斉藤ちひろが帰宅したのは、日暮れの迫った午後のことだった。 スカイブルーの軽の愛車をマンションの駐車場にとめ、後部座席に満載していた荷物を持って外に出る。女の細腕ではとても持ちきれないはずの量を、今のちひろは苦もなく両手に提げていた。 「うふふ、楽しかった。こんなに買い物をしたのは久しぶりね。それに車の運転も」 冬の冷たい風に吹かれ、ちひろはにっこり微笑んだ。 出産を控えた身重の体では、自ずと行動が制限される。腹が目立つようになってからは車の運転も控え、家の中に閉じこもることが多かった。それが、しばらくぶりに好きなだけ外出したのだから、気持ちが弾むのも当然だった。 鼻歌をうたいながら、ちひろはマンションのエレベーターに乗り込む。遅れて乗ってきた近所の主婦が、ちひろの姿を見て驚きを顔に浮かべた。不躾に「もう出産なさったんですか」と話しかけられ、ちひろは笑顔でうなずいた。 (本当は違うんだけどね。今の私の体は、元は私のものじゃないの) 見下ろすと、トレーナーとジーンズの上に黒のジャケットを羽織った己の姿が視界に入る。いずれも男物の衣類で、三十路前の人妻にしてはボーイッシュな格好だ。この服は中川祐介という男子高校生から借りたものだった。いや、服だけではない。今のちひろの首から下は、祐介の身体とそっくりそのまま入れ替わっているのだ。正確には、首をすげ替えられたと表現すべきだろうか。ちひろの首は生きたまま胴体から切り離され、同じく首を切断された祐介の胴体と繋ぎ合わされてしまったのだ。 人間の首が他人のものとすげ替わってしまうなどと、にわかには信じがたい話である。だが、これは決して夢でも幻でもなかった。日頃の自分よりも十センチ以上高い目線、普段の自分では持ちきれない重さの荷物をぶら下げた力強い両腕、平生の自分のものよりもひと回りもふた回りも大きな男物のシューズ。そのどれもが、昨日ちひろが体験した肉体の入れ替わりが確かな現実の出来事だったのだと、彼女に教えてくれる。 全ては加藤真理奈という女子高生の仕業だった。真理奈はちひろと同じく、このマンションに住む快活な美少女で、ちひろとは日頃から親交があった。そのため、臨月を迎えて不自由な暮らしを強いられているちひろを思いやり、ちひろの身体を自分の同級生である祐介のものと取り替えてくれたのである。どこからか手に入れたという、怪しげな薬物を使って。 (真理奈ちゃんにもそうだけど、祐介君にはいくら感謝してもし足りないわ。だって、こんなにいい体を譲ってくれたんですもの。力はあるし動きやすいし、すごくいい体だわ) 主婦がこちらに会釈して先に降りたのを見送り、ちひろはエレベーターのドアを閉めた。首から下を丸ごと交換したため、ボタンを押す指も祐介のものと入れ替わっている。まだ高校生の若く健やかな少年の肉体は、三十路を控えた妊婦の体とはまるで異なり、たくましさと瑞々しさに満ち溢れていた。 自分の家に戻り、ちひろは買ってきた品物を上機嫌で片づけ始める。しばらくして、テーブルの上に置いていた携帯電話が着信を告げた。出ると、馴染みの少女の声が聞こえた。 「ちひろさん? あたしよ。今日、そっちに行ってもいいわよね」 「ええ、もちろんいいわよ。じゃあ待ってるから」 短い会話を終えて電話を切る。ちひろはますます機嫌をよくして、戸棚からティーセットを取り出した。来客の準備を整えるためだ。 電話から十分ほど経って、玄関のチャイムが鳴った。三人の女がちひろの家にやってきた。そのうち二人は紺色のセーラー服を着た少女。そしてもう一人は、ダークグレーのマタニティドレスを身にまとった若い妊婦だった。 「いらっしゃい、真理奈ちゃん、祐介クン。