王女オリヴィア 1

 暗く薄汚れた部屋には窓がなく、四隅にある燭台だけが狭い空間を照らしていた。冷たい石造りの壁が息苦しさと不安をかきたてる。
「きゃあっ !!」
 屈強な男たちに乱暴に床に投げ出され、彼女は悲鳴をあげた。
 純白のドレスと長く繊細な銀の髪が床と不本意な接触を強いられ、抗議するかのように炎を受けてきらめいた。
「――大変失礼致しました、姫」
 男たちの後ろにいる、闇色の人影が慇懃に言葉を放つ。
 だがその声は醜悪な暗い意思にまみれ、逆にその礼儀がこの人物に対する不信と憎悪を煽り立てることとなった。
「ですが、姫様は陛下の一番愛する存在。警備も厳重でございます。少々手荒な事をしなくては、おいでいただけないと存じまして」
「それで――わたくしをかどわかしたと言うのですか !!」
 精一杯の気迫を込めて相手をにらみつける。
 しかし普段は宮廷で穏やかな生活を送る姫君、高貴だがまだ幼い顔立ちが男たちを怯ませる事はなかった。
「ご安心を。お命をいただくつもりはございません。お望みとあれば、いずれは城に帰して差し上げます」
「邪悪で卑劣な魔導師の言う事など、信用できるものですか !!」
 オリヴィアは王国の第三子、王にとっては初めての娘である。国王は彼女を大変に可愛がり、目に入れても痛くないほどだ。まだ十歳を過ぎたばかりだが容姿・英才共に優れ、皆を愛する優しい慈悲の心も持った、宝石のような姫君だった。やがては近隣諸国から求婚の誘いが波のごとく押し寄せるのは間違いない。
 それが今、このような場所で蜘蛛に囚われた蝶になっている。
「答えなさい !! あなた達は誰の差し金で動いているのですか !?」
 虜囚の身になっても、オリヴィアは王族の誇りを失っていなかった。大人びた口調で男たちを激しく問い詰める。
「――ククク……さすがは陛下の御子、オリヴィア様。弱冠十歳にしてこれほどのお強さとは……感服致しました」
「答えなさい !!」
「申し訳ございませんが、お答えできません。なるべく穏便に事を済ませたい考えでございまして……」
「く……では、わたくしをどうするつもりです !?」
 身代金が目当てなのか。そう尋ねるオリヴィアに、魔導師はローブの奥に隠された頭を横に振った。
「いいえ――我々は姫君にも陛下にも、何もお求めするつもりはございません」
「では、なぜわたくしを――」
「すぐにおわかりになります。クックック……」
 顔は見えず、声もくぐもっているため黒い影は老人なのか若者なのか判別できなかった。

 夜の街を一人の女が歩いていた。
 大きな黒いコートをまとった、ショートヘアの栗毛の女である。けばけばしい化粧を施した顔に作り笑いを浮かべ、通りの酒場を回っていた。目的は、一夜を共に過ごす男を探すこと。それもなるべく裕福な男を。
 ハンナは最近この街にやってきた娼婦だった。
 熟れた女体をいつでも披露できるよう、コートの下は何も着ていない。前の町でも彼女はそこそこ人気があったが、都にも近いこの賑やかな街ならばもっと稼げるに違いない。ハンナにはその自負と実力が充分に備わっていた。
「よう姉ちゃん、いくらだい?」
 そこへ声をかけてきた、見るからにごろつきとわかる男が一人。好みでも何でもないチンピラだったが、これも商売である。女は男に一夜の彼女の金額を告げた。
「へへ、倍出してやるよ――」
 美味い話はまず疑え。怪しむハンナに男は続けた。
「なに、知り合いの旦那が女を探していてね。奥方が怖いらしく、口止め料も込みってわけさ」
