあああ……ううっ、ああああん……!」
「何を泣いてるんだよ。僕にひどいことしたくせに。畜生、僕だって私のお父さんに殴られたこと思い出して……うわあああああん……!」
 少年少女は泣いた。幼い頃の令良の記憶を二人で分かち合い、子供のように泣き喚いた。
 やがて声も涙もかれた頃、月彦は令良の頬に手を伸ばした。見つめ合う二人は、どちらも顔がくしゃくしゃだ。
「ごめんね、月彦……本当にごめん」
 月彦は立ち上がると、令良から顔を背けて詫びた。「私、もうあなたに迷惑はかけないわ。もう二度とあなたと会うことも話すこともしないから……ごめんね」
 そして月彦は錆びたドアノブを握り……外に出る直前で令良に引きとめられた。
「おい、待てよ」
「放してよ……」
「どういうつもりだよ。自分ひとりだけで勝手に話を進めるなよ。もう二度と会わない? そんなこと許されると思ってる?」
「だって、私のせいで関係ないあなたが苦しんで……」
「君が……あなたがいなくなったら、私はまたひとりぼっちになっちゃうじゃない。お願いだから一緒にいてよ。一緒にいなさいよ」
「月彦?」
「私は令良だよ。半分は月彦だけど、もう半分は令良。今のでまた頭の中身が混じっちゃった気がする……」
「そんな……令良は私よ。あなたは令良じゃない。私の体を返してよ。私の心を、私の人生を返してよ……ううっ」
 令良はわめき散らす月彦の胸ぐらをつかんだ。そして渾身の力で彼の小柄な体を持ち上げる。ほんの一瞬しかもたなかったが、それでも月彦を威圧する効果はあった。
「誰のせいだと思ってるのよ。ここまで心も記憶も混ざり合っちゃったら、もう二度と元に戻れないかもしれない。あなたこそ一体どうしてくれるのよ。責任取りなさいよ」
「責任って、どうやって……うぐっ」
 令良は月彦の体を壁に押しつけ、再び彼と唇を重ねた。月彦が目を白黒させるのがわかった。
「令良、もうどこにも行かないで、お願い」
「月彦……」
 二人は目を閉じ、舌を絡めて互いの唾液をすすり合う。股間を硬く熱くしながら、令良と月彦は恋人同士のように抱き合った。
「怖くないの、月彦? 私はあなたに手をあげたんだよ。あのときのお父さんみたいに」
「怖かったよ。怖かったけど……でも、それだけじゃない」
「それだけじゃない? 他に何があるの」
「そんなのわかるだろ? 君はもう一人の僕なんだから」
 令良は月彦の手を引き、部屋の中に戻った。畳の上に薄汚れた布団を敷き、破れてぼろ布になったブラウスを放り捨てる。白い肌が桜色に火照っていた。
「君には僕の人生の責任をとってもらう。死ぬまで逃げるなよ……いや、死んでも逃がさないからな。もしもこのまま僕から逃げたら、地獄の底まで追いかけて永遠に苦しめてやる」
「何それ、遠回しなプロポーズのつもり? 私の体でそんないやらしい顔をして……こっちこそ、私の人生を奪ったあなたを絶対に許さないわ」
 天井からぶら下がった蛍光灯の光が消え、付属の電球が狭い部屋を薄暗く照らす。遠くで鳴っていた救急車のサイレンが聞こえなくなると、音は互いの息づかいだけになった。
 高校生の男女はひしと抱き合い、暗闇の中で顔を近づける。唇が重なりひとつになった。
(僕、令良とキスしてる……ああっ、気持ちよくなっちゃう)
 月彦の腕に抱きしめられ、令良は少年の唇を吸う。それだけで胸が高鳴り、心の鼓動が聞こえそうだ。
 十七歳の女の体は火照り、太ももに押しつけられた少年の勃起の感触に期待を高める。じんじんと秘所が疼いた。
 ただ口を合わせるだけの大人しい接吻は数秒で終わり、いったん二人は顔を離した。そして暗闇の中、ほんの十数センチの距離で見つめあう。
「さっきのアルバイトのときと同じね。こうしてあなたの顔を見てると……すごくドキドキするわ。おチンポだって硬くなっちゃう」
「やっぱり、君はスケベな男の子だな。僕もアソコがびしょ濡れだけどね」
「ええ、そうね。あなたもスケベな女の子だから、お似合いなのかもね……私たち」
 月彦は令良を布団に押し倒した。彼女の身体の上に覆いかぶさり、今度は荒々しく唇を奪った。接吻をして舌を突き出す月彦に、その舌に吸いついて唾液を舐めとる令良。二人は転がり、欲望のままに口内を貪り合う。
「はあ、月彦……いい匂い。月彦の女の子の匂い……」
「令良のズボン……勃起したチンポから男の臭いが……」
 少年の股間では布の三角錐が盛り上がっていた。脱ぐのももどかしそうに、月彦は乱暴に下半身の衣類を脱ぎ捨てる。小柄で線の細い男子に似合わない巨大なペニスが、令良に狙いを定めていた。
 向かい合う令良も準備万端だ。膝丈のスカートを脱いで、愛液の染みがついたショーツから足が抜ける。
 二人の股間が触れあい、先走りの液体が白い肌を汚した。月彦はたどたどしい動きで腰を前後させ、結合の位置を調整する。
(僕、とうとうセックスするんだ。あの憎たらしい令良と。しかも令良と入れ替わって、僕がチンポを入れられる側だなんて……)
 令良の体が震えたが、それは恐れからではない。もう元の体に戻れないかもしれない恐怖よりも、新しい体で男女の営みを知ってみたいという期待と好奇心の方が強かった。
 電球の薄明りの下で腿を開き、指でヴァギナを広げて彼が挿入しやすいようにしてやった。既に女の蜜があふれ、入口はとろとろだ。
「もうちょっと下……ここだよ。うん、いいと思う」
「じゃあ、いくわね」
 意を決して月彦が腰を突き出すと、ペニスの先端が膣口にめり込んだ。そのままゆっくりと内部に突き進んでいき……抵抗のある部分を無理やり押し広げていく。
「ううっ、痛い……あっ、ああっ。いぎっ」
 大事なものが引き裂かれ、令良は涙とわずかな血を流した。女の人生で一度しか味わえない痛みだ。
 傷口を刃物で切り刻まれているかのような感覚に、自分が犯すのではなく犯されていることを実感した。
