保健室のピンクゼリー(後編)


 純は校舎の入り口に立って、夕暮れどきのグラウンドを眺めていた。最後まで残っていた運動部の部員たちも既に練習を終えて、後片づけを始めている。
「牧野先生、さようならー」
 ランドセルを背負った女子生徒が数人、立ち止まって純に挨拶をしていく。その中には彼のクラスメイトも混じっていた。普段の自分とはまったく異なる対応をする彼女たちに愛想笑いを浮かべて手を振り返しながら、彼は自らの身に起こった変化を改めて実感していた。
(皆がボクのことを牧野先生だっていう。ボク、ホントに牧野先生になってるんだ)
 視線を下に向けると、そこには白いブラウスと黒のタイトスカートを身に着けた成人女性の肉体があった。それが今の彼の体だ。信じがたいことだが、純の体は女教師の牧野美雪と入れ替わってしまったのだ。全ては彼にピンク色の奇妙なゼリーを食べさせた保健教諭の陰謀だった。
 辺りに誰もいなくなり、純は再び校舎に戻る。薄暗い廊下を歩きながら、何度も嘆息した。
「はあ……声まで牧野先生になってるんだもんなあ。スカートは歩きにくいし、髪は長くて邪魔だし……ボク、これからどうしたらいいんだろう」
 つい数時間前までTシャツと半ズボン姿の男子小学生だった純にとって、成人女性の美雪の体は戸惑うことが多すぎた。細身のタイトスカートは歩きにくく、服の中で豊かな胸を包んでいるブラジャーの感触も気になる。この体でトイレや風呂に行くことを考えると寒気がした。
 一刻も早く元に戻りたいと願っていたが、田辺が別れ際に言い残した台詞が気にかかる。
「さっきのゼリーはみんな食べちゃったから、元に戻ろうと思ってもすぐには戻れないんだ。しばらくはこのままでいるしかないよ」
 もしも、この内容が本当だとしたら、しばらく──最低でも二、三日は──美雪の体で過ごさなくてはならないだろう。それも希望的観測であり、はっきりと期限が示されているわけではなかった。元に戻るまで一週間かかるかもしれない。一ヶ月かもしれない。あるいはもっと。最悪、一生このままという可能性すらある。
 いつ自分たちは元の体に戻れるのだろうか。いや、果たして本当に戻れるのだろうか。耐えがたい不安が多感な少年の心を締めつけていた。
 しばらく校内を徘徊した純だが、どこへ行くあてもなく、結局は保健室に戻ってきた。デスクの前の椅子の上で、田辺の姿をした真衣がうなだれていた。白衣は脱いだようで半袖のワイシャツ姿になっている。
「あっ、純くん、戻ってきたんだ。何か変わったことはあった?」
 顔を上げて訊ねる真衣に、純は無言でかぶりを振った。その拍子に長いストレートの黒髪が頬にまとわりついて、乱暴に払いのける。
「ううん、何もなかった。皆、ボクのことを牧野先生だって思ってるみたいだ。誰もボクだって気づいてくれない」
「そう……まあ、そうだよね。あたしのママもあたしのこと、田辺先生に見えるみたいだったし……はあ、どうしよう。もうこんな時間だよ」
 真衣は壁の時計を見て、弱り果てた声を出した。いつもならとうに帰宅してテレビのアニメを見ている時間だった。帰りたいのはやまやまだが、美雪の姿で純の家に帰るわけにはいかない。学校の先生と肉体を交換させられてしまったという非現実的な話を、両親が信じてくれる保証はどこにもなかった。美雪の家に行こうかとも考えたが、住所がわからずお手上げ状態だ。
 何をするでもなく、しょぼくれた真衣と二人きりで時間ばかりが過ぎていく。校内の灯りが少しずつ消え、帰宅する生徒たちの声も聞こえなくなった。
「あたしたち、これからどうなるのかな。元の体に戻れるの?」
 ふと、野太い声で真衣が問う。禿げた中年男になった友達の姿を見るのが辛く、純は目を伏せたままで「さあ……」とだけ応えた。
「もしも、元に戻れなかったらどうしよう。ずっと田辺先生のままだったら……ぐすっ」
 真衣が不吉な想像を口にして涙ぐむ。元に戻れないかもしれないと考えると、純も泣いてしまいそうだった。
 確かに美雪は綺麗な女性だと思う。しかし、自分がずっとこの姿でいるというのは絶対にご免だった。
「うう、ボクも元に戻りたい。戻りたいよ……うえええんっ」
 頬を涙が伝い、熱いもので鼻が詰まる。服装が乱れるのにも構わず、純はあぐらをかいてその場に座り込んだ。ぽろぽろこぼれる涙をブラウスの袖で拭う。大の大人が二人で泣きじゃくる奇妙な光景が鏡に映っていたが、気にする者は誰もいなかった。
 真衣と二人で泣いていると、突然保健室のドアが開いた。鼻をすすって顔を上げる。中年男の顔を持つ異様な姿の少女が入り口に立っていた。この騒動を引き起こした男、田辺だ。
「やあ、君たち。具合はどうだい」