 男に悟られぬよう、心の中で彼女は歓声をあげた。金持ちの親父をたらしこむなんて容易なこと、上手く立ち回ればいくらでもふんだくれそうだ。
 ハンナは喜んで、男と共に夜の街へと消えていった。

 固く閉じた扉が開かれ、再び黒い魔導師が姿を見せた。
「――今度は何用です !!」
 気丈な振舞いを見せるオリヴィアに漆黒のローブが答える。
「ククク……ようやく準備ができまして」
 そのとき先ほどの男たちに連れられ、二人の人物が部屋に入ってきた。
 一人は目つきの悪い、暴力しか頭になさそうな無頼漢。もう一人は黒いコートをまとった厚化粧の女である。共にオリヴィアが普段目にしないような下賤の輩だった。
「何だってのさ――こんなところに連れてきて」
「まあ、ちょっと待ちな。すぐだからよ」
 見た目通り下品な言葉使いの女に、連れの男が答えた。
 仲間を増やしてどうしようというのか――。
 オリヴィアは厳しい目でにらみ続けたが、ささやかな抵抗に過ぎない。
「ご苦労だった、お前たちは下がれ」
 魔導師がそう告げると、物も言わず男たちは部屋を出て行った。湿った部屋に残されたのは、魔導師とごろつきと女、そして自分だけだ。
「――では始めましょう。つきましては、姫様には少々お休みいただきたく存じます」
 やはり慇懃な口調で言うと、魔導師は何かつぶやいた。
 すると、かがり火に照らされた闇の中から一筋の黒い煙が噴き出した。それはたちまちオリヴィアを取り巻くと、美しく整った鼻や口に遠慮なく侵入を開始する。
「な……何を――」
 意思を持つかのように広がる不気味な煙に、彼女は危険なものを感じた。だが煙を吸うにつれ、だんだんとオリヴィアの意識は遠のいてくる。
(う――だ、駄目……)
 つぶらな瞳が閉ざされ、王女のか細い体が床に倒れこんだ。
 そのそばには先ほどの女も眠らされ倒れている。 「クックック……いよいよだ」
 魔導師は横たわる姫君と娼婦を前に、不敵な笑い声をあげた。
 隣では壁にもたれた男がやはりニヤリと笑みを浮かべている。
「――――――」
 常人には理解できない言語で綴られた呪文が暗い空間を覆う。隅の燭台だけがわずかな明かりをその場に投げかけている。
 やがて、倒れたオリヴィアとハンナの体がかすかに光り始めた。
 王女の体は、身にまとったドレスと同じ白い光を。娼婦の体は、黒く濁った、けばけばしい赤い光を放っていた。
「――――――」
 呪文は続く。それと共に二人の体の輝きも強さを増していった。その光は煙のようにそれぞれの体を取り巻き、ゆらめいている。そしてその輝きが最高潮に達したとき――。
「………… !!」
 魔導師が闇の衣に包まれた腕を振り下ろした。
 邪悪な意思に満たされた魔導師の動きに、二人が変化を見せた。
 それぞれの体から発せられていた光が、主を離れ動き出したのだ。まるで何かに操られているかのように移動を始め、白い光は黒い娼婦に、赤黒い光は銀髪の王女に、占める場所を入れ替える。
「ククク……いいぞ……」
 不気味な笑みを浮かべた魔導師が見守る中、それぞれの光は新たな持ち主にたどり着くと、ゆっくりと吸い込まれるように消えていった。
「ククク……ハッハッハッハ…… !!」
 楽しくてたまらない。黒い影の高笑いが石の壁に反響した。

 儀式は終わった。数分と経たぬうちにハンナの体がピクリと動き、
「う……ん……」
 黒いコートに包まれた長身を起き上がらせた。
「フン、お目覚めだな」
