マジックペンですげ替わり 4

 夕方、帰宅した春奈は激しい自己嫌悪に陥っていた。
「はあ……あたし、なんであんなことをしちゃったんだろ。よりによって、ママの体でいやらしいことをして……ママになんて言ったらいいの」
 カバンをリビングの床に置いて、大きなため息をついた。
 学校で自分がおこなった破廉恥な行為を思い出すと、深い自責の念に駆られる。母から借りた体が疼いて我慢できず、休み時間のたびにトイレに行って自分を慰めた。いつ周囲の人間にばれるかとひやひやしながら、禁忌のエクスタシーを繰り返した。
 しかし、自宅に帰って冷静になってみると、母の肉体を悪用して淫らな振る舞いに没頭した自分が、この上なく卑しい存在に思えてならなかった。
 どうしてあんな恥知らずなことをしてしまったのかと春奈は不思議に思ったが、自慰にふけっていたときの記憶は、高熱を出して寝込んでいたときのようにぼんやりとしか思い出すことができない。まるで悪霊に憑りつかれた気分だった。
(どうしてあたし、あんなエッチなことを──ひょっとして、ママの体がエッチしたがってるのかな?)
 頭の片隅に浮かんだ発想を、春奈は首を振って打ち消した。
(ううん、そんなわけない。普段から優しくてお行儀のいいママが、そんなにエッチなはずないよ。きっと、あたしがエッチだからいけないんだ。ママの体でオナニーなんか……本当にごめんね、ママ)
 頬を赤らめ、胸の内で謝罪の言葉を重ねた。今日も直紀の帰りが委員会で遅くなるのがありがたかった。思慕してやまない義兄に、とてもこんな醜態を見せられるものではない。
 春奈はどうにか落ち着きを取り戻すと、着替えのために陽子の部屋に足を踏み入れた。今の春奈の体格で元の自分の服を着ることはできず、着替えも陽子のものを借りる必要があった。
「うーん、どうしようかな。これから晩ご飯のお買い物に行かなきゃいけないから、あんまり変な格好はできないし……」
 和箪笥やクローゼットの中をしばらく物色したのち、春奈が選んだのは長袖ブラウスと膝丈のスカートという平凡な装いだった。陽子は普段どちらかと言えばジーンズやパンツの類を好んで身につけているが、春奈はスカートの方が好きだ。飾り気のない母の衣類は、自分の洋服の可愛らしいデザインと比べると地味な印象は否めないが、今は贅沢を言える状況ではない。
 ジャージからブラウスに着替えた春奈は、夕食の買い物に出かけた。今日の献立は何にしようかとぼんやり考えながら、最寄りのスーパーマーケットまで歩いた。
「あら、あなた……春奈ちゃん?」
 買い物カゴを片手に店内をうろうろしていると、聞き覚えのある声が春奈を呼んだ。刺身のパックを並べた陳列ワゴンの向かい側で、見覚えのある小太りの中年女性が春奈を見つめていた。
「あ、ミカちゃんのお母さん。こんにちは」
 春奈に話しかけてきたのは、小学生の頃に仲の良かったクラスメイトの母親だった。ミカという名の明るい子で、昔はよく春奈と一緒に遊んだものだが、それぞれ別の中学に行ったことから疎遠になってしまった。今ではたまに顔を合わせたときに挨拶する程度の仲だ。
「あらあら、ホントに春奈ちゃん? まあ、びっくりしたわ。しばらく見ないうちに、随分と大きくなったわねえ。見違えたわ」
「い、いいえ……そんなことないです」
 首から下が母の体と入れ替わった自分の姿をじろじろと観察され、春奈は赤面した。このような状態で知人と会うことが無性に恥ずかしく、顔を上げられなかった。
 すっかり変わってしまった春奈の外見は、ただでさえ通行人の好奇の視線を集めていた。落ち着いた雰囲気のブラウスとスカートを身につけた肉感豊かな女の体と、それとは全く不釣り合いなあどけない少女の顔立ち、そして愛くるしいツインテールの黒髪という春奈の奇妙な容姿を、ミカの母親も興味津々で見ているはずだ。
(いやだ、そんな目であたしを見ないで……)
 周囲の人間全てが自分を注視しているように思える。春奈は羞恥に耐えかねて泣き出しそうになった。脚がガクガク震えて、立っているのも辛かった。
「本当に、女の子ってちょっとの間に変わるものねえ。ついこないだまで小さくて可愛らしい女の子だったのに、もうすっかり綺麗なお嬢さんになっちゃって。それにしても、やっぱり親子よねえ。雰囲気がお母さんにそっくりだわ」
 誉められているはずなのに、ちっとも嬉しいと感じなかった。春奈はうつむいたまま、ぼそぼそ小声で調子を合わせた。早く向こうに行ってほしいと切実に願った。
