真理奈と直人 3

 明るいリビングの中にコーヒーの香りが充満していた。あたしにはコーヒーの違いなんてわからないけど、うちのママは結構こだわるんだ。
 湯気の立つ白いカップを口に傾け、パパが問いかけた。
「――珍しいな、お前がそんな真面目な顔をするなんて。何かあったのか」
 テーブルに並んだあたしの両親の向かいにはパパの弟夫婦、あたしの叔父さんたちが座っている。あたしは卓の横、両親と叔父さん夫婦に挟まれる位置にいた。その膝の上にちゃっかり座った直人が、あたしに髪を撫でられ上機嫌で笑っている。
「実は……兄さんに頼みがあるんだ」
 叔父さんが重々しく口を開いた。いつも穏やかで優しい人なのに、今日は何があったのか叔母さんと同じ緊張した面持ちであたしのパパを見つめている。少々のことでは動じないうちの一族だけど、一体どうしたんだろう。小学生の従弟の重みと温かみを感じながら、あたしは叔父さんが話を続けるのを待った。
「何だ、言ってみろ」
 うちのパパと叔父さんの兄弟は、この歳になった今でも非常に仲が良い。休日には一緒に買い物に行ったり旅行に出かけたりとよく行動を共にしている。兄弟はとにかく女同士なんてよく揉めるものだと思っちゃうけど、意外にそうでもないみたい。叔母さんはママと違って何でも控えめな人だからかなぁ。あれで損してないのかしら。パパに促され、叔父さんが顔を上げて言った。
「仕事の都合で……ロシアに行くことになっちゃったんだ」
「何だって?」
 唐突な話にパパもママも、あたしも思わず目を丸くした。ロシアと言われても、無知なあたしには寒くて石油が出る国ってイメージしかない。あと、たまに新聞記者が殺されたり物騒なとこだとも聞いている。そんなところに出張だなんて、いくら仕事とはいえ叔父さんも大変よね。パパもあたしと同じ気持ちだったみたいで、優しい言葉を叔父さんにかけてやった。
「そうか……そりゃ大変だな。あっちは寒いだろう、気をつけるんだぞ」
「ありがとう」
「それで、どのくらいの出張なんだ? 一週間か一月か、それとももっとか」
「うん……それが当分帰って来れそうにないんだ。多分、早くて二、三年だと思う」
 そこでやっとコーヒーに口をつけ、叔父さんが呼吸をついだ。
「単身赴任も考えたんだけど、こいつがどうしてもついていくって聞かないんだ。だからしばらく、兄さん達とも気軽に会えなくなる。ごめんよ」
「……残念だな」

 そのときあたしの口から小さな声が漏れた。
「……え、それじゃ直人は? 直人も行っちゃうの?」
 あたしはそう言いながら、従弟のサラサラの髪を撫でる心地よい感触に酔っていた。直人はあたしの膝の上で、じっと大人たちの会話に耳を傾けている。まだ小学六年生のあたしの従弟。とても可愛くて将来が楽しみの、あたしの恋人候補生。まさか、この子があたしの前からいなくなってしまうなんて……。
 あたしは直人を抱いたまま、魂が抜けたようになってぼーっと虚空を眺めていた。
「――だから兄さん――頼み――」
「ああ――わかった――」
 パパと叔父さんの会話がすごく遠いところから聞こえてくる。
「まりなお姉ちゃん……?」
「直人……」
 首を回して心配そうにこちらを見上げてくる従弟に、あたしは力なく笑いかけた。馬鹿ね、心配するのはあたしの方じゃない。子供の癖に……。
 周囲から切り離されたように二人だけで、あたしと直人は静かに見つめ合っていた。
「そうね、あっちに行ったら塾に行かなくてもいいわよね……。友達とはしばらく会えなくなっちゃうけど、向こうでいっぱい新しい友達を作るのよ?」
「お姉ちゃん……」
「毎日電話してきていいからね。何かあったらすぐあたしに言うのよ?」
「お、お姉ちゃん……ちょっと落ち着いて……」
 これが落ち着ける訳がない。気がつけばあたしは従弟をきつく抱きしめていた。子供らしく体温は高い。暖かな直人の温もりに、あたしは寂しく微笑んだ。

「……おい真理奈、聞いてるか?」
「え、あ? うん、何よパパ」
 不意に直人との抱っこを中断させられ、顔を上げるあたし。いつの間にかパパもママも叔父さん達も、揃って不思議そうな顔をこちらに向けていた。
