重苦しい静寂の中、壁の掛け時計がカチカチと時を刻んでいる。 時刻はもうすぐ午後の七時になるだろうか。いつもは晩飯を食っている頃だ。 俺は床の上に寝転がってカーテンの隙間から暗い外を見上げていた。冬至は過ぎていたが相変わらず日は短く、明るい天然の光は貴重だった。 ――グウゥゥ……。 静かなこの場にその音はかなり大きく響いた。 つられて隣のリビングを見やると、一人の少女がテーブルに突っ伏して泣いていた。しゃくりあげるのではなく呻くようなその声は、まるで幼い子供のようにも聞こえる。 「うう……お腹空いたよぉ……」 「言うな。こっちまで腹が減る」 ぐったりした娘に冷たく言い放つ。 卓に頬をつけて涙ながらにこちらを見つめてくる顔はとても可愛らしかったが、今は空腹の悲壮感に彩られて見る者の悲哀を誘う。肩まで伸びた茶色っぽい黒髪もしなだれて元気がなく、だらしなくテーブルの上に広がっていた。 少女はまだ言い足りないのか、俺に向かってねちねちと後を続ける。 「なんで――なんでご飯が食べられないの……? うちってそんなに貧乏だっけ、義之さぁん……」 「少なくとも、今は果てしなく貧乏だな」 俺は寝転がったままポケットから薄い財布を取り出し、中身を手に広げてみせた。数枚の十円玉と一円玉がチャリチャリと安っぽい音を鳴らす。札は一枚もなかった。 それを見た少女から漏れる、本日何度目かのため息。 「はあぁぁ……。貧乏やだよ、お金欲しいよぉ……白いご飯が食べたいよぉ……」 「うちはあんま米食わないからな。これからはちゃんと買っておくことにするか」 「これからの話じゃなくて、今食べたいんだよぉ……うぅ……」 また少女の目から雫が垂れてテーブルを濡らした。水分の無駄遣いだと言おうとしたが、まあ水だけはいくらでもあるしどうでもいいか。 俺は半ば彼女に語りかけるように、もう半分は独り言のように言った。 「とにかく補給を欠かしたのは大失敗だった。いい教訓になったよ」 「教訓とかどうでもいいから、早く食べ物持ってきてよ。今日何にも食べてないんだよ?」 「家の中で寒さを凌げるだけマシだろ。それともやっぱ外行くか?」 外は凄まじい風が吹き荒れ、ガタガタと窓を叩いている。今年一番の大寒波ということで、この地方には珍しいほどの猛吹雪だった。ちょっと見下ろせば凍てついた道路や車が街灯に照らされているのが確認できる。それも近くのことだけで、少し離れた建物になるともう見えない。視界不良もいいところだ。この郊外のマンションから駅前まで行くだけでも遭難を覚悟しなくてはならないだろう。 実は既に二回挑戦しているのだが、いずれも失敗して泣いて帰る羽目になっている。 少女は軽く首を上げて窓の外の嵐を眺め、諦めたように息を吐いた。 「うぅ……お腹空いたよ、ひもじいよぉ……。可愛い彼女にご飯を食べさせてやることもできないなんて、義之さんは甲斐性無しだぁ……」 「俺だけのせいにするなよ。ほのかもこの一週間ヒキコモリNEETだったくせに」 「ひょっとして天罰かな? 神様っているもんだねえ……」 俺の名は和泉義之。近くの大学に通う平凡な学生だが、親が金持ちで少しばかり気前がいいため、一人暮らしには余裕がありまくるこの広い部屋を用意してもらっていた。それで現在この年下の女の子、小山ほのかと同棲している。 ほのかは高校生だがちょっとした事情があって親元を離れ、今は彼氏の俺のとこで居候だ。彼女の生活費や学費その他、諸々の金は全部うちの親父が出している。 最初ほのかを親父に引き合わせたときはやや緊張したものだったが、親父はこの大人しい少女を大層気に入ったようで、翌月から俺への仕送りを倍にしてくれた。俺は兄貴と違って彼女どころか、身の回りに女の影一つなかったから心配していたらしい。 