 この年齢の女性にはよくあることだが、ミカの母親の話は長かった。まずは自分の娘の近況を楽しそうに語ったあと、それから「家のことを自分でするなんて、春奈ちゃんは偉いわねえ。うちの子ったら、ホントに何にもしないのよ」と春奈を誉めちぎり、さらには「最近どうしてるの? お兄さんは元気?」と、春奈や直紀の私生活を何のかのと詮索してきた。その大きな声が周囲の注目を集め、春奈の羞恥心をいっそう煽る。
「あ、あの、すいません。あたし、早く帰ってご飯作らないといけないので、そろそろこの辺で……」
「あらあら、あたしったら、つい話し込んじゃったわ。ごめんなさいね、春奈ちゃん。よかったらまた今度、うちの子と遊んでやってちょうだい」
 春奈は会釈して、そそくさとその場をあとにした。うろたえるあまり軽いパニックに陥ってしまい、何を買えばいいのかもわからなくなって、あてどなく売場をさまよった。買い物を済ませて店から出てきたのは、日がとっぷり暮れてしまったあとだった。
「おかえり、春奈。お買い物に行ってたんだね。お疲れ様」
 ようやく家に帰ってくると、直紀が春奈を出迎えてくれた。温かい笑顔でかけられる労いの口上が、傷ついた春奈の心を癒してくれる。
「ただいま、お兄ちゃん」
 春奈は目尻を軽くこすって微笑んだ。今はこの義兄だけが彼女の心の支えといっても過言ではなかった。
「僕もついさっき帰ってきたところでね。ああ、お腹がぺこぺこだよ。今日の夕飯は何にしたの?」
「うん、オムライスを作ろうと思って……」
「それは楽しみだな。僕も手伝うよ」
 といって、直紀は春奈の手から買い物袋を取り上げる。二人の指が触れ合うと、直紀の表情がわずかに感嘆の色を帯びた。
「へえ、なるほどなるほど」
「どうしたの? お兄ちゃん」
「いやあ、本当に春奈の手はママの手になっちゃったんだなあって思ってさ。春奈の手は小さくて可愛らしかったから、こうして触ってみると違いがよくわかるよ」
 大きくなった春奈の掌を揉みながら、直紀が答える。春奈の頬に朱が差した。
「やっぱり春奈の体の首から下は、ママの体とそっくりそのまま入れ替わっちゃったみたいだね。爪の形までママとまったく同じだよ」
「うん、そうみたい。でも、どうしてこんなことになっちゃったんだろ。あたしたち、元の体に戻れるのかな……」
 春奈の肉体が変化してから半日が経つが、いまだに元に戻る方法はわからず、入れ替わった原因すら謎のままだ。果たして元に戻れるのだろうかという不安が、繊細な十五の娘を苛んでいた。
「大丈夫さ。きっと元に戻れるよ。だから心配しないで」
 今にも泣き出しそうな義妹を慰めようと、直紀が春奈の髪を撫でる。何の根拠もない励ましに過ぎないが、この義兄に言われると疑いなく信じてしまうのが不思議だった。
「うん、そうだね。ありがとう、お兄ちゃん」
「さあ、一緒にご飯を作ろうか。ママは今日は遅くなるらしいから、二人で先に食べてちゃってもいいみたいだよ」
「そうなの? ママはあたしの体でお仕事してるんだよね。大丈夫かな……」
 朝、陽子は春奈がお気に入りの桜色のワンピースを着て出かけていった。小柄な女子高生の体に四十前の中年女の頭が載っているのは滑稽だったが、当事者の春奈にとっては笑い話では済まない。つくづく陽子のことが心配だった。
「大丈夫だよ。ママは僕たちと違って立派な大人なんだから、心配はいらないさ。案外、今ごろ春奈の体になって喜んでるかもしれないよ。やったー、若返ったわ、とか何とか言ってさ」
「えへへ、そうだね。ママ、喜んでたらいいな」
 茶目っ気たっぷりの直紀の口調が、春奈を笑顔に変える。恋慕する義理の兄に手を引かれながら、春奈は軽い足取りでキッチンへと向かった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

「ごちそうさまでした」
 直紀は丁寧な仕草で、空の皿に手を合わせた。
「美味しかった? お兄ちゃん」
 春奈はテーブルの向かい側でにこにこ笑って、料理の感想を兄に訊ねた。夕飯に出したオムライスは直紀の好物で、春奈が真っ先に作り方を覚えた品だった。
「うん、とびきり美味しかったよ。ほっぺたが落ちるかと思った」
「もう、大げさなんだから」
 半ばお世辞とわかっていても、一生懸命作った手料理を誉められて嬉しくないわけがない。顔が赤くなるのを自覚した。
「いや、春奈が作ってくれたご飯は本当に美味しいよ。これから先も、毎日ずっとこのご飯を食べられたらいいなあって思っちゃうもの」
「これからも、ずっと……」