「た、田辺先生っ !?」
 穏やかな笑みを浮かべて話しかけてくる田辺に、純は目を白黒させた。自分たちにこれほど辛い思いをさせながら、田辺は余裕しゃくしゃくの態度で平然としている。
「どうして田辺先生がここに……真衣ちゃんの代わりに家に帰ったんじゃないの」
「ああ、そうだよ。君の体になった牧野先生を君の家まで送って、また学校に戻ってきたのさ。君たちの様子を見にね」
「様子を見にって……ひどいや。ボクたち、ホントに大変だったんだよ」
 あっけらかんと語る田辺を見ていると、静かな怒りがこみ上げてくる。真衣の服を着ているのも、真衣の声で喋るのも、この男の何もかもが不快だった。
「早くその体を真衣ちゃんに返してあげて下さい。真衣ちゃんがかわいそうです。あと、ボクの体も元に戻して!」
「そうだよ、あたしの体を早く返して。お願いしますっ」
 純と真衣は必死で田辺に取りすがった。今の二人を元に戻せるのは、あのゼリージュースを持ってきた田辺だけだからだ。
 助けを求める子供たちを、田辺はにやにや笑って眺めている。見るからに悪人の面だった。保健室で自分たちの手当てをしてくれた熱心な保健教諭の姿は、演技に過ぎなかったのだろうか。間近で見る醜悪な笑顔に嫌悪をそそられ、純は無意識のうちに歯ぎしりした。
「うーん、私も本当は元に戻してやりたいんだけどねえ。でも、さっきも言った通り、あのゼリージュースはもう全部食べちゃったから、今すぐというわけにはいかないなあ。また手に入るまでしばらくの間、その体で我慢してもらわないと」
「そ、そんなっ。ボク、そんなの嫌だ。女の人のままでいるなんて嫌だ! お願いだから何とかしてよおっ」
 純は美雪の声でわめき立てる。横では、真衣が落胆してすすり泣いていた。
 対する田辺は一体何がおかしいのか、笑いが抑えきれないようで肩を細かく震わせる。純は憤懣やるかたない。
「ははは、ごめんごめん。牧野先生の声でそういう喋り方をされると、おかしくてつい笑っちゃうんだ。でも、純くんはいいじゃないか。若くて綺麗な牧野先生の体になったんだから。腰はキュッと細くて、胸とお尻はボインボイン──ククク、今の君はとっても魅力的な女性なんだよ。だからもっと喜びなさい、純くん」
 田辺は下品な視線で純の身体をねめ回す。にわかに羞恥の情が巻き起こって、純の動悸が速まった。
(ううっ、そんな言い方ないよ。でも、ボク、本当に女の人になっちゃったんだ。美人で優しい牧野先生の体になっちゃったんだ……)
 ただでさえ女の格好をしているのが恥ずかしいというのに、田辺はその事実をことさらに強調してくる。純は自分のものになった美雪の身体を見下ろして、ごくりと唾を飲んだ。ひどく喉が渇いてカラカラだった。
「純くん、どうしたの? 顔が赤いよ」
 真衣に指摘されて、純はぎくりとする。自らのブラウスの胸元を押し上げる膨らみに見入っていたとは言えない。純情で潔癖な少年の心が後ろめたさを感じていた。
「な、何でもないよ。とにかくボク、早く元に戻りたい。田辺先生、何とかしてよ。お願いしますっ」
 純は田辺を見下ろして懇願する。ひたすら頼む以外にできることはないのだから必死だ。
「ククク、いいとも。あのゼリージュースを手に入れたところに連絡して、できるだけ早く届けてもらうようにお願いしてみるよ。多分、すぐに手に入るはずだよ」
「本当っ !? やったあ、これで元に戻れるっ」
 田辺の言葉に二人は希望を見出した。一時はどうなることかと思ったが、無事に元の姿に戻ることができそうだ。純は安堵の息をついて保健室のベッドに腰を下ろした。その隣に真衣が座り、田辺にデスクの椅子を譲る。
「ただし、元の体に戻りたいんだったら、真衣ちゃんも純くんもいい子にしていないといけないよ。先生の言うことをきちんと聞いて、元に戻れるように頑張らないといけない。そうじゃないと君たちはずっとそのままだ。それは嫌だろう?」
 真衣の姿の田辺は二人に言った。いい子でいないと元に戻れないと聞いて、真衣と純は硬い表情でうなずく。
「う、うん、わかった。ボク、田辺先生の言う通りにする」
「あ、あたしもっ。それで、何をしたらいいんですか?」
 素直な生徒たちを、田辺は目を細くして見つめる。視線に優越感がたっぷりと含まれているのが見てとれた。
「そうだね、とりあえず学校を出て先生の家に行こうか。もう遅い時間だからね」
「は、はい。わかりました」
 田辺に促されて、真衣と純は保健室を出た。そのまま下駄箱に行き、純は美雪の靴をはいて外に出る。ほっそりしたタイトスカートに加えて、ヒールつきのパンプスとストッキングが歩きにくさを助長する。たびたび転びそうになる純を真衣が支えてくれた。
