瑞希と祐介

 朝の明るい日差しが降り注ぐ中、俺は静かに家を出た。
「……いい天気だ」
 空を見上げれば雲一つない。文句なしの快晴だった。
 重くもないカバンを手に俺が向かったのは斜向かいにある一軒の家。呼び鈴を鳴らすとおばさんがいつものように俺を出迎えてくれた。
「おはよう祐介君、今日は早いのね」
「おはようございます。瑞希起きてますか?」
 俺の問いかけにおばさんは苦笑したようだった。
「まだ寝てるわ。最近あの子、夜更かししてるみたいで困ってるの。祐介君からも何か言ってやってくれない?」
「わかりました、注意しときます」
 俺は努めて冷静に受け答えをし、おばさんの許可をもらって瑞希の部屋へ足を踏み入れた。

「瑞希、入るぞ」
 やはり返事はなく、見慣れたベッドの上には毛布をかぶった塊が転がっていた。無言でその脇に立ち、乱暴に毛布を引っぺがしてやる。
 寝床から現れたのは一糸まとわぬ姿で熟睡している小柄な少女だった。
 つややかな長い黒髪はシーツの上を蛇行して流れ、子供っぽい繊細な顔立ちはまるで童話に出てくる妖精を思わせる。小学生かせいぜい中学生にしか見えない体格は発育が悪く、胸もささやかなものだった。
 そんな色気のない裸に軽く目をやり、俺はこいつを起こしにかかる。
「また裸かよ……おい瑞希、朝だぞ起きろ」
「ん……んん、うん……」
 体を揺らして頬をぺちぺち叩いたが、こいつはなかなか起きる気配がない。どうやらおばさんの言う通り、あまり寝ていないようだった。
 まだ時間には余裕があるがいつまでもこうしているのも無駄に感じられる。やむを得ないので別の手段に出ることにしよう。
「瑞希、起きろ」
 再度そう言ってベッドに上がりこみ――仰向けになっていた瑞希の唇に思い切り吸いついてやる。
「ん、んむぅっ……」
 半開きになっていた口を舌でこじ開けカラカラに乾いていた口内に唾を送り込み、俺の水分をたっぷりとこいつに補給させてやった。
 それだけに留まらず俺の指は少女の裸体を遠慮なく撫で回し、小さな小さな乳房の先端、ピンクのつぼみをギュッとつねって責めたてる。
「んん――むぐぅぅっ……!」
 そこでようやく瑞希は目を開け、驚いた顔で至近の俺の顔を見つめた。それを確認してやっとのことで俺はこいつを解放してやる。
「――ふう、やっと起きたな。まったく」
「ゆ、祐ちゃん……?」
 瑞希は顔を真っ赤に染め、落ち着きなくもじもじしていた。
「お、起こしてくれたの……? ありがと……」
 朝から唇を奪われ胸をいたぶられたというのに、こいつは怒るどころか淫蕩な表情で礼を言う。その口の端からは俺の唾液が一筋、つうっと垂れていた。
 俺は軽くうなずき返し、ベッドの縁に腰かけた。そうしていると自然と瑞希が寄ってきて俺にもたれかかってくる。小さかったときは自分の父親に甘えていたこいつだが、今はその対象が俺になっただけで子供の頃とやってることはまったく変わっていない。その事実につい笑ってしまう。
「何やってたんだお前は。眠そうだけど、昨日は寝なかったのか?」
「うん……その、ベッドに入ったのは早かったんだけど……」
「んで?」
「遅くまで、ず、ずっと……オナニーしてて……祐ちゃんで……」
「……はあああぁぁあぁ……」
 脱力を隠す気にもなれず、俺はゆっくり時間をかけて肺の空気を残らず吐き出した。そんな俺の様子に気後れしたのか、瑞希は目を潤ませてこちらを見つめるばかり。
「ご、ごめん……」
 申し訳なさそうに言ってくる瑞希を張り倒してベッドに転ばせる。本気でないとはいえ瑞希を叩く感触に心が痛んだが、俺の口はこいつを容赦なく嬲り続けた。
「この馬鹿、勝手に人をオカズにするな!」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「あーあ、お前がこんな変態だなんてガッカリだよ。マジでさかりのついた雌犬だな」
