夜の自室で、啓一はパジャマ姿でベッドに腰をおろしていた。 学校の授業に部活、夕食、風呂に勉強と、忙しくも充実した一日が終わり、あとは寝床について安らかな眠りを享受するだけ。 ベッドに座る啓一の表情は、波紋一つない湖面のようだった。 確かに端正な顔立ちではあるが、それが彼が異性に好かれる、決定的な理由ではない。 啓一が普段から身に着けている、包容力に満ちた優しい物腰。男に対しても女に対しても気取ることなく、自然と相手を尊重できる感性。 啓一のそういった部分に、周囲の人間は魅力を感じるのである。 そしてそれは、彼、水野啓一以外の男が決して持つことはできない要素だった。 「んっ……はぁ、んんっ……」 ベッドの傍らには、やはり冬物のパジャマを着た恵がひざまずき、啓一の下半身に顔を寄せ、何かの行為に熱中していた。 その行為は二人にとってはごく自然なものらしく、じっと恵を見下ろす啓一の顔には、安らぎに満ちた微笑みが浮かんでいた。 啓一の手が伸びて、妹の細い黒髪をそっと撫でる。 彼のそれと同じ色で、そして彼よりも長く繊細な、日本人形を思わせる艶やかなストレートヘア。 力強い啓一の手と指が、そんな恵の黒髪を優しくとかしていく。 「恵……」 啓一が呼ぶと、恵は上目遣いに彼を見上げた。 兄によく似た、整った顔立ち。啓一と同じ色の髪と瞳。 生まれたときから啓一のそばにいる双子の妹、そして彼の半身の少女。 恵は啓一の体から口を離し、ふわりと笑って言った。 「ふふっ……ねえ、私もいい?」 「ああ、上がってこいよ」 その言葉に恵は嬉しそうに微笑み、ベッドの上、兄の隣に腰を下ろした。 そして横にいる啓一に見せつけるようにゆっくり、じっくりとパジャマを脱いでいく。 扇情的な光景ではあったが、不思議と下品な印象はまるでなく、寝巻きの下から現れた下着も、優美な笑顔も、どこまでも清らかだった。 ブラジャーもとろうと手をかけた恵の体を、不意に啓一が抱き寄せた。 「あっ……」 軽く声をあげた恵の白い首筋に、舌を這わせる啓一。 熱い唾液を塗りたくられるひんやりした感触に、彼女は身を震わせた。 「ん、んんっ、啓一――跡、残さないでね?」 「わかってる」 胸元と首、そして頬から耳へと、妹の体を丁寧に味わっていく。 啓一の体液が皮膚の表面から、恵の内部へとじわじわ染み込み、強力な媚薬となって彼女の身を火照らせていった。 顔を赤くして自分の愛撫を受け入れる恵を、啓一は満足げな表情で眺めていた。 「ほら、こっち向いて」 「ん……んっ、んううっ」 細い顎をつかみ、軽く上を向かせた唇にそっと自分のを重ねる。 合わさった口の中で入り混じった呼気が熱を帯び、二人の体を温めた。 吸って、吐いて、吸って、吐いて。 足りない酸素は鼻から取り入れるしかないが、その呼吸でさえいとおしい。 恵は、兄の呼気を体内にたっぷり取り込むと、一度、彼から口を離した。 「もう……いきなり何するのよ。私、今まで啓一の舐めてたんだから、汚いじゃない」 「ちゃんと風呂には入ったじゃん。それに俺もお前も、汚いなんて思ってない……だろ?」 啓一は悪戯っぽく笑うと、再び恵の唇を奪った。 今度は彼女の中に舌を差し入れ、緩慢な動きで口内を犯していく。 恵の方もそれを嫌がりもせず、とろんとした目を細め、啓一の舌に自分のそれを絡めた。 繋がった兄妹の口の中で、唾液に濡れた一対の舌が、円を描いて淫らに踊る。 「ん……んんっ、んふっ、んっ」 兄との接吻にふける恵の表情は、至上の幸福に満ち満ちていた。 啓一と体を繋げ、互いの呼気を、互いの唾液を混じり合わせる。 心も体も満たされる、最高の行為。 