 二人は田辺に先導されて、駅に向かって歩き出した。日の落ちかかった通学路には街灯がともり、白い光で地面をぼんやり照らしていた。
「ほらほらっ、田辺先生も牧野先生も、早く来ないと置いていっちゃうぞおっ」
 早足で十メートルほど先を歩きながら、田辺は後ろを振り返ってふざけてみせた。たまらず、真衣が食ってかかる。
「や、やめてよ、先生。あたしのふりをしないでっ」
「えっ? だって、今はあたしが真衣なんだよ。君も田辺先生らしい振る舞いをしないと駄目じゃない。じゃないと、周りの人たちから変に思われちゃうよ」
 田辺は白い手を口にあててころころ笑う。見ているだけで気分の悪くなる光景だが、純たち以外の人間には今の田辺が真衣にしか見えないというのは本当のようで、辺りの通行人も特に気にする様子はない。
 赤いスカートをはいた美少女が両親を急かしている。おそらく、そんな風にでも見えるのだろう。大事な友達の体をもてあそばれているようで、純の胸から不快感が消えない。
「ほら、純くんも歩き方がおかしいよ。女の人なんだから内股で歩かないと変だよ」
「えっ? あ、はい……」
 田辺に指摘され、彼はスカートの裾から伸びた自分の脚が蟹股になっているのに気づいた。すれ違った若い男が振り返り、不審な顔でこちらを見る。純は慌てて脚を閉じた。今の自分が女であることを強く意識させられ、顔から火が出そうだった。
(ああっ、見られてる。恥ずかしい……な、なんでボクがこんな目に遭わないといけないの)
 悔しさに涙がにじむ。あのゼリーさえ食べなければこんなことにはならなかったのにと後悔したが、もはやどうにもならない。
 耳まで赤くしてうつむいていると、目の前に大きな手のひらが差し出された。保健教諭の男の手だ。小太りの中年男性の体の上に、見慣れた女の子の微笑があった。
「純くん、行こう」
「うん……」
 真衣の手をぎゅっと握り返してうなずく。さっきまでめそめそしていた真衣が落ち着きを取り戻して自分を励ましてくれているというのに、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかない。逆に、彼がこの少女を守ってやらねばならないのだ。
「待ってよ、先生。そんなに先に行かないでっ」
 純は真衣の手を引き、田辺に追いつこうと足を速めた。
 細くて長い女の指で浅黒くゴツゴツした真衣の手を握りしめながら、この手が逆だったらよかったのにとつくづく思った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 二十分ほど電車に揺られて、三人は田辺の自宅に到着した。駅にほど近いアパートの一室が保健教諭の自宅で、独身男性の住居にしては意外にも小奇麗でゆったりしている。
 純と真衣は和室の畳の上に座り、田辺の淹れた茶をすすってひと息ついた。あのゼリーを食べてからは落ち着いて飲み物を口にする余裕もなく、喉がカラカラだった。
「明日はお休みだから、純くんは今夜ここに泊まっていきなさい。牧野先生もひとり暮らしだと聞いているから、先生のご家族に連絡する必要はないだろう」
「うん、わかった」
 田辺の指示にこくりとうなずく。教師の家に泊まるのは初めての体験だ。早く元に戻りたいとは思っているが、突然の外泊は純の好奇心を刺激する。
「後で自分のおうちに電話して、君と入れ替わった牧野先生とお話ししなさい。まだ先生の体調は良くないと思うけど、話をすればお互いに安心するからね。牧野先生に聞かないといけないこともあるだろうし」
「聞かないといけないことって?」
 純は意味がわからず聞き返した。
「牧野先生の体になってわからないことがいっぱいあるだろう。服を着替えるときの注意点とか、お風呂やトイレはどうするかとかね。外に出るときはお化粧もしないといけないし、女の人はいろいろと大変なんだよ」
「あっ、そうか。うう、やだなあ……」
 年端もいかぬ少年が成人女性になってしまうことの煩わしさを再認識させられ、純は顔をしかめた。スカートやブラジャーといった婦人用の衣類に身を包んでいる自分が疎ましかった。
(そんなこと言われたら、おしっこしたくなってきちゃった。トイレに行かないと……)
 水分を摂取したこともあって尿意を催した。トイレの場所を田辺に訊ねる。
「ほう、おしっこしたくなったのか。牧野先生と入れ替わってから、トイレに行くのは初めてかな?」
 田辺は直接問いに答えず、心もち弾んだ声で純に訊く。
「う、うん。でもおしっこするだけだから大丈夫だよ。トイレはどこ?」
「まあ待ちなさい。今の君は女の人なんだから、おしっこするだけでもだいぶ勝手が違うんだよ。どうすればいいか説明してあげるから、ここでスカートとパンツを脱いでみなさい」