 令良の体に宿る少年の心は、想像もしていなかった処女喪失の苦痛に必死で耐えた。
(僕、バージンじゃなくなっちゃった。男だったのに、女の子とエッチしたこともなかったのに、こうしてバージンを奪われて……)
「大丈夫? しばらく動かずにこのままでいるから……ああっ、でもすごい締めつけ。これが女の子の中なの」
 一方、令良の魂が入った月彦は浮かれた笑みを抑えられないようだ。
 無理もない。スタイル抜群の十七歳の生娘の肉体を征服して嬉しくない男はいないだろう。たとえその男の心が女のそれだったとしても。
 そんな月彦に、令良は体を丸めてしがみつく。
 額に脂汗を浮かべてべそをかく令良の頭を彼は撫で、くすぐるようなキスを繰り返して慰めた。破瓜の痛みが早々に和らぐことはないが、その気遣いは安心感をもたらす。
 令良は自分の身も心も、月彦のものになりつつあることを悟った。
 しばらくして彼女の呼吸が収まってきた頃、月彦が見計らったように細い腰を掴んで交合を再開した。
「ふふっ、あなたの中、すごいキツキツよ。私のチンポが食いちぎられそう」
「ああっ、お腹が……僕のお腹の中にチンポが出たり入ったりしてる。痺れちゃう……」
「最高ね。こんなに気持ちいいこと知っちゃったら、元の体に戻りたくなくなっちゃうわ」
 月彦が腰を突き出し奥を穿つと、肉壺の隅々まで勃起が充満し、腹が破裂してしまいそうな錯覚に陥る。
 長身で恵まれた体格の令良だが、男をくわえ込むのは初めてだ。巨大な月彦のものを迎え入れるのは難儀した。
 彼が体を打ちつけるたび令良は悶え、激しいセックスの衝撃に圧倒された。押し殺したはずの悲鳴がたびたび口から漏れ出した。
 それでも若い女体は初めての結合を解こうとはしない。むしろ同い年の少年のものを思い切り締めつけ、決して放すまいと執着した。
「す、すごいっ。これが女の子のセックスなんだ……ああっ、あっ。あひっ」
 未開発の膣内が女の汁を垂れ流し、己の中にいる異性の器官にふりかけた。誰に教わるでもないメスの本能だ。
 破瓜の血に愛液と先走りの液体が混じり、処女を失ったばかりの膣内を滑らかにする。月彦の腰づかいも幾分かスムーズになった。
「ああっ、こんなのたまらないわ。男の子ってこんなに気持ちいいの」
「あっ、ああっ、アソコが焼けるっ。おかしくなっちゃうっ」
「アソコじゃなくて、ちゃんとおまんこって言いなさい。ほら、これはあなたのおまんこでしょ、おまんこっ」
「ひいいっ、お、おまんこっ。僕のおまんこがジンジンするようっ」
 令良は長い脚を内向きに折り曲げ、少年の突き込みを繰り返し受け止めた。腹の奥を内側から圧迫され、息も絶え絶えになる。
 だが、少しずつ痛みは薄れ、代わりに決して不快でない感覚が湧き上がった。
 処女を奪われたばかりで性交を楽しめるはずがない。そのはずだが……令良ははしたない声をあげ、自ら積極的に腰を前後させた。
 身体が入れ替わったことも、嫌っていた相手に服従していることもどうでもよくなり、ただ未知の快感を味わいたいという欲求に意識が占拠されつつあった。
「おっぱいがブルンブルンって揺れてる。ふふっ、すごい迫力ね」
 砲弾の形をした乳房が弾み、目の前の月彦を喜ばせる。
 艶めかしく揺れ動く巨乳を貪りたくなったのか、月彦は自分のものだった令良の肉の塊を乱暴に揉みしだいた。指が食い込み破裂寸前の風船のようだ。そこに月彦が噛みついた。
「ああっ、おっぱいがっ。おっぱい吸われてるっ。ああっ、あんっ」
「男が私の胸ばかりじろじろ見てくる気持ちがわかったわ。こんなの無視できるわけない。いやらしすぎるんだもの」
 つんと上向いた乳首を口に含む。月彦は赤子のように吸った。
 勃起した硬い乳頭に歯を立てられ、令良は背筋を反らして嬌声をあげた。
 月彦に授乳する自らの心の中に、かすかな母性を自覚した。いつか令良が月彦の子を産むことがあれば、彼によく似た赤ん坊に母乳を飲ませることになるだろう。
 ほとんど裸になった令良の体は桜色に火照り、メスの匂いを漂わせる汗で全身がぐっしょりだった。結合部をかき回されると薄い唇から甘い喘ぎ声が漏れ出し、肉壺を削られる喜びに長い手足が打ち震えた。
「ああっ、すごい。奥をぐりぐりされるのがたまらないよう。あっ、あっ、ああっ」
 自分の体が秘めていた淫らな願望に令良は驚く。このまま際限なく犯されていたかったが、残念ながら童貞のセックスは長持ちしなかった。
「ごめん、そろそろ限界……中に出したいけど、いいわね」
「え、何を出すの? ああっ、あひっ。よくわからないけど、好きにしてえっ」
「それじゃ遠慮なく……うっ、イクわっ。中に出るっ、出すっ!」
 二人は避妊具を用意していなかった。当然、少年少女を遮るものは何もない。深々と突き刺さったペニスが膣内で弾け、娘を孕ませるべく灼熱の塊を撒き散らした。
「あああああ……お腹が、熱いの注がれてる……!」
 初めての膣内射精が令良のマゾヒズムとオルガスムスを刺激した。今の自分が男ではなく、理性ある女でもなく、一匹のメスであることを令良は思い知る。
 既に苦痛は去り、快い熱と痺れが身体に広がった。おそらく先ほどの月彦と同様の淫らな顔になっているのだろうと推し量った。
 たっぷりと精を注ぎ込まれた腹の底から、月彦が卑猥な音をたてて抜け出した。
「んああっ、おっ、んひいっ」
 その摩擦で令良は軽い絶頂を繰り返し、股間の穴から白い雫を滴らせる。処女を喪失したばかりの女子高生は、獣のようなうめき声でオーガズムを表現した。
(イっちゃった。僕、いっぱい中出しされて気持ちよくなっちゃった……妊娠しちゃうかもしれないのに)
 月経は先日済ませたばかりで、受精のリスクが高まる時期はしばらく先だ。それでも妊娠する可能性がないわけではない。月彦と令良の子をこの身に宿す可能性が。