「ああ――許して……祐ちゃん許してぇ……」
 泣きながらこちらに哀願する瑞希だったが、その顔は恍惚に満たされている。むしろ泣きそうなのは俺の方なのだが、瑞希はそんな俺に必死で謝りつつもじりじりこちらににじり寄り、涙で濡れた顔を俺の下半身に押しつけてきた。
「ごめんなさい……私は変態なんです。許可もなしに祐介様でオナニーして思いっきりお仕置きされないと満足できない変態なんです。許して下さい……」
 恥ずかしいセリフを苦もなく言い終え、俺の機嫌をうかがおうと顔を上げる瑞希。
「…………」
 俺は何も言わずその細い顎に手をかけ、もう一度こいつの唇を奪ってやった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 俺、中川祐介と森田瑞希のつき合いは幼稚園に入る前にまでさかのぼる。
 瑞希は小さい頃から内気で怖がりだった。こいつが泣いたとき慰めてやるのはいつも俺の役目で、いつしか俺の方もこの少女をそっと守ってやるのが当たり前になっていた。
 俺は俺で昔から無口で可愛くないガキだったから、仲のいい友達は非常に少なかった。
 そんな俺と瑞希がいつも一緒にいるようになったのはごく自然な成り行きだったと言える。俺も瑞希も斜向かいの相手の家をしょっちゅう行き来していたし、どっちの親も微笑ましげに俺たちのことを見守ってくれていた。
 だがそれはあくまで兄妹や親友のような関係であって、俺は今までこいつを女として意識したことは一度たりともなかった。きっと瑞希の方もそうだと思い、しょっちゅう買い物や遊び、勉強を共にしながらも俺たちはこの近すぎず遠すぎずの微妙な距離を保ったまま高校生になった。
 だから、ある日突然こいつから告白されたときは非常に驚いた。
「私、祐ちゃんが好き……」
 いつも気弱なこいつの、精一杯のアプローチ。俺たちはそのまま自宅で体を重ね、お互いの初めてを捧げ合った。
 こうして俺と瑞希は正式につき合い出すことになる。

 ……とまあ、ここまでなら何の問題もなかったのだが。
 それからすぐ、猛烈に困るというか、どう反応していいかわからない事態に直面した。瑞希はなんと重度の変態さん、俺が思わず引いてしまうほどのM体質だったのだ。
「祐ちゃん、お尻、お尻叩いてぇっ!」
「んはぁ……痛くて、気持ちいいのぉっ……」
「お願い祐ちゃん……ご主人様になって、私を飼って下さい……」
 バックからゴムもつけず膣をかき回しながら、瑞希の臀部を叩かされる俺。ノーマルな嗜好しか持たない俺は、日に日に乱れていく幼馴染の姿に唖然とするばかりだった。
 こいつを調教しているはずが、実は調教されてるのは俺の方じゃないだろうか、とたまに思う。両手足を縛られてバイブでイキまくる恋人を前にして、俺はふと自分の人生はこのままでいいのかと真剣に考え込んでしまうのだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 並んで登校する俺と瑞希を陽光が見守ってくれている。
 うちの高校までの道のりは平坦で風景のメリハリも少なく、何も考えずにぼーっと歩いていると途中から自分がどこにいるのかわからなくなる錯覚に襲われてしまう。
 俺は何ともなしに隣にいるセーラー服姿の幼馴染に目をやった。
「……? どうしたの祐ちゃん?」
「いや、何でもない」
 先ほどの痴態はどこへやら、瑞希はいつもの内気な幼馴染に戻っていた。チビで小学生と間違えられることはあるが、客観的に見ても可愛い顔だと思う。小さな鼻も口も形が整ってるし、つぶらな瞳だって綺麗に透き通っている。黒い長髪を今はツインテールに垂らしていて、それがまたよく似合う。