二人は夜の静寂の中、時を忘れてお互いを貪り合った。 「んあっ、はあ……はっ、はあっ……」 やっとのことで長い口づけを終えると、恵は啓一と抱き合い、彼を見上げた。 自分とよく似た双子の兄が、穏やかな眼差しで彼女を見つめ返している。 しかし恵は、啓一のことが兄だから、双子だから愛しいのではなかった。 実の兄妹であることも、こうした肉体関係も、二人の精神的な結合に比べたら些細なことだ。 単なる血縁ではなく、同一の心を共有した相手だからこそ愛しいと思い、日々こうしてお互いの心の繋がりを、体を使って確かめ合うのである。 結局のところ、自分はただのナルシストなのかもしれない、と恵は思う。 啓一という鏡に自分を映して、満足しているだけの卑怯者なのかもしれない。 他人を愛すること、恋愛という当たり前の行為に没頭できる普通の人々に比べ、自分はなんと臆病で、なんと醜い存在なのだろうか。 たとえば今日、啓一を訪ねてきた少女、渡辺ヒカル。 ヒカルは今まで啓一とろくに面識もなかったが、ヒカルが啓一に対して思慕や憧れに近い感情を抱いていたのは、誰の目から見ても明らかだった。 好意を自覚するとすぐさま行動に移す、年頃の少女に特有の無鉄砲な勇気。 それは、とても恵には真似のできない行為だった。 あの真っ直ぐな少女と比べると、恵は自分の矮小さ、心の歪みを自覚せざるをえない。 「啓一、私……」 恵は啓一のことを愛していた。兄としてではない。ただの男としてでもない。 家族としてではなく、他人としてでもなく、だが確かに、恵は啓一のことを愛していた。 誰よりも好きで、誰よりも愛していて、そしてそれは何よりも異常なことで。 知らない人間が見たら嫌悪し、知る者が見れば怖気が走る、狂気に満ちた二人の関係。 そこにあるのは誰が見てもはっきりわかる、激しく燃え盛るような狂気ではなく、逆に、黒く深い愛情に静かに耽溺するような狂気でもなかった。 だからこそ、自分は他の誰よりも、何よりも狂っているのだと、恵は静かに涙した。 生まれたときからねじれて歪み、存在そのものが常軌を逸していた、恵と啓一。 そんな狂った兄妹が、今、二人っきりで自分たちの身と心を慰めている。 不安と劣等感に苛まれ、抱きしめた啓一の背中を思わず強く締めつけてしまった恵だったが、彼は彼女の全てを理解したかのような、慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、言った。 「わかってる。わかってるよ……恵」 「啓一……」 「お前は臆病者でも、卑怯者でもない。そんなに自分を貶めるな。お前はひとりじゃないんだ。俺がそばにいる。ずっとそばにいてやるから……。だからそんな顔、するんじゃない」 恵の肩に腕を回し、優しく頭を撫でる。 それだけで恵は、半分に欠けた自分の心が、温かいもので満たされていくのを感じた。 「啓一、私……」 兄の胸に顔をうずめ、彼の体温と鼓動を直接感じ取る。 薄暗い部屋の中、恵は自分の下着を脱ぎ捨て、一糸まとわぬ裸体を露にした。 雪のような白い肌を火照らせる、桃色の春の息吹。 啓一は片方の乳房を手のひらでそっと撫でると、もう一方の塊に唇を寄せた。 白い脂肪の表面を唇で軽くこすり、焦らしながら慎重に恵を責める。 「んっ……」 恵は目を閉じ、心の底から信頼しきった表情で兄に身を委ねた。 自分の意に沿わないことを啓一は絶対にしないという確信が、彼女にはあるようだった。 そして事実、啓一は妹の乳房を丁重な仕草で食み、緩慢な快感を恵に与えてくる。 啓一の唾液が冷ややかな感覚となって、恵の肌をかすかに震わせた。 