「ええっ !?」
 純は耳を疑った。人前で服を脱げと言われても困る。
 だんだん尿意が迫ってきてもじもじする純を、田辺が諭す。
「恥ずかしがることはないさ。今の私は君と同じ女の子だし、真衣ちゃんも元は女の子だ。君が服を脱いで裸になってもまったくエッチなことはないんだから、気にせず脱ぎなさい。それに私は保健の教師だ。君たちくらいの歳の子に、男女の体の違いや仕組みを理解させるのも私の仕事なんだよ」
「た、確かにそうかもしれないけど、やっぱり恥ずかしいよお……」
「おしっこの仕方がわからなくておもらししたら困るだろう。いいから脱ぎなさい。先生の言うことを聞かない悪い子は、元の体に戻してあげないよ」
 そう言われると、純は従うしかない。田辺と純の見守る前でタイトスカートをおろし、下着をさらけ出した。
 今日、美雪がはいてきた下着はシンプルなデザインのベージュのショーツで、爪先から太ももに至るすらりとした脚線を薄茶色のストッキングが覆っている。
 純は美雪のものだった下半身にじっと見入った。幼い彼にも、この体が女として魅力的なのが理解できる。自分は今、女教師の大事なところを見ようとしているのだ。興奮が収まらず、息苦しかった。
(これが牧野先生のパンツ……ボク、女の人のパンツをはいてるんだ)
 純の喉が音をたてた。不道徳な行いを恥じる気持ちは大いにあったが、男としての好奇心も否定できない。これは不可抗力だ、下着を脱がなければ小便ができないのだと、無理やり自分の良心を納得させた。
「ほほう、これはなかなか……さあ、パンティも脱ぎなさい」
 馴染みのある少女の声がやけに遠いところから聞こえてくる。ショーツに手をかけ、腰を上げてゆっくり引き抜いていく。早鐘のように心臓が鳴り、頭に血がのぼった。
 とうとう足首からショーツが引き抜かれ、何も着けていない股間が丸見えになる。黒々とした茂みが姿を現し、純を驚かせた。
(な、何これ。女の人のアソコって、こんなだったの)
 思っていたよりもグロテスクな外見にたじろぐ。慣れ親しんだ幼い男性器の姿はどこにもなく、代わりに縦にひっくり返した唇のような割れ目と黒い草むらが見えた。
「クククッ、どうだい純くん、牧野先生のアソコは。それが今の君の体なんだよ」
「こ、これがボクのアソコ……ホ、ホントにお○んちんがないんだ」
 衝撃だった。田辺の軽口に言い返す余裕もない。眼下に現れた女性器を純は凝視した。おそるおそる指で触れてみると、細い縮れ毛が絡みつくざわざわした感触があった。
(ああっ、な、なんか変な感じ……くすぐったい)
 純は大きく脚を開いて、自分の股間を触り続けた。好奇心の赴くままに、形の整った指先で割れ目をゆっくりと開いていく。光の当たりにくい角度だが、ピンク色をした肉びらが幾重にも重なっているのが確認できた。
 これが女性の体──純は驚嘆せずにはいられなかった。すぐ近くにいるはずの真衣や田辺の存在も忘れて荒い息を吐きながら、今や自分のものとなった女性器の手触りを確かめた。触れば触るほど体が熱くなっていくような気がした。
「うっ、ああ──はあっ、はあっ」
(ああっ、おしっこしたい。早くトイレに行かないと漏れちゃう)
 気分の高揚と共に排泄欲も高ぶってくる。陰茎の存在しない女の体のどこから小便が出てくるのかわからなかったが、すぐ間近に迫った尿意に限界を悟った。
「ククッ、そろそろか。純くん、これを使いなさい」
 降って湧いた声に純は顔を上げた。立ち上がろうとする彼の前に真衣の姿をした田辺がいた。畳の上に薄い緑色の洗面器が置かれているのに気づく。田辺がいつの間にか持ってきたようだ。
「えっ? こ、これは──」
「先生が見ててあげるから、ここでおしっこしなさい。ほら、お尻の下にこれを入れて」
 田辺は洗面器を押し出し、膝立ちになった純の股間の下に入れようとする。顔がかあっと熱くなった。
「そ、そんな恥ずかしいことできないよ。ボク、トイレに行ってくる」
「恥ずかしがることはないって言っただろう。君がちゃんとおしっこできないと、後で牧野先生が困ることになるんだよ。いいから、ここでしなさい」
「そ、そんなあ……」
 純は嫌がったが、「言うことを聞かないと元の体に戻れない」と田辺に脅され、結局この場で用を足すことになった。
 ちょうと和式便器でするように膝を曲げてしゃがみ込み、尻に洗面器をあてがう。幼い頃は野外で立ち小便をしたことは幾度もあるが、ここ数年はトイレでしかしたことはない。自分が変態になったようで落ち着かなかった。