 本人は発育の悪いこと――特に胸――を気にしているが、俺からすればどうでもいい話だった。“祐ちゃんが揉んで育てて”と涙目で言われたときは本当に困り果てたが。
「そう? それにしてもいい天気だね」
「……ああ」
 元々俺は口数が少ないし、瑞希も内気であまり喋る方ではない。それからも大して言葉も交わさず、俺たち二人は通学路を歩いていった。

 眠気に覆われた教室の前で、眼鏡をかけた女教師が淡々と授業を進めている。
「セダンの戦いにおいてナポレオン三世はプロイセン軍に破れ、捕虜となります。陣頭に立っていた皇帝が捕らわれの身になることで第二帝政が崩壊、パリも陥落――」
 適当に重要そうな項目だけを抜き出してノートに拾っていく俺。学校の試験と大学受験さえ終われば忘れてしまっても構わないが、それまではこういった興味のない分野の内容でも頭に入れておかないといけない。
「えーと、ここ赤線引いてっと……」
 書くべきことを書き終え一息ついた俺は、何げない視線をすぐ前の席に向けた。見慣れた黒のツインテールがまるで生き物のようにぷらぷらと揺れている。
「……ふ、ふあぁ、祐ちゃん……」
 俺に聞かせているつもりだろうか、かすかな喘ぎ声が聞こえてくる。後ろからなので見えないが、きっと顔を真っ赤にしているに違いない。軽く震える瑞希の様子には教師も気づくことはなかったが、俺だけは全てを知っていた。
 この少女のスカートの中、椅子に乗った肉づきの薄い尻に太いバイブが突き刺さっていることを。
「この普仏戦争の結果から、他国も国民皆兵制を採用することになります。これによって軍隊がより大規模になり、それが第一次大戦の総力戦へと繋がって――」
 世界史の担当は厳しいことで有名な升田先生だ。もしこんなことが知られたら瑞希は破滅するだろう。思わず背筋が寒くなるのを感じながら、俺は幼馴染の後ろ姿を観察していた。
 俺の心配も虚しく、瑞希の甘い声と吐息は途切れることなく後ろに送られてくる。
「はぁ……はぁあ……」
 そのとき、ついに升田先生が瑞希の異変に気がついた。
「そこのあなた、どうしたの !? 気分でも悪いの?」
「い……いいえ、大丈夫です……」
 真っ赤な顔でハァハァと息を荒げて返事をする瑞希。先生はそれを見て風邪とでも思ったのだろう、
「誰か、森田さんを保健室に連れて行ってあげてちょうだい」
 と言って教室を見回した。
 それに一人の女生徒が手を上げて答える。
「はーい、中川君が行ってくれるそうでーす!」
「……なに?」
 眉をひそめる俺に、周囲のクラスメートもうんうんと頷いていた。俺と瑞希が子供の頃からいつも一緒にいることはとうに皆に知れ渡っている。生徒たちにつられたのか、先生も俺に任せることにしたようだった。
「じゃあ中川君、悪いけど森田さんをよろしくね」
 こうなってしまってはもうどうしようもない。
「はい……行くぞ瑞希」
「う、うん……」
 ふらふら立ち上がる瑞希の手を取り、俺は皆に見送られて教室を後にした。

 俺の昼食は基本的に購買のパンだったのだが、最近は瑞希が弁当を作ってくれるようになった。
「はい祐ちゃん、今日の分」
「ああ、ありがとな。おばさんにも礼言っといてくれ」
 お手製弁当と言えば聞こえはいいが、半分くらいは瑞希んちの冷蔵庫の残り物だ。こいつもちゃんと料理作れば美味いんだが、ここのところあんな感じで朝寝坊しまくっているのでなかなか弁当に手間暇かける余裕がないらしい。
 別にパンでも構わんから無理しなくていいと告げる俺に、瑞希は顔を赤くして答えた。
「だって……私は祐ちゃんを毎晩オカズにしてるのに、祐ちゃんのオカズがないだなんて……」
「いやいや、そんな下品なギャグはいらんから」
「でも私、祐ちゃんのこと考えながらご飯三杯はいけるよ?」