 ずっと傍らで黙っていた男が、待っていたかのように娼婦に声をかける。床に手をつき、アンナは薄暗い部屋の中を見回した。
「あ、わたくし……は……」
 呆けたような言葉を発し、ようやく意識が覚醒したらしい。女は凛とした表情で再び魔導師をにらみつけた。
「……どうやらあなた達に眠らされていたようですね。怪しげな魔術でこのわたくしを弄ぶつもりですか?」
 気丈に問う彼女に、魔導師は不思議なことを言い出した。
「クックック……はて、あなた様はどなたでしたかな?」
「何を言っているのです。あなたがかどわかした王女オリヴィア、邪な言葉で嬲るのもいい加減になさい」
 娼婦は真っ直ぐに魔導師を見つめ、笑い続ける彼を咎めだてた。
 しかしその態度すら、二人には可笑しいらしい。下卑た笑みを浮かべたチンピラが彼女に近寄ってきた。
「へっ、何を言ってるんだ。お前は」
「!? 無礼な―― !!」
「お前が姫様だと? はっ、笑わせやがるぜ」
 戸惑うハンナのコートをつかむと、男は乱暴にそれを剥ぎ取った。
「きゃあっ !!」
 悲鳴があがり、女の裸体が荒々しく床に転がった。
「こ、こんな事をして、ただで済むと――」
 なおも言い続ける娼婦を男は力任せに押さえ込む。
「よく見てみろよ、王女様。自分の体をな」
「―― !?」
 組み伏せられたまま、ハンナは自分の体を見下ろした。
 いつの間に脱がされたのか、一糸まとわぬあられもない姿にされていることに怒りを覚えつつも、彼女が驚いたのは別の事にだった。
「……きゃああっ !? な、何ですこれは !!」
 見下ろした視界の何分の一かを占める、巨大な二つの肉の塊。それが自分の胸部から生え、たぷんたぷんと下品に揺れている。乳首の周りには黒々とした乳輪が広がり、いやらしさをいっそう強調していた。
「――わたくしの、胸……?」
 むっちりした乳房の向こう側、下半身もまた驚くべきものだった。まだ生えてもいないはずの陰毛がびっしりと股を覆い、醜い姿を晒している。その先からは艶かしい太ももが伸び、美しくも淫らな脚線美を形作っていた。
 いずれを見ても、自分の姿とは思えなかった。
「気に入っていただけましたかな? その体は」
 女の動揺をよそに、魔導師が静かな声をかけた。
 呪文を一つ唱えると、ハンナの前に透き通ったガラスのような板が現れる。そこには、こちらを見つめる厚化粧の女の裸体が映っていた。
「………… !!」
 ハンナは声ならぬ声をあげたが、男にがっちりと押さえ込まれていてまったく動くことができない。
「私の編み出した魔術でしてな。その下賤の者の肉体に姫様の魂を移しこんだのです」
「わたくしの……魂を…… !?」
 苦しげにうめくハンナを男は無理やり押さえつけ、手足を荒縄で縛り上げてしまった。
 肌に食い込むロープの痛みに彼女が顔を歪める。
「いかがですか、卑しい商売女になった御気分は」
「――も、元に、元に戻しなさいっ……!」
「ふへへ、こりゃあ面白えや。デカいチチも素敵だろ、姫様?」
 男は後ろから女の豊満な乳房をわしづかみにした。
「いやぁあぁっ !! や、やめてっ !!」
 力任せに双丘を揉み潰され悲鳴をあげるハンナ。その口から出るのは澄んだいつもの声ではなく、彼女が初めて聞くハスキーな大人の女の声である。
「見た目は慣れた淫売だが、へへ、やっぱり中身はまだガキだな。安心しな、俺がたっぷり仕込んでやるからよ」
 乳首をつまみあげられ、そう言われる。
(ああ……わ、わたくし―― !! お父様、神様、どうかお助け下さい…… !!)