俺もほのかもお互いぞっこん惚れこみ合い、この半年ですっかりラブラブになっていた。 そんな訳で俺とほのかは二人きりの甘ったるい共同生活の真っ最中だったのだが……。 「せめて千円でもあれば下のコンビニで何か買えるんだけどな」 「ていうか、なんでここのコンビニはATMがないの? おかしいよ……」 「この辺結構不便だぞ。ATMなんて駅前に行かんと置いてないって」 「田舎も貧乏も嫌い、大っ嫌い……!」 そもそもの発端は俺たちの自堕落なラブラブライフにあった。お互い暇な夏休みや年末年始、俺とほのかは家に引きこもって勉強したりエッチしまくったりして一歩も外に出ない不健康極まりない生活を繰り返していたのだが、いつの間にかどちらもそれが癖になっていたようで、時々二人一緒に学校をサボってゴロゴロする日があった。 一応、出席日数や単位には気をつけていたが、今回のはちょっと長かった。二人揃って買い物にも行かず、外出は下にあるコンビニと定食屋のみ。あとの食事は自炊と出前。そんな生活を一週間ほど続けた結果、気がつけばうちにある現金が底をついていた。 もちろん口座には生活費どころかほのかと豪華披露宴を挙げるくらいの金があったので、俺も彼女も全く心配していなかったのだが、予想外だったのがこの寒波。 郊外のこの辺りには銀行もATMもなく、金を引き出すにはわざわざ駅前まで出向かないといけない。しかし平年はあまり雪の降らないこの地方、俺もほのかも吹雪の中を冒険する勇気はなかった。 だが引き出せなければ金がなく、家の食料も既に残らず食い尽くしたこの困った状況。 ひとことで言えばあれだ。陸の孤島で物資が尽きた状態。 かくして俺たちはグーグーうるさい腹をかかえ、天候が回復するのをじっと待っているのだった。 ――グウゥゥ……。 またしてもほのかの腹の音が響く。さすが健康な女子高生、逆に聞こえたこっちが恥ずかしくなる。 そんな元気な消化器とは対照的に、彼女の声は弱々しくて悲しげな響きを帯びていた。 「お、な、か、空いたよぉ……うぅ……」 「ほのかは金持ってないのか? 結構もらってると思ってたんだが」 はじめは俺のポケットマネーを彼女に渡していたが、この間、うちの親父が彼女の口座を用意してそれなりの額を振り込んでくれたらしい。とても赤の他人とは思えない行動だが、既に親父の頭の中ではほのかは可愛い義理の娘になってしまっているようだった。 たまに会うたびに“女の子はもっとオシャレしなさい”と言って小遣いをくれるくらいである。 そうしたことを念頭に置いた俺の問いに、ほのかは頬を卓にこすりつけて首を振った。 「私も全部銀行に預けてるから……だって、余分な現金持ってたら無駄遣いしそうなんだもん」 「いや、親父は無駄遣いしろってわざわざ言ってた気がするんだが……」 ほのかはこれまであまり幸せな生活を送ってこなかったせいか妙に遠慮が多く、それが俺には少々不満なところだった。少し前までよく見せていた、こちらの顔色を窺う態度もあまり好きじゃない。ほのかのせいじゃなくて彼女の家庭環境のせいだとわかってはいるんだけどな。 とにかく俺もほのかも今ほとんど現金を持ち合わせていないという訳だ。金がなければ飢えるしかない。非情な現実に俺たちはただ嘆くことしかできなかった。 動き回る気力もなく寝そべっていた俺のところに黒い毛玉がやってきた。媚びるように俺を見つめ、暖かそうなふさふさの体を擦りつけてくる。やや調子の外れた毛玉の声が俺とほのかの耳をくすぐった。 「にゃあ」 「ああ飯か……よしよし、ちょっと待て」 力の入らない体を立ち上がらせ、俺は戸棚から大きなキャットフードの袋を取り出した。丸いプラスチックの皿にカリカリをたっぷりと注いでやると、その心地よい音に反応してもう一匹の小さな猛獣が隣の部屋から急ぎ足でやってきた。 