「お前、人の話を全然聞いてなかっただろう。叔父さん達が大変なときに、この馬鹿娘は……」
 思いっきり呆れた様子でパパが言ったが、あたしにはあたしの言い分がある。せっかく手なずけた可愛い可愛い少年が、あたしを置いてシベリアに行ってしまうというのだ。傷心に涙する娘に対してこの言い草、何て非道な父親だろうか。あたしは顔をしかめてパパに聞き返した。
「それで、何なの?」
「だからだな……」
 次に父親の口から飛び出したセリフに、あたしの目が点になった。
「これから直人がうちで暮らすことになるけど、お前も構わんよな?」
「……はい?」
 思いもよらぬ言葉に固まってしまったあたしに、パパが続けて言う。
「仕方ないだろう。直人は日本を離れたくないって言うし、第一まだ小学生だ。他所に預けるくらいならうちで面倒見た方がいいだろ?」
 スカートを履いたあたしの太ももの上に腰かけた直人が笑っていた。呆然としたあたしを放置したまま、どんどん話は進んでいく。
「じゃあ兄さん、直人のことくれぐれもよろしく頼むよ」
「ああ任せとけ。でもちゃんと養育費くらいは送ってくれよ?」
「それはわかってる。直人も、伯父さんたちに迷惑かけないようにするんだぞ」
「うん、わかった!」
「直人……毎日電話するからね。体に気をつけるのよ」
 完全に取り残されてしまったあたしの膝から直人が下り、背筋を伸ばしてぴんと立った。そしていかにも真面目そうにぎくしゃくしたお辞儀をしてみせる。
「お、おじさん、おばさん、まりなおねえちゃん……これからよろしくお願いします!」
 こうしてあたしは小六の従弟と一つ屋根の下で暮らすことになったのだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 あたしの名前は加藤真理奈。自分で言うのも何だけど、美人でさばさばした性格のためかよくモテる。短めの茶髪と勝気な表情、ブーツを履いた長身は街を歩いていても通行人の視線を集めるし、あちこちで軽そうな男が声をかけてくるのも、まあよくある話だった。ちょっと微笑んでやるだけで舞い上がってしまう馬鹿な男たち。ホントに楽なもんだと思う。
 そんな訳で付き合う男をとっかえひっかえしていたあたしだけど、それがこの間から大きく変わった。
「……まりなお姉ちゃん、どうしたの?」
 加藤直人、あたしの従弟の小学六年生が黄色のパジャマ姿でこちらを見つめている。いかにも子供っぽいヒマワリ柄なのが可愛いというか何というか。
「ん、何でもない」
 あたしは平静を装って直人にそう答えた。お風呂上りで熱の残る体は薄いシャツ一枚だけを身につけ、下はピンクのショーツのみ。そんな扇情的な姿の従姉から目をそらし、この子が小さな声でつぶやいた。
「お父さんたち……遅くなる?」
「そうねえ、あの様子だと今日は徹夜で飲み明かすんじゃないかしら……」
 今、うちにはあたしと直人しかいない。
 皆でご飯を食べに行ったあたしたちだったが、日本を離れる弟夫婦と今のうち杯を酌み交わしておこうとパパが暴走してしまったため、あたしは居酒屋に向かう親たちに見切りをつけ、直人を連れて先に帰ることにした。叔父さん夫婦もあたしに“直人を頼む”と言って完全にこの子を手放してしまうし、うちの親戚は揃いも揃って子供を顧みないろくでなしばかりだった。
「あんな大人どもはカギかけて締め出しときゃいいのよ。まったくもう」
 ここはあたしの部屋。あまり片付けるのは得意じゃないけど、今は見苦しくない程度に整っていた。直人はそんな女の部屋をキョロキョロと落ち着きなく見回している。
「お姉ちゃん、ホントにここ……ボクも使っていいの?」
「いいわよ。あっちは完全に物置になっちゃってて、片付けるの無理なのよね。あたしと相部屋でちょっと狭いかもしれないけど、まあ我慢してちょうだい」
 うちのマンションはそこそこの広さがあるんだけど、問題はうちの一家がずぼらなことだ。整理整頓なんてろくにせず、邪魔なものは奥の部屋に次から次へとぶち込んでしまう。 おかげで本来はもう一つあった部屋が物に埋め尽くされてしまってて、とてもこの子のために空けてやれそうにはなかった。
 ……まあそれは建前で、ホントはあたしが直人と一緒に寝起きしたいだけなんだけど。