「う……あ……」
 部屋の隅で少女の体が目覚めたのはそのときだった。
「――待てロイ、しばらくお預けだ。ちゃんと見せて差し上げろ」
「ちっ、タイミング悪ぃぜ」
 ハンナからわずかばかり離れた場所で、白いドレスの少女が起き上がった。長い銀の髪が妖精のように伸びた、高貴な顔立ちの娘である。
(わ、わたくしが、あそこに――)
 冷たい床に腰を下ろしたまま少女は口を開いた。
「……あー、一体どうしたってんだ?」
 水晶を思わせる、透き通った高い声音でそうつぶやく。大きな空色の瞳を細め、けだるげにキョロキョロする。やがてオリヴィアはハンナの後ろに目を向け、
「おい、あんた。あたいに何したんだ? 人を誘っときながら別の女に手を出しやがって……早くあんたを雇った旦那とやらに会わせとくれよ」
 と、まるっきり品のない言葉を吐いた。
「いかがです? 王女様のお体を動かしているのはその肉体に入っていた、下賤な売女の魂でございます」
「ああ……」
 あまりの衝撃にハンナがガックリと肩を落とす。気品の欠片もない王女に問われた男は、 ハンナを羽交い絞めにしたままで答えた。
「ああ、旦那ならそこだ、ローブを着ている人だ」
「何だって? ……ああ、あんたかい――って、いつの間にこんな服着せたんだ? 高そうなドレスだけど、鬱陶しいったらありゃしない。これじゃまるで、どっかのお姫様じゃないか」
 魔導師の前で自分の服装に文句を並べ立てるオリヴィア。細い白銀の髪が揺れ、炎を浴びて赤くきらめく。
「……クックック……」
 そんな彼女を見て、魔導師は静かに着ていたローブを脱ぎ捨てた。
 闇の中から現れたのは、意外にもまだ若い青年だった。
 黙っていれば充分に美男子と言えるだろう。しかし顔に張り付いた暗い笑みがそれを台無しにしている。
「すまなかったな。細かいことはあまり気にしないでくれ。――それでは、早速してもらおうか」
 魔導師は衣服の隙間から自分の陰茎を取り出した。彼そのものかのように黒々と不気味にそそり立ったそれは、男の裸など見た事のないハンナには恐ろしくグロテスクに映った。
(あんなものが……殿方には生えているの…… !?)
 炎に照らされる肉棒の姿に、ハンナは思わず息をのんだ。
「あいよ、楽しませてやるさ」
 鈴の音の声で王女が答え、魔導師の前にひざまずくと可愛らしい口をいっぱいに広げ、魔導師の陰茎をくわえこんだ。
「……ん、む……はむ……」
 おかしい。肉棒を味わいながらオリヴィアは不思議に思った。このぐらいの太さ、普段なら難なく口に入るものを――。
「――いやあっ !! や、やめなさい !!」
 動けないハンナが必死に叫ぶ。もちろん性の知識がある訳もないが、淫靡に動く自分の体に本能的な危機感を覚えたのだ。
 だが銀髪の姫君は聞く耳を持たない。
「ぷはあっ……おかしいねえ、どうも調子が悪い。でも安心しな、別のテクを披露してやるから」
 オリヴィアはニヤリと笑うと、今度は小さな口から舌を伸ばしぬれそぼった男性器をなめ始めた。
 ――ペロ、ちゅぱ……レロ……。
 民から敬愛されている年端もいかない深窓の令嬢が、自らすすんで邪悪な魔導師の陰茎を犬のようになめ回している。それは美しくも乱れた、実に背徳的な光景だった。
「やめて、やめて下さい、わたくしの体で !!」
「ん……ペロ、じゅる……」
「ククク……ハハハハハ !!」
 この上なく上機嫌で魔導師が笑っている。
