強いられた身代わり 2

 チャイムが鳴り、教壇に立っていた男性教師が試験の終了を告げた。
「では、答案を回収する。各自、自分の答案を前に回してくれ」
まどかは手元の解答用紙に「木下杏奈」という氏名が書かれているのを確認すると、それを前の席の男子生徒に差し出した。
 あまり出来がよくなかったのか、男子生徒は仏頂面でまどかの答案を受け取ったが、ふと紙面を一瞥して顔色を変えた。
「どういうことだ、信じられん。馬鹿で有名なあの木下がちゃんと解答してやがる」
 とでも言いたげな表情だった。
 まどかはそんな彼に刺々しい視線を投げかけ、早く次の生徒に回すよう促した。彼は困惑した様子で前を向き、自分の答案をまどかの上に重ねて差し出した。
 事情を知らない彼が驚くのも当然のことだと、理屈では理解している。しかし今のまどかに、彼の無礼をいささかも気にせず済ませられるほどの余裕はなかった。
(まったく……どうして私がこんなことをしなければいけないの。私がよりにもよってあの問題児の木下さんになって、追試の替え玉にされるなんて)
 カバンの中に筆記用具を乱暴に突っ込み、傍らの窓に目をやる。薄汚れたガラスにぼんやりと映っているのは、まどか自身の顔ではなかった。ぼさぼさの髪を派手な金色に染めた少女がそこにいた。にわかには信じられないことだが、今のまどかは木下杏奈という女子高生になっているのだ。
 やがて答案を集め終わった教師が出ていき、まどかも杏奈のカバンを手に教室をあとにする。すると、金髪の男子生徒が廊下の壁にもたれかかってまどかを待っていた。今回の不正を企てた男、哲也だった。
「へへっ、お疲れ様。追試が終わる明日まで、その調子でよろしくお願いしますよ」
「話しかけないで。気分が悪くなるわ」
 まどかはぴしゃりと言った。人を食ったような哲也の態度も物言いも、まどかの美学とは対極にあった。
 そのうえ、哲也はまどかを陥れた張本人でもある。彼が持ってきた怪しげなジュースのせいでまどかと杏奈の体が入れ替わり、こうして彼女の身代わりになって追試を受けさせられる羽目になったのだから、なおさら哲也に好感を持てようはずもない。
 あのときのことは、何度思い返しても不快な気持ちにさせられる。生徒の模範たるべき教師が、まさか生徒と肉体を交換させられ、不正行為の片棒を担がされるなど、まるで悪夢だ。
 敵意をむき出しにするまどかに、哲也は馴れ馴れしく近づいて機嫌をとろうとする。
「まあまあ、そう邪険にしないで下さいよ。成績の悪いあいつを助けてくれてる先生に、俺は素直に感謝してるんですよ」
「何が感謝よ。私とあの子の体を勝手に取り替えて、無理やり追試の替え玉に仕立て上げたくせに。やめて、ついて来ないでよ」
 まどかは手を振って哲也を追い払おうとしたが、彼はしつこくまどかにつきまとい、なかなか離れようとしない。仕方なく彼を従えて学校を出た。時刻は正午を少し回った頃で、眩しい日差しに目が細くなる。
「しかし、今のまどか先生はどこから見ても杏奈にしか見えませんね。まあ、その体は間違いなく杏奈のものなんだから、当然っちゃ当然ですけど」
「……本当に追試が全部終わったら、私の体を返してくれるんでしょうね。なんだか不安になってきたわ」
 自分が着ているブレザーの襟を引っ張り、表情を険しくするまどか。そんな彼女の肩に哲也は手を置き、「大丈夫。ちゃんと元に戻してあげますから」と請け合ってみせた。
 無論、まどかはそんな口約束を無邪気に信用するほど楽天家ではなかったが、今は彼を信用するほかないというのも事実だ。杏奈と哲也の悪行を告発しようにも、今や素行不良の女生徒でしかないまどかが、「体が入れ替わった」などと主張したところで、皆に信じてもらえるはずもない。結局は二人の言うことを素直に聞いて、元の体に戻してもらうしかないのだ。