アレックスとサンドラ。元は捨て猫だったのを俺が拾い、今は安楽な飼い猫ライフを送っている。 魚味のカリカリを美味そうに食べる猫を見つめ、ほのかが小さく呻いた。 「ねえ、なんで猫のエサだけはあるの? 人間様のご飯はないってのに」 「これは安いときに買いだめしてるからな。わりと長持ちするし」 「いいなぁ、私も猫になりたい……」 親元から逃げ出したところを俺に拾われたんだから、ほのかもこいつらと同じはずなんだが、まあ余計なことを言って彼女の機嫌を損ねても意味がない。 しかし飼い主が飢えているのに猫どもが食べ放題ってのも確かに腹が立つ。俺は気をまぎらわせようと軽い口調で冗談を言ってみせた。 「じゃあほのかもこれ食ってみるか? キャットフードは人間も食えるっていうぞ」 「そうだね――ちょっとだけ、ちょっとだけならいいかも……」 「……おいおい」 こっちはジョークのつもりだったが、ほのかは真剣に考え込んでいるようだった。しかしカリカリなんて食えるもんかね? 猫缶はまだ食えるって聞くけどさ。 このままだと本気で猫のエサに手を出しかねないと思い、キャットフードの袋を戸棚にしまう。 再び寝転がった俺と、テーブルに突っ伏したほのか。 「うう……お腹空いたよぉ……」 「言うな。こっちまで腹が減る」 こうして話はふり出しに戻り、俺とほのかの不毛なやり取りが繰り返されるのだった。 やがて涙も枯れ果てたのか、ほのかは立ち上がって水道の水をコップに注いだ。風呂上りのように腰に手を当て、いかにも美味そうに一気飲み。 「んぐっ……ごく、ぷはぁっ!」 そしてコップをテーブルに勢いよく叩きつけ、また椅子に座って顔を伏せる。 「うう、お腹空いたよ……ひもじいよぉ……」 「やかましいわっ!」 さすがに鬱陶しくなって、俺はほのかを怒鳴りつけた。ただでさえ空腹なんだから余計なエネルギーを使わせるなと言いたいところだ。 だがほのかは気が済まないのか、俺に愚痴をこぼし続ける。 「ねえ、どうしてうちにはお金がないの? お兄ちゃんお金出してよ……」 「誰がお兄ちゃんだ。あとお金は勝手に湧いてきません。吹雪止むまで待ちなさい」 「義之さんちお金持ちなんでしょ? 議員センセーなんだからいくらでも湧いてくるんじゃないの?」 「最近はそうでもないみたいだな。兄貴が後を継ぐ頃にはどうなってるやら……」 まあ俺は気楽な次男坊で政治家になどなるつもりはない。自立するまで金は出してもらうが、あとはほのかと二人で慎ましく生きていくさ。下手に目立つのは真っ平ご免だ。将来の人生設計を何となく思い浮かべる俺に、その恋人の死にそうな声が聞こえてきた。 「お、お兄ちゃあん……お金ぇ……お金ちょうだぁい……」 「……なんか意外と楽しそうだな。お前」 「そんな訳ないでしょっ !? お腹ペコペコで仕方ないってのにぃっ!」 確かに愛しい彼女を飢えさせるのは忍びない。だが外の吹雪はしばらく止みそうになかった。このマンションの下にコンビニと飯屋はあるが、あいにく現金もATMもない。ついでに言うと俺は今どきクレジットカードも持っていない男だ。まさに万事休す。 どうしようもなくなった俺は風呂に入る気にもなれず、このまま不貞寝しようと思っていた。 「――ん?」 そのとき、ふと俺の頭の中に電球の灯る古典的なイメージが思い浮かんだ。 金、金、現金……そういえば、たしか……。 俺はのそのそと部屋の中を這いずり、ボロっちい大学のカバンに手をかけた。 参考書やルーズリーフの入っているところではなく、横についたファスナーを乱暴に開ける。中から出てきたのは汚れた文庫本やら破れたレシートやら見苦しいものばかり。にわかに小物を引っかき回し始めた俺を、ほのかは冷めた眼差しで観察していた。 