「あ、そうですか。はいはい……ホントに変態だなお前は」
 その誉め言葉を聞いて頭から湯気をたてる瑞希は確かに可愛いと言えば可愛かったが、何かが間違ってるような気もする。
 飯を食いながら馬鹿なやりとりを交わす俺たちのところに、一人の女生徒がやってきた。
「はーい瑞希、どう? 今日も愛しの祐ちゃんに可愛がってもらってる?」
「ま、真理奈ちゃん……」
 短く切った茶髪と健康的に引き締まった長身、派手な顔立ちのこいつは加藤真理奈という。見た目通りよくモテる女で、頻繁に付き合う男をとっかえひっかえしているやつだ。歯に衣を着せないというか言いたいことは何でも言うというか、とにかく遠慮がなく、この世の男は全部自分の下僕だと勘違いしているような節がある。
 先ほど俺を升田先生にけしかけたのもこいつだった。俺は多少の抗議の意思をこめ、鋭い視線を加藤に向けてやった。
「……加藤、さっきはどういうつもりだったんだよ。あの鬼教師に名指しで呼ばれるのは、いくら俺でもあまりいい気がしなかったぞ」
「あら、可愛い彼女が体調不良だったら助けてやるのが男ってもんじゃないの?」
 こいつは怪しい笑顔で俺の言葉を受け流す。性格はまったく違うのだが、なぜかこいつは瑞希と妙に仲が良く、一緒にいることも多い。
 聞いた話だと瑞希に俺への告白を決意させたのも実はこいつだったとか。その意味では恋のキューピッドと言えなくもないが、感謝してやる気はさらさらない。
 加藤はにやにや笑いつつ、クリームパンを片手に瑞希の隣の席に座った。
「それに、他の人にバレたら大変でしょ?」
「何がだよ」
「あら、言わせたいの? 授業中、中川が瑞希にバイブ入れさせてるって」
「…………」
「祐ちゃん……」
 全部お見通しと言わんばかりの余裕たっぷりの表情で、加藤は俺たちを眺めている。
「……別に俺がやらせてる訳じゃない。こいつが勝手に――」
「でも好きなんでしょ? この子のそういうエッチなとこも」
「馬鹿言うな、俺は常識人だ」
「そう? 男ってエッチな女の子が大好きなのかと思ってたけど。あんたひょっとしてインポ?」
「ま、真理奈ちゃん……」
 教室の隅で話しているため、俺たちの会話を聞く者は誰もいない。
 硬い顔で加藤をにらみつける俺と、そんな俺をからかって遊ぶ加藤。その二人の間でおどおどして口を出せずにいる瑞希。いつもここで飯を食う三人にとっては、これもよくある光景だ。
 結局俺は散々加藤にいじられ倒してさらにストレスを増やす羽目になってしまった。

 放課後、俺と瑞希は朝と同じように並んで帰る。違いといえばそこに加藤が加わることくらいだろう。
 何しろこいつはよく喋る。何が面白いのかわからない、しょーもない話題の数々に辟易しながらも俺は横目でちらちら瑞希を見ながら適当に相づちを返していた。
「じゃ、あたしはここで。瑞希、気をつけて帰るのよ。――中川は草食系だから、あんたがしっかりリードしなさいね」
「……うん、大丈夫」
 本人達は小声で話しているつもりだろうが、バッチリ全部聞こえてしまっている。ひょっとして瑞希が変になっちまったのはこいつのせいじゃなかろうか。
 ふって湧いた疑惑を確かめる暇もなく、加藤は俺たちに手を振って去っていった。
 立ちすくむ俺と腕を組み、瑞希の頬が桜色に染まる。
「祐ちゃん、帰ろ……?」
「あ、ああ……」
 艶然と微笑む幼馴染の顔から目を離すことができず、俺は瑞希に手を引かれて帰宅した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 さて、家に帰ればまた幼馴染との甘くて辛いひとときの再開である。今日はうちの親が遅くまで帰ってこないので、瑞希がこちらにやってきた。
