瑞希の異変

 秋の涼しい夕暮れ時、薄雲がたなびく西の空から真っ赤な光が地上に注がれていた。
 通りには家路につく学生の姿がちらほら見えるだけで、時々自転車がベルを鳴らしながらその間を通り過ぎていく。
 そんな道の真ん中で彼は一人たたずんでいた。見る者を圧倒する美貌とにこにこ笑う穏やかな雰囲気の少年で、何をするでもなくただ往来で仁王立ちになったまま通行人を観察している。
「――だからよ、あれマジおすすめだって!」
「最近、部活めんどくさくなってきてさあ……」
「ネットで調べてみ。もう一目瞭然!」
 静かに学生達の会話に耳を傾ける。
 奇妙なことに彼は通路のど真ん中にいるというのに、誰もこの少年に目を向ける者はいなかった。邪魔だと思うことも、この凍りつくほどの美少年を振り返ることもなく、まるでそこに電柱でも立っているかのように皆が彼の存在を無視し続ける。

 その彼の隣を、セーラー服を着た二人の少女が通り過ぎていった。
 一人は短い茶髪の長身の娘で、明るく華やかな感じがする女だった。もう一方は長い黒髪を二本に束ねて後ろに垂らした童顔の少女で、こちらは小学生にも間違われてしまいそうな小柄な体格だ。あまり共通点のなさそうな二人の少女が、小さく言葉を交わしつつ少年の横を通過していく。
「瑞希、さっきからどしたの? 今日はあんま元気ないじゃない」
「うん……」
 ツインテールの少女は軽くうつむいて答えた。
「どうせまた愛しの祐ちゃんのことでしょ? わかりやすいわねえ」
「そっ、そんなんじゃ……!」
 にわかに顔を上げ、夕日を浴びて頬を染める黒髪の娘。茶髪の女はにやにや笑いつつ、連れに向かって口を開いた。
「まあ瑞希は男とつき合ったことないもんね、経験不足でも仕方ないか。でもやっぱりポイントは、相手の気持ちを把握することだと思うの」
「相手の、気持ち……?」
「そ、男なんて単純だから読みやすいもんよ。コツをつかめばいいようにできちゃうわ。だから瑞希も男とつき合おうと思ったら、まずは男心を知ることね」
「お、男心……難しそう……」
 顔をしかめる友人に向かい、女は大げさに笑ってみせた。
「あはは、まあ頑張んなさい! 困ったら相談してくれればいいから!」
「う、うん……ありがと……」
 そんな会話を交わし、二人は夕方の通学路を歩いていった。もちろんこの二人も、自分たちをじっと見つめる端正な少年の姿には気づかない。
「ふむ、男心ね……」
 整った唇が曲げられ、にやりとつり上がる。
「そうか、男心か。面白そうだ、ふふふ……」
 透き通る声音が夕暮れ時の風に乗り、誰の耳にも届かないまま消えていった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 その日の朝は少々肌寒かった。小鳥の鳴く声と通りを吹き抜ける風の音がかすかに聞こえてくる中、森田瑞希は目を覚ました。
「――ん……」
 普段は二本のツインテール束ねている黒髪も、寝ているときは痛まないよう縛らず流している。薄緑のパジャマ姿で瑞希は起き上がり、まだはっきりしない頭で窓の方を見やった。
 今日は調子がいいようで、いつもの寝起きの不快感はない。瑞希は両腕を上に伸ばして軽く声をあげ、ベッドから立ち上がろうとした。
 しかし、にわかに不思議な違和感に襲われて体の動きを止めた。
「…………?」
 室内を見回すが、何かがなくなっている訳でも、何かが増えている訳でもない。
 床に並んだ熊や狐のぬいぐるみも、文庫本の詰まった本棚もそのままだ。どこを見てもいつもの自分の部屋であるし、寝床も就寝前と全く変化していない。
 風邪でもひいたかと思えばそうでもなく、手足にも髪にも特に変わったところはなかった。
 だが、はっきりと異常が感じられる箇所が存在した。
「……あれ?」
 瑞希が着ているパジャマの下、股の部分が不自然に盛り上がっている。まるで下着の中に硬い棒でも存在していて、布地を押し上げているかのようだ。そこから感じられるのは、自分の何かが押さえつけられるような圧迫感。女であるならば絶対に感じるはずのない妙な感覚に、瑞希は漠然とした不安を覚えながらも、ただ自分の盛り上がった股間を見て鈍い思考を巡らせていた。
「これって、何だろ……」
 おそるおそる寝巻きの上から触れてみる。
 両手でギュッと握った硬い突起は、体の一部であることを訴えかけるかのように、言葉では説明できない感触と衝動を瑞希にもたらした。
「――ああぁっ !?」
 硬くて敏感で、触れられると思わず声をあげてしまう肉の棒。
 瑞希はこれを知っている。自分の体についている器官としてではなく、近所に住んでいる幼馴染の少年の股間にこれが生えているのを知っていた。
「これ……もしかして…… !?」
 戦慄が背筋を駆け抜け、恐怖が心を這い回る。慌ててパジャマをずり下ろした瑞希が目を見開き、声にならぬ悲鳴をあげた。
「――――っ !?」
 瑞希の薄い草色のパジャマの中では、小柄な体に似合わないサイズの男根が窮屈そうに純白のショーツを押し上げ、つんと鼻をつく臭いのする染みをつけていた。

 ――ドン、ドンドン!