「どしたの義之さん、そんなに慌てて。ガムでも入れてるの?」 「いや、たしかここに――あ、あった」 底の方に埋もれていたそれをもったいぶって取り出し、少女に見せつける。汚く変色して紙くずのついたそれを、ほのかは最初何かわからなかったが、じっと目を細めて見つめるうちに辛うじて判別できたようだった。 「……お守り?」 「ああ。俺が大学に入った頃のやつだな。」 ビニールのカバーに入った、わずか数センチの大きさしかない交通安全の四角いお守り。彼女は視線をさらに冷ややかにして冷たい声で言った。 「で、それが何なの?」 「うむ、実はこの中にだな――」 カバーを開いて中から一枚の紙切れを取り出す。小さく折れ曲がったそれを広げるうちに、ほのかの顔に驚きが満ちていった。 「いち――まんえん……?」 「俺自身も忘れてたんだけどな。まあ非常時のヘソクリってやつさ」 しわと折り目だらけの紙幣を広げ、俺は得意げに胸を張った。かなり汚らしいが、まあ破れていないし普通に使えるだろう。少なくとも今日一日を過ごすには充分な額だった。 俺は立ち上がり、壁にかかった上着を手に取ってほのかに笑いかける。 「喜べ、これで大手を振って飯食いに行けるぞ」 「やったぁ! 義之さん大好き! 愛してるっ!」 俺の魅力は金だけかよと突っ込みたくなったが、この状況では無理もない。いきなり元気になった少女を連れ、俺は部屋を出てエレベーターで一階へと下りていった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 下の飯屋のカレーライスとツナサラダで腹を満たしたほのかは上機嫌だった。ついでにコンビニで明日の分と念入りに明後日の分の食料を確保して俺たちは帰宅した。あまり贅沢はできなかったが、まあこれで一日や二日なら充分もつだろう。 俺も満腹になっていい気分だったからやっぱり風呂に入ることにした。下りただけで体が冷えたしな。 そんな俺にほのかが飛びついてくる。 「義之さん、一緒にお風呂入ろっ!」 「……腹が膨れた途端にベタベタしてくるとは、現金なやつだな」 「いいからいいから、ほら体洗ってあげるよ!」 まあいいか。俺は苦笑しつつも少女の厚意をありがたく受けることにした。 冬の寒さがかすかに侵入してくる風呂場には一面に湯気が立ち込めている。その中で惜しげもなくさらけ出されたほのかの裸体は相変わらず魅力的だった。 半年前、初めて会ったときよりも多少肉づきが良くなったのは、今の生活が幸せだからだろう。だが決して太ったという印象は受けない。むしろ胸や尻の辺りのボリュームが増して、より俺好みのスタイルになったと言える。やはり俺が揉んで育ててるからだろうか。 「やだ、義之さん……」 じっと見つめていたのが嫌だったらしく、ほのかがこちらに背を向ける。なめらかな白い背中もいい感じに丸みを描いた臀部も最高だった。 「どうした、ほのか?」 「義之さんの眼、エッチなんだもん」 「それは仕方ないな。ほのかが可愛いから」 腕を伸ばしてほのかをぐっと抱き寄せる。少しその脚がもつれたが、可憐な少女は大人しく俺の両腕の中に納まった。俺もほのかも素っ裸、股間を隠すイチジクの葉の一枚もない。 すっかり見慣れた互いの体ではあるが、やはりこうして見ると興奮がかき立てられる。 ほのかの体にお湯をかけた俺は、両の手にボディソープをかけて直に恋人を洗ってやることにした。泡まみれの男の手が少女の肌に這わされ、腕や背中をじっくりこする。 「ん、気持ちいい……」 こうして俺に洗われることもしばしばあるので慣れたもの。ほのかは大人しくこちらに背を向けて椅子に座っていた。 うなじの辺りや乳房のつけ根、太ももの裏側といった場所を無防備に揉まれ、少女は俺の目の前で甘い声をあげ始めている。 