 はあはあと息を荒げて、下腹部に力を入れた。嬉しそうな田辺と心配そうな顔の真衣の眼前で、純は尿意を解き放つ。股間に生温かいものを感じて背中がぶるぶる震えた。プラスチックの洗面器に液体がこぼれ落ちるちょろちょろという音が耳をくすぐり、自分が確かに小便をしているのだと実感させられた。
「ううん──はああっ、おしっこ出るっ。いっぱい出てる。止まらないよお……」
 美雪の声で純はうなる。膀胱には思った以上に尿が溜まっていたようで、黄色い液体が後から後から溢れてくる。心地よい解放感が少年の心を魅了した。
「じゅ、純くん……」
 低い男の声がした。禿げた中年男になった真衣が目を見開いて、女教師の体で小便をする純を驚いた表情で眺めていた。
(ああっ、ボク、おしっこしてるところを真衣ちゃんに見られてる。恥ずかしい)
 真衣の熱い視線が純の興奮を加速させる。破廉恥な姿を親しい異性に見られて身の縮む思いだった。小水の滴る股間が感度を増して、借り物の女体を否応もなく高ぶらせる。
 ほんの十数秒の排泄の時間が、純には永遠に続くように思われた。美雪の肉体になって風邪で苦しむことはなくなったはずなのに、熱に浮かされたように頭がぼんやりして何も考えられない。
 やがて股間の流水は収まり、女として初めての排尿が終わりを告げた。ほう、と息をつく純に田辺が近づく。手には数枚の白いティッシュが握られていた。
「終わったようだね。拭いてあげるからじっとしていなさい」
「ええっ? ふ、拭くの?」
 思ってもみない申し出に、純の声がうわずった。
「そうだよ。男だったらチン○をぴっ、ぴっと振ればそれでおしまいだけど、女性はそうもいかないんだ。パンティが汚れないようにきちんと拭いておかないとね。そうだろう? 真衣ちゃん」
「は、はい。そうですけど……」
「そ、それなら自分でやるからいいよ。ティッシュ貸して」
 純は拒否しようとしたが、田辺は頑として聞き入れない。純の体を軽く押して尻もちをつかせる。下着をはいていない豊かな尻が畳に当たって弾んだ。
「やだっ。や、やめてっ」
「さあ、後ろを向いてお尻を出しなさい。それとも先生に逆らって、ずっとその姿のままでいたいのかい?」
 卑劣な脅迫を用いて田辺は純を従わせる。泣く泣く体を裏返して四つんばいになり、尻を田辺に向けて突き出した。
 田辺はティッシュを純の股間にあてがい、湿った肌をそっと拭いた。柔らかな紙が純の敏感な箇所を撫で回し、少年だった女を乱れさせる。
「うう、くすぐったいよおっ。あうっ、あふんっ」
 未知の感覚に純は困惑していた。これはただ小便の後始末をしているだけで、決してやましい行為ではないと自分に言い聞かせるものの、女性器に他人の指が触れることで勝手に声が出てしまう。
「これくらい我慢しなさい。別にエッチなことをしてるわけじゃないんだから、落ち着いて」
 そう言いながら、田辺は執拗に純の割れ目をいじってくる。もう拭き終わったはずなのに、今度はティッシュ越しにではなく指で直接性器をまさぐってきた。親しい少女の細い指が股間に蠢くのを感じた。
「ああっ、そ、そこはダメっ。やめてっ。こんなのおかしいよおっ」
 耐えかねて逃げ出そうとしたそのとき、田辺が純の腕を引っ張った。カチャリと小さな金属音がして、両手が背中の辺りで固定された。首を後ろに回して、はじめて手首に手錠をかけられたのだと気づく。冷たい銀色の鎖が純を拘束していた。
「な、何なのこれ。どうしてこんなことをするの」
「ククッ、純くんが暴れるからつけただけさ。これ以上言うことを聞かないと、君はずっと牧野先生の体のまま、元に戻れなくなるよ。それでもいいのかい?」
 二度と元の体に戻れなくなる──その言葉が純の心にのしかかり、全身をわななかせる。圧倒的な恐怖が少年の反抗心を奪った。
「先生、もうやめて下さい。純くんがかわいそうです」
 小動物のように震える純を、真衣が助けようと声をあげた。田辺は一旦純から離れて、悠然と真衣に近寄った。
「何を言ってるんだ。私はただ、男女の体の違いを純くんに教えてやっているだけさ。彼が嫌がるようなことは何もしていない。真衣ちゃんもさっきの純くんの可愛らしい声を聞いただろう。本当に嫌がっているように聞こえたかな?」
 問われて、真衣は言葉を詰まらせる。純が発したあられもない声を真衣も聞いていた。成熟した女が発する嬌声を耳にして、性の知識の乏しい少女が戸惑うのも無理はない。
「しかし、確かに純くんだけに指導するのは不公平だったね。どれ、真衣ちゃんにも男女の体の違いを勉強してもらおうかな。大サービスの特別授業だ」
 田辺は真衣の腰に腕を伸ばし、手際よくズボンのベルトを外し始めた。
「せ、先生。何をするのっ」
「何って、真衣ちゃんのチン○を外に出してあげるんだよ。さっきから窮屈そうにしてるみたいだからね」