 近い将来やってくるかもしれない懐妊の瞬間を思い描き、令良は頬を緩ませた。彼の女に、そして彼の子の母親になりたいと心から思った。
「ごめんね」
「ふあ? どうしたの」
「その顔、スケベすぎる。おかげでまたおチンポが勃っちゃった。もう一回ハメるわね」
 言うなり、月彦は令良の体を裏返し、畜生が交尾をする体勢で再び挿入してきた。
「んああっ、そんな……駄目だよ、イったばかりでこんな……ひいっ、あああっ」
「でも気持ちいいでしょ。こんなにおまんこ締めつけて……違うなんて言わせないわよ。どうなの、ほらっ!」
 嬉し涙を流す令良の尻を、月彦は思いきりひっぱたいた。
「ひいいっ !? やめてえっ、痛いようっ」
 その令良の悲鳴の情けなさは、飼い主に仕置きを受ける子犬のようだ。膣内を潤す精液と愛液を、熱い肉の棒が攪拌していた。
「気持ちいいの間違いでしょ!? おまんこがキュッて締まったわよ! このドМ!」
「そ、そんなあっ、嘘だっ」
 令良は否定したが、若い身体は正直だった。根元までペニスをのみ込んでいた媚肉は、尻の痛みと同調して収縮していた。男を知ったばかりのヒダを削られながら二度、三度と臀部を叩かれ、令良の呼吸が一時的に停止する。意識が薄れ、何もわからなくなった。
「やっぱり気持ちよさそうね。まさか私の体にマゾの素質があったなんて……やっぱりあなたのせいじゃない? つくづく変態ね」
「あっ、ああっ。駄目だ、これ以上チンポで中をかき回さないで……僕おかしくなっちゃう」
 野太い肉棒がゴリゴリと膣内をえぐっていた。令良の全身からメスのフェロモンが沸き立ち、背後からのしかかる異性を誘惑する。恍惚の声が止まらない。
 自慢の巨乳が千切れそうなほど弾み、艶やかな黒髪が汗ばんだ肌にまとわりついた。
 嫌っていたはずの娘と肉体を交換し、頭の中身を混ぜ合ってハードな性交に没頭する。そのマゾヒズムと倒錯感とが新しい令良を燃え上がらせた。
 女の芯が熱くなった。鋼鉄のようなペニスの先端が子宮を突つくたび、腹の底が貪欲に収縮した。蜘蛛に囚われた蝶のように、令良は快感から逃れられない。
「本当にいやらしい女ね。おまんこの締めつけがキツすぎて、また中出ししちゃうじゃない。そんなにザーメン注いでほしいの、このいやしんぼ!」
「そ、そんな……違うよ。ああっ、あんっ。また中出しなんてされたら……」
「お望み通りにしてあげるわ。たっぷり飲み干しなさい。ううっ、出るっ、出るわっ。おおっ」
「んああっ、また出てるっ、種付けされてるっ。僕、またイクっ、おほおおんっ」
 子宮を執拗にノックする男根の先端が、熱いマグマを噴き出していた。令良は背筋が折れそうなほど身を反らして天を仰いだ。まともな人間ではなく奴隷か家畜のように扱われることに、更なるエクスタシーを覚えた。大きな花のつぼみのような少女の肉体は、急速に女として開発されつつあった。
「ああっ、あんっ。僕、こんな……イクっ、またイっちゃうっ。あああっ」
 少年の射精が令良の絶頂を、少女の昂りが月彦の放出を促す。数度目の膣内射精を浴びながら、十七歳の少女は浅ましい声をあげて連続絶頂を繰り返した。
 何度も何度も月彦のスペルマを注がれ、令良は少しの間、失神してしまう。
 次に彼女が気がついた時、窓の外はうっすらと白みはじめていた。体液でべとべとになった布団の上に、全裸の自分と月彦が寝ているのがわかった。
「ううっ、僕、寝ちゃってたのか。すごい臭い……」
「目が覚めた?」
 月彦は寝転がったまま、目だけを開いて令良を見つめていた。彼も今起きたばかりだという。非常に落ち着いた表情をしていた。
「最後までしちゃったわね。すごく気持ちよかった」
「僕も……恥ずかしいけど、すごく気持ちよかった」
「いやらしい女ね、あなたは。育ちが悪くて、性格がねじ曲がっていて、スケベなことが大好きな最低最悪の女だわ」
「何だよ、それ……それって全部、君のことじゃないか」
「そうね……私は、私のことが嫌いだったわ。生まれてくるんじゃなかったとさえ思ってる」
 月彦は感情を込めずにつぶやいた。どう返せばいいか戸惑ったが、その答えは令良の内にあった。
「うん、そうだね……君は自分が嫌いだった。でも、いつか自分を好きになれたらいいなって……ずっと思ってたよね」
「私は私を好きになりたい。でも好きにはなれなかった。私を殴ったお父さんが死んでも、いじめられたあの町を出てここに来ても、それは変わらなかった」
「うん、そうだね。でも、今は違うんじゃない? だって今は、僕のことを……君の体を嫌いな目で見てないよね」
 月彦はうなずいた。
「私は私を好きになりたい。まだ自分自身を好きにはなれないけど、もしももう一人の自分がいて、私と一緒に怒ったり、泣いたり、笑ったりしてくれるのなら……もう一人のその自分を、私は好きになれるのかしら」
「君が自分を好きになれないなら、かわりに僕を……私を好きになってほしい。あなたのことは、私が好きになってあげる。私はあなたで、あなたは私……私があなたを好きでいる限り、あなたは自分を好きでいられるわ」
 令良は令良の言葉で言った。自分は令良で、相手も令良。どちらも令良なのだから、そうするのが自然なことだ。
「私は私を好きになってもいいの? 自分を好きになってもいいのかな?」
 月彦は泣きそうな顔になった。それは寒い雨の日に家を追い出された、幼い子供の顔だ。
「うん、いいわ。私は私のことが好き。どんなに辛くても、どんなに悲しくても、どんなに苦しくても、私は私と一緒にいるわ。ずっとね」
「ううっ、ううううう……!」
 嗚咽を漏らす月彦を、令良は抱いて慰めた。共に心の傷をかかえた少年少女は裸で抱き合い、再び泣き疲れて眠りについた。