 追試は二日に渡って実施され、残すところはあと一日。明日になれば、晴れて自分の体を取り戻すことができる。それだけがまどかの希望だった。
「それじゃ、飯でも食いに行きますか。頼みごとを引き受けてもらってるわけですから、おごらせてもらいますよ」
 哲也はまどかの肩に手を置いて誘う。断ろうかと思ったが、先ほどから借り物の体がしきりに空腹を訴えていた。まどかはしぶしぶうなずく。
「しょうがないわね。一緒に行ってあげる」
「へへっ、そうこなくっちゃ。杏奈の体で生活するのもなかなか大変でしょう。あいつの親、あいつのことをほったらかしだから」
「そうね。正直言って驚いたわ……」
 体が入れ替わったあの日、まどかと杏奈はそれぞれの体に合わせた家に帰った。杏奈はまどかのマンションに、まどかは杏奈のアパートに。それから数日、二人は体だけでなく立場も取り替えて生活している。クラス一の問題児が普段どんな生活を送っているのか、まどかは身を持って体験した。
(木下さんのお父さん、ほとんど家に帰ってこない。お母さんは最初からいないようだったし、あの子の家庭は一体どうなっているの)
 杏奈の部屋にはスナック菓子の袋やコンビニ弁当の容器、煙草の吸い殻が散乱しており、極めて不衛生な環境だった。ろくに親が帰らない、汚らしいアパートの一室で暮らしているのだと思うと、彼女の担任として胸が痛む。
 杏奈の素行があのように悪いのも、すさんだ家庭環境に原因があるのかもしれない。何もかもを本人の責任に帰するのは、理想的な教育者の発想とはいえなかった。まどかにしても、腫れ物に触るような扱いをするのではなく、もっと彼女の話を親身に聞いて相談に乗ってやるべきではなかっただろうか。
 元の体に戻ったら、杏奈がこれからまっとうな学生生活を送れるよう、できるだけ力になってやりたい。まどかはそう思い始めていた。

 二人が向かった先は、学校から歩いて十分ほどの場所にあるファミリーレストランだった。
 まどかが驚いたのは、店には既に先客がいて、二人を待っていたことだ。まどかの体になった杏奈だった。
「よっ、まどかちゃん。試験お疲れ」
「き、木下さん !? あなた、なんて格好をしているのっ」
 へらへら笑って片手を挙げる杏奈の服装に、まどかは目を剥いた。
 ところどころ金色のボタンがあしらわれた黒いキャミソールは布地が少なく、首筋から肩にかけての肌が丸見えだった。ボトムスは裾が短すぎるデニムのショートパンツで、むっちりした太ももを惜しげもなくさらけ出している。靴はヒールの高いロングブーツだ。豊かなバストやヒップのライン、そして脚の長さを強調する挑発的なスタイルに、まどかは吃驚した。
「ど、どこでそんな服を手に入れたの。私の家にそんなのはなかったはずよ」
「ああ、これ? まどかちゃんの家にはろくな服がなかったから、ここに来る途中に買ってきたんだよ。なかなか似合うだろ。へへっ」
 まどかの顔を持つ杏奈は、そう答えてどっかりと椅子にもたれかかった。むやみに濃いメイクをしていることもあって、目の前にいる女の姿が、本来の自分のものだとは信じがたい。驚愕が収まると、身勝手な杏奈の振る舞いに怒りが沸いた。
「木下さん、私の体でなんてことをするの !? 体だけじゃないわ。私のお金で勝手に買い物なんかしないで!」
「大丈夫だって。そんなに高くなかったから。先生のくせにケチケチすんなよ。それより、まどかちゃんって意外とモテるんだな。ここに来るまでの間に、二回もナンパされちまったぜ。大人だから酒やタバコをやっても怒られねえし、こりゃしばらく入れ替わったままでいた方が楽しめそうだな。へへへ……」
 あまりに不埒な発言に、まどかは頭がおかしくなってしまいそうだった。杏奈が吐き出した息に不快な臭いが混じっているのは、アルコールを口にしたからか。よく見れば顔がほんのりと赤い。煙草も吸っていたようで、テーブルの上の灰皿にまだ煙の残る吸い殻があった。