 兄の言葉を反芻する。昨日と同じ内容だったことに、春奈は少なからず驚いた。
「そうだよ。春奈さえよかったら、ずっと僕のそばにいて美味しいご飯を作ってほしいな。僕、いつまでも春奈と暮らしたいんだ」
「えっ、いいの? だって今のあたし、ママの体なんだよ。元に戻れるかどうかもわからないのに……」
 春奈は浮かない顔で直紀に訊ねた。
 自分の体の首から下は、母の陽子の体と入れ替わっている。いくら髪や顔立ちが春奈自身のものとはいえ、それ以外は全て、三十八歳の熟女の肉体に変わり果ててしまったのだ。原因はいまだに判明しておらず、元に戻る目処も立たない。最悪、一生このままという可能性さえあった。
 肌の張りや潤いを失い、肩こりに悩まされる中年女になった自分は、直紀に気味悪がられて捨てられてしまうのではないか。不安と恐怖が春奈の胸を締めつけていた。
 だが、直紀は春奈の懸念を否定するかのように、首をゆっくり左右に振った。
「関係ないよ。どんな姿になっても、春奈は春奈じゃないか。ママの体と入れ替わったからって、僕が春奈を好きなことに変わりはないよ」
「ああ……お兄ちゃん、嬉しいっ」
 兄の情愛が春奈の心に染み渡る。一寸先も見えない闇の中で光明を見つけた気分だった。
「ふふっ、べそなんてかいて、春奈は泣き虫だな。じゃあ、後片づけをしようか」
 直紀は涙ぐむ義妹を慈しみの目で眺めやると、汚れた食器を持って立ち上がった。
「あ、お皿洗うのはあたしがするよ。お兄ちゃんは休んでて」
「別にいいよ。春奈には美味しいご飯を食べさせてもらったからね。これくらい僕がやらないと」
「ダメ、あたしがするの。お願い、あたしにやらせて」
 といって、春奈は直紀の手から慌てて皿を引ったくる。今はこの義兄のためなら、どんなことでもしてやりたかった。
「そうかい? それじゃあ、お願いしようかな。なんだか春奈に働かせてばかりで申し訳ないけれど」
「ううん、いいの。お兄ちゃんだって、あたしがご飯作るの手伝ってくれたじゃない。このくらい、どうってことないよ」
 二人分の食器を流しに運び、再びエプロンをつけて皿洗いに取りかかる春奈。無意識のうちに鼻唄が出るほどいい気分だった。
「春奈、何か手伝うことはないかい?」
 直紀が後ろから声をかける。手持ち無沙汰なのが落ち着かないようだ。
「ううん、大丈夫だよ。すぐに終わるから、お兄ちゃんは向こうで待ってて」
「悪いなあ。そうだ、肩を揉んであげようか。今の春奈はママの体だから、肩こりがひどいだろ」
 直紀は食器を洗う春奈の背後に立つと、おもむろに肩に手を置いて揉み始めた。
「大丈夫だってば、お兄ちゃん。あっ、ダメっ。手元が狂っちゃうから後にしてよぉっ」
 春奈は抗議したが、こわばった筋肉を指圧で解きほぐされるのはやはり心地よい。揉まれているうちに皿を洗う手が止まり、春奈はその場で棒立ちになった。
「さすがにこってるなあ。ほら、ここ。筋の辺りがゴリゴリいってる」
「あ、ホントだ。い、痛いけど気持ちいい……」
 肩を揉まれる気持ちよさにうっとりする春奈。小さな口から満足の吐息が漏れた。
「ふふっ、春奈、気持ちいいかい? じゃあ、もっと気持ちよくしてあげるよ」
 そのとき、直紀の雰囲気が変わった。声が若干低く、冷たくなった気がした。
 直紀の手が正面に回り込む。ずしりと垂れ下がる春奈の豊かな乳房を両手ですくい、力を入れて握り込んできた。春奈が予期しなかった行為だ。
「ああっ? 何をするの、お兄ちゃんっ」
「肩こりをほぐすには、こっちも揉んだ方がより効果的なんだよ。何しろ、今の春奈のおっぱいはこんなに大きいんだからね。肩がこるのも当たり前さ。ほら、じっとして。力を抜いて」
 驚く春奈の乳房を、直紀の手はエプロン越しにもてあそぶ。指づかいにいやらしさを感じた。
「い、いやあっ。やめて、お兄ちゃん……」
「嫌なのかい? おかしいなあ。これだけタプタプのお乳を揉まれたら、とっても気持ちいいはずなんだけど」
 直紀の指が体の表面を這い回り、巨大な乳を搾りとろうと蠢く。服の上から先端の突起を突つき回され、春奈は大きく身をよじった。
「ダ、ダメぇっ。お願いだから、こんなことしないで……」
 少女の目尻に涙が浮かぶ。兄の愛撫に即座に反応してしまう体に、春奈は恐怖を感じた。
「動かないで、春奈。じっとしてれば、すぐに気持ちよくなるから」
「気持ちよくなっちゃダメなのっ。この体はママの大事な体なんだよ? こんな風にいたずらしちゃいけないのに──あっ、あああっ」