 ◇ ◇ ◇ 

「起きなさい、月彦。起きなさい」
 優しい母の声に、令良は目を覚ました。南向きの窓からは明るい朝の光が差し込み、二人用のクイーンベッドの足元を白く染める。
「母さん……?」
「やっと起きた? 日曜日だからって遅くまでグーグー寝てたら駄目じゃない。今日はお友達とお出かけするんでしょう?」
「令良は……あれ、いない」
 令良はベッドの反対側に視線を向けたが、昨夜そこで眠っていた少年の姿はない。寝ぼけた様子の愛娘に、母は嘆息した。
「令良ちゃんならとっくに起きて、先に朝ごはんを食べてるわ。しっかりしてて真面目で礼儀正しくて……のんきでだらしないあなたとは大違いね」
「うるさいな、もう。朝っぱらから」
 令良は仕方なく起き上がったが、立ち上がることはせずベッドの上にへたり込む。ストレートの黒髪が頬にかかってくすぐったい。
 母はそんな娘の艶やかな髪を手にとり、ペットの小動物にそうするように頭を撫で回した。
「ああ……今の月彦は本当に可愛いわね。まさか息子がこんな美人のお嬢さんになるなんて、夢にも思わなかったわ。眼福ねえ」
「そうでもないよ。かなりキツい目つきだし、女の子のわりに背が高くて大変だよ」
「そうかしら、モデルみたいでお母さんは好きよ。学校でもモテモテなんでしょう?」
 母に答えず、令良は頬にかかる黒髪を手にとった。ストレートの繊細な髪は手入れに時間がかかり、毎日苦労している。
「……ごめん、母さん」
「どうしたの。急にそんな顔して」
「父さんと母さんからもらった大事な体、なくしちゃった。僕の体じゃなくなっちゃった……」
 令良の中にいる月彦は暗い声で詫びた。両親は息子がどんな姿になっても自分の子だと認めてくれたが、無償の愛を与えてくれる親に申し訳なさを感じていた。
「いいのよ、私たちのことは気にしないで」
 母は令良の肩を抱き、耳元で囁いた。「私も父さんも、あなたが幸せだったらそれでいいんだから」
「母さん……」
「それに、月彦の心も体も、どっちもうちにいるんだからいいじゃない。令良ちゃんはとってもいい子で、ヒナも喜んでるわ。まるで月彦が二人に増えたみたいよ」
「そんなことないよ。あいつは僕と違って性格悪いし口も悪いし凶暴だし、絶対にいい子なんかじゃない」
「でも好きなんでしょ? 夕べだってあなたたち、遅くまで……ふふっ、若いっていいわねえ」
「母さんっ!」
 令良は耳まで真っ赤にして怒鳴ったが、母はころころ笑い、「ちゃんと避妊するのよ」と言って、部屋を出ていってしまった。
「まったくもう、母さんは……でも、シャワーを浴びた方がいいかな。その前に朝ごはんか。出かけるから身だしなみもきっちりしないと……」
 女は何かと大変だ。入れ替わってからのこの数ヶ月で、令良はそのことを充分に思い知らされていた。
 パジャマ姿のまま令良が階段を下りて食卓に向かうと、既に私服に着替えた月彦がトーストにかじりついていた。
「やっと起きたの? あなた、いっつも遅すぎ」
「しょうがないだろ。寝不足なんだから……」
「くだらない言い訳ね。体調管理なんて自分以外の誰のせいでもないでしょ?」
「君のせいだよ!」
 令良はテーブルを叩いて反論したが、白い肌のあちらこちらにキスマークがついていては格好がつかない。体じゅうにこびりついた男女の体液がパジャマの内側で異臭を放っていた。
「とにかく、さっさと食べて支度しなさい。お昼は智絵理と一緒にとるから、それまでに間に合わせないと」
 令良を急かす月彦の横顔に、陶酔した表情で見入る者がいた。月彦の妹で中学生のヒナタだ。
「令良お兄さま、今日もカッコいいです。あたしも一緒にデートに行きたい、行きたい!」
 短めの髪をツインテールにしているヒナタは、実年齢よりも幼く、まだ小学生に見える。
 思春期を迎えたばかりの複雑な年頃ゆえ家族が急に一人増えるのは心配だったが、皆の不安をよそに、ヒナタは新しい姉と兄によく懐いていた。
「ダメだって、ヒナタ。今日は僕たちだけじゃなくて、智絵理ちゃんも一緒なんだからさ」
「そんなのイヤでーす! あたしより可愛くて巨乳になった月彦お姉ちゃんの言うことなんか、聞きたくありませーん!」
 ヒナタは月彦の背中にしがみつき、令良に舌を出してみせた。そんな妹に月彦が微笑した。
「ごめんね、ヒナタちゃん。今日は我慢してくれない? その代わり、今度必ず埋め合わせするから」
「しますします、我慢します! ヒナは令良お兄さまの言うことなら何でも聞きます! その代わり今度のデート、期待してますから!」
「おい、わかってるのか、ヒナ? お前の兄は僕であって、そいつじゃないんだぞ」
「いや、もうお兄ちゃんじゃないし。お姉ちゃんだし。毎晩いやらしいことして下品な叫び声あげてるビッチなお姉ちゃんだし。あたしのお兄さまは令良お兄さまだけだから!」
「お前なあ……」
「あらあら、兄の威厳なんてもうないみたいね。そんなふしだらな格好じゃ当然かしら? とっととコレ食べて着替えてくることね」
 と言って立ち上がった月彦が、令良の分の朝食を出してくれた。トーストとサラダとヨーグルト、そして紅茶。
 時計を見ると、今から食べて身だしなみを整えるには時間の余裕がない。急がなくてはならなかった。
「ありがと。でも君もヒナも、僕を何だと思ってるんだ? まったくもう」
「ホントに、今でも信じられないなあ。あの冴えない月彦お兄ちゃんが、こんな巨乳美人になっちゃうなんて」
「あっ、何するんだヒナ。こら、僕は急いでるんだぞ。おっぱい揉むなっ」
「乳房をすくい上げるようにこねくり回すと、そこの痴女が気持ちよくなるわよ、ヒナタちゃん」
「はい、そうします! もみもみもみもみ……」
「や、やめ、やめろっ。ああっ、やだ、そんな……ああんっ」
「ふふふ……家の中が賑やかでいいわね」