 狭い部屋の中、ベッドに腰を下ろす俺の前に私服姿の瑞希が静かに立っている。
「祐ちゃん……」
「なんだ」
「今日も私を……か、可愛がって下さい」
 そう言って自分の手で黒のタックワンピースをぺらりとめくる。下着もはかずに濡れそぼった秘所には当然のようにローターが備わっていた。瑞希の頬は既に紅色に染まっており、事情を知らない男が見ればこの扇情的な少女の表情に悶え苦しむかもしれない。
 ――いっそ、このまま外に叩き出してしまおうか。
 そんな思いがふと頭をかすめるが、この変態のことだから羞恥プレイも好きかもしれない。表で通行人の視線を集め、俺の名前を連呼しながらオナニーでもされたらこっちまでヤバい。
 俺にできる唯一の行動は、全てを諦めこの幼馴染の性癖を黙って受け入れてやることだった。
「瑞希、来い」
 細く華奢な体を抱き寄せそっと手を腰に這わせる。腹をさすり背中を撫で、愛情を込めた手つきで見えない何かを肌に塗りこんでやる。
「んん……っ」
 まだ胸にも股間にも触れていないというのにこいつはもう感じているらしく、いかにも気持ちよさそうに俺の手に身を任せていた。
 肉づきの悪い幼馴染の体は小学生の頃からほとんど成長していないような気がする。しかし記憶の中では可愛らしかった幼い少女の顔は今は愛欲に染まった女のそれになり、甘い声と熱い息を吐いて俺を求めてやまなかった。
「もっと、もっと触ってぇ……おっぱいもお尻もアソコも、全部……!」
「エロいやつだ。まあ今さらだけどな」
 ワンピースを脱がせると――というかこいつが自分で脱いだのだが――白い裸体が露になる。呆れたことに瑞希はブラもショーツもつけず、黒のワンピース一枚でうちにやってきていた。四つんばいにしてローターを抜いてやると、締まりのない声を上げて身を震わせる。
「あ、ふぅぅん……っ!」
 その拍子にこいつの陰部から汁がだらりと漏れて俺のベッドを汚した。そしてこちらを振り向き、何かを求めるような媚びた視線を向けてくる。
 あれか。これはつまり、そうしてほしいということか。
 少女の望みを理解した俺は右手を振り上げ、派手な音を立てて真っ白な臀部をひっぱたいた。
 ――パァァンッ!
「あひぃぃぃっ !!」
 食いしばった瑞希の歯から唾液が飛んで、ますます寝床を汚す。俺は手を止めずに何度も何度も少女の尻を痛めつけた。
 ――パン! パァン! パンッ !!
「あひっ! はんっ! あああぁっ !!」
 薄い尻の肉を叩かれるたび、白い肌が心地よい音を鳴らすたびに少女は嬌声をあげて腰を振り、もっともっととせがんでくる。
「ひぃぃっ !! 祐ちゃんもっとぉっ!」
「この変態がっ !!」
「ああっ♪ いいよぉ……もっとしてえぇっ !!」
 救いようのないドMだ。どうしようもない変態だ。
 そして俺はその変態を毎日毎日こうやって喜ばせてる訳で。
 ドMの淫乱女をいたぶる快感と、幼馴染の少女を痛めつける罪悪感。その間で心を揺らしながら、俺は瑞希の尻を叩き続けた。
「ひぃぃぃっ! はあぁぁっ、あぁんっ !!!」
 思わずドキリとするほど妖艶な表情で身をよじる。どうやらイッたらしい。うつ伏せになって力なくベッドに横たわる瑞希の尻は右半分が真っ赤になっていた。
「…………」
 色気のない体だと思う。正直言ってちんちくりん以外の何物でもない。
 だが――だがどうして、俺はこんなにも興奮しているのだろうか。
 俺の股間では激しくいきり立ったモノがズボンを押し上げ、巨大なテントを張っている。本当はこんなことしたくないのに。こいつが乞い願うから仕方なくやっているだけなのに。しかし確かに俺は息を荒げ、勃起した性器をかかえて燃え盛る性欲を持て余している。
「瑞希……」