 母を想う娘の心をあざ笑うかのように、借り物の女体は着実に高ぶりつつあった。ボリュームのある乳房が自由自在に形を変え、新しい持ち主を喘がせる。
「お、お願い、やめてっ。あんっ、あんっ」
「やめてって言うけど、春奈のおっぱいはとっても気持ちよさそうだよ。もう先っちょが硬くなってる」
 直紀はくすくす笑って、春奈の体に密着してくる。耳たぶにカリッと歯を立てられ、少女の悲鳴があがった。
「あっ、あああっ。お、お兄ちゃあんっ」
「好きだよ、春奈。今までの可愛らしい春奈も好きだったけど、こんな風にフェロモンをぷんぷんさせて僕を誘惑してくる春奈も大好きだ」
「そ、そんな言い方……ううっ、ひどいよ。あたし、誘惑なんてしてないのに」
「そうかな。春奈はママのムチムチボディになって、本当は嬉しいんじゃないの? 休み時間はトイレにこもって、随分とお楽しみだったじゃない」
 思わぬ指摘を受けて、春奈の顔が青ざめた。
「お、お兄ちゃん、どうしてそれを……」
「僕が知らないとでも思った? 僕は春奈のことなら何でも知っているんだよ。いやらしい春奈は、今だっておっぱいを揉まれて気持ちよくなっちゃってるんだよね」
 直紀の手が腹を伝い、下に向かって伸びていく。スカートの中身が餌食になろうとしていた。
「や、やめて、お兄ちゃん。あたしの体じゃないのに、こんなことしちゃいけないよ……」
「関係ないよ。どんな姿になっても春奈は春奈だって、さっきも言ったじゃないか。それに、春奈だってママの体でエッチなことをしていただろ? 文句を言われる筋合いはないね」
 きつい口調でそう言って、直紀は下着の中に手を侵入させてくる。毛深い股間を撫でられ、春奈の息が乱れた。
「いやあっ、そこはダメっ。ああっ、あんっ」
 敏感な箇所を虫が這いずるような感覚に、春奈は艶めいた声を抑えられない。
(お兄ちゃん、どういうつもり? どうしてこんなことをするの)
 兄の真意がつかめなかった。直紀は学校での春奈の淫らな行為を知っているというのに、それをとがめもせず、逆に春奈の性欲を煽るように積極的に体をもてあそんでいる。いったい何を考えているのだろうか。恐ろしい発想が春奈の脳裏をかすめた。
(もしかして、お兄ちゃんはあたしを……ママの体になったあたしを──)
 抱くつもりか。決して交わってはならない義母の身体を犯すつもりだろうか。自分のものではない春奈の体が、禁忌の恍惚にうち震えた。
「ふふふ、アソコもいい具合に濡れてきたよ。やっぱり春奈のムチムチボディはエッチなことをされると喜んじゃうんだね」
 直紀は指を秘所の入り口にあてがい、春奈を焦らすように肉びらをこすり立ててくる。鼓膜をくすぐる淫靡な囁きに、理性が少しずつ削り取られていくのを感じた。
「ち、違う。そんなことないっ」
 懸命の抗弁にも、直紀は耳を貸さない。不逞な指が性器の内部に侵入し、春奈のはらわたをかき回した。
「はあっ、あっ、ああっ。や、やめてぇっ……」
 膝が笑い、とうとう立っていられなくなる。崩れ落ちる春奈を直紀が支えた。男性にしては細身だと思っていた直紀が彼女を軽々と持ち上げ、リビングへと運び出す。義兄の腕に抗いがたい力強さを感じた。
「ど、どうするの、お兄ちゃん? ああっ、やだっ」
 春奈の体はカーペットの上に下ろされた。間髪いれず、その上に直紀がのしかかってくる。
「春奈は本当に可愛いね。泣き出しそうな顔をして震えてるじゃないか。ふふふ、もっといじめたくなるよ」
 直紀は春奈の股を開いて、両腕でがっちり固定する。脚を閉じることさえできず、スカートの裾からは肉づきのいい太腿が丸見えだった。
「ダ、ダメっ。お兄ちゃん、これ以上はやめてっ、ああっ……」
 汗ばむ少女の首筋を口づけが襲った。母から借りた女体が、愛撫を受けて燃え上がる。腹の底が疼いて収まらない。意思に反して反応してしまう過敏な熟女の肉体が恨めしかった。
 春奈が抵抗らしい抵抗をできずにいるうちに、直紀の口は首筋を這い上がり、頬をなめしゃぶった。唇にも直紀が迫る。二人の口が合わさった。
(ああっ、あたし、お兄ちゃんとキスしてる……)
 うっとりする春奈の歯をこじ開けて、直紀が乱暴に押し入ってくる。舌が口内で暴れ回り、無垢な少女を蹂躙した。互いの鼻息を混じり合わせる下品な行為に、春奈は限りない興奮を覚えた。
 直紀の口から送り出された唾液の塊を、ためらいなく飲み下す春奈。愛する男の体液は媚薬となって、三十八歳の貪欲な女体を狂わせた。
 なおも直紀は止まらない。陶酔する春奈と情熱的な接吻を交わしながら、再び股間に指を這わせてくる。既に愛液をしたたらせていた女性器は、容易に直紀の指を受け入れた。