 慌てふためく真衣に構わず、田辺は彼女のトランクスの中に手を突っ込んで、自分のものだった男性器を引きずり出す。保健教諭の股間から、勃起した一物が雄々しくそそり立っていた。
「ひいっ。な、何なのこれ。あたしの体にこんなのが生えてるなんて……」
 あまりのショックに真衣はへたり込んで呆然とする。目尻にきらりと光るものが見えた。
「こんなのとは失礼だなあ。大人のチン○を見るのは初めてかい? 格好いいだろう」
「いやあっ、何とかしてえっ」
 真衣は散々嫌がったが、それで股間の陰茎がなくなるわけではない。元は自分のものだった田辺の手に幹を強く握られ、引きつった声をあげる。
「落ち着きなさい。元に戻るまで、これは君のものなんだから。おしっこをするときはこれを使わないといけないんだよ」
「い、いやあ。こんなのいやあ……」
「ククク、真衣ちゃんに男のやり方を教えてあげよう。まずはこうやって、チン○をシコシコしごくんだ」
 田辺は邪悪な笑みを浮かべて、真衣の男性器を刺激しはじめた。細い指を回して幹を握り込み、ゆっくり上下に往復させると真衣の悲痛な叫びが聞こえてきた。
「や、やめてっ。何か変なの。怖いよおっ」
「怖くない、怖くない。気持ちいいに決まってるさ」
「あっ、ああっ。はあんっ」
 笠のような形の亀頭を指でこすられ、女子小学生だった男は喘ぐ。その気になれば腕力で勝てないわけはないのに、真衣に抵抗するそぶりはまったく無かった。両手で顔を隠して迫りくる快感に必死で耐える。
 血管の浮き出た牡の生殖器を丹念に刺激してやりながら、田辺はひたすら笑っていた。
「気持ちいいだろう、真衣ちゃん。いや、答えなくてもわかるよ。こんなにチン○を硬くしてるんだからね」
「あんっ、ああっ。や、やめてえっ」
 真衣の顔は真っ赤になっていた。純は畳に這いつくばったまま、真衣から目が離せない。大きく膨れ上がった陰茎をもてあそばれて泣きわめく友達の姿に見入った。
(すごい。真衣ちゃんのお○んちん、あんなにおっきくなってる)
 成人男性の性器を見るのは初めてではない。小学生の純は家で父親と風呂に入ることがしばしばあった。陰毛の生い茂る父親の陰部を眺めて、「将来は自分もこうなるのか」と思ったこともたびたびある。
 ところが、今、眼前に見える真衣の男根は、とてもそんなものとは比べ物にならなかった。黒い幹は腹に当たりそうなほどにそり返り、エラの張った先端からは糸を引く粘液が漏れ出して、少女の白い手を汚している。凶悪なまでの威容を誇る肉の槍を見ていると、純は下半身に得体の知れない疼きを感じた。
(どうしてなの。体が熱い。アソコがむずむずする)
 自らの女体が発情していることに、少年は戸惑いを隠せない。
「ククク、どうだい真衣ちゃん。もっと気持ちよくなりたいかい?」
 田辺が手を止め、純の顔を見上げた。返事の代わりに男のすすり泣く声が聞こえた。
「いやあ……もういやです。早くあたしたちを元に戻して……」
「元に戻りたかったら先生の言うことを聞きなさい。何でもだ。決して逆らっちゃいけないよ。いいかい?」
「は、はい。わかりました。わかりましたから……」
 両手で目をこすって真衣が応える。精神的なダメージが大きすぎて、田辺に逆らうことができず、ただうなずくしかない。純はその姿を見て、哀れな友達を助けてやりたいと痛切に願った。
「あのう、先生……そろそろボクの手錠、外してよ」
 意を決して口を開くと、田辺は後ろを振り返って分厚い唇の端をつり上げた。見ているだけで気分が悪くなる醜悪な笑顔だった。
「いいとも、外してあげよう。でもその前に真衣ちゃん、こっちに来てもらおうかな」
 田辺に手を引かれて、真衣が純の真後ろにやってくる。うつ伏せになって尻を上げているため、恥ずかしいところが二人に丸見えだ。羞恥心が火照った陰部に体液を分泌させ、股間をしっとり湿らせるのを感じた。
「な、何をするの……」
「真衣ちゃん、純くんのここをなめてやりなさい」
 田辺がそう言って純の割れ目を撫で上げた。突然の刺激に、純は「ひゃんっ」と、かん高い声が出てしまうのを抑えられない。
「な、なんでですか。どうしてそんなことをしなきゃいけないの。第一、そんなところ汚いよ」
「いやいや、大人は皆やってることさ。親しい男女はお互いのアソコをなめ合って愛情を表現するんだ。君たちにはちょっと早いかもしれないけど、体はもう大人だからね。こういう体験を済ませておくのも必要だろう」
 肉づきのいい純のヒップを揉みながら、田辺は真衣に言い聞かせた。そして嫌がる彼女に、当然のようにあの脅迫の言葉を投げかける。
「早くしなさい。何でも言うことを聞くと言ったのは嘘だったのか? そんなに真衣ちゃんが先生の体を気に入ってくれるとは思わなかったな。一生そのままでもいいなんて」