 ドアを叩く大きな音と、母親の怒鳴り声が聞こえてくる。
「瑞希、まだ寝てるの !? 早く朝ご飯食べないと遅刻するわよ!」
「……いい……私、今日学校休む……」
 力なく漏れたつぶやきは、ぎりぎり母親の耳に届いたようだった。乱暴なノックが止み、代わりに心配と疑問が半々といった質問がドアにぶつけられた。
「どうしたの、体調悪いの !? 病院に行くんだったら診察券とか保険証とか出さないといけないから、早めに言ってちょうだい!」
「う、ううん……大丈夫だから、ほっといて……」
「変な子ねえ、何かあったのかしら……」
 母親は首をかしげたが、瑞希は理由もなく学校を休むような娘ではない。風邪でもひいたのだろうと自分を納得させ、部屋の前から去っていった。
 瑞希が欠席すると学校に電話をして、一応念入りに保険証と診察券、紙幣をテーブルの上に並べておき、母親は娘を置いて仕事に出かけていった。

 一人、家に残された瑞希は、パジャマを着たままベッドに座り込んでうつむいている。
「これ……どう見てもおちんちんだよね……」
 寝巻きの布地をずらすと、巨根と言ってよいサイズの肉棒が誇らしげに顔を出す。
 黒々としたグロテスクな男性器が自分のものになっている事実に瑞希は思わず顔を背け、泣きそうな顔で歯を食いしばった。
「それにおっぱいも無くなってるし……私、ひょっとして男の子になっちゃったの……?」
 試しに風呂場の姿見をのぞいてみたが、身長や顔、髪はいつも通りのまま。周囲から密かに人気がある繊細な顔立ちも、よく透るソプラノの声も昨日までと何も変わらない。
 だが胸板はより厚く扁平になり、元々大した意味のなかったブラジャーが完全に不要になってしまっているし、手足も以前よりほんの少しだけ太くなってまるで少年のようなシルエットを描いていた。
 そして股間に男を受け入れるための割れ目はなく、代わりに女に突き込むための禍々しい陰茎が硬くそそり立って自己主張を続けている。このサイズでは制服のスカートに収まりきらないかもしれない。
「なんで――私、どうなってるの……?」
 今まで感じたことのない困惑と恐怖に、瑞希は涙ながらに震えていた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 太陽が南を通りかかる頃、一人の少女が瑞希の家の前に立っていた。短い茶色の癖っ毛、かなりの長身と豊かなボディラインにセーラー服をまとい大人っぽい笑みを浮かべて森田家の玄関を眺めている。
「――さーて……」
 少女の名は加藤真理奈、瑞希と一番仲の良い親友だ。恵まれたスタイルと派手で整った顔立ちのため学校の男子からは絶大な人気を誇るが、つき合う相手がコロコロ日替わりで交代していくのが少しばかり問題視されている。
 だが性格はさばさばしており、友人に対して親身に接するので同性からも好かれていた。
「瑞希が風邪引いちゃうなんて珍しいわね……。まああの子のことだから、あんま心配してないけど」
 そう言って細い指で呼び鈴を鳴らす。
 ――ピンポーン……。
「あれ?」
 反応がない。留守かとも思ったが、病気で休んでいる瑞希が出かけるはずがない。病院にでも行っているかもしれなかったが、真理奈は瑞希が家にいると推察して呼び鈴を連打してドアを叩き、大声で親友に呼びかけた。
「ちょっと瑞希、いるんでしょ !? 居留守使ってないで出てきなさいっ !! 今ならまだ罪は軽いぞぉっ !! 君のお母さんは泣いているっ !!」
 そうして玄関先で騒ぐこと数十秒、やっとのことで静かに扉が開き、真理奈の見慣れた友人がパジャマ姿で顔を出した。
「あ、真理奈ちゃん……」
「なんだ、思ってたより顔色いいじゃない。風邪?」
「え、えーと……」
 トレードマークのツインテールの髪も、今は背中に垂れ流されている。言いよどむ瑞希を真理奈は不審そうに見つめていたが、いつまでも家の前で話し込む訳にもいかない。うつむいた小柄な親友の背中を押してやり、真理奈は森田家に上がり込むことにした。