「寒いか? 上、もっかい着た方が……」 「大丈夫」 下半身だけを外気に晒した啓一と違い、恵は素裸であったが、寒さを気にすることもなく、硬くそそり立った彼の性器に指を這わせ、うっとりした声で言った。 「啓一があったかくしてくれたら、それでいいよ」 「わかった」 啓一はうなずくと、愛撫のペースを少し速めた。 恵の胸を揉みながら乳首を吸い上げ、優しくも激しい動きで彼女を高ぶらせていく。 「んっ、んん――あ、ああっ、んっ」 軽く、生まれたての赤子を扱うように丁重に、乳房の先端を甘く噛む。 どこを責めればいいか、どこを触ればいいか、どこに刺激を欲しがっているか。 啓一は恵の全てを理解していた。体だけではなく、その心の隅々まで。 つんと上を向いた乳房から口を離し、唾液の線を虚空に引いたまま、啓一が言った。 「下も……いくよ」 「うん」 恵の秘所に触れてきた啓一の指は、興奮ゆえか、少し温かかった。 人よりやや薄めの茂みと、その下で待ち構える肉の唇を、筆ではくようにさわと撫でる。 啓一は恵の反応を楽しむように微笑むと、彼女の下腹部に右の手を押し当て、人差し指と中指の腹を女陰にこすりつけ始めた。 既にうっすら濡れ始めている恵の陰部が、兄の手によってだんだんほぐされていく。 起きている間は部屋を照らしていた蛍光灯は、とうの昔に光を失い、代わりに傘の真ん中の小さな灯りが、夜の室内にぼんやりした陰影を漂わせていた。 白い肌が白く見えず、体の火照りも確認しにくいこの空間で、彼ら双子の兄妹は心細い視覚に加え、柔らかな手触りと吐息混じりの音声と、そして他人には決して理解できない、奇妙な感覚で相手と繋がっていた。 「あ、あっ、んっ、啓一……」 兄の指で大事なところをかき回され、恵が熱い声をあげた。 普段、学校の皆が決して聞くことのない、かん高くて可愛らしい喘ぎ声。 口を開いた陰唇の中、恵の内部に指を侵入させながら、啓一は彼女をベッドに押し倒した。 とさっ――恵の軽い体が寝床の上に転がって、弱々しい音を響かせた。 長い髪が黒い川となって白い大地の上を蛇行し、扇状に広がっていく。 啓一はベッドの上に寝転がった恵の秘所をいじりながら、彼女の体にゆっくりと覆いかぶさると、またもその唇に自己のそれを重ねた。 「ん――んっ、んん……」 乱暴にではなく、激しくもなく、ただ唇をそっと重ね合わせるだけ。 貪るような情熱に溢れたキスも、唾液を混ぜ合う接吻も嫌いではないが、本当に相手を必要だと感じ、お互いを切なく求め合うとき、このような、ただ静かに触れ合うだけの繋がりを、二人は気に入っていた。 恵も啓一も、安らぎと心地よさに自分自身と相手を委ね、無邪気な子供のような微笑ましさで、自分たちの影を一つに重ねた。 それから啓一は、恵の唇といい陰唇といい、乳房から首筋にかけてまで、彼女が求める部分をくまなく愛撫して回った。 彼の指と舌は喘ぐ恵を優しく、だが執拗に責めたて、普段は慎ましやかな妹を存分に、淫らに鳴かせてやった。 そして時おり攻守を入れ替え、恵が啓一に奉仕する。 慣れた手つきで彼の陰茎をしごき上げ、袋を揉みながら亀頭に口づける。 小さな口を精一杯開けて啓一の太いものをくわえ込み、舌で彼を苛んでいく。 性器だけでなく、啓一の寝巻きを剥ぎ、厚い胸板や腹筋を丹念になめ、彼を高ぶらせていく。 やがて二人は官能に陶酔しきった表情で見つめ合うと、音もなく体を交わらせていった。 「啓一……」 恵が物欲しげな声で兄の名を呼び、そのたくましい首に両腕を回した。 啓一の上に座り込む姿勢で、彼の上にゆっくりと腰を下ろす。 