「んっ……そこくすぐったい――あぁっ……!」 大体の部分にボディソープを塗りこみ残るは二箇所。もちろん胸と股間だ。俺はボディソープを再度手に取り、後ろからほのかの双丘をわしづかみにした。 豊かな乳に泡をたっぷり塗りたくって丹念に揉みしだく。両手にちょっと余るくらいの肉の塊が俺の掌中でグニャグニャと形を変えた。 「あ……あんっ、あぁんっ……」 若く健康なほのかの乳房は弾力があり、俺の愛撫に乳首を硬く立たせていた。もちろんそれを洗ってやるのも忘れず、親指と人差し指でギュッと挟み込む。少女の白い胸は汗をかいて俺がつけた泡を少しだけ垂れ流した。 「こら暴れるな。洗いにくいだろ」 「やあんっ……だって……!」 コリコリした乳首の感触がたまらない。むしろ俺の方がイッてしまいそうだ。左右十本の指と掌を駆使して俺は愛撫を続けてやる。 ほのかの甘い声と荒い息とが俺の性欲を刺激し、俺の手つきがほのかを鳴かせる。 だんだんと増幅されていく愛欲の循環を断ち切るため、俺は右手を下に入れることにした。 ――クチョ……。 ほのかの秘所はすっかりでき上がり淫靡な汁を垂らしている。指先についた女の汁を太ももや腹に塗りたくると、ほのかは小さな悲鳴をあげて身をよじった。 「ひゃっ!」 再び指を股間に突っ込み、今度は割れ目をなぞり上げる。ボディソープはもう流れ落ちていたが滑りは充分だ。俺は丁寧に、しかし大胆に恋人の大事な部分をこすり続けた。 その間、左手はずっと乳を確保しており、俺の欲望通りに肉を揉みしだいている。ほのかは抵抗せずされるがままで、ただ喘ぎ声を漏らすだけ。 その叫びの質が変わったのは、俺が彼女の陰核に手を伸ばしたときだった。 「ああっ――はあぁっ……ふあっ !? あひぃぃ……!」 性感帯そのものの部分をいいようにいじられ、少女が唾を飛ばして喘ぐ。 剥ける包皮に二人して興味津々だったのも今では懐かしい思い出だ。 俺の指が淫靡に蠢き、勃起したほのかの豆を入念に刺激していく。露になった突起に触れるたび少女は鳴いて、俺の嗜虐心を大いにそそるのだった。 「ふあ、ふあああぁっ……あふっ、あふぅっ !!」 ほのかは両手で口を覆っていたが快楽の声は絶えることがない。いつの間にか俺の左手も彼女の女陰を責めたて、膣に侵入してかき回したりクリをつまんだり、右手の指と一緒になって悪逆非道の限りを尽くした。 「ひあぁぁっ……!」 とうとうほのかの体が大きく跳ねると、グッタリして俺にもたれかかってくる。よだれの垂れるその口から漏れるのは色っぽい満足の吐息。少し羨ましい。 「ほのか、大丈夫か?」 「う……う、うん……」 触れる肌から伝わってくる少女の体温が心地よかった。 それから改めてほのかの肌を手洗いしてやり攻守交替。猛りきった俺の息子を綺麗にしてくれたのはほのかの舌と乳房だった。 問題は飛び散った俺の汁が彼女の胸と顔を汚してしまったこと。あーあ、洗い直しだよ。 でもほのかが最近パイズリをマスターしたのは素晴らしい進歩だ。主に俺にとって。 しかしいつまでもこんな風に洗いっこしてたら終わらないので、しまいにはお互いの肌にボディソープを塗りたくって体をこすり合った。なんていうか人間スポンジ。 毎度毎度馬鹿なことをやってるのはわかっているのだが、彼女の温かい笑顔を見ていると、やっぱりこの子をうちで引き取ってよかったと思えてくる。ほのかと狭い湯船に浸かりつつ、俺はこのささやかな幸福に埋没していた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ さて風呂から上がった訳だが、俺もほのかもいい感じに体が火照ってしまい、どちらも一発やらんことにはとても治まりそうになかった。 