そっちの女の子は、たしか……森田さんだったかしら?」 「はい、そうです。森田瑞希です。どうもお邪魔します」 真理奈の隣に立つ、背丈の低い女子高生が頭を下げた。長い黒髪を頭の左右で束ねた童顔の少女だ。真理奈と同じ制服を着ていなければ中学生、いや小学生に見えるかもしれない。ちひろはこの少女と既に顔を合わせていたが、今のように親しく言葉を交わすのは初めてだ。瑞希という名の愛くるしい少女に、ちひろはたちまち好感を持った。 瑞希の隣には真理奈がいた。学校指定のものらしい黒いカバンを手に二つぶら下げて、にやにやと楽しそうに笑っていた。 「あー、寒かった。ちひろさん、何かあったかいものを出してくれない?」 「はいはい、どうぞ召し上がれ」 遠慮する様子もなく、気安く飲み物を要求する真理奈に、ちひろは熱いコーヒーを出してやった。ケーキの皿とカップを四人分テーブルに並べて、ちひろは最後の一人に視線を向ける。真理奈と瑞希はソファに座ったというのに、残された妊婦は席につこうとはせず、一人だけリビングの入り口に立ち尽くしていた。 「へえ……祐介クンのお腹、やっぱりすごい大きさね。自分のものとして上から見るのと、こうやって他人の視点から見るのとじゃ、全然印象が違うわ」 「ち、ちひろさん。俺の体、早く返して下さいよう……」 情けない表情と声音で、その妊婦──中川祐介はちひろに懇願した。昨日、ちひろと首がすげ替わり、首から下だけがちひろの身体になってしまった少年だ。体が入れ替わったことが気に入らないのか、祐介は今にも泣き出しそうな顔をしていた。 「そんなことより、祐介クン。これを飲んで温まりなさい。外は寒かったでしょう? 体にさわるわよ」 「そうよ、祐介。ここに座りなさい」 真理奈に指示されて、祐介はようやくソファに腰を下ろした。マタニティドレスの布地を押し上げる見事な孕み腹は、昨日まではちひろのものだった。それが今は祐介の体の一部になって、十七歳の少年を二十八歳の妊産婦へと変えていた。 (私が祐介クンの体になって、反対に祐介クンが私の体になってるなんて……とっても面白いわね) 淹れたてのコーヒーを不安げな様子で口に運ぶ祐介を、ちひろは微笑して観察する。真理奈の薬物によって正常な認識を書き換えられてしまったちひろは、この奇怪極まりない状況を自分にとって好ましいものと捉えていた。互いの肉体の首から下だけが入れ替わってしまったことを、ちひろは積極的に受け入れていた。 「それで、真理奈ちゃん。祐介クンは今日、学校には行ったの?」 ちひろの問いに、真理奈は満面の笑みでうなずく。 「うん。こいつ、今朝はこの格好で登校したのよ。大きなお腹をかかえたこいつを見て、クラスの皆も大盛り上がり! いやー、最高だったわね」 「真理奈ちゃんのお薬のおかげで、大した騒ぎにもならなかったしね。それどころか祐ちゃんが不自由しないように皆が気を遣ってくれて、私も嬉しかったな。早く元気な赤ちゃんを産んでね、祐ちゃん」 と、瑞希。 真理奈の説明によると、この少女は祐介の恋人だという。本来ならば彼とちひろの身体が入れ替わってしまったことを嘆き悲しむはずだが、ちひろと同様、真理奈に催眠スプレーを振り撒かれてしまった今の瑞希は、そのような真っ当な思考回路を持ち合わせていない。祐介が三十八週目の妊産婦になったことを歓迎し、心から応援しているようだった。 明るい笑顔を見せる二人の美少女とは対照的に、祐介は暗く沈んだ面持ちだった。無理もない。自分の体が身重の三十女のものになってしまったのだ。異性の身体になってしまったことに加えて、不便な妊産婦の暮らしを強いられているのだから、とても平静ではいられまい。 だが、それも今だけのこと。