「もうやめて! 早く私の体を返してっ!」
「安心して下さい。明日の追試が終わったら元に戻してあげますよ」
 と、横から哲也が割って入った。「これ以上、自分の体で好き勝手されたくはないっしょ? だったら、杏奈の代わりに試験を頑張って下さい。最後まできちんとね」
「ひ、酷い……」
 卑劣な脅しだが、決して逆らうことはできない。まどかは唇を噛み締め、怒りを抑えて耐えるしかなかった。
「……わかったわ。ちゃんと木下さんの代わりを務めるから、明日になったら約束通りに私の体を返してちょうだい」
「へへっ、しょうがねえな。いいぜ、明日になったら返してやるよ。あたしはテストさえ何とかなったら、それでいいんだからな」
「じゃあ、丸くおさまったところで飯にしようぜ。先生もしっかり食って腹ごしらえして下さいよ。くくく……」
 哲也は上機嫌で店員を呼び出し、料理を注文しはじめた。まどかは何も言わず、注文は全て哲也と杏奈に任せた。
(本当に元の体に戻れるのかしら……)
 派手に染まった己の金髪をいじりながら、レストランの外の風景を眺める。落ち着こう、落ち着こうと思っても胸の内の不安は消えず、じっとしているのが苦痛だった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 まどかと別れたあと、杏奈は哲也に連れられて彼の家に向かった。高校からそう遠くない場所にあるマンションの四階、廊下の突き当たりが哲也の部屋だ。ドアを開けた途端、酒と煙草、生ゴミの臭いが入り混じった悪臭が奥から漂ってきた。そこかしこに空き缶やスナック菓子の袋が散乱しており、清潔という言葉とは無縁の住まいだった。
 杏奈はリビングのソファに体を投げ出し、冷蔵庫から取り出したビールをあおった。麦酒の苦味と炭酸の刺激が口の中に広がり、満足の吐息が漏れた。
「ふう、うめえな。でも、酒も煙草もおおっぴらにやれるのも今日までか。明日になったら、あたしたちの体は元に戻るんだろ?」
 確認すると、哲也は軽薄な笑い声をあげてうなずいた。
「ああ、そうだな。こうしてまどか先生とヤれるのも今夜限りってわけだ。へへへ……」
 後ろから哲也の手が伸びてきて、胸をわしづかみにしてくる。豊かな乳房が彼の手の中でたわんだ。
「おいおい、そんなにがっつくなって。先生、困っちゃうだろ」
「くくく、先生ときたか。確かにこの顔と体じゃ、どこからどう見てもまどか先生にしか見えねえもんな。たとえ中身がお前でもな」
「あたしは気に入ってるんだぜ、まどかちゃんの体。顔はなかなかだしスタイルもいいから、エロいカッコも似合うんだよな。学校のセンセなんかやらせとくのはもったいねーよ」
 杏奈は己の姿を見下ろし、まどかから奪い取った体をじっくりと観察した。堅物で評判の女教師の体は非常にグラマラスで、魅力溢れるプロポーションを誇っていた。
 薄手のタンクトップの胸元を押し上げる、形のいい巨乳。ショートパンツとほぼ同じ長さになるよう裾がカットされたジーンズからは、男の欲望をそそる白い太ももが伸びる。布地の少ない服装が、肉感豊かなボディラインを強調していた。
「気に入ったか、先生の体? 確かに、こんなにエロい体を大人しく返すのはもったいねえ気もするな。元に戻ったら、もう気軽にこんなことできなくなるだろうし」
 今や杏奈のものになった女教師の乳房を力強く揉みしだき、哲也が彼女の耳たぶをぺろりとなめる。杏奈は「あんっ」と甘えた声をあげ、彼の胸にもたれかかった。
 不適切な関係にある女教師と男子生徒。今の二人は、はた目にはそのようにしか見えない。まどかの肉体を手に入れてからというもの、杏奈は夜な夜な哲也を誘い、借り物の体で性交を繰り返していた。無論、まどかには秘密である。