(ああ、ダメっ)
 春奈の体が跳ねた。下着の中で直紀が熟れた肉びらをこすり、膣内をかき回していた。声を出せない苦しさに涙がにじむが、どうにもならない。ただ耐えるしかなかった。
 直紀は義妹の弱点を知っていた。舌で春奈の口を犯しながら、秘所を執拗に責めたててくる。恋い焦がれる相手の淫らなテクニックに、春奈は翻弄されるばかりだ。
(す、すごいっ。おかしくなっちゃうっ)
 春奈の理性を、陽子の本能が浸食していく。春奈は童顔に不似合いな巨乳を弾ませて、母の肉欲の虜となった。
(いけない。あたし、どんどんエッチになってる)
 わずかに残っていた理性が警告を発したが、それも圧倒的な性欲の波に飲まれて消え失せてしまう。いったい何がいけないのかわからなくなった。このまま素直に兄に身を委ねてもいいのではないか──淫らなキスに耽溺するうちに、そんな誘惑に取り込まれる。
 気が遠くなるほど春奈の呼吸をせき止めてから、ようやく直紀が口を離した。兄妹の唇を唾液の糸が繋ぎ、春奈はぼんやりと直紀を見上げた。
「ふふふ……物欲しそうな春奈の顔、とってもいやらしいね。きっと、ママも昔は父さんを相手にそんな顔をしてたんだろうな」
 直紀が笑った。端正な顔が、今まで春奈が見たことのない酷薄な笑みを浮かべていた。
「やめて、お兄ちゃん。ママをそんな風に言わないで」
「ママと初めて会った日のことを、僕はよく覚えてるよ。母さんが死んで、まだ一周忌が終わってなかったかな。父さんが知らない女の人を連れてきて、この人が新しいお母さんだって言ったんだ。僕と同じくらいの年頃の、可愛い女の子も一緒だった」
「お兄ちゃん……?」
 春奈は困惑した。唐突に過去のことを語り始めた直紀の意図をはかりかねた。
「僕は新しいお母さんに気に入られようと努力したよ。学校では模範的な生徒でいることを心がけたし、家でも決してわがままを言わなかった。春奈のことも実の妹同然に可愛がった」
 直紀はいつになく饒舌だった。まるで胸の内に溜まっていたものを吐き出しているかのようだった。
「でも、僕の努力は報われなかった。やっと新しい家族にも慣れて穏やかに暮らしていたら、今度は父さんが死んで、ママはショックで酒びたり──僕は自分を呪ったよ。どうして僕だけこんな目に遭うんだろう、ってね」
 春奈は沈黙した。直紀にかける言葉が見つからなかった。春奈とは違い、直紀にはもう血の繋がりを持つ家族は残っていないのだ。優しい兄の仮面の下にある、多感な少年の素顔に初めて気がついた。
「僕が先生に出会ったのは、ちょうどそんなときだった。先生といっても、学校の先生じゃないよ。僕に黒魔術を教えてくれた、魔法使いの先生さ」
「く、黒魔術?」
 思いもよらぬ単語が出てきて、春奈は目を見開く。直紀は戸惑う彼女の瞳を、楽しそうにのぞき込んだ。
「そう、黒魔術さ。もう僕はいい子でいるのをやめて、好き勝手に生きることにしたんだ。そのために、先生からいろんな術を教わったよ。春奈の体がママの体と入れ替わっちゃったのも、実は僕のしわざなんだ」
「ええっ? ホ、ホントなの?」
 春奈は驚愕した。兄の言葉が信じられず、幾度となくまばたきを繰り返した。
「そうさ。昨日の夜遅くに、黒魔術で春奈とママの首をすげ替えたんだ。どうだい、びっくりしただろ?」
「う、嘘でしょ、お兄ちゃん。そんなこと、できるわけないよ……」
「残念だけど本当のことさ。ついでに言うと、学校で春奈にエッチなお遊びをさせたのも僕でね。あのときの春奈、まるで何かに操られていたような気はしなかったかい? あれは、僕にエッチな魔法をかけられていたからだよ。学校のトイレでこっそりオナニーに熱中するいやらしい春奈は最高だったよ」
「そんなぁ……ひ、ひどいよ、お兄ちゃん。うわあああん……」
 直紀の告白が、春奈の思慕を打ち砕く。今まで信じていたものが脆くも崩れ去り、春奈は声をあげて泣きじゃくった。
「どうして泣くのさ。春奈だって、大好きなママの体になれて嬉しいだろ? ママの体でいっぱいオナニーして、気持ちよくなってたじゃないか」
「い、いやだよぉ。お願い、お兄ちゃん。あたしとママを元に戻して……」
「ああ、いいとも。ただし、一つ条件がある」
「条件……?」
 春奈は充血した目を直紀に向けた。よく知っている兄の姿が涙でにじみ、知らない人間のように見えた。
「今から僕とセックスしよう。それで僕を満足させられたら、春奈を元の体に戻してあげる」