 対するハンナは依然男に縛られたままで、目の前で繰り広げられている痴態を止める事もできない。
「ククク……長かった、長かったぞ !! 幼い頃より魔術の道を歩み始め……今、ようやく 我が願いの叶う時が訪れたのだ !!」
 何言ってるんだい、うるさいねえ。
 王女はそう言いたげに、肉棒の先にキスをした。
「――奉仕はもういい。次はお前の体を楽しませろ」
「あいよ、お待ちかねだね」
 淫らな顔の王女がうなずいた。
「ん……クソ、このドレスどうなってんだい? ちっとも脱げやしないじゃないか」
「手伝ってやる。――ほら、これでいいだろう」
「!! ――何だい、こりゃあ !? あたいの胸、どこいっちまったんだ !?」
「寝てる間に失くしてしまったんだろう。俺は別に構わんから、お前の体を触らせろ」
「や、やめなさいっ !!」
 魔導師は座り込むと、後ろから王女の体を抱きかかえた。
 そのまま慣れた手つきで平らな胸と固く閉じた割れ目を撫で始める。
「くそっ……なんでこんな……ちっとも感じないじゃないか」
「我慢しろ。そのうち高ぶってくるさ」
 魔導師の指の動きは充分に優しいものだった。
 いつもと比べ物にならないほど鈍い性感も、時間をかけた愛撫にだんだんと反応していき、白い素肌がほのかに桜色に染まっていった。未熟な乳首の先が初めての勃起を見せ、毛も生えていない割れ目がしっとりと確かな湿り気を感じさせる。
「ん……あんた、上手いね……」
「クク、こんなものか……」
 魔導師は満足した表情浮かべると、オリヴィアの細い両足を持って小便でもさせるように後ろから抱き上げた。
 正面にいるハンナからは、王女の顔が愉悦に歪むのが、幼い体が女として感じている姿が露に見える。不安と絶望に苛まれる娼婦に魔導師が笑いかけた。
「さあ、姫様。いよいよ、純潔を頂きたいと存じます」
「――や、やめてっ !! わたくしの体を返してぇっ !!」
 涙声で叫ぶ女の爆乳は、乱暴な男にずっと揉まれ続けている。気なしか、その声にも艶が出てきているようだ。
「ではいくぞ。我慢しろよ」
「もったいぶってないで、早く入れなよ。でもこのカッコ、子供みたいで恥ずかしいねえ。へへ」
 魔導師の上で十歳の王女がニヤリと笑い、そう口にした。暗い笑みに口を歪めながら王女の腰をゆっくりと下ろす。
「イヤァアァアッ !! やめてぇぇっ !!」
 みり……めりめり……めち……!
 未熟すぎる女陰が、太い肉棒を無理やりに挿入され悲鳴をあげた。幼い膣口が引き裂かれそうなまでに広げられ、実に痛々しい。
「ぎゃあぁあっ !? ――い、痛ぇぇっ !! ま、待った、やめてくれえぇっ !!」
 金切り声をあげるオリヴィアの奥へ奥へと、猛りきった雄が侵攻していく。純潔の証である真っ赤な雫が一筋、二筋と垂れる。
「さすがに、狭いな」
「い――あぐうっ……がぁぁあ…… !!」
 か細い体をひねり、くねらせ、苦悶に喘ぐ幼い王女。大粒の涙がぼろぼろとこぼれ、鈴の音の悲鳴をあげ続ける。
「わ――わたくしの、体が……はっ、あぁっ !?」
「あっちばかり見てないで、俺たちも楽しもうぜ。旦那もアレをぶち込んじまったから、もう遠慮することはねえ」
「や、やめなさい――下劣な、あ、あぁあぁ…… !!」
 悲嘆にくれる暇もなく、男はハンナの熟れた女体を堪能し始めた。
「へっ、嫌がってる割にはもうビンビンじゃねえか。いやらしい王女様だよなあ、おい?」
「そ――そんなこと――」