「恵……」 啓一の方も劣情を含んだ眼差しで恵を見つめ、その両脚を抱え上げた。 恵の体を自分の上に、屹立した自分の肉棒の上に、注意深く下ろしていく。 そしてよだれを垂らした恵の陰部が、兄の男性器を受け入れた。 軽いとはいえ人間一人分の重力が、一気に結合部にかかり、深く深く恵を貫く。 急な角度での挿入に、必死に閉じた恵の唇をこじ開け、甘いうめきが漏れていった。 「ん――ん、んんっ、んううっ」 完全に彼の上にのしかかり、苦しげだが満足げな吐息をつく。 豊かな乳を啓一の体に押し当てて潰し、その形を扁平に歪ませる。 啓一にぐっと抱きついた恵は、自分の中が兄のもので満たされているのが嬉しいのか、彼の肩に自分の顎を乗せるとにっこり笑ってみせた。 結合を果たした二人は、影を重ね合わせたまま、しばらく動かなかった。 お互いの温もりに抱かれながら、きつい抱擁を交わして呼吸を同期させる。 「ん、はあ、はあっ、啓一ぃ……」 「中――キュウキュウって、熱いな……」 「うん、だって啓一の……一番奥まで入っちゃってるもん」 恵の体の欠けた部分を、啓一の突起が満たす。 女としての本能以上に、愛しい者を受け入れる喜びの方が強かった。 啓一の体にしがみついて荒い息を吐く恵の姿は、狂おしいほど淫靡でありながら、日ごろの清楚なイメージはいささかも損なわれていなかった。 むしろ今の笑顔の方が、慈愛溢れる聖母のような温かみさえ感じさせる。 やがて待ちかねたのか、兄と一つになっていた恵が徐々に動き出した。 啓一と抱き合いながら、腰をすりつけて中をかき混ぜる。 「は、はあっ……んっ、あ、ああっ」 「恵……気持ちいい」 「んっ、わ、私もっ、あんっ」 啓一の上でゆさゆさ体を揺さぶって、深い快感を全身で感じ取る。 同じ親から同じ日に生まれた男を自分の中に受け入れて、恵が可愛らしい喘ぎ声をあげると、啓一も安らかな笑みを浮かべて恵を抱きしめ、彼女の中をこねくり回す。 二人が動くたびに長い黒髪が揺れて、薄闇の中に細い線を踊らせた。 双子の兄妹は至福の表情で性交にふけり、快感と幸福とに酔いしれた。 性器を繋げたまま、またも口唇を合わせて互いの唾液と吐息を混ぜ合わせる。 「んっ、んむぅっ、んっ、んんんっ!」 恵は啓一の猛々しい肉棒の上に座り込み、優しくも力強く、自らの中をかき回した。 ひたすら腰を前後に動かし、兄の体に自分の身をこすりつけて、自分が一番感じる、一番気持ちのいい部分を丹念に刺激する。 「んっ、んあっ! んんっ、んんんんっ !!」 喜びのあまり恵の目から涙がこぼれ、両の頬に細い筋を形作った。 もちろん啓一の方も、ただ座ったままじっとしているわけではなかった。 体の重心を緩やかに上下させ、愛する女の中を何度も何度も、丁寧に突き上げる。 生まれてからずっと啓一のそばにいた、彼の分身と言える少女、恵。 優しくて繊細な彼女が、自分と体を重ねて恍惚の声をあげるさまは、啓一がこの世で最も魅せられる光景だった。 恵の頭を自分の肩に押しつけ、その柔らかな耳たぶをそっと噛むと、彼の妹は背筋をぶるぶる震わせて、甘い嬌声をあげた。 「ひあっ! はあぁ、啓一ぃ……」 二人の結合部は卑しい体液にまみれ、熱い蜜が溢れていた。 その中を硬い肉の槍が往復し、音を立てて恵の膣内をえぐっていく。 「恵、いい……気持ちよすぎて、ヤバい……」 「わっ、私もっ、わたしもぉっ! はあ――い、いいっ!」 恵は涙を流して唾を吐き、啓一と共によがり狂った。 恵は啓一のことを愛していた。啓一のことを誰よりも好きで、誰よりも愛していて、そしてそれは何よりも異常であることを、恵自身が自覚していた。 