このまま自分たちが互いの体を交換した生活を続ければ、いずれは祐介も慣れて、己の姿に嫌悪感を覚えなくなるだろう。ちひろはそう考えていた。 「それで、ちひろさん。ちひろさんの方はどうだったの? 今日一日、祐介の体で過ごして」 学校での祐介の苦労話(彼以外の者にとっては笑い話だが)がひと通り終わったあと、真理奈はちひろにそう訊ねた。ちひろは白い歯を見せて笑った。 「ええ、最高だったわ。久しぶりにお買い物を楽しんで、車の運転もバッチリ。やっぱり男の子の体って力があるわね。とっても動きやすくて楽だったわ」 「ふーん、そりゃよかったわ。そう言ってくれたら、二人の体を入れ替えてあげたあたしも気分がいいわね。その体で困ったこととかない?」 「ううん、全然」 「今のちひろさんは男になってるわけだけど、ずっとそのままでも特に問題なしって感じ? あとで旦那さんに怒られたりはしない?」 「ええ、大丈夫よ。旦那は出張でしばらく帰ってこないし、それに子供が産まれるときも帰ってこないような薄情な旦那なんて、なんかもうどうでもよくなっちゃって。できたら首から下だけじゃなくて顔も交換して、名前も生活も何もかも祐介クンとそっくり取り替えちゃいたいくらいよ」 「そっかー。うんうん、そういうのも面白そうね。ちひろさんがあたしたちのクラスメイトになって高校生活をエンジョイして、祐介がちひろさんの代わりに子持ちの人妻になっちゃうの」 「それ、いいかも。せっかく体を交換したんだから、顔も取り替えちゃった方がお似合いだよ。私、綺麗なちひろさんの顔になった祐ちゃんも見てみたいな」 「そ、そんなあ……」 祐介の目から涙がこぼれて頬を伝う。真理奈とちひろと瑞希は揃って笑い声をあげ、哀れな少年の女々しい姿を存分に楽しんだ。日頃のちひろならば他人が泣き叫ぶ様子にほくそ笑むはずはないが、なぜか今は自然にそうしてしまう。一瞬、自分の行動を不思議に思ったちひろだが、その疑念もすぐ笑声にかき消された。 やがてケーキを平らげ、満足そうに立ち上がる真理奈。祐介の背後に回り込むと、ソファの後ろから彼の胸をわしづかみにした。祐介の悲鳴があがった。 「わっ !? な、何しやがる!」 「何って、決まってるじゃない。体はあったまったしお腹も膨れたから、またあんたの体で遊ぼうかと思って。学校での続きよ。たっぷり可愛がってあげる」 「や、やめろ。もうあんなのは嫌だ……」 声を震わせ、怯えの色を隠さない祐介。今から真理奈が何を始めようというのか、よくわかっているのだろう。凛々しかった少年の姿は、もはやどこにもなかった。そこにいるのは、涙目になっておののく無力な妊産婦でしかなかった。 「ふふふ……祐介、なんで嫌がるの? あんただって、あんなに気持ちよさそうにしてたじゃない」 マタニティドレスの上から祐介の豊かな乳房を揉みほぐしながら、真理奈は不敵に笑う。その台詞から推測するに、おそらく真理奈はここに来る前、祐介に嫌がらせをしていたのだろう。その内容まではちひろにはわからないが、彼が散々に苦しめられたことは容易に推察できた。 「祐介、ちひろさんのセクシーな体をもらって、嬉しくないわけがないわよね。それに可愛い赤ちゃんのおまけつきじゃない。もうすぐあんたは赤ちゃんを産んで、お母さんになれるのよ。よかったわねー」 「い、嫌だ。赤ん坊なんて産みたくない。産みたくない、産みたくない……」 「そんなこと言ったら、お腹の赤ちゃんが可哀想でしょ。こうやってお腹をさすると……ほら、赤ちゃんが元気に動いてお母さんに挨拶してるわ。わかる? 今のあんたはこの子のお母さんなのよ」 真理奈は大きく突き出した祐介の腹を撫で、その耳元で囁く。三十八週目