 半分気を失った少女の後ろから細すぎる腰を両手でがっしりとつかむ。衣服から取り出された肉棒はヤバいほど膨張して、瑞希の濡れた陰部に張りついた。我慢汁をすりつけるように、女性器の表面を先端でクチュクチュと撫でてやると男と女の肉がこすれ、溢れる汁が耳障りのいい音を立てた。
 だがそのときだ。突如俺の脳内で天啓が閃き、忘れていた大事なことを思い出させてくれた。
「あ、やべ――ゴムつけねーと……」
 机の中からゴムを取り出して素早く装着する。すっかり慣れたものだ。
 ちなみにこいつは俺がゴムなんてつけなくても全く気にしない。むしろ生理の周期も考えず、中で出されるのが大好きという非常に危険な女だ。
 そんな瑞希を間違えて孕ませてしまったらどうなるだろうか。考えただけでも恐ろしかった。
 きっと俺は一生この変態女から離れられなくなるに違いない。
 しかし今なら、今ならまだ引き返せる。なんか既にズブズブ深みにはまってるような気はするが、やはり俺としては最低限これだけはというか、撤退できるラインを考えておかないといけない。
 こうして俺は、今日も何とか避妊を忘れずに済んだのだった。
「じゃ、瑞希……いくぞ」
「ふあ……?」
 まだ意識がはっきりしないのか、ふにゃふにゃ声をあげる少女の中をゆっくりかきわけていく。
「はあぁっ…… !?」
 瑞希の膣は喜んで俺の息子を締めつけ、ゴム越しにきつい圧迫感を与えてきた。やはり小柄なこいつの中は狭い。何度も犯したってのにまだ慣れない。
 ――ジュブ……ズズズッ……。
「あぁ――入って、くるぅ……!」
「やっぱきついな。瑞希の中」
「はあぁっ……私、イッたばっか、なのにぃ……!」
 知ったことではない。俺は瑞希の腰を自在に動かし結合部をかき回した。ちょっと奥に突き込めば容易に子宮口をノックできるほどの狭さでとてもきつい。だがジューシーな膣の肉はみっちり俺のを締めつけてくるし、どんどん分泌される熱いスープは潤滑油となって肉棒の往復をスムーズにしてくれる。
「ああ……あぁっ、ああんっ……祐、ちゃ……!」
 瑞希はうつ伏せになって喘ぎ、白いシーツをかきむしった。馬鹿みたいに俺の名前を呼びまくって際限なく声と唾とを吐き出していく。
 俺のチンポに貫かれて嬌声を上げるツインテールの少女の姿は本当にエロい。
“ゆーちゃん、ゆーちゃん”と少年の後ろをついてきていた幼い女の子は十数年の時をかけて念願叶い、望んで俺のペットになったという訳だ。
 ――やっぱりどこかで道を間違えた気がする。俺かこいつか、もしくはその両方が。
 いや、俺だって瑞希のことは嫌いじゃない。それどころか今でも大好きだ。いつも俺の隣にいるべき女と言えば瑞希以外に考えられないだろう。今までも、そしてこれからも。
 しかし生憎と俺は真面目でノーマルな男子高校生、クラスメートの女を自分の所有物にするとか幼馴染の少女を奴隷にして日夜奉仕させるとか、そういった類の妄想とは今まで縁がなかった。
 だから誕生日プレゼントに首輪が欲しいと上目遣いで要求されても困る訳で。
 もはや遠慮なく俺の前で変態ぶりを発揮する幼馴染に俺はただドン引き状態だったが、それでも俺は瑞希が好きで、大人しくて内気なこいつと健全につき合いたいと思っていた。
 その夢が叶う日は来るのだろうか。なんか来ない気もするが、来て欲しいもんだ。本当に。
 俺は幼馴染をバックで思い切り犯しながらぼんやりとそんなことを考えていた。
「ふあっ、ああっ……祐ちゃん、祐ちゃあんっ……!」
 子宮の入り口をコンコンつつく、その感触がまた乙なものだ。ただでさえ狭い瑞希の膣はぎゅうぎゅう収縮し、俺の汁を絞り取ろうとみっちりと先端から根元まで痛いほど締めつけてくる。
 あー、やばい。気持ちよすぎて先にイっちまうかもしれん。この変態には負けたくないなあ。でもこいつまだイカないしなあ。
 ――パンッ !! パン、パンッ !!