 せっかく同じ家の同じ部屋で生活することになるんだから、あたしにはこの子をあたしに釣り合うような立派な男に育てる義務がある。いくら可愛くて素直でも、直人はまだまだ子供。あたしが色々教えてやらないと。
「あたしはどーせ使わないから、机は自由にしてくれていいわ。服はタンスのここを空けたげる。ベッドは一つしかないから、夜はあたしと一緒に寝ることになるわね」
「え、毎日お姉ちゃんと寝るの……?」
「何よ、嫌なの?」
 虚をつかれた顔の直人に、あたしは聞き返してやった。そんなあたしに返ってきたのはあどけない従弟の極上の笑顔。
「ううん、すっごい嬉しい!」
 あぁ可愛いなあこの子は。あたしもうメロメロだよ。毎晩夜更かししていたあたしだが、今日から早寝早起きを心がけることにしよう。そう決めたあたしは、とりあえず本日のナオト分を摂取することにした。

 ベッドに座ったあたしの手が伸び、幼い少年を妖しくいざなう。
「じゃあ直人、こっちおいで……」
「う、うん……」
 火照った顔の直人を抱き寄せ、抵抗もしない従弟と口づけを交わす。あたしたちはすっかりお互いの虜になって、そのまま激しく相手を貪った。
「――ぴちゃ、ちゅっ……あは、直人ぉ……」
「んっ、んむぅっ……お姉ちゃあん……」
 キスしてる。あたしってば、まだ小学生のこの子の口を吸って舌を入れてる。熱い触手で直人の中を舐め回して、その唾をジュルジュル音たてて飲んじゃってる。従弟の小さな背中に腕を回し、あたしは丁寧にこの子をリードしてやった。
「ふふっ、直人……お姉ちゃんとのキス、好き……?」
「う、うん……とっても気持ちいい……」
「そう……直人のお口も、とっても美味しいわよ……」
 ベッドに引っ張り込み、寝転がったまま直人と至近で見つめ合うあたし。充分と言っていい美少年の顔を満足そうに眺めやり、あたしは小さくうなずいた。
「直人、今日からずーっと一緒だからね……」
「お姉ちゃん……ボク、まりなお姉ちゃんと家族になるんだよね。まりなお姉ちゃんがボクのホントのお姉ちゃんになってくれるなんて、すっごく嬉しい……」
 真っ赤になり目を伏せてそう言った直人の姿を前に、あたしは軽く震えていた。だがここは否定するところだ。心を鬼にしてあたしは首を横に振る。
「――駄目よ、あんたはあたしの弟にはなれないし、なってほしくもない」
「え、お姉ちゃん……?」
 あたしのセリフを聞いて突然不安そうに顔を歪めるこの子を、ベッドの中で抱きしめる。
「いい? あんたはあたしの恋人になるの。こ・い・び・と」
「こ、こいびと……?」
 直人は顔に疑問符を浮かべた。まあ、まだ中学生にもなってない子供にいきなりこんな話をするのも無理があるわよね。この子のぷにぷに柔らかい頬を優しく撫で、あたしは言葉を続けた。
「そうねえ。簡単に言うと、将来あたしがあんたのお嫁さんになるの」
「……まりなお姉ちゃんが、ボクのおよめさん?」
「そう、どうかしら直人。いつかあたしをお嫁さんにしてくれる?」
 普通、いい歳した女が小学生のガキを捕まえてこんなことは聞かない。自分でも馬鹿だと思う。でもこのときのあたしは大真面目に、幼い従弟に自分の想いをぶつけていた。
「…………」
 狭い部屋を占める沈黙は十秒ほどだったろうか。やがて直人はにっこり笑い、細い腕であたしを抱き返した。
「うん! ボク、まりなお姉ちゃんをおよめさんにする!」
「…………!」
 あたしは心臓の止まりそうな思いで、微笑む従弟と抱き合った。ヤ、ヤバい……萌え死ぬかと思った……。
「そう、じゃあ今日もいっぱい好き好きしようね……」
 何とか生死の境から戻ってこれたあたしは直人のパジャマを脱がし、白いブリーフ一枚の従弟の裸体を欲情の視線で上から下まで舐め回した。膨らみのない胸のつぼみに舌を這わせ、口をすぼめて軽く吸い上げる。
「あ、お姉ちゃん、やだ……!」
 乳首をじっくり吸ってはまた離し、もう一方へと移動する。それを数回繰り返すと、直人の目はとろんとして焦点が怪しくなってきた。
「ふふふ、直人ったらおっぱいで感じてるの? 女の子みたい……」
「ち、違うよぉ……」
「じゃあ今度は、あたしのおっぱい吸ってくれない?」