 瑞希の部屋のカーペットに腰を下ろした真理奈は、ベッドに座る瑞希と向かい合った。
「ま、真理奈ちゃん……まだお昼だけど、学校はどうしたの?」
「んー、めんどくさいからサボっちゃった♪ そんであんたのお見舞いってわけ」
「私のため……? そんなの悪いよ……」
 目を伏せる瑞希と対照的にきびきびした動作で、真理奈がカバンの中から紙箱を取り出す。その中には保冷剤に冷やされたプリンが二つ納まっていた。
「ほら、いいから食べなさい」
「え? あ、ありがと……」
 少女に促されるままに容器とスプーンを受け取ってしまう。真理奈はにっこり笑うと、瑞希を励ますかのように明るく振る舞ってみせた。
「うーんこの美味しさ、さっすが桜月よねえ。この時間は並ばなくて済むからお得だわ」
「…………」
 黙ってスプーンを口に運ぶ瑞希に、真理奈が静かに語りかける。
「――で、何があったわけ? 瑞希」
「え……」
「特に体調が悪い訳でもないみたいだし、何かあったとしか考えられないでしょ。ほら、どうしたのかお姉さんに言ってごらん? ん?」
「真理奈ちゃん……」
 瑞希は親友の顔に視線を固定したまま、何も言えずにいた。
 学年でも器量よしで評判の加藤真理奈の目鼻立ちが瑞希の視覚に焼きつけられる。自分のためにわざわざ学校を早退し、見舞いの品まで買ってきてくれた友達を前に、瑞希は不思議な感情が自分の奥底から沸きあがってくるのを感じていた。
(ま、真理奈ちゃん……やっぱり綺麗……)
 頭と下半身の一部に血流が集まっていく。気がつけば瑞希のパジャマの股の部分はむっくり盛り上がり、雄の本能を如実に示していた。
(や、やだ……なんでおっきくなってるの……?)
 本来の自分にはない器官の傍若無人ぶりに瑞希は顔を赤らめ、慌てて真理奈から目をそらした。そんな瑞希に何かを感じ取ったのか、真理奈が不意に立ち上がる。
「瑞希、どうしたの?」
「ううん――何でもない」
 恥ずかしそうに瑞希は首を振ったが、勘のいい彼女はすぐ友人の異変に気づいた。ゆっくりベッドに近づき、瑞希の隣に腰を下ろす。
「本当に今日はどうしたのよ、瑞希? 正直に言ってみなさいってば」
「ほ、本当に何でもないの……!」
 ほんの数十センチの距離からこちらをのぞき込んでくる親友の少女。その顔は少々派手だが美しくて優しくて、瑞希の欲望をますますかき立てた。もはや股間の肉棒は隠しきれないほどはっきりと寝巻きの生地を押し上げている。
「あ――瑞希、これ…… !?」
「…………!」
 とうとう気づかれてしまい、瑞希は血相を変えて体を横に向けた。そんな友人を押さえつけようと、真理奈が瑞希につかみかかる。
「ま――真理奈ちゃんっ !?」
「いいから見せなさい……っ !!」
「いやぁっ! やめて、見ないでっ…… !!」
 彼は激しく抵抗したが、男になったとはいえ貧弱な瑞希の体では、中学生までテニスで鍛えていた真理奈に力で勝てるはずがない。瑞希の下半身が剥かれ、はちきれんばかりに膨張した男性器が露になると、そのあまりの生々しさに真理奈は唾を飲んで硬直してしまった。
「うわ本物――デカッ……!」
「お、お願い……見ないでぇ…… !!」
 異性にもてる真理奈のこと、何人もの男と交わった経験があるが、その彼女にしてもこれほどのサイズの陰茎を見たことはなかった。黒々とそそり立つ肉棒は瑞希の腹に触れそうなほどそり返り、誇らしげな雄姿を晒している。
 真理奈は目の前で勃起した親友の性器を嫌悪を込めて眺めるでもなく、興味津々といった表情で観察していた。
「なるほど……こんなの生えてたから、学校に来れなかったのね……。確かにこれじゃスカートなんてはけないわ……あははは……」