 腰を打ちつけ肉を鳴らし、瑞希と激しく絡み合う。うつ伏せのため俺からはその表情が見えないが、きっと狂喜していることだろう。白目を剥いて舌を伸ばし、俺に犯されて死にそうな声でよがり狂う狂気の女。
「あひぃっ !! 祐ちゃ、ヒィッ !! しぬ、しぬゥゥッ !!!」
「あ、俺も――やべ、出そう……」
「出して、中にィ !! 中に出して、祐ちゃあぁんっ !!」
 大声で叫んで必死の中出しアピール。だが俺はちゃんとゴムをつけていた。危ないところだ。
 瑞希の体がガクガクと震え、膣を絞って締めつけを一層きつくする。男を求めてやまない女の肉が引き締まり、ついに射精にこぎつけた。
 ――ビュッ、ビュルルルッ……ドクドクッ……!
「ああぁあぁぁ――熱い、熱いよォ……♪」
 ゴム越しでも俺の子種を受け止めて嬉しいのか、瑞希は半死半生の体でそう鳴いてみせる。呆れるほどの幼児体型だというのに、こっちがドン引きするほどのドMだというのに、幼馴染の満足げな声を聞いて俺の心にも温かいものが満ちていった。

「ひぃ、ひぃっ、はふうぅ……」
「はあ……はぁはぁ、はぁ……」
 俺の下敷きになって熱い息を吐き続ける小柄な女。小さい頃から手のかかるやつで、いつも俺にベタベタまとわりついてきて。そして今は毎日のように俺の性処理を喜んでする変態女ときた。なんでこんなやつの彼氏をやっているのか、正直言って自分でもわからない。
 ただ、不思議と嫌な気はしない。こうして一緒にいるのが昔から当たり前になっているからだろうか。
「ふぅ……」
 萎えた肉棒を引き抜き、ゴムを始末して瑞希の隣に寝転がる。こうも頻繁にヤらされたんじゃこっちがもたない。何発も出してたらマジで死ぬ。
 黒髪の少女はまだ絶頂の余韻に浸っているのか、じっとしたまま荒い呼吸を続けていた。
 ふと視線を下ろした俺の視界に小さな穴が開いた黒い靴下が目に入った。
 ――ああ、破れてたか。新しいのを出さないとな。
 横着にも脚を曲げて両の靴下を脱ぎ、手の先に提げてみせる。朝からずっと履いていた、俺の臭いが染みついた汚い靴下。
「…………」
 無言でその布切れを見つめながら、そっと隣の少女に目をやる。この変態のことだから、ひょっとするとこれも自慰のいい材料にするんだろうか。
 きっとそうだという思いと、いやいやさすがにという擁護が半分ずつ、俺の頭に浮かんで争う。はっきりいってどうでもいい、非常に馬鹿馬鹿しい話だったが、俺はついついつぶやいていた。
「瑞希――俺の靴下、破れてたから捨てようと思うんだが……要るか?」
「…………」
 幼馴染の女はうつ伏せのまま動かない。意識がないのかもしれない。やれやれ、俺も血迷って馬鹿なことを言ったもんだ。
 俺は軽く首を振ってゴミ箱に靴下を突っ込もうとしたが、不意に瑞希の手が伸びてそれを遮った。
「はあ、はぁ……はふぅ……」
「瑞希……?」
 俺のことしか目に入らない一途な瞳。愛によどんだ暗い瞳が俺を射抜いていた。そして俺の手から靴下をむしり取りながら、息せき切らして次の一言。
「さっき捨てた祐ちゃんのせーえきも……一緒にもらっていい?」
「…………」
 うなずくことも拒むこともできず、黙って見返すしかなかった。

 と、こんな感じで俺と瑞希の関係は続いている。
 まああれこれケチをつけはしたが、瑞希は一生懸命俺に尽くしてくれるし可愛いし、俺にはもったいないほどの彼女だと思う。これで変態でもドMでもなかったら最高なのだが、それは贅沢なのだろう。
 夜、ベッドにもぐり込んであいつのことを考える。
 あいつは今日もらって帰った俺の靴下とゴムで必死にオナっているのだろうか。明日の朝起こしに行ったら、あのべとべとの素っ裸で俺を迎えてくれるのだろうか。
 いつの間にかそんな日常を受け入れてしまっている自分に、ほんの少しだけ驚く。
 ――まあいい。また明日、あいつを起こしに行かないと。
 そっと目を閉じ、俺は深い眠りに落ちていった。


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