とまあここまでならいつものパターン。普段と違うのはベッドの脇に立った俺が思わず間抜けな声をあげてしまったことだ。 「あれ? 困ったな……」 「どしたの義之さん、またヘソクリが出てきたとか?」 「いや、それなら嬉しいが……」 どうしたものかと思い、俺はぽりぽりと頬をかいて言葉を続けた。 「ゴムが切れてる。そういや昨日使ったのが最後のだった」 「え、全部使っちゃったの?」 「さすがに下のコンビニじゃ売ってないだろうし、どうするかな。今日は本番無しにしとくか?」 「えー……それもちょっと……」 物足りない顔でこちらを見つめる黒髪の少女。風呂上りで薄いピンクに染まった肌が瑞々しい。このままやるつもりだったのでお互い素っ裸のまま、熱っぽい体を思い切り見せ合っている。 仕方ないから俺は手と口だけで我慢するつもりだったが、ほのかは違うことを提案した。 「じゃあ今日はそのまましちゃう? 私はいいよ、生理もうすぐだし」 「それでも生はまずくないか? もしできちゃったらどうするんだよ」 俺は大学を出たらほのかと結婚する気でいるが、まだ今は学生の身分、パパになるのはためらわれる。ほのかにも円満に高校を卒業してもらわないと俺が困る。てか受験勉強教えてる訳だし。 しかしほのかは大丈夫の一点張りで、裸で俺に抱きついて誘ってくる。 「いいもん、できたら義之さんに責任とってもらうから」 「責任はとるけどちゃんと学校出てくれよ。大学に通ってもらわんと俺の指導が無駄になる」 「産んだら赤ちゃんは義之さんちに預けて、高認受けるって手もあるよ」 「ああ、大検って今そう呼ぶんだっけか。でも高校は出といた方がいいぞ」 「わかってるよ。もしできちゃったときの話!」 小悪魔のように笑って俺の胸に頬をすりつける。やれやれ、今日はお言葉に甘えるか。 そして俺は彼女をベッドに押し倒し、熱い秘所に指を差し入れた。さっきから執拗に愛撫された陰唇はぬめり、すぐにまた淫らな汁を溢れさせる。戻した右手の指が糸を引いていることを確認し、俺はほのかの下の口に己のものをあてがった。 ゴム無しに抵抗があると言ったのも口先だけで、正直な俺の肉棒は痛いほど張りつめている。 「んじゃいくぞ、ほのか」 「うん……」 俺はほのかの上になり、ゆっくりと少女の中をかきわけていった。優しく亀頭を包む熟れた襞も、竿をギュウギュウ締めつける膣の壁も、彼女の全てが俺を喜ばせた。 ゴム越しではない生のほのかの感触は俺にとってやはり至上のものだった。中ほどまで挿し込み一旦止め、耳をすませて彼女の吐息にじっと聞き入る。 「よ、義之さん……? どうしたの……」 「いや、ほのかの中を味わってただけ。じゃ動くぞ」 「あ――あぁんっ、はあぁっ……♪」 たしか入ってやや上がGスポットと呼ばれる場所だったはず。こいつもやっぱりその辺りを俺のチンポにこすられるのが大好きで、優しい俺はほのかとやるたび、こうやって彼女を喜ばせる技術を磨いていくのだった。 「はあぁぁっ……あんっ、あふっ、あぁんっ!」 だんだんと腰の往復を激しくしていき、喘ぐほのかを責めたてる。俺もほのかもこの半年でかなり相手のことを理解しており、共に気持ち良くなりたいと思っている。 肉壷をかき回すのも、肉棒を襞と汁でしごき上げるのも、嬌声をあげる口を唇で塞いでやるのも全て自分のためであり、同時に相手のためでもある。求めるものは同じもの。 しかし久しぶりのゴム無しの快感に俺の余裕も無くなってきていた。 ――パン! パンッ、パァン! ほのかの腰をがっしりつかみ、肉が鳴るほど打ちつける。俺の先端は何度も何度も少女の子宮口をノックし、ほのかの呼吸を引きつらせた。 失われていく理性と、こみ上げてくる心地よい征服感。 