「け、今朝起きたら、いきなりこんなことになってて、私どうしていいかわかんなくて、学校にも行けないし、外も歩けないし、こんなの祐ちゃんに見せられないよ……」
 ぼろぼろ涙をこぼして語る瑞希を、真理奈は優しい顔で見守っていた。そのまま細い肩を抱き寄せ、そっと耳元で囁いてやる。
「……馬鹿ね、一人でウジウジしてたってしょうがないでしょ? あたしはあんたの友達なんだから、早く相談してくれたらよかったのに……」
「う――うえええん、真理奈ちゃあん……」
 瑞希は真理奈を抱き返し、親友に密着して泣き喚いた。この異変が起きてから初めての、幼い子供のように恥じらいのない号泣だった。

 どれだけそうしていたか。やっと瑞希が泣き止み、かすかにしゃくり上げるだけになった。
「……落ち着いた?」
「うん……」
 瑞希の陰茎はまだ寝巻きの間から元気な顔をのぞかせている。真理奈は瑞希の肩に手を置いて、柔らかな笑みを浮かべて親友に話しかけた。
「ちょっと体の方も見せて」
「う、うん……」
 パジャマのボタンを外し、前を開くと平らで薄い少年の胸板が現れた。それをじっと間近で見つめ、真理奈が落ち着いた声で続ける。
「やっぱり上の方も完全に男の子になっちゃってるわね。顔はそのままなのにおちんちんはあるし、おっぱいはないし、どうなってるんだろ?」
「わ、私にもわからなくて……ど、どうしよう……」
「とにかく今はどうしようもないわ。こうなった原因もわかんないし、自然に元に戻るのを待つしかないわよ」
 真理奈が冷静に言えるのは、やはり他人事だからだろうか。
 だがこの少女ならば、仮に自分がこのような状況に陥っても笑って受け入れてしまいそうだった。
「真理奈ちゃん……」
 瑞希は胸を高ぶらせ、赤い顔で親友の横顔を眺めていた。その顔立ちこそ女のままだったが、吸い込まれるように真理奈を見つめる瑞希の瞳は、まるで女を欲する男のような欲情の色に染まっていた。
 自然と股間の男性器が再び硬度を増して盛り上がってくる。それに気づいた真理奈がにやりと笑って瑞希に顔を向けた。
「……瑞希、あんたここ硬くして、何考えてんのかな〜?」
「えっ !? あ、違うの、これは……!」
 真理奈の長い指が瑞希の肉棒に這わされ、きつく挟み込む。
「ん……ううっ……!」
「まあ仕方ないか、今の瑞希はオトコノコだもん。あたしの美貌につい興奮してビンビンになっても当たり前よね?」
「やあ――触らないでえっ……!」
 抗議の声も空しく、真理奈は慣れた手つきで巨根をしごきあげて彼を未知の快感に喘がせてくる。急所を押さえられた瑞希は抵抗もできず、息を殺して両手で顔を覆うばかり。
 やがて陰茎からは先走りが漏れ出し、真理奈の指をべとべとの液体で汚していったが、彼女は楽しそうに笑いながら両手で親友の性器を愛撫し続けた。
「――駄目、こんなの……私、変! にっ!」
「何言ってんの、男ならフツーのことじゃない。恥ずかしがらなくていいわよ。瑞希の、こんなに太くて……ふふふ、ビクビク脈打ってる……」
 ベッドに寝転んだ真理奈の顔がだんだん瑞希の下半身に近づいてくる。
 次の瞬間、桃色の唇が開かれたかと思うと、彼女の口は瑞希の肉棒で一杯になっていた。
「はああぁっ、やめてぇっ……!」
「んぐ、むちゅ……やば、太すぎ……」
 彼女の瞳も既に快楽の色に染まり、劣情の視線で親友を舐め回している。
 いつも自分の隣にいた内気な友人が、このような巨根を味わわせてくれるなんて。真理奈はこの異変に心から感謝しつつ、一心に彼の陰茎をねぶっていった。
「ちゅぱっ、んん――むはぁ……」
「や、やめて――出ちゃう……!」
「ふふ……瑞希ったら女の子なのに射精しちゃうの? いいわよ出して」
 その言葉と共に淫靡な笑みを浮かべると、真理奈は瑞希の男根に軽く歯を立てた。わずかな痛みと圧倒的な衝動に彼は悲鳴をあげ、海老のように背を反らす。
「いやああぁっ !!」
 ――ビュルルルッ !! ブジュウゥゥゥッ !!