 男の言葉通り、汗にまみれたハンナの体は熱にほてり、ゆさゆさと揺れる爆乳の先端では乳首がギンギンに勃っていた。
 下の方も長時間の愛撫ですっかり興奮してしまっていて、股の間からは幾筋もの女汁が垂れ、腿を光らせている。
(か――体が、熱い……)
 魂がどんなに拒絶しようと、娼婦として長年開発されたハンナの肉体は貪欲に男を求めていた。胸を掴まれるたび、膣を指でほじられるたびに耐え難い快感が脳髄を貫き、抵抗する気を萎えさせる。
「認めちまえよ。お前は淫乱な雌犬なんだって」
「ち、ちが――ひぁあぁっ !? やめぇぇっ !!」
「どこが違うんだよ。俺の指をくわえ込んでよがってるただのスケベ女じゃねえか。こんなに汁噴き出してよ」
「違うのぉぉっ !! わた――ぁぁあっ !!」
 海老のように娼婦の体が床を跳ねた。
「へへっ、そろそろ中を味わうとするか」
 犬のように四つんばいにさせられたハンナの後ろから、馬乗りになった男がず太い自分自身を入れ始めた。
「ああ――い、いやぁ……」
 言葉とは裏腹に、熟れた女性器は肉棒の挿入を待ち望んでいたかのように柔らかい肉で侵入者を包みこみ、喜びの声をあげた。
「おっ、こいつはすげえ。ねっとりと絡み付いてきやがる」
 男を受け入れた肉壷が汁を分泌し、本能のままに陰茎を絞り上げる。それは十歳の少女の魂には想像もできない快感だった。
 どんなにハンナが拒否しても、彼女の肉体は下卑た男との交わりに歓喜し性交の喜びと快楽とを存分に脳髄に伝えてくるのだ。
(ひいぃ……何これぇ……)
 嫌悪に歪めた唇からはよだれが滴り、口元が笑みを形作る。
「大した名器だ――さすがは一流の商売女だぜ」
「は――はあぁ……ふぁぁ……」
 男は腰をつかみ、獣のように荒々しくハンナに突き立ててくる。ピストン運動が繰り返されるたび、汁にまみれた結合部からは淫靡な水音が響き、二人の耳をくすぐった。
(……ダメ、き、気持ち――いい……)
 高貴な王女の魂が、年端もゆかぬ可憐な少女の心が、今や淫乱な娼婦の性欲に汚されてしまっていた。
 下賤なチンピラ男の肉棒を大事な部分に突き込まれ、拒否するどころか喜びに腰を振りまくる。
 淫らな性交を存分に楽しむハンナに対し、清楚な王女は苦痛のあまり、涙と罵声を垂れ流していた。
「ち、畜生――あたい、どうなっちまったんだ……。あぐう、苦しい……糞、畜生――」
「その体ではな、初めてだから仕方あるまい」
「初めて、だって――? 訳わかんない……こと、言いやがって……。女だからって……なめるなよ、くそう……」
 銀細工の繊細な髪が揺れ、白く小さな胸にかかる。
 加減しているのか、魔導師の陰茎は優しくオリヴィアの中を上下していたが、それでもきつすぎる事に変わりはない。
「見せてやろう。――ほら、これが今のお前だ」
 言葉と共に、交わる二人の前に魔術の鏡が現れた。
 両足を持たれ、魔導師の陰茎に腰を下ろして泣き喚く子供。それが今の自分の姿である事に王女は戦慄した。
「な、何……だ? このガキが、あたい…… !?」
「喜べ、卑しいお前では言葉も交わせぬ高貴なお方の肉体なのだぞ」
「う……嘘だ!」
「では、お前の股から滴る、この破瓜の血はなんだ?」
 白い肌を引き裂くように真紅の線が引かれている。
「わかったらとっとと腰を振れ。気持ち良くはないだろうがな」
「う、うう……畜生、畜生――」
 涙を流し歯を食いしばり、オリヴィアは必死に耐えている。
 魔導師もまた、興奮の極致にあった。