 日頃から鬱陶しく思っていた担任の教師の体は、見た目だけでなく、セックスの感度もすこぶる良好だった。精力が溢れる男子高校生と肌を重ねるたび、とろけるようなエクスタシーを味わわせてくれる歳上の女の肉体に、杏奈は愛着を持ち始めていた。
「へへへ……この乳のボリューム、最高だぜ。やっぱりおいそれと返すのは惜しいな。いっそのこと、ずっと入れ替わったままでいるか?」
「ずっと入れ替わったまま……そんなことできんのか?」
「ああ。やろうと思えば、できなくもねえはずだぞ」
「でも、あたしにセンセーなんて務まんねーよ。今はテストが終わって休みとれるからいいけどさ」
 杏奈のクラスは試験も保護者面談も終わり、終業式を残すのみとなっている。そのため、まどかの立場になった杏奈が、まどかの代わりに教壇に立つ必要はなかった。また、自分の姿で学校には来ないでほしいというまどかの強い希望もあり、杏奈は教師として仕事をするでもなく、有給をとって遊び呆けていた。
 だが、いつまでもこうして入れ替わったままではいられない。夏期休暇が終われば新学期がやってくる。まどかの代わりに教鞭をとることなど、素行も成績も悪い杏奈には到底不可能だ。
 それに、追試が終われば元の体に戻ると既に確約してしまった。今さら戻りたくないと言っても、彼女が同意するはずがない。生真面目なまどかのことだ。こちらが約束を違えれば、あとあと面倒なことになるかもしれない。
「ま、それもそうか。とりあえず一旦元の体に戻って、またいつでも好きなときに先生の体を自由に借りられるってのが、俺たちにとっちゃ理想なんだがね」
「何だよそれ、無茶言うな。そんなの、まどかちゃんがいいって言うわけねーだろ。あの入れ替わりのジュースだって、お前が騙して飲ませたんだから、もう絶対に飲んでくれねーって。ひひひ……そこ、気持ちいいぜ」
 乳房の周辺から中央に向かって搾るように揉まれる感覚が、杏奈に卑猥な声をあげさせる。口から漏れる下品な笑い声は、まぎれもなく謹厳な女教師のものだった。
 杏奈は手を後ろに回し、哲也の股間をまさぐる。ジーンズの中身は既に硬くなりはじめていた。女としての期待が高まり、体の内に熱がこもる。
「ひひひ、ノってきた。この体を使えるのも今日で終わりだし、ガンガンハメてもらうとすっか」
「まあ待て、杏奈。いいこと思いついた」
「なんだ?」
 肩越しに振り返ると、哲也は杏奈から離れ、向かいのソファにどっかりと腰を下ろした。そしてポケットから携帯電話を取り出す。
「杏奈、じっとしてろ。今からこれで撮ってやるから」
「あん? そんなことしてどーすんだよ」
 問うと、哲也は携帯電話のカメラを起動し、レンズを杏奈に向けた。歯を剥き出しにして笑う少年の表情は、獲物を見つけた野犬のそれだった。
「さっきも言っただろ。元の体に戻ったあとも、まどか先生には俺たちの言うことを聞いてもらわなきゃいけねえんだ。そのためにゃ、今のうち先生の弱味を握っとかねえとな」
「弱味ってどんな?」
「ここまで言って、まだわかんねーのか? 相変わらずバカだな、お前。今のお前は先生の体になってるんだから、その格好でどんなエロいことだってできるだろ。それを撮影しておいて、あとで先生に見せて言うことを聞かせるんだよ」
 と、哲也。カメラの起動を知らせる電子音が鳴り、杏奈は彼の意図をようやく理解した。
「ふーん。あたしがまどかちゃんの体で好き勝手してるところを撮って、あとで脅してやろうってのか。なかなか面白そうじゃん」
「わかったら服を脱げよ。できるだけいやらしい脱ぎ方でな」
「へへっ、いいぜ。キレイに撮ってくれよ」
 杏奈は楽しそうに笑うと、カメラの前で己の胸に両手をあてがった。女教師から奪った大ぶりの乳がこねられ、ぐにゃりと歪む。タンクトップの裾をまくり上げると、白い肌があらわになった。