 非常識なほどの精液が瑞希からほとばしり、真理奈の顔と言わず服と言わず汚していった。親友の巨根から噴き出す白い汁を浴びながら、彼女は艶然と微笑んでいる。まるで面白い玩具を見つけた子供のような無邪気で残酷な表情。
「うわあ、一杯出したわねえ。なのに全然萎えてない、瑞希すごいわ……」
 愛情を込めて指を這わせ、長い舌で肉棒の先端を拭き取る。瑞希の男性器はあれだけの量を出したというのに全く衰えず、雄々しい姿を真理奈に晒していた。
「う……ひっく、えぐっ……」
「何泣いてんのよ、たっぷり出して気持ち良かったでしょ?」
「やだ――私、こんなのやだぁ……!」
 両手で顔を押さえたまま、激しく首を振って泣き喚く瑞希。そんな親友を細めた目で眺めやり、真理奈は再び彼の性器にかぶりついた。
「ひああっ !? 真理奈ちゃん――やめてっ !!」
「んふ――ちゅるっ……ぺろっ……」
「はあ、やんっ……いやぁ……!」
 陰茎を優しく舐め回しつつ、片手で自分の下着をずり下ろし、濡れそぼった女陰を撫で回す。フェラチオにふけりながら、時おり媚びるように瑞希を見上げ、肉欲の視線で彼を射抜く。クチュクチュと淫らな音を響かせ、真理奈は瑞希と交わる準備を着々と進めていった。
 昨日まではありえなかった、異性として見つめ合う親友同士の表情は共に生々しく乱暴な性欲に彩られ、相手への淫猥な想いを存分に見せつけ合っている。
(瑞希がこんなに可愛いオトコノコになるなんて……びっくりだわ)
 同性、女としてではなく、男としての今の瑞希に魅力を感じる。薄い胸板は相変わらず肉づきが悪く、手足も体格も男としては貧弱な瑞希の体。顔はいつも通り繊細な美少女然としており、さらさらした黒髪を背中に垂らしている。
 それなのに股間からはたくましい巨根がそそり立ち、淫靡な動きで真理奈を誘ってくるのだ。そのギャップに彼女は陶然とさせられ、ついつい親友に奉仕してしまうのだった。
「ああぁ――はあぁんっ……!」
「じゃあ瑞希、そろそろいきますか」
「んはぁっ……な、何……?」
「決まってるじゃない。あたしとセックスするの♪」
 その言葉に瑞希は戦慄し、怯えた目で真理奈を見返した。
(わ……私が、真理奈ちゃんとセックス…… !?)
 自分が男としてこの親友の少女を犯す。脈動する陰茎を真理奈の膣に突きこんで腰を振り、雄の欲望のままに彼女の子宮にたっぷりと射精して孕ませる。
 あまりに生々しい想像に瑞希の理性は嫌悪を感じて震えていたが、彼の性器はその誘惑に応えるように天を衝き、男の汁にまみれた彼女を喜ばせた。
「あたしの中は気持ちいいわよぉ? ほら、優しくしたげるから……」
「駄目、そんなことでき――ぐぅぅっ !!」
 必死で雄の性欲を否定する瑞希だが、微笑む少女に巨根を握り締められ抗えない。見下ろせばスカートをはいたままの真理奈の股間から汁が漏れ、瑞希を待ちわびていた。真理奈は彼の男根を押さえ込むと、へたり込んだ瑞希をベッドに押し倒して準備万端の自分の女性器の中に親友の肉棒を飲み込んでいった。
 ――クチュ……ズブズブ、ズチュッ……!