 これこそ長年彼が思い描いていた計画なのだ。国で一番尊い姫君に卑しい娼婦の魂を宿らせ、従順に犯し尽くす。肉体を汚すだけでなく、魂まで自在に操り弄ぶ事が彼の望みだったのだ。
「ほら、どうした? 気高く振舞っていた先ほどとは大違いではないか」
「あたいは――やめろ……畜生……」
「これだけ中を犯し抜いても、お前にとっては痛いだけ、苦しいだけだろう。排卵すらまだかもしれぬ体だからな」
「う……ぐ、ひぃっ……」
 王女は十数年ぶりの激痛に顔を歪め、歯を食いしばって耐えている。
「安心しろ。そろそろ注ぎ込んでやる」
 欲望を満たされた彼の方が、先に限界を迎えた。魔導師は王女の体を高く持ち上げると、突然手を離しオリヴィアを彼の上に落下させた。
「――ぎゃあぁあぁぁぁあっ !!!」
 肉棒に貫かれた幼い割れ目に全体重がかかり、王女はひときわ大きな悲鳴をあげて悶絶した。幼い膣の一番奥まで侵入した陰茎が慈悲もなく射精を始め、純潔だった尊い女陰はたちまち血と汚れた汁にまみれた。
「――あ……あぁ……」
 白目を剥いて泡を吹き、ぐったりと力を失くすオリヴィア。
 結合部は無理やりに突きこまれた陰茎に膨張させられ、肉棒の形に張り出した膣と滴る血が実に痛々しい。
 魔導師はようやく、血と汁に濡れた彼の分身をずぶりと引き抜いた。意識を失ったか細い王女の体が、床にうつ伏せに崩れ落ちる。
 一方、男は娼婦に乗ったままでピストン運動を激しくさせていた。
「おら、どうだ姫様 !! たまんねえだろう !?」
「あぁ――いい……いいですぅ !!」
 ハンナは快感に悶えながら一心不乱に腰を振った。太い肉棒が膣の奥をえぐるたび、あまりの気持ちよさに息を漏らす。
「はあぁ……も、もっと、奥まで……」
 張り詰めた乳房をしゃぶられ、熟れた膣内を存分にかき回され、ハンナは完全に淫乱な女の顔になっていた。
 そこには高貴な王女の魂などなく、一匹の雌がいるだけだ。口をだらしなく半開きにし、白目を剥いてよだれを垂らし男の激しい突きこみを乞い願う。
「――よし、もう出すぞ !! たっぷりくれてやる !!」
「だ、出す……? ……たっぷり……」
 理性も失った彼女はもはや男の言葉も理解できず、猿のように動くだけ。
 やがて男は思いっきり肉棒を突っ込むと、あらん限りの汁をぶちまけた。子宮口から濃厚な子種の汁がたっぷりと中に注ぎ込まれてゆく。
「はぁあぁぁ―― !!」
 精液が中に出される快感にハンナは身をよじり、絶頂に達した。
(ひぁあ――いい……)
 頭の中が真っ白になり、そのまま意識が溶けていく。
 王女の心は性感の波に飲まれたまま、しばらく目覚める事はなかった。

 全てが終わった今、静かな部屋には物音一つしない。
「…………」
 魔導師は黙ったまま、床に横たわる王女を見下ろしている。幼い膣から血と汁を垂れ流し、白い素肌を見せつける少女の体は燭台の炎に赤く照らされ、息を飲むほどに美しい。
「さて、どうしたものか――」
 もはや目的を達した彼だったが、後始末となると難しかった。
 王女の魂を元に戻し城に帰すというのは、顔を見られた事を考えると到底できるものではない。
 かといって、このままずっと留めておくのもまた不可能な話だった。すぐに王宮から探索の兵が放たれ事が露見するだろう。いや、もう既に放たれているかもしれない。王女を城に帰し、かつ彼が無事でいられる手段をとらねば――。
(となると、あの女の魂を入れたままで帰すか?)