「わ、わかりました。やります。純くん、ごめんね。我慢して」
 真衣は泣きそうな声で詫びて、純の臀部に顔を埋めた。女教師の股間をなめるという背徳的な行為を強いられ、ただ涙を流すしかない。小さな口から伸びた舌が純に触れ、ゆっくり表面をなぞっていった。
「やっ、やだ。やめて、真衣ちゃん。そんなところなめないでっ」
「ごめんね、純くん。ホントにごめんね……」
「あっ、ああんっ。やめてっ、やめてえっ」
 真衣の涙声を背中で聞きながら、純は濡れそぼった女性器を這い回る舌の感触にのたうち回った。ざらざらした粘膜が股の中心を摩擦するたび、体内を電流が駆け巡る。背骨を伝って脳を焦がす刺激に、幼い少年の心は翻弄されるばかりだった。
「あっ、純くんのアソコ、濡れてきた。すごい……おつゆが溢れてくる」
 真衣はたどたどしい舌づかいながら、休むことなく純を責めたてる。純は必死で逃れようとするも、がっしりした真衣の腕に尻を押さえつけられてはどうしようもなかった。唾液でべとべとになった陰部は火傷をしそうなほどに熱い。そのうちに、純の悲鳴に甘い色が混じり始める。
「はひぃっ、ダ、ダメぇっ。アソコがかゆい。ああんっ、おかしくなっちゃうよおっ」
 美雪の肉体で味わう快感に純の意識はかき乱されていた。成人女性のエクスタシーが少年の心に絡みついて、汚れのない魂を淫らな色に染め上げる。もはや純は自分が誰なのかもわからなくなって、「あんっ、あんっ」といやらしい声音で鳴き続けた。
「ククク、純くんはそろそろ限界みたいだな。ほら、真衣ちゃん。君のそのデカチン○の出番だよ。それで純くんのアソコをかき回してやるんだ」
 背後で囁かれる田辺の言葉を、純はひとごとのように聞いた。真衣が息をのむ気配がする。
「そ、そんな。それって、○ックスっていうんじゃ……」
「ためらうことはないさ。純くんはもう君のチン○が欲しくて我慢できないんだからね。子供同士でこんなことをしたらいけないだろうが、今の君たちは大人だから何も問題はないよ。それに、我慢できないのは真衣ちゃんも同じことだろう。そんなにチン○をおったてて、見ちゃいられないよ。さあ、入れてあげなさい」
「ダ、ダメっ、そんなことできない。相手は純くんなのに……好きな男の子なのにっ」
「好きな相手だったらなおさら、チン○を入れてやるんだ。苦しそうな純くんを放っておいて生殺しにするのはかわいそうだと思わないか? ほら、入れなさい。入れないと君たちは一生そのままだよ。純くんを元の体に戻してあげたいだろう。これも全部、純くんのためなんだよ」
「ひ、ひどいっ。ううっ、ごめんね、純くん。入れるからね……」
 尻がぐっと持ち上げられ、とろとろ蜜の滴る女陰に硬いものが押し当てられた。「ああんっ」と艶めいた悲鳴をあげて、純は初めての男を受け入れる。
「ああ──な、何なのこれえっ。熱い、熱いよお……」
 ずぶずぶと音をたてて侵入してくる肉の槍が、少年だった女教師を歓喜させた。いったい何をされているのか頭では理解できずとも、牝の本能が喜びに打ち震えているのがひしひしと感じられた。
「これが純くんの中……あったかくてヌルヌルしてる」
 真衣が腰を突き出し、純の胎内を穿つ。一番奥まで分け入ってくる肉の棒の力強さに膣内がざわめき、法悦の波紋が体じゅうに広がっていく。豊満な乳房が畳に押しつけられて、肺の空気が残らず絞り出された。
「ひい、ひいいっ。お腹が焼けちゃうっ」
 蛙を踏み潰したような悲鳴が純の口から漏れた。身をよじった拍子に肉ひだが竿とこすれ合い、今まで感じたことのない重い衝撃をもたらした。途方もない熱と興奮が体の芯から手足の先まで伝染していく。
 未経験の感覚に純は怖気だったが、うつ伏せに押さえ込まれていてはどうすることもできない。ただ一秒でも早く真衣がこの狼藉をやめてくれることを祈るだけだった。
 蠢動する洞房に急き立てられ、真衣が腰を引く。純の最奥部を貫いた巨根が引き抜かれて、熱い蜜と共に敏感な肉びらをこすり立てた。
「ああ、すごいっ。純くんがあたしのお○んちんに絡みついてくる。気持ちいい……」
「ぬ、抜かないでぇっ。お腹の中が引っ張られて──ああ、おかしくなるっ。ひいっ、はああっ」
 いまだ男のしての経験を持たない少年にとって、熟れた女の体でおこなう交合は激しすぎた。純は開いた口からよだれを垂らしてむせび泣きながら、凶暴な牡と化した真衣に犯され続ける。
「はんっ、はあんっ。真衣ちゃん、ダメっ。動いちゃダメぇっ」
「ごめんっ、純くん。あたし、気持ちがいいの……お○んちんがキュウキュウ締めつけられて、ヒクヒクするの」