「あはぁっ――瑞希の、太いよぅ……♪」
「やああぁっ !! やめてええぇえっ !!」
 瑞希と真理奈。ついに二人の性器がスカートの中で合わさり一つになる。
 男でもそうそうないサイズの肉棒が真理奈の膣に侵入し、うねる襞をこすり上げた。性交に慣れた長身の真理奈といえどもこの巨根を受け入れるのは簡単ではなく、ゆっくりゆっくり腰を下ろして瑞希の男を下の口でくわえこんでいく。
「んんっ……瑞希、いい……!」
「グスッ、ヒクッ……や、やだよぉ……真理奈ちゃん、抜いてぇ……」
「いやよ――あんたもあたしの中、気持ちいいでしょ?」
「そ、そんなこと……」
 瑞希の心はそれを否定したかったが、真理奈の膣は壮絶な快感を彼の脳に送り込んできた。汁の絡んだ熱い肉が彼の性器をしごき上げ、ねっとり包み込んでくる。上になった真理奈が腰を動かすたび瑞希は切ない声をあげ、未知の感覚に喘ぎ回った。
「はあぁっ……や、やめてぇ……!」
「ほらほら瑞希のおちんちん、気持ちいいって言ってるわよ? あたしの中で暴れ回って、真理奈のおまんこ最高だって言ってるわよ?」
「う――嘘っ! 言わないでっ……!」
 真理奈の豊かな胸が彼の顔を圧迫している。セーラー服越しに感じる親友の巨乳は、瑞希が普段から憧れていたものだったが、今は異性として思わずむしゃぶりつきたくなるような欲望をかき立ててきた。
「ん……瑞希の、また硬くなって……! あんたも気持ちいいのね……♪」
「ち、違う違う違うぅっ! 違うのォっ !!」
 とうとう瑞希の巨根が親友の最深部に届き、亀頭の先端に子宮が接触する。他人の膣をえぐる初めての感触に彼は翻弄されるばかりだった。
「うふ、全部入っちゃった……あたしすごい♪」
「駄目っ! 動かないでぇっ !! やめてぇぇえっ !!」
 顔を両手で押さえて必死に首を振る瑞希を、真理奈は愛しげに抱きしめる。彼女の双丘が瑞希の顔を包み込み、彼の呼吸を苦しくさせた。
「どう? オトコノコって気持ちいいでしょ……」
「んぷ――こんな、こんなのぉっ……!」
「はあぁ……あたし瑞希に犯されてるぅ……! ぶっといおちんちんでおまんこかき回されて、たっぷり中出しされちゃうよぉ……♪」
 至近で囁かれる淫らな言葉の数々も、嫌がる瑞希を更に高ぶらせていく。自分にのしかかって腰を振る親友を見上げて、瑞希は何も考えられなくなりつつあった。
 加藤真理奈。瑞希の高校のクラスメートにして大事な親友。その彼女が男になった自分の巨根に貫かれ、息を荒げ舌を出して喘いでいる。言い知れない背徳感と興奮に瑞希は虚ろな瞳で真理奈を見つめ、相手の腰をわしづかみにした。
 そしてそのまま本能に命じられ、激しく腰を突き上げる。
「ああぁあぁっ !? み、瑞希――いいよぉ……!」
「うぅ――ううぅ……!」
 思考を止め理性を失くし、硬い肉棒で真理奈の中をこねくり回す。
(ああ、気持ちいい……真理奈ちゃんの中、熱くて……)
 とろんとした顔で親友とのセックスにふける瑞希は今までにないほど積極的で、欲望に任せて真理奈の女性器をゴリゴリと突き上げた。奥まで貫いて、抜いて、浅い部分をかき回して、また突き入れる。延々と繰り返される肉の絡みに二人は嬌声をあげてよがり狂った。
「うああ――み、ずき……ふと、いぃっ…… !!」
「あひぃぃっ……いい、気持ちいいよォっ…… !!」
 親友同士の二人は肉欲に導かれ、男女の交わりに没頭していた。真理奈は膣と汁でもって極太の肉棒を包み込み、襞を蠢かせて瑞希を喘がせ、瑞希は常識外れの巨根でもって膣をかき回し、子宮を圧迫して真理奈をよがらせる。
 あまりの激しい絡み合いに二人の目は焦点が合わず、漏れる声も人語からかけ離れつつあった。
「ふあぁあぁぁ……あらひ、ほう、あめえぇぇっ !!!」
「ふひぃ、ふへ、はひぃぃぃぃっ !! らめ、らめえぇぇっ !!!」
 そうしてお互いを貪っていた雄と雌だったが、もうどちらも限界のようだった。瑞希の亀頭が子宮口に押しつけられ、真理奈に欲望の奔流を叩きつける。
 ――ブジュッ、ビュルルル――ブジャアアァッ !!! ドクドクドクッ…… !!!