 卑しい娼婦のこと、最初は戸惑うだろうがすぐに王女の体と地位を手に入れたことに大喜びするだろう。そうなれば彼の罪も公にはならず、この身は安全である。
「しかし――それはできぬ」
 魔導師は王女の体を抱き上げた。軽い小さな体の暖かみが両手に感じられ、頬を緩める。
「姫様……やはり、あなたの美しいお体をあのような売女にやってしまうなど、我慢ができませぬ」
 その表情は冷酷で邪悪な魔導師のものではなく、恋人に甘い言葉をかける一人の男の顔だった。
 しかし、大罪を犯した彼が助かるには他に方法はない。
 いや――ある。もう一つの選択肢が。
「他に手段がないならば――いっそ……」
 彼は何かを覚悟したように思いつめた表情で、口元を引き締める。
 愛しげにオリヴィアの体を撫で、魔導師は再び呪文を唱え始めた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 丸一日もの間いなくなっていた王女オリヴィアが、明け方になってようやく城に帰ってきた。その知らせに王は慌てて飛び起き、家臣が止める中喜びのあまり薄汚れた王女の体を抱きしめるほどであった。
「ただいま帰りました。お父様、お母様、そして皆さん、多くの人にご心配をおかけしました。ごめんなさい。でもわたくしは無事です。ご安心下さい」
 オリヴィアはいつものきらめく笑顔で皆を安心させ、王宮はまた元通りの平穏を取り戻したのだった。

 湯浴みを済ませ着替え終わった美しい王女が、鏡の前に立っている。
 侍女を下がらせ、今ここにいるのはオリヴィア一人である。王女は自分の艶やかな長い銀髪を優しく撫でたり、にこりと微笑む愛らしい姿を鏡に映して鑑賞していた。
 まるで自分の体を初めて見るように、興味深げに。
 誰もいない部屋に、高く澄んだオリヴィアの声が響く。
「――クックック……やはり姫様のお体は美しい……」
 小さな手がドレスの内側、下着の中に伸び動き始めた。白く細い指が、ようやく膨らみ始めた双丘を、純潔を失ったばかりの幼い女陰を撫で、揉み、さすり、丹念に愛撫する。その手つきは高貴な少女のものではなく、淫らで邪な動きだ。
「私は王女、王女オリヴィアだ……ククク……ハハハハハ…… !!」
 自慰にふけりながら高笑いをあげる銀髪の王女。
 その正体に気づく者は誰もいなかった。

 夜の街。
 男たちは一日の疲れを癒そうと、ある者は酒場に、ある者は賭博場に、またある者は女郎屋に足を運ぶ。この店でも夜の女の商売が行われていた。
 ――ぱんっ……ぱんっ……!
「はあぁあっ !! もっと、もっと突いて下さぁあいっ !!」
 暗い部屋の中、見知らぬ男の下になって激しく突きこまれる女。栗毛のショートヘアとはちきれんばかりの爆乳が人気の娼婦だ。成熟した外見とは裏腹に、言葉遣いは丁寧で気品を感じさせ、物慣れぬ子供のような振舞いが男心を刺激するという。それでいて、交わりの快感も最高級となれば人気が出ないはずがない。
 ハンナはすっかり店の看板娘になっていた。
 今宵も男に抱かれ、ハスキーな嬌声をあげよがり狂っている。
(ああ――お父様、お母様、お許し下さい……)
 奪われた自分の体は城に戻り、王女として暮らしているという。
 自分は王女オリヴィアだ。そう言っても信じる者は誰もいない。城に行ってもすげなく門番に追い返されてしまう。もはや娼館に行く以外、激しい性欲を抱えた淫乱女に道はなかった。
「ひぃいいぃっ !! いい、いいのぉぉっ !!」
 もう何度目かの絶頂に達し、ハンナは喜びの悲鳴をあげた。
娼婦の夜はまだ終わりそうにない。


続きを読む   一覧に戻る

inserted by FC2 system