 そのまま薄い布地を持ち上げ、黒いブラジャーを晒け出す。そのまま脱ぎ捨てるのではなく、裾を豊かな乳房に引っかけたままジーンズの前を開いた。紐と間違えてしまいそうなほど細いショーツが現れた。
「おい、どうだ。ちゃんと撮れてるか?」
「ああ、映像はバッチリだが……仕草とか喋り方がちっとも先生っぽくねえな。せっかく撮影してるんだから、ちょっとくらい演技してみろよ。じゃないとつまんねえよ」
 哲也はカメラ代わりの携帯電話を下におろし、彼女に注文をつける。なんとなく売れない映画監督のようだと杏奈は思った。
「まどかちゃんの真似か? 面倒くせえな。ええっと……はい皆さん、こんにちは。私はニ年A組の担任、竹本まどかです。こんな感じでいいか?」
「下手くそだけど、まあいいや。続けてくれ」
「オッケー。今日は皆に、先生のエッチなところをいっぱい見てもらおうと思います。へへっ、見て見て。先生、いつもこんなパンツをはいてるのよ」
 腰を突き出し、下着の紐を強く引いた。股間を覆う布が割れ目に食い込み、教師にあるまじき痴態を晒した。
「すげえ。アソコの毛がはみ出てますよ、先生。いやらしい眺めだ」
「先生のここ、毛がボーボーでしょ? 学校じゃきっちりしてると思われてるけど、見えないところはとってもいい加減なの。ほら、毛がボーボーのおマンコを見て」
 杏奈は下着の生地を横にずらし、指で女性器の入り口を開いた。ぱっくり口を開けた陰部の上に、黒々とした毛が生い茂っている。そこに哲也が近づいた。
「へえ、これがまどか先生のアソコですか。今まで何人くらいの男をくわえ込んだんです?」
「覚えてないわ。でも、百人は軽く超えてると思う」
「おほっ、すげえ。とんだビッチだ」
 哲也も杏奈以上に演技を楽しんでいるようだ。彼女の顔や局部を間近で撮影しながら、下品なやり取りに熱中していた。
「見てる? 哲也君、見てる? まどかのいやらしいところ、見てる?」
「はい、見てます。先生のビラビラが左右に広がって、ピンク色した中身が見えます。すっげーいやらしいです」
「へへへ、まどか嬉しい。気分がいいから、もっとサービスしてあげるわ。服を脱いで隅々まで見せてあげる」
 杏奈は妖艶な仕草で残りの衣服を脱ぎ捨てていく。ときおり胸や局部をカメラに見せつけるようにいじり回し、挑発的なポーズをとる。その卑猥な様子を、哲也の携帯電話が余さず記録していた。
 一糸まとわぬ姿になった杏奈を見つめて、哲也が口笛を吹いた。適度に肉と脂肪のついた豊満な女体が、少年の視線を浴びて輝く。まだ成長しきっていない杏奈の体とはまるで異なる、大人の女の肉体だった。
「どう? 哲也君。先生の裸、キレイかしら」
「もちろんですよ。見て下さい、このチンポ。先生の体を見てこんなになっちまいました。まさか、あの真面目なまどか先生が生徒の前で素っ裸になるなんて、思いもしませんでしたよ」
「あら、意外だった? 私って実はこんないやらしい女だったのよ。気に入った男とはすぐにセックスするようにしてるんだけど、特に哲也君くらいの若い男の子が好みなの。今夜はマンツーマンの特別授業よ。たっぷりしぼりとってあげるわ」
 杏奈はにやりと笑い、哲也の前に膝立ちになって彼のジーンズの前を開いた。取り出された男子高校生の性器は腹側にそり返り、濃厚な牡の臭いを放っていた。
「先生、何を──あっ、なめてる。すげえ、まどか先生がここまでしてくれるなんて……俺、感激っす」
「へへへ、高校生のくせに立派なものを持ってるじゃない。先生も感激よ」
 わざと大きな音をたてて、いやらしくペニスに舌を這わせる杏奈。嫌いだった女教師の肉体を己のものにし、彼女を貶めているのだと思うと、楽しくて仕方がない。まるで本当にまどかになったような錯覚をいだきながら、口での奉仕に熱中した。
 哲也のものは大きく、そして硬い。口内に入れるのは一苦労だが、杏奈は大口を開けて亀頭を頬張り、まどかの姿で痴態を演じた。