 並の男では考えられない量の精液が噴き出し、歓喜する子宮に飲み込まれていく。
 五秒、十秒、十五秒。ブルブル痙攣しながらも真理奈の腹を満たすほどに射精した瑞希は力を使い果たしたように目の光を消し、ぐったりとベッドに横たわった。
 真理奈の方も失神して瑞希の上から転げ落ち、彼と向かい合う形で倒れこむ。
 ――プシャッ……トローッ……。
 ようやく男根が引き抜かれた結合部から濃厚なエキスが止めどなく溢れ出し、寝床を汚していく。ハァハァと上下する真理奈の体からはしばらくの間、瑞希の臭い汁が流れ続けていた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 どれだけそうしていただろうか、瑞希が不意に声を漏らして目を開いた。
「――ん、うぅ……」
 全身を覆う倦怠感に耐えて起き上がり、ぼうっとした視線を辺りに向ける。見えるのは二人の体液に汚れた寝床と半裸で寝転がる真理奈の姿、そして自分の胸部のほのかな膨らみと小学生のように滑らかな股間。
「……え? あ……私……」
 瑞希は自分の体を見下ろして驚きの声をあげた。
「私……も、戻ってる……!」
 安堵の息を吐いて再びベッドに倒れこむ瑞希の目から一筋の涙がこぼれる。つややかな長い髪がシーツの上に黒い川の流れを描き出した。
「よ、良かった……」
 そのとき真理奈も意識を取り戻し、ゆっくり寝床から身を起こした。
「……ふあーあ、あたし寝ちゃってたか。あ、瑞希それ……?」
「真理奈ちゃん! 私、元に戻ってるよ! ほら見て!」
「ほんとだ! でも相変わらずの幼児体型よね……」
「――真理奈ちゃんっ!」
 頬を膨らませて怒る瑞希と、彼女をからかって笑い続ける真理奈。汗と精液、愛液でドロドロの有様だというのに二人はほっとした顔で見つめ合い、そのまま無言で抱きしめあうのだった。

 日は西に差しかかり、また今日も一日が終わる。どうにか後始末を済ませた瑞希は玄関先まで親友を送り出し、見舞いに来てくれたことに対する感謝の言葉を述べた。
「これで明日からまた学校にも来れるし、良かったじゃない」
「うん、今日はホントにありがとね」
「いえいえこちらこそ、たっぷり楽しませてもらったわよ。瑞希ったらあんなに出すんだもん、びっくりしちゃった♪」
 その台詞を聞いて、西日のせいでなく顔を赤らめる瑞希。
(真理奈ちゃん……)
 元の体に戻った今はもう真理奈に対する肉欲も劣情も消えて失せたが、彼女を求めようとするあの時の欲望の念は、今も瑞希の記憶に深く刻み込まれている。
(男の子って、その、あんな感じなんだ……ちょっと良かったかも……)
 夢のような事件だったが、とにかくこれで幕が下りるはずだ。真理奈も今まで通り瑞希の親友として接してくれているが、以前よりも二人の絆がより深まったように瑞希には感じられた。
「それじゃまた明日ね、瑞希。何かあったらメールしなさいよ」
「うん真理奈ちゃん。またね、バイバイ」
 ほっと胸を撫で下ろし、瑞希は帰っていく親友を手を振って見送った。
 少し離れたところから二人をじっと見つめていた美しい少年の姿に、瑞希も真理奈も気づくことはなかった。


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