「そ、そんな……大切なママの体で、そんなことできないよ」
 非常識な兄の提案に、春奈は呆気にとられた。
「できないんだったら、元に戻してはやれないね。春奈は一生そのまま、ママの体でいるといい。ふふふ、ママも喜ぶだろうなあ。これからずっと、可愛い娘の体でいられるんだから。そうだ、せっかく入れ替わったんだから、ついでに顔も交換してみたらどうかな? そうしたら、春奈は頭のてっぺんから爪先までママになれるよ。顔も、声も、体つきも、春奈の全てがママになるんだ。春奈は毎日ママの服を着てママの職場で働いて、代わりにママが春奈のセーラー服を着て、僕と一緒に学校に通うんだ。とっても面白そうだろ?」
「い、いやあっ。そんなのいやあ……」
「じゃあ、僕の言うとおりにするんだ。服を脱いで、裸になって」
 直紀は残酷だった。助けを求める義妹の体を押さえつけ、卑劣な交換条件を突きつけてくる。春奈は鼻をすすり、悪鬼と化した兄の姿に涙した。平穏な暮らしが一転して、奈落の底に突き落とされた思いだった。
「ふふふ、そんなに深刻な顔をすることはないよ。春奈はただ、ママの体でセックスの予行演習をするだけなんだから」
「よ、予行演習?」
「そうさ。春奈はまだバージンだろ? ママの体でセックスの練習ができると思えば、どうってことないじゃないか。可愛い娘が大人の経験を積むためなら、そのくらいママだってきっと許してくれるさ」
「そんなのおかしいよ。お兄ちゃんはどうしてそんなことを考えるの……」
 春奈の頬を涙が伝う。兄の思考は春奈の理解を超えていた。
「春奈、僕が怖い? でも大丈夫だよ。春奈もすぐに僕と同じようになるから。じゃあ脱がしてあげるよ。じっとしててね」
 直紀は春奈の体を引き起こし、ブラウスのボタンを一つずつ外していく。逆らうことの許されない春奈は、それを黙って見ていることしかできない。スカートも下着も兄に奪い取られてしまい、妖艶な春奈の裸体がさらけ出された。
「ふふっ、おっぱいの先がつんと尖ってるね。春奈が赤ちゃんの頃におしゃぶりした、ママのおっぱいだよ。まだミルクは出るのかな? 味見してみようか」
 直紀はいたぶるように笑って言うと、春奈の豊かなバストの先端を口に含んだ。乳首を強くかじられ、春奈は身悶えする。
「や、やめてっ。痛い、痛いっ」
「おやおや、どうやらミルクは出ないみたいだね。でも、すごく大きくて美味しいよ。春奈のおっぱい」
 直紀の指が硬くなった乳首をつまみ、ぐりぐりと面白そうにもてあそぶ。体を玩具にされる悲しさが涙を誘う。春奈は嗚咽を漏らして耐え忍んだ。
(優しかったお兄ちゃんが、こんなひどいことをするなんて。あたしは一体どうしたらいいの……)
 強制的に母と肉体を交換させられ、慕っていたはずの義兄に手篭めにされようとしている。あまりにもむごい仕打ちに、春奈の頬を涙が流れた。
 むせび泣く妹とは対照的に、直紀はますます笑みを深くしていた。春奈の乳房を味わいながら、彼女を抱きしめるようにぴったり密着してくる。春奈の脚に、硬い何かが押し当てられた。
(あっ、何これ? 硬い。ひょっとして、これはお兄ちゃんの──)
 視線を下に向けると、直紀のズボンの中からたくましい肉の棒が顔をのぞかせていた。想像していた大きさとは比べものにならない。反り返った太い幹からは、ドクドクと力強い脈動を感じた。
(お兄ちゃんのおちんちん、すごい。こんなに大きいんだ)
 両親が再婚してしばらくの間は、直紀に風呂に入れてもらうこともしばしばあった。優しくて面倒見のいい義兄と湯船につかりながら、彼の両脚の間に細い棒のようなものがついているのを見て、幼い春奈は不思議に思ったものだった。
 その頃とはまったく異なる、雄々しく成長した男性器を目の当たりにして、一時的に静まっていた春奈の性欲に再び火がともった。春奈は喉を鳴らして直紀の男の象徴に見入った。
「ふふっ、そんなに僕のが欲しいのかい? チンポを見た途端に泣き止むなんて、春奈は現金な子だなあ」
 兄の嘲笑に、春奈は我に返る。直紀の言うとおり、涙が止まっていた。羞恥で顔が赤くなるのがわかった。
(どうして欲しいなんて思うんだろ。お兄ちゃんのおちんちんを見てると、エッチな気分になっちゃう)
 体が火照り、下腹が疼く。借り物の女体が切実に男を欲していた。兄の男性器から目が離せなかった。
「やっ、やめて、お兄ちゃん。もう、これ以上はしないで……」
 春奈は残った理性を振り絞って、せめてもの抵抗の意思を示した。そうしないと、欲望に屈服してしまいそうだった。