 何も身に着けない扇情的な格好で、必死に生徒の男性器をくわえ込む女教師。体の本来の持ち主が見れば卒倒するであろう卑しい有り様を、哲也のカメラが無限に複製可能なデータとして保存していく。
「ああっ、先生すごい。とっても上手ですよ。どこでこんなこと覚えたんですか?」
「昔の男に仕込まれたの。そいつに穴という穴をガバガバにされて、今じゃこの通り、毎日男をくわえ込んでないと満足できない体になっちゃったわ」
「そうだったんですか。でも、だからって大事な生徒に手を出すなんて……俺、先生を見る目が変わっちゃうな。こんな淫乱だなんて思わなかった」
「あらあら、イメージが崩れちゃった? でも、本当の私はとってもスケベな女なの。今だって、このたくましいおチンポをアソコにぶち込んでほしくて、ウズウズしてるの」
 杏奈はひざまずいて哲也の一物をしゃぶりつつ、己の陰部に手を伸ばした。長く綺麗なまどかの指が、杏奈の意思に操られて女陰をほじくる。奉仕しながらの自慰という浅ましい行為に、哲也の笑みがさらに深くなった。
「うひょー、すげえ。まどか先生のフェラチオオナニーだ。なんていやらしいんだ。俺、生きててよかった」
「へへへ、軽蔑した? 下品なまどかのこと、哲也君は軽蔑しちゃった?」
「とんでもない。俺、先生のことがますます好きになっちゃいましたよ。ああっ、すごい。先生、もう出ちゃいそうです」
「出るなら出して。哲也君のプリプリのザーメン、まどかにたっぷり飲ませてちょうだい」
「よしきた。それ、いきますよっ」
 自分が抑えられなくなったのか、哲也はカメラをあらぬ方へと向けて杏奈の頭をわしづかみにした。そうして爆発寸前の陰茎を彼女の喉奥へと挿し込み、二度、三度と腰を前後させて欲望を解き放つ。
「おら、出すぞっ。まどか、飲みやがれ!」
「んぐっ、んんっ !? うぐ、うごごごっ。かはっ!」
 咽頭に叩きつけられる灼熱の塊に、杏奈は身悶えした。とろみのある粘液が呼吸器をせき止め、呼吸をかき乱す。一瞬、杏奈は自分がまどかの体になっていることも忘れ、白目を剥いて意識を失いかけた。
「うええええ──げほっ、げほっ! はあっ、はああ……おい、哲也。お前、今のはちょっとやりすぎじゃねえか?」
「ん? ああ、悪い悪い。途中からマジになってたわ。すまん」
 演技ではない杏奈の抗議も、哲也は大して気にしていないようで、再び彼女に携帯電話のカメラを向けてきた。「くくく、まどか先生の口から俺のザーメンが滴ってるなんて、最高だな」などと言いながら、べとべとに汚れた杏奈の顔を撮影して笑っていた。
「チクショー、調子に乗りやがって……あとで覚えてろよ」
「まあまあ、先生。このとおり謝りますから機嫌を直して下さいよ。俺、まだまだ物足りないんすよ。まさかフェラだけで終わりってわけじゃないでしょう?」
「わかってるよ。ほら、来い。好きなだけヤらせてやるから」
 杏奈はソファに腰を下ろし、両脚を広げて哲也を誘った。しかし哲也はそんな彼女の裸体をカメラで撮りながら、首をゆっくり左右に振った。
「ダメですよ、先生。先生は教師なんだから、そんな態度じゃいけません。男を誘うときは、もっと丁寧におねだりしないと」
「うるせえな、わかったよ。ほら哲也君、来て。先生のいやらしいおマンコに、哲也君の素敵なおチンポをハメてちょうだい」
「くくく、そうこなくっちゃな。おい、まどか。お前がほしいのはこいつか? 淫乱教師め。お望み通り、たっぷりご馳走してやるよ」
 獣と化した哲也が、携帯電話をテーブルの上に置いて杏奈に迫る。撮影を中断したわけではない。依然としてカメラのレンズはソファの二人に向けられていた。射精を終えても萎えないペニスがまどかのものだった膣口を貫き、教師と生徒は許されざる合体を果たした。
「くっくっく……これがまどか先生の中か。ガバガバっつってたわりには、よく締まるじゃないすか。ねえ、先生?」