 シャツを脱ぎ捨て露になった大きな乳房を直人は物欲しげに見つめている。あたしはそんな従弟に体を寄せ、桜色に染まった胸をこの子の顔に押しつけてやった。
「お、お姉ちゃんの……おっぱい……」
 ドキドキしつつも直人はあたしに擦り寄り、両手で乳房を押さえて乳首に吸いついた。まるで赤ちゃんみたいな仕草につい笑ってしまう。
「ん……んちゅっ……んむ……」
「そうよ直人、気持ちいいわ……ふふ……」
 あたしは従弟の頭を抱え、胸を吸われて喜んでいた。とっても素直であどけなくて、あたしの大好きな可愛い直人。勃起した乳首を噛んでほしくはあったけど、それはおいおい仕込んでいこう。
「直人……好きよ……」
「お姉ちゃん……」
 とうとう我慢のできなくなったあたしは直人のブリーフを剥ぎ取り、現れた小さな男性器に目をやった。
 可愛いけど硬くて頑張りやさんの、あたし専用の直人のおちんちん。 それを右手の指でそっとつまみ、レバーみたいに前後左右に動かしてみる。
「ほら直人のおちんちん、こんなに元気で面白いわよ」
「うう……遊ばないでよう……」
「うふふ、ごめんごめん。ちゃんと舐め舐めしたげるからね」
 そう言ってあたしは直人の未熟な陰茎を口に含んだ。
「ん……ちゅぱ、くちゅ……」
「うあぁっ……ヌ、ヌメヌメして――あぁっ……」
 直人のおちんちんはぴんと立って先端から淫らな汁を漏らしていた。口に入れた細い肉棒の先っちょ、尿道を舌で押さえつけてやると直人は両手で顔を覆い、快感と戸惑いに首をぶるぶる振りまくる。
「あぁぁ……これぇ、ダメだよぉっ……!」
 声変わりもしていない少年の喘ぎ声はあたしの鼓膜を気持ちよく揺さぶり、この子への愛情と嗜虐心とを同時に煽り立てる。
「んっ……ふふ、直人はホントにフェラに弱いわね……」
「ふぇ、ふぇら……?」
 背筋を反らして目を細める柔弱な従弟の姿は実にそそられる。あたしはべとべとになった直人の棒から口を離し、唾液を唇から滴らせたままこの純真な男の子に下品な知識を教え込んだ。
「こうやっておちんちんペロペロするの、フェラチオって言うの。これからあたしにこうして欲しいときは、フェラして下さいってちゃんと言うのよ?」
「え……? う、うん……」
「ほら言ってみなさい。『真理奈お姉ちゃんフェラして下さい』って」
「えっ……な、なんか恥ずかしいよ……」
 当然の羞恥に頬を朱に染める直人。だがあたしは舌でこの子の亀頭を軽く撫で責めたてた。
「何言ってるの、あんた男の子でしょ? 恥ずかしくてどうするのよ。わかったらあたしにお願いしてみなさい。何事も練習よ、練習」
「う……わかった……」
 強い口調で続けるあたしに観念したらしく、少年は全裸でもじもじしながら惚れ惚れするような声音であたしが期待した通りのセリフを口にした。
「ま、まりなおねえちゃん……ふぇ、ふぇらして、ください……」
「…………」
「お、おねえちゃん? どうしたの……?」
「――か、可愛いっ !! 直人あんた可愛すぎっ !!」
 裸でひしと少年を抱きしめ、あたしは恍惚に酔いしれていた。
 もちろんあたしは、幼い従弟に釘を刺すのも忘れない。
「でも外でこんなこと言っちゃ駄目よ。あたしと二人きりのときだけだからね」
「うん、わかった」
 素直に首を振ってうなずく直人の顔は、年相応の可愛らしさを充分にかもし出していた。
 この子をあたしが自由に仕込んで、うふふふふ……おっと、危ない危ない。危うく直人の魅力に理性が焼け切れるところだった。あたしは再び直人のおちんちんを手で包み込み、妖艶な視線で見上げてみせた。
「じゃあ直人、もう一回言ってみて」
「まりなお姉ちゃん、フェラして下さい」
「よくできました〜っ! ご褒美にたっぷりペロペロしたげる♪」
「あ……ふああぁっ、ああぁぁっ!」
 従弟が奏でる心地よいメロディーを聴きながら、あたしは従弟に奉仕し続けた。
 その夜は散々愛し合って、どっちも裸のまんまくっついて一緒に寝た。こんな生活が毎日続くと思うと、なんかもう幸せで死んじゃうかも……うふふ。



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