 陶酔した男の声が純の鼓膜を揺さぶった。それが彼が幼稚園児の頃からつき合っている少女のものだと、どうしても信じられない。大好きな真衣にではなく下品な保健教諭に犯されているように思えてならなかった。
 だが、ひくついた肉壺でペニスをくわえ込んだ女体は、それでも喜悦の声をあげて悶えてしまう。新米教師の白い肌が火照り、ほんのりと桜色に染まった。
 はじめは嫌がっていた真衣も、純の胎内を二、三度蹂躙すると女を抱く喜びに目覚めたのか、彼に謝罪の言葉をかけることはなくなった。逆に少しでも快感を貪ろうと、積極的に肉棒を前後させて濡れた膣壁を執拗に摩擦してくる。鼻息荒く純を責めたてる中年男の姿に、あどけない美少女の面影を見つけることはもはや不可能だった。
 覚えたての性交に熱中する男女を、田辺は極上の笑顔で観察している。純真な子供たちを堕落させて悦に入る醜い少女の風貌は、人々を惑わす悪魔のようでもあった。
「クククク……二人とも、とっても気持ちよさそうだね。どうだい、先生たちと体を入れ替えてよかっただろう」
 真衣から奪った澄んだ声で話しかけてきたが、それに応える余裕は純にはない。獣のような姿勢で貫かれることに夢中でそれどころではなかった。
「真衣ちゃん、どうかな。大人の○ックスはとっても気持ちがいいだろう?」
「は、はいっ。すごいです。あたしのお○んちんが中でこすれて、腰が抜けちゃうっ」
「そうか、よかったね。でも、もっと下品な言葉を使った方が気分が出るよ。ほら、チン○とかオ○ンコとか言ってごらん」
「オ、オ○ンコすごいっ。はああっ、あたしのチン○が溶かされちゃうよお……」
 両親が聞けば卒倒してしまいそうな言葉を、真衣はさらりと口にする。はしたない言葉を口にして大喜びする元少女は、己の体だけでなく、心までも田辺に奪われてしまっていた。
 牡の欲望に彩られた真衣は、純を陵辱するのをやめない。肉壺の締めつけを味わううちに少しずつ要領を得てきたようで、膣内に埋めた肉棒を焦らすようにゆっくりと引き抜いたかと思うと、半ば辺りまで抜けたところでまた一気に奥まで突き刺し、終わりのないピストン運動を繰り返した。
「す、すごいっ。純くんのオ○ンコ、最高だよ。腰が止まらないっ」
「あっ、ああっ。は、激しい。ボクの体……壊れちゃうっ」
 畳に突っ伏して浅ましい悲鳴をあげることに、いつしか純はこの上ない幸福を感じていた。丸みを帯びたヒップに真衣の爪が食い込むのも、汗を吸ってべとついた長い髪が頬に張りつくのも快い。それほどまでに女の色欲に酔いしれていた。
 淫らな汁の溢れる蜜壺をぐちゅぐちゅとえぐり取られ、純は呼吸すら満足にできなかった。真衣が腰を突くたび、記憶の中から大事なものが抜け落ちていくような錯覚に囚われる。美雪の体で法悦を貪ることで、魂が肉体という器に合わせて形を変えられつつあることに、哀れな少年は漠然と気づいていた。
(このままじゃ、ボク、心も体も牧野先生になっちゃう。牧野美雪にさせられちゃう)
 自分が自分でなくなることに言い知れない恐怖を覚えたが、その恐怖さえ官能の濁流に押し流されて消え去ってしまう。頭の中が空っぽになって何も考えられなくなる。
「ああっ、純くん、いいっ。純くん、好きっ」
 真衣は叫び、いっそう強く純を突き刺す。真衣の太い腕が純のきゃしゃなウエストに回され、二人はきつく密着する。肉の杭が女体の奥深くに打ち込まれ、子宮を圧迫した。
「はああっ。お、奥に当たってるよおっ。あんっ、ああんっ。ああああっ」
 女教師の口から舌と一緒に肺の中身が吐き出され、視界を赤く染め上げた。目の前に星が舞って絶頂の高みへと連れ去られる。甘美な脈動が全身を包み、純は女体のアクメに酔いしれた。
 自分が子供を宿せる体であることに彼は気づかない。だが、深々と自分を貫いた真衣の陰茎が、何かの前兆のように痙攣しているのをはっきりと感じた。
「も、もうダメっ。何かくる──ごめん、純くんっ!」
 性器の震えが真衣の体全体に広がったとたん、純の胎内で熱いものが弾けた。保健教諭の肉棒がマグマのような灼熱の奔流を噴き出し、卑猥な音をたてて女教師の子宮に注ぎ込んでいく。純の体は歓喜におののき、真衣の男をぎちぎちに締めつけて残った精液の最後の一滴まで搾り取った。
「あああっ、熱いよ。お腹が熱い……でも気持ちいい。ううん……」
 純は夢見心地でつぶやき、真衣に抱かれて横になる。激しい性行為が二人を心身ともに疲労させていた。視界を黒いカーテンが覆い、荒い息づかいと心臓の鼓動以外は何も感じなくなる。赤いスカートをはいた少女に見守られながら、女教師と肉体を交換させられた少年は意識を闇に沈めた。



■続く■



inserted by FC2 system