「ああっ、すごい。哲也君のが、まどかをグリグリしてるの。ああんっ、気持ちいい」
 杏奈は哲也に両脚を抱え上げられ、若い男を受け入れる。鉄棒のように硬い牡の凶器が膣内を前後し、敏感な肉ひだをえぐった。荒々しい野獣に体を押さえ込まれ、杏奈はカメラの前でかん高い嬌声をあげた。
「いいっ、いいわっ。哲也君のおチンポ、たくましくて素敵よ。もっと、もっとしてえっ」
「そうかよ、まどか。教師のくせに生徒のチンポがそんなにいいか、おらっ」
「おほおっ。それいいよ。たまんねえぜ、哲也っ」
 薄汚れたソファがギシギシと音をたて、杏奈は我を忘れて快楽を貪る。哲也の体に腕を回し、自分から積極的に腰を動かして性感帯を刺激した。
 入れ替わってから幾度となく体験した、まどかの体でのセックス。他人の肉体でおこなう秘密の交わりは、非道な行為に特有の興奮を杏奈にもたらす。日頃から杏奈を忌み嫌っている、あの高慢ちきな女教師を散々に貶めているのだと思うと尚更だった。杏奈はまどかから借りた美貌を醜く歪めて、哲也との性の営みに熱中した。
 竹本まどかの身体は、今は木下杏奈の所有物だった。謹厳実直な女教師が、決して交わっていい相手ではない男子生徒と、いとも簡単にことに及んでしまう。平生のまどかを知る人間が見れば、目を疑うに違いない。
 新しい体の主の悦びを反映するかのように、秘所の粘膜は嬉しそうに哲也の性器に吸いつき、なかなか放そうとしない。哲也の腰の動きに合わせて肉びらがうねり、卑猥な音をたてて擦れる。心地よい摩擦が杏奈を魅了した。
「ああっ、あんっ。これすげえ。マジで最高っ」
「俺も最高だぜ、まどか。腰が止まらねえよ。へへっ」
 先端が硬くなった乳房が上下に揺れて、哲也がそこにかぶりつく。少年は杏奈の豊かな乳に歯を立てて、随分とご満悦のようだ。その表情は女を支配する悦びに満ち溢れていた。
「まったく夢みたいだぜ。あの美人で真面目な竹本まどか先生が、俺のチンポをくわえ込んでアンアンよがってるんだからな。なあ、まどか?」
「あんっ、あんっ。ヤ、ヤバい。そんな奥まで突かれたら──んっ、んふっ。ううっ」
「おい。聞いてるか、まどかっ」
 サディストの笑みを浮かべて杏奈を苛む哲也。すっかり調子に乗った彼の動きに、いつしか杏奈も演技をする余裕を無くしていた。まどかの声で獣のように吠えながら、哲也の性器を女の芯で受け止める。すっかり汗ばんだ裸体が牝の匂いを放っていた。
 哲也はあり余る精力のおもむくまま、乱暴に年上の女を犯す。罵声を浴びながらパンパンと腰を打ちつけられる屈辱が、否応もなく杏奈にマゾヒズムの悦びを教え込んだ。子宮の入り口をリズミカルにノックされ、火照りと痺れが体内を駆け巡った。
「ひいっ、ひいっ。それすごいのっ。哲也待って。ひいいっ」
「バカ、待つわけないだろ。おら、いい声で鳴けよっ」
 たくましい腕が杏奈の脚を持ち上げた。両の足首が頭の左右に届くほど脚を伸ばされ、杏奈はいっそう深く哲也に貫かれる。借り物の子宮を圧迫され、女教師になった女子高生の視界に火花が散った。
「おほおっ、激しいっ、あたしイクっ。イっちゃうっ」
「出すぞ、まどか。奥にたっぷり注ぎ込んでやる。おおっ、まどかっ」
 雄々しい声と共に、限界まで膨れ上がった陰茎がマグマを噴き出す。熱い子種が膣内を満たし、子宮口を激しく打った。女としての欲求を満たされ、杏奈は更なる高みにのぼりつめる。鮮烈なオーガズムに体ががくがくと痙攣した。
「ひっ、ひいいっ。まどかイクっ。あふううっ」
 杏奈はまどかの口から甘ったるい悲鳴をあげて絶頂に達した。緩みきった口元からよだれを垂らし、これ以上なくだらしない表情をカメラに晒す。今や彼女は、自分がまどかなのか杏奈なのかもわからなくなっていた。


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