 そこに母が現れ、子供たちに笑いかけた。「令良ちゃん……もし元の体に戻っても、遠慮せずここにいてちょうだいね、ずっとね」
「ありがとうございます、お母さん。私、子供の頃に両親を亡くしちゃって、それからお母さんって呼んだことなかったから……今、とっても幸せです」
 月彦は柔和な笑みを浮かべた。その笑顔は、彼が令良だった頃からは考えられない幸福に満ちた表情だ。
 横目でそんな彼を眺め、令良は妹にひたすらもてあそばれるのだった。

 秋から冬になりつつある季節だが、今日は春のように明るく温かい日和だ。令良と月彦は肩を並べて歩いた。
 二人は貴重な日曜の午後を、友人の智絵理と過ごす予定だった。どちらにとっても智絵理は一番の友達で、学校でも親しくしていた。
「それにしても、この格好……」
 令良は自分が着ているワンピースの裾を軽くつまみ、評判の美貌を曇らせた。
 本日の服は、胸元や袖にリボンのついた黒一色のワンピースだ。首にはシルバーのアクセサリーがついた黒チョーカー。すらりとした長い脚には網タイツ。その先はフリルとリボンのついた厚底靴で、令良の恵まれた長身がよりいっそう強調されていた。
 十代の女子らしい可愛らしい服装だが、なぜかいずれも色は黒で、肩にかけるカバンまで真っ黒だ。先日、家族で買い物に行ったときに月彦とヒナタに勧められ、わけも分からず購入した一式である。興奮した父がいくらでも出すと言ってくれたため令良の財布は痛まなかったが、女子のファッションにはいまだに慣れない。
「黒いものばっかりだけど、こういうのが最近の流行りなの?」
「そうよ、こないだも言ったでしょ? 地雷系って言うの。メイクも教えた通りにできてるじゃない。可愛いわ」
「そ、そうかな? でも、なんか男として恥ずかしいというか……」
「女のくせに何言ってるの。ファッションの旬なんて短いんだから、楽しめるのは今のうちだけよ。ご両親のためにも写真に撮っておくといいわ。お小遣い増やしてもらえるかもね」
「写真を撮るのはいいけど、SNSで顔出しは危険だよね。こないだ間違って僕の写真をアップしたら、知らない人たちからすごい数のメッセージがきちゃって……」
「気をつけなさいよ。今のあなた、学校でもモテモテだもの。悔しいけど入れ替わる前は貧乏だったから、服やメイクにお金かけられなかったのよね」
「いや、君がモテなかったのはそこじゃないだろ。そのねじ曲がった性格が……」
「それ以上言ったら、そこの路地裏に連れ込んで犯すから」
 月彦の鋭い目つきに、令良は続く言葉を飲み込んでしまう。
 脅しではなく本気の目だ。現に、これまでも月彦の機嫌を損ねたとき、令良は外でたびたび被害に遭っていた。
(また今日も外でされちゃうのかな……でも、今日は智絵理ちゃんと一緒だからさすがにないよね)
 少年との情事を期待し、令良の体がかあっと熱くなった。頬を赤くし下着を湿らせ、令良は月彦と手を繋いで足早に駅前へと向かった。
「智絵理ちゃん!」
「月彦君、令良ちゃん!」
 既に智絵理は集合場所に到着していた。二人のクラスの委員長は真面目で人付き合いがよく、数少ない二人の共通の友人だ。
「うわあ……令良ちゃん、本当に可愛いね。背が高くてスタイルもいいから憧れちゃうな」
「そ、そんなことないよ。こういう服ってあまり慣れてなくて、違和感がすごいんだ」
 令良は赤面した。自宅で鏡を見たとき、自分が本当にこんな美少女なのかと信じられなかった。
 そこにガラの悪そうな男がやってきて、令良にちょっかいをかけようとした。月彦が遮り、二人の少女を連れてその場から逃げ出した。
「ホントにモテモテだね、令良ちゃん」
「いや、もう……本当に困ってる。僕はこんなの嫌なのに……」
 なんとか逃げおおせた三人は、休日の午後を楽しく過ごした。軽いランチの後に流行りの映画を観て、ショッピングを楽しみ、カフェで季節限定のスイーツを賞味した。
 ケーキを口に運んで笑う智絵理の顔を、令良はじっとのぞき込んだ。
(ああ……僕は智絵理ちゃんがホントに好きだったんだな)
 以前の淡い恋心が本物だったことを確認した。しかし、それはもはや何の意味も持たない。
(今の僕は女の子で、令良の彼女だ。きっともう元には戻れないよね。ごめん、智絵理ちゃん……君のこと好きだったのに)
 月彦と楽しそうに談笑する智絵理に、令良は心の中で謝罪した。
 誰が悪いわけでもない。単に巡り合わせが悪かったのだ。
 もしも令良と入れ替わらなかったら、今ごろ月彦は智絵理と男女の仲になっていたに違いない。
 周囲の男たちの劣情の視線を集めながら、令良の中にいる月彦は、女としての新たな己の人生を受け入れていた。
 真っ赤な夕焼けの中、一人の少年と二人の少女は、川の堤防上につくられた遊歩道を歩いて帰った。辺りの人影はまばらで、電車が大きな音をたてて頭上の鉄橋を通り過ぎていった。
「今日は楽しかったね、二人とも。ありがとう。それでね……実は月彦君に大事な話があるんだけど、いいかな?」
 と、智絵理。いつになく神妙な面持ちだった。
「うん、いいよ、智絵理。改まって何の話?」
「あのね、その……あたし、月彦君のことが好きなの。前の優しい月彦君も好きだけど、今のキリっとした月彦君のことも大好き。だから……良かったらあたしと付き合ってください!」
「智絵理ちゃん……!?」
 強い反応を表したのは、告白を受けた月彦ではなく令良だった。慌てふためく彼女を智絵理は制止する。
「ごめん、令良ちゃん。言いたいことはわかってる。でも、今あたしは月彦君に告白してるの。だから令良ちゃんは何も言わないで」
「智絵理……ありがとう。君の気持ちはすごく嬉しい。だけど……」
「だけど、無理なんだよね? 月彦君は令良ちゃんと付き合ってるから……もう何ヶ月も前から二人は付き合ってるもんね。今は同棲までしてるんだって? あたしも知ってるよ」