「嘘はいけないよ、春奈。ふふっ、さっきも言っただろ? 僕は春奈のことなら何でも知っているんだよ」
 直紀が春奈の体を床に押し倒す。カーペットが敷かれているとはいえ、火照った背中を冷たい床に押しつけられ、震えを抑えられない。
「お、お兄ちゃん……」
「正直に言うんだ、春奈。僕とセックスがしたいだろ?」
 直紀は仰向けに横たわった春奈の両脚をかかえ上げると、陰部に己のペニスをあてがった。切っ先を割れ目にこすりつけ、焦らすようにゆっくりと腰を動かしてくる。蜜で濡れた陰毛が亀頭に引っ張られ、春奈に耐え難いもどかしさをもたらした。
「い、いやあっ。ああっ、ダメ、動いちゃダメぇ……」
「動いてるのは春奈の方だよ。ふふふ、やっぱり僕のが欲しいんじゃないか。嘘つき」
「えっ? そ、そんな──」
 春奈は目を剥いた。おむつを替えられる赤子のような姿勢で自分の腰が妖しくくねり、ペニスと触れ合う膣口を緩やかに摩擦していた。直紀は春奈の体を押さえつけただけで、自らはほとんど動いていない。淫靡な動きで交合を求めているのは春奈の方だった。
(どうしてなの。あたしの体、勝手に動いちゃう)
 本来自分のものでない女体が、直紀の性器に貫かれることを望んでいる。そうとしか思えなかった。
「そんなに欲しいのなら、自分からおねだりしてごらん。お兄ちゃんのチンポをハメて下さいって言ったら、入れてあげるよ」
「そ、そんなこと言えないよ。おねだりなんて絶対できない──ああっ、あっ、こすっちゃいやあっ」
 理性は直紀の支配下に置かれることを拒絶するが、それも性器のこすれる甘美な感覚にからめ取られる。
(もうダメ、我慢できないっ)
 幾度か喘ぎ声を漏らしたあと、春奈は耐えかねて直紀を見上げた。頭の中に霧がかかったようで、思考力が極度に低下していた。
「お、お願いします。お兄ちゃんのおチンポ、ハメて下さい……」
 兄の指示通りの言葉を口にする。春奈の身も心も屈した瞬間だった。
「ふふっ、いい子だ。お望み通り入れてあげるから、じっくり味わうんだよ」
 直紀は邪悪な笑みを浮かべると、自らの腰を突き出した。ペニスの先端がずぶずぶとめり込み、春奈の胎内を一気に突き進んでくる。
「ああっ、入ってくる──あんっ、ああんっ」
 待ち望んだ感触に、春奈はツインテールの黒髪を振り乱した。焼けた鉄棒のような直紀の性器が、出産経験のある媚肉をえぐり、春奈を串刺しにする。全身が引きつり、呼吸が苦しくなった。
「入ったよ、春奈。ちゃんと一番奥まで入った」
「うん、入れられちゃった。大事なママのアソコにお兄ちゃんのおチンポ、ハメられちゃった……」
 春奈はうっとりしてつぶやく。腹の奥が温かなもので満たされる快感に鼻息がこぼれた。大好きな義兄の顔がすぐ間近にあった。
「それじゃあ動くから、気持ちよかったら気持ちいいって正直に言うんだよ」
 直紀はそう命じると、春奈の両脚をかかえて動き始めた。ぬめる肉ひだを男根が引っ張ったかと思うと、再び奥へと分け入ってくる。決して指の届かない深い部分に兄の亀頭がめり込み、春奈の体を震わせた。
「あんっ、あっ、お兄ちゃあんっ。んっ、んひいっ」
「どうだい、春奈。お兄ちゃんのチンポは気持ちいいかい?」
「す、すごいっ。おチンポ、気持ちいいのっ」
 春奈の可憐な口から下品な声があがる。
 肉の槍を出し入れされるたび、電流のような熱い波動が体をはしった。初めて味わう義兄のペニスは麻薬のようだった。汚れのない春奈の心を強烈な快感が塗り潰し、さらなる欲望を煽り立てる。春奈は直紀の背中に腕を回して、無我夢中で泣き叫んだ。
「あんっ、ああんっ。はあああんっ、いい、気持ちいいっ」
 直紀のひと突きごとに、春奈の声が大きくなっていく。春奈の首に繋ぎ合わされた三十八歳の熟女の肉体が、若々しい雄を堪能していた。
「春奈、可愛いよ。可愛くて、とってもいやらしい。ふふっ、エッチなおまじないをかけた甲斐があったね」
 直紀は首を伸ばして、しつこく義妹の唇を奪う。口内に侵入してくる兄の舌に、春奈は自らのを積極的に絡め合わせた。
(エッチなおまじない? それっていったい──)
 かすかな疑問が頭に浮かぶが、すぐに官能の嵐に吹き飛ばされてしまう。直紀に上下の口を同時に犯されて、春奈はますます高ぶっていった。
「はむんっ。ふうっ、ふんっ。ううんっ」
(すごい。セックスがこんなに気持ちいいなんて、あたし知らなかった)
 鼻息荒く、義兄とのディープキスに没頭する春奈。昨日までの無垢な少女の姿ではない。肉感的な肢体を直紀に絡みつかせて快楽を貪る今の春奈は、持て余した性欲を年下の少年で発散する卑しい中年女のようだった。