だが、これも確かな愛情なのだ。愛しい、いとおしいと思う心なのだ。 啓一が好きだ。誰よりもお互いを理解している間柄だ、今さら離れられるはずもない。 そしてそれは啓一もまた同じ。二人は表裏一体、一つの存在なのだから。 生まれたときからねじれて歪み、存在そのものが常軌を逸していた、恵と啓一。 そんな狂った兄妹が、今、二人っきりで自分たちの身と心を慰めていた。 やがて、隅々まで妹の中を蹂躙した啓一が、かすかに震える声で言った。 「恵……そろそろ、いくぞ……?」 それに答える恵の返答も、歓喜に満ちていた。 啓一の体にひしと抱きつき、全身を弓のように引き絞って哀願する。 「うん、啓一――私の中、きて……」 若い牡をくわえ込んだ女性器が収縮し、射精を要求してやまない。 自分を求める双子の妹の望みに、啓一はふっと柔らかい笑みを浮かべると、恵の中に自分の濃厚な子種をたっぷりとぶちまけた。 「ああっ、あっ、んあぁ――あ、ああっ、あっ」 乾いた旅人がオアシスの泉に飛び込んだとき、きっとこういう顔になるのだろう。 恵は最愛の相手に抱かれたまま、狂おしいほどの笑顔で弾けとんだ。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 愛の営みを終えた二人は、甘くとろけた呼吸を部屋に響かせながら、互いにベッドの上で寄り添いあい、幸せなひとときを過ごした。 恵は行為の後、いつも以上に啓一に甘えたがる癖があった。 今もべとべとの体を啓一にくっつけて、悪戯っぽい表情で笑っている。 「ふふっ、啓一……大好き♪」 「その顔でそんなこと言わないでくれ。またしたくなるだろ?」 「いいよ。啓一がしたいなら、何回でも」 「毎日毎日、そう何発もできないって。ただでさえ睡眠時間削ってるのに」 「えー、そんな意地悪言わないでよ。ほら、もっかいしよ?」 「だからもうできませんって。ほら、後始末してそろそろ寝るぞ。まったく、さっきまであんなにメソメソしてたってのに、もうこれだからな」 啓一は体と心で繋がった妹の顔を見つめ、呆れた口調で言った。 一方の恵は啓一の頬を優しく撫で、明るく、だがわずかに憂いを帯びた声で言い返した。 「啓一――私ね。今、すごく幸せ。ずっと啓一とこうしていたい。ホントはダメだって、やっちゃいけないことだって、わかってるのにね」 「恵?」 「私の心も体も、全部啓一のものだよ。生まれてからずっと、これからもずっと。だって私はあなたの半分で、あなたは私の半分だから」 安らかで、幸せそうで、そして少しだけ悲しげな声だった。 なめらかな黒髪が白い肌の表面をつたい、音を立てずにふわりと揺れる。 「みんなが私たちのこと、勘違いしてる。何でもよくできる兄妹だって。仲のいい双子の兄妹だって、お母さんもお父さんも、そう思ってる。ホントは全然違うのに」 「…………」 「幸せだけどちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、寂しい。ねえ啓一、もっとあなたをちょうだい。また一つに戻ろうよ」 「そしたらもっと寂しくなるだろうな。お前もわかってるんだろ? だってお前は、俺の半分なんだから」 「啓一、私……」 啓一は黙って、妹の裸体をかき抱いた。 恵の白い頬に手を這わせ、そっと唇を合わせると、その目から一筋の雫がこぼれ落ちた。 兄と妹。二人の夜はいつもこうして更けてゆく。 火照った体を交え、実のない言葉を交わし、そして互いの心と体を慰め合う。 これが日々繰り返される、啓一と恵の予定調和だった。 続きを読む 前のを読む 一覧に戻る |