「その通りだけど、それは理由の全部じゃない。前から何度も言ってるわよね? 私、ホントは月彦じゃないの。私は令良で、そこの令良が本物の月彦なの。私たち、互いの体が入れ替わってるのよ」
 月彦は事情を説明した。あの日……月彦と令良の中身が入れ替わったあの日から、幾度も繰り返した説明だった。だが智絵理はまったく関心を示さない。
「またその話? そんなの信じられないよ。月彦君は月彦君で、令良ちゃんは令良ちゃんでしょ? 付き合ってるのを誤魔化すために嘘ついてるんだ」
「違うよ、智絵理ちゃん! 僕が月彦だ! 僕は……僕も智絵理ちゃんのこと、好きだったよ……」
「嘘つき! こんなフリフリの服着た綺麗な女の子が月彦君のはずないじゃない! こんな可愛らしい服……!」
 智絵理は激怒して令良につかみかかった。黒いワンピースの生地の上から、令良の豊かな乳を両手で揉みしだく。
「ああっ、智絵理ちゃん、ダメっ。乱暴しないでっ」
「月彦君があたしより美人で巨乳で男の人にナンパされまくりの地雷系ヤンデレ美少女だなんて、そんなのありえない! 入れ替わったなんて嘘! 誤魔化さないであたしの月彦君を返して!」
「ごめんね、智絵理。でももう返せないの」
 月彦は気の毒そうな顔で答えた。「私たちの体、多分もう元には戻らないと思う。私は男で、この子は女。二人とも一生このままよ。幸いどっちも学校でうまくやれてるし、体の相性だっていいみたい。もしもこのまま元に戻れなかったら……私、この子と結婚するつもり」
 月彦に抱き寄せられ、令良は頭から湯気を出した。嬉しくて仕方ないが、それでも見栄を張って自己主張を試みる。
「おい令良、僕はまだ元に戻るのを諦めたわけじゃ……」
「結婚!? そんなのってないよ! あたしだって月彦君と……どうして令良ちゃんに行っちゃったの!?」
「だから体が入れ替わってるんだってば……」
「そんなの嘘! 嘘つき! 嘘つきの令良ちゃんが月彦君の彼女づらしないで!」
「ひゃあんっ! おっぱい、おっぱい揉みすぎだってえっ! ああっ、あっ」
 令良の乳が弾み、甘い喘ぎ声がこぼれだす。発情しかけている女体には辛い刺激だ。
「これは参ったわね……」
 月彦は困った顔で令良の手をとり、赤面する恋人をそばのベンチに座らせた。それでも智絵理はやめることなく、令良の巨乳の感触を掌で確かめていた。
「こうなったら、私たちが……僕と令良が普段どれほど仲良くしてるか、智絵理に教えてあげないとね」
 月彦は令良の前に立ち、ズボンの中から硬くなった一物を取り出した。
「つ、月彦君、何してるの!? それ……いやあああっ!」
「いきなり何するつもりだよ、令良」
「令良は君だろ。智絵理の前でしゃぶってくれよ、毎晩家でやってるようにさ」
「そんな恥ずかしい真似できるかよ……近くには人だっているんだぞ」
 鼻先に切っ先を突きつけられた令良は周囲を見回したが、運悪く通行人は少ない。川の対岸とはかなりの距離があり、岸のこちら側では数十メートル離れたベンチに犬を連れた老人が腰かけているだけだ。見咎められる危険は乏しい。
「智絵理は僕たちの仲がどんなものか詳しく知らないだろうからさ。実際に見たらきっと諦めると思う。二人の間には割り込めないってね。さあ令良、しゃぶれよ。お前は僕のカノジョだろ?」
「い、嫌だよ、そんな……智絵理ちゃんの前だぞ」
「令良ちゃん、してあげないの? あたしにはやり方なんてわからないけど……令良ちゃんがやらないなら、あたしがやってみる」
 令良の逡巡を見てとった智絵理が手を伸ばし、憧れの少年の陰茎を握った。柔らかな少女の手が、たちまち月彦を奮い立たせる。
「うわっ、すごい。月彦君のおチンポ、ますます大きくなっちゃった」
「駄目だ、智絵理ちゃん。君がそんなことしちゃ……」
「じゃあお前がしてくれよ、令良。このままじゃ智絵理に僕をとられてしまうぞ」
「畜生……帰ったら覚えとけよ」
 令良は歯噛みすると、智絵理の握ったペニスの先端に舌を這わせた。汗と小便のこびりついた若々しい男性器をソフトクリームのように舐め、最愛の少年に奉仕を始めた。
 自分がこうしなければ、智絵理が同じことをするかもしれない。その事態を避けるため、令良は日々そうしているように恋人に口淫を施す。幹に熱い唾液をまぶし、赤い唇で亀頭を挟み込んだ。
「ああ、いい気持ちだ。令良はおしゃぶり上手だなあ。毎日ヒマさえあったら僕のチンポをくわえてるもんな」
「うわ……令良ちゃん、そんなことしちゃうんだ。いつもそんな風にしてるの? いやらしい」
(なんで僕がこんな目に……くそ、くそっ)
 はしたない音をたててフェラチオにふける令良の指が、自らのワンピースの裾をかき分け、下着の中へとすべり込んだ。レースの黒いショーツの生地は好色な女子高生の蜜で潤み、長い指にまとわりつく。
 彼氏のものをしゃぶることで即座に発情する程度には、令良は月彦に躾けられていた。
(駄目だ。僕、気持ちよくなってる……智絵理ちゃんの前でチンポくわえて、死ぬほど恥ずかしいのに……気持ちよくなってる)
 令良は羞恥に目を閉じ、月彦に奉仕しながら、ぬかるんだ己の秘所をいじくり回した。指先に熱い愛液が絡みつく。少女の劣情は明らかだった。火照りはじめた体が彼との性交を欲していた。
 月彦以外の男を受け入れたことのない女陰が際限なくよだれを垂らし、この硬い肉棒で奥まで貫かれることを待ち望んでいた。
「令良ちゃん、その手……ひょっとして自分で慰めてるの?」
「そうだよ智絵理、よく見ておくんだね。僕の令良は大好きな友達の前でフェラチオオナニーしちゃうような、スケベな女なんだ」
(駄目、見ないで。智絵理ちゃん、こんなエッチな僕を見ないで……!)