「春奈のおマンコ、ねっとり絡みついてくるよ。いやらしくて最高だ」
 口を離して直紀が笑う。悪魔のような薄ら笑いだった。
「いいっ、いいのっ。いやらしいのがいいのっ」
 直紀は折れ曲がった春奈の体にのしかかり、結合部を淫らな動きでかき回している。愛しい男に獣のように犯される幸福に、春奈は天にも昇る心地だった。
「ああっ、ダ、ダメっ。何かくるっ、あああっ」
 太い肉の杭を体の中心に穿たれ、膣内がざわめく。軽く絶頂に達して、持ち上がった爪先が小刻みに痙攣した。心身ともに満たされる多幸感が、十五歳の少女をからめとった。頭の中が真っ白になった。
「ふふっ、春奈、イっちゃった? でも、イクときはちゃんとイクって言わないと駄目だよ」
「ま、待って、お兄ちゃん。あたしまだ──あんっ、はあんっ」
 直紀の動きはなおも激しくなる。片脚を真上に向けてかかえ上げられ、春奈は深々と貫かれた。
「んああっ、深い。深いよぉっ」
「春奈のおマンコ、もういっぱいいっぱいだね。子宮が僕のチンポとキスしてるのわかる?」
 笑いをこられきれない様子で直紀が問う。
(一番奥まで串刺しにされてる。ママの子宮が犯されてる)
 自分が産まれてきた子宮を亀頭で突き回され、ゾクゾクした興奮がまき起こった。母との肉体交換に対する嫌悪と、母の体で密かに男に抱かれる罪悪感、そしてとろけるような至福の官能が化学反応を起こし、春奈の心を汚染していく。
「うん、わかるよ。ママの子宮が突つかれてコリコリいってる。すごくいやらしいの……信じられない」
「元々、ママの体はいやらしいんだよ。春奈は気づいてなかっただろうけど、ママはよく夜中にオナニーをしていたんだ。熟れた体を持て余してる未亡人なんだから、いやらしくて当たり前なのさ」
 直紀が義母を嘲笑し、陵辱を続ける。肉の棒が女性器の最奥部をえぐり、春奈を喘がせた。
「ああっ、ああんっ。ひっ、ひいいっ。すごいっ」
(あたしがエッチになっちゃうのは、ママの体になったから……ママの体、本当はいやらしいんだ)
 直紀の言葉に、母に対してわずかに抱いていた疑念を裏づけられた気がした。
 春奈の首から下に繋がっている陽子の体に熱がこもり、春奈を官能の渦に引きずり込もうとしていた。母の肉体の疼きを、春奈は我がこととして感じた。
(ああっ、あたし、自分から腰を振ってる。なんてはしたない……でも、いやらしいママの体なんだから、しょうがないよね。あたしがふしだらな女の子になっちゃったのも、みんなママのせいなんだ)
 今まで母に抱いていた尊敬の念がねじくれ、悪意となって春奈をたぶらかす。
(そうだよ。いやらしいママの体のせいで、あたしまでエッチになっちゃったんだから、ママには責任をとってもらわないと)
 春奈は不実という名の蜘蛛の巣に囚われつつあった。慕っていた母を裏切り、借り物の肉体で義兄と交わる背徳的な行いにたまらない魅力を感じる。春奈は丸みを帯びた尻を派手に振って、禁忌の性交を楽しんだ。
「ああ、春奈のムチムチボディは本当にいやらしいなあ。僕、そろそろイっちゃいそうだ。ねえ春奈、このまま中に出してもいいかな?」
 成熟した女体を意のままに辱めていた直紀が、陶然としてそう訊ねた。春奈の胎内に埋まっている男性器が膨張し、射精の準備を整えているのがありありとわかる。
(中に出す……ママの体に、お兄ちゃんの精子を注ぎ込むんだ)
「いいよ、お兄ちゃん。このまま中にちょうだい。あんっ、あんっ」
 決して同意してはならない問いかけに、春奈は首を振ってうなずく。拒絶する意志は、もはや春奈には無かった。
「よし、たっぷり注ぎ込んであげるからね。春奈も一緒にイクんだよ。ほら、ほらっ」
 直紀は春奈の体をかかえ込み、激しく腰をぶつけてくる。乱暴に犯される興奮が春奈の全身に広がり、少女の魂を真っ赤に染め上げた。
「ああっ、ダメっ。そんなにされたらイクっ、イっちゃうっ」
 歓喜の瞬間を迎えて春奈の童顔が色めき、絶叫する。視界に星が舞い、手足の先まで痙攣がはしった。やがて腹の底に生温かい感触を覚えて、春奈は幸福の頂にのぼりつめる。初めて味わう熟女のオーガズムだった。
(ああっ、熱い……体が飛んでっちゃうよぉ……)
 心も体も焼ききれて、何もかもがわからなくなる。春奈は今までの人生で最高の体験に酔いしれながら、意識を闇の底に沈めた。


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