やはり俺もただの雄に過ぎないのか、ほのかの中を力任せに蹂躙する俺の心は果てしなく高ぶっていく。 俺の腕に持ち上げられた少女の腰は柔らかくて、結合部は熱く煮えたぎっていた。そこに根元まで突き込まれた俺のモノが灼熱のスープを注入してやる。 ――ブビュッ、ビュルルルッ !! ドクドクッ……! 注ぎ込まれる子種の汁が女子高生の子宮を犯す。たっぷりと射精した俺の肉棒は依然硬いまま、少女の中に深々と突き刺さっていた。 見下ろすと大口を開けて舌を伸ばしたほのかの無残な表情が隅々まで見て取れる。 「ひぃ……ひぃ、ひぃぃ……♪」 白目を剥いて息も絶え絶えになったほのかのアヘ顔にもまたそそられる。俺は壊れた楽器をかき鳴らすように少女の上で再び腰を振り始め、存分にその音色を楽しんだ。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 翌日は雲の隙間から太陽が顔を覗かせる良い天気になった。早速俺はほのかと二人で凍りついた地面を歩き、駅前のATMから金を引き出した。 「これ何万までいけたっけ? その辺に書いてないか」 「いいから上限! 上限までお金引き出してっ!」 はしゃぐほのかに苦笑しつつも厚みのある万札をゲットする。ほのかの口座からも同様に引き出し、合わせると束になるほどの金が手に入った。それにスリスリ頬擦りするこいつのテンションはもう尋常ではなくて。 「あっはっはっはっ! お金、お金よぉっ! お金サイコー! もう離さない……」 「あのー、ほのかさん。とりあえず裸じゃまずいから、分けて片付けません?」 財布に入れるにはちょっと分厚いので、残りを入れる封筒もちゃんと用意している。俺はすっかり金の亡者になったほのかを鎮め、いくつかに分けて金をしまい込んだ。やっぱり先立つものは大事だよな。当たり前のことだけど。 「義之さん、今日はパーッと奮発しよ! お寿司とか焼肉とか!」 「うーむ……その発想が貧しいというかさもしいというか……」 「何 !? 何か言った !?」 「いや何も言ってないぞ。だから気にするな」 その日の昼食が少しだけ豪華になったのはささやかな贅沢と言えよう。 夜、俺とほのかは簡単にそれぞれの荷物の整理をしていた。さすがにいつまでも学校をサボる訳にはいかず、明日はどっちも早起きだ。 ――休講はなかったよなたしか。このテキスト重いから置いてくかな。 そんな風に汚いカバンの中をガサゴソ引っかき回していたときのこと、同様のことをしていたほのかが突然、何かを思い出したような声をあげた。 「あ、義之さん。ちょっと」 「どした?」 「あのお守り、貸してくれない?」 欲しけりゃやるぞ、と言って俺が手渡した四角いお守りをほのかが握りしめる。 その口を開けて狭い中に彼女が押し込んだのは、分厚い紙の塊だった。色と文字から察するにどうやら福沢諭吉の集団らしい。悪戦苦闘の末に何とか入りきったのだが、パンパンに膨れたお守りは見苦しいのひとこと。 俺は返してもらった肥満体の長方形を呆れた視線で眺め、ぽつりとつぶやいた。 「おいおい、何してんだお前は……」 それに答えるほのかはにっこり笑って、とても楽しそうで。 「だって昨日はそれに助けてもらったもの。御利益ありってことでしょ? こうやってお金詰めとけば、またいつか役に立ってくれるよ」 「これは交通安全のお守りであって、金運は保障してくれないと思うんだが……」 「いーのいーの! たっぷり詰め込んどいたから大丈夫だって!」 そしてまた俺に飛びかかってきて楽しそうにじゃれつく。明るくて可愛くて、悪戯好きだがどこか憎めない黒毛の子猫。 ――やれやれ、すっかり俺に懐いちまったな。この飼い猫は。 ずっと一生飼ってやろうと思いはしたが、あえて言う必要もなかった。 前のを読む 一覧に戻る |