 膨張しつづける月彦のペニスを頬張り、令良は自ら昂っていく。指先の水音が止まらない。かつて好意を抱いていた少女の好奇と失望の視線は、羞恥と背徳感を脳にふりかける極上のスパイスだ。
 ビクリと体を震わせ、迫りくる限界を察知する令良。その口内に熱い樹液が注ぎ込まれた。
「んんっ!? ううん、うう……うぐ、ううん……」
「こぼさずにちゃんと飲むんだ。智絵理も見てるからね」
 恋人の冷酷な命令に従い、令良は喉に絡む粘液を苦労して飲み干した。美貌の少女の鼻腔に充満するのは、同い年の少年の精臭だ。
(ううっ、ザーメン飲んで気持ちよくなっちゃってる。令良の体、エッチすぎるよ……)
 こんな非道な扱いを受けてもいっそう興奮してしまうマゾヒストの身体が恨めしい。スペルマを放って垂れ下がった目の前の陰茎を、令良は期待の眼差しで見つめた。
「いい顔だぞ、令良。オスに服従するメスの顔だ。また勃ってきちゃったよ」
「お前、あまり調子に乗ってると今夜ひどいからな。智絵理ちゃんの前でよくもこんな……ああっ」
 ベンチに腰かけた令良の股が開かれ、月彦が正面から彼女を突き刺した。早くも回復した若い男性器が発情した膣内を深々とえぐり、不意を突かれた令良の呼吸が止まった。
「んおおっ、まだ体がビクビクしてるのにぃ……! うぐっ、ひぐうっ」
「文句ばかり言ってるくせに、下の口はチンポを大歓迎じゃないか。ああ、いい締めつけだ、たまらないよ」
 恋人同士の二人は抱き合い、傍らの智絵理に情熱的なセックスを見せつけた。月彦が腰を前後させて令良の中を耕すたび、彼女は甘い声で鳴いて絶頂への階段を駆けのぼっていく。
「ああっ、駄目。こんな、チンポハメハメされて……お、おほ、おほおおおんっ」
「どうしたの、令良ちゃん?」
「チンポっ。おおっ、チンポ気持ちいいのおっ。もっと、もっとしてえっ」
「始まったな」
 月彦は嗜虐に満ちた笑みで令良を可愛がる。「智絵理、令良のスケベな顔をよく見てやって。こいつ、僕のチンポをハメてやったらいつもこうなっちゃうんだぜ。まるで人が変わったみたいに淫乱になってさ」
「そんな、嘘でしょ? あのクールで素敵な令良ちゃんが、信じられない……」
「ああんっ、もっとして。んっ、んああっ、何でも言うこと聞くからぁ。いい子にするから、令良を可愛がってっ」
 令良は虚ろな瞳で月彦を見つめ、自分の体内に埋まった恋人に必死になって媚を売った。智絵理に淡い恋心を抱いていた少年の魂は、淫らな女子高生の肉体に囚われ、ひとつに溶けあいつつある。
 混ざってしまったミルクとコーヒーのように、彼女の中にある月彦と令良の心はもはや分離できないだろう。元に戻る見込みはおそらくないが、そんな新しい自分を、令良は喜んで受け入れていた。
 パン、パンと男女の体がぶつかり合う音が鳴った。たくましい月彦のものが執拗に令良を穿つ。令良が処女を捧げた少年の男性器が、避妊具もなしに膣内を往復していた。
「ふふっ、すごい締めつけだ。夕べヤリまくったばかりなのに、令良は僕のチンポが好きすぎだろ。そんなに好きなら、もっと食わせてやろうかな」
「嬉しい……私も好きっ。チンポが好きで好きでたまらないのっ。ああっ、あんっ」
 月彦の体にしがみつき、令良は上機嫌だ。
 今の彼女には親代わりの夫婦がいる。温かい家族の待つ家と、金銭の心配をせずともよい生活がある。好意を持ってくれるたくさんの人々がいる。そして何よりも、彼女を愛してくれる線の細い少年がいる。将来を誓い合った彼とこうして体を重ねる時間は、令良にとって最高のひとときだ。
 夕焼けの中で智絵理に見守られながら、令良は我を忘れて月彦を貪る。体がふわふわして夢見心地だ。とろけるような多幸感に全身が満たされていた。
(僕は月彦で……でも、今は令良で……ああ、月彦とのエッチがたまらないよ。僕が私になっちゃう……身も心も令良になっちゃう)
 智絵理に見られていることも忘れ、令良は腰を振って二人の結合部をかき混ぜた。十七歳の陰茎が令良の腹の奥で脈動し、射精が近いことを彼女に知らせる。
「出すぞ令良、中出しだ。たっぷり受け取れっ。おおっ、うおおっ」
「ああっ、出てるっ、僕のがいっぱい私の中に……す、すごい、お腹熱いっ。ああっ、イクっ、赤ちゃんできちゃうっ」
 未来の夫となるべき少年のザーメンが膣壁を叩き、令良はオルガスムスにのぼりつめた。薄いゴムで隔てられていない膣内射精に少女の心が躍り、視界に赤い光が明滅した。
 辺りに漂うのは栗の花の香りだ。妊娠の危惧など吹き飛んでしまうほどの喜びに、令良の頬がだらしなく緩んだ。
「んああっ、まだ出てる。お腹が熱い……んっ、んふっ、中出しされるの、たまらないよう」
 ドクドクと流し込まれる精液の感覚に、令良は鼻息を荒くする。聡明な美少女は今、目先の快楽しか考えていなかった。淫らな欲望と破滅的な衝動とに心を支配されていた。
「な、中出し……? 嘘でしょ、令良ちゃんが妊娠しちゃうよ……」
「ああ、たっぷり出たよ。令良は中出しが好きで、本当にいやらしい女なんだ。おい、その歳でママになるつもりか?」
「だってえ……こんなに気持ちいいの覚えちゃったら、もうやめられないよ。ああっ、まだ中でピクピクしてる……ザーメンこぼれちゃう」
「せっかくだから、智絵理にも僕らが繋がってたところを見てもらいなよ。ほら、自分で裾を持ち上げて」
 体を抱き上げられ、従順な令良は熱っぽい笑顔で智絵理と向かい合った。ベンチに座る月彦のそのまた上に令良が腰を下ろす格好だ。月彦にむっちりした腿を抱えられ、母親に抱きかかえられた幼児が小便をする姿勢で陰部を智絵理に向け、ワンピースの裾をつまみ上げた。既に用を為さない黒のショーツはずり落ち、右足の厚底靴に辛うじて引っかかっていた。
「智絵理ちゃん、見える? 僕のはしたないアソコ、彼のおつゆでいっぱいなの。こんなママじゃ子供もエッチになっちゃうよね……」
 太いペニスが抜けたばかりの膣はぽっかりと口を開け、よだれのように二人の体液を垂れ流していた。陰毛は普段から月彦に剃られ、幼児のようにつるつるだ。
 月彦のズボンと令良の尻が二人の汁にまみれ、真っ赤な夕日に照らされる。羞恥心をオーガズムに押し流され、焦点の合わない目で微笑む令良。
 そんな彼女の貪欲なヴァギナを間近で見せられ、智絵理は赤くなったり青くなったり。だが、この場から逃げることだけはしなかった。
「月彦君、令良ちゃん、やめて。私の大切な友達の二人が、どうしてそんなことするの……」
「だって智絵理ちゃん、僕と私が入れ替わってることを信じてくれないから」
 令良は首を振った。「でも、もういいんだ。僕、今とっても幸せだから元に戻れなくても別にいい。この体はもう僕のものだ。令良のエッチな体を僕は本当に気に入っちゃって……ああっ!?」
 肉感的な令良の身体が持ち上がり、月彦の雄々しい肉棒の上に下ろされた。再びの結合だが、今回は挿入する先が違った。
「おおっ、お尻、お尻に入ってくるよう。駄目だよ、まだお風呂に入ってないから汚いって」
「令良の体に汚いところなんてあるわけないだろ。ほら、腹に力を入れてケツ穴締めるんだ」
 左右に張り出した豊かな尻に平手打ちして月彦が笑った。
 令良はこの数ヶ月で栄養状態が良くなり、そして性経験を重ねたことで、ますます女らしく丸みを帯びた体型になった。現在では少女というより女の体だ。男を惑わす淫靡な体。
 そんな令良の肛門に勃起した月彦の陰茎が激しく出入りしていた。本来は排泄のための器官だが、この数ヶ月で彼に開発されて立派な性感帯になっていた。
 精液と愛液、そして腸液を潤滑油にし、心地よい波がアナルから腹へと波紋を広げる。
「んあっ、お尻、お尻がいいっ。おほっ、令良、お尻で気持ちよくなっちゃう……おっ、んおおっ、お尻いっ」
「そんな、お尻の穴に入れるなんて……二人とも、本当にどうしちゃったの? 狂ってるよ」
「うぶな智絵理には想像もできない行為だろうね。でも令良はお尻も好きなんだよ。生理のときはお尻の穴で僕のザーメンをいくらでも受け止めるんだ。そしたらいつも豚みたいに可愛く鳴いてさ。穴という穴で楽しめるスケベな体だよ。学校一の人気者の美少女が彼氏の前じゃこんなことばかりしてるなんて、誰も思わないだろうな」
「私の月彦君が……月彦君がおかしくなっちゃったよう。好きだったのに、優しい月彦君が本当に好きだったのに、どうしてこんなことになっちゃったのっ」
「僕も智絵理が好きだよ。でも令良の方がもっと好きだ。愛してるよ、令良。前の穴も後ろの穴も、口もおっぱいもお尻も脚も……お前は全部、僕のものだ」
「うん、嬉しい。令良は全部あなたのものだから、いい子でいるから可愛がって。お、おおっ、お尻がヤケドしちゃうっ。熱くて気持ちいいのおっ」
 使ったばかりの女性器を智絵理にさらけ出し、令良は発情した直腸でペニスを堪能する。冬の短い日は暮れ、黄昏の時刻になっていた。
 冷たい風が吹き始めた川辺の路上で、尻の穴に染みる温かさが心地よい。令良は淫らな声で喘ぎ、慣れ親しんだアナルセックスを満喫した。
 これ以上なく幸せだった。幼い頃の不幸が嘘のように、今の令良は幸福に満ちた人生を謳歌していた。
「また出すぞ、令良。広がったケツ穴締めてザーメン飲み干せ。おおっ、出るっ、出るぞっ」
「ああっ、おしっ、お尻が熱いようっ。令良イク、お尻でイキますっ。あああ、んああああっ、イク、令良イクうっ」
 人生の伴侶の体液を肛門にぶちまけられ、令良は白目を剥いて絶頂に至る。少年だった女子高生は二度と元の体に戻れない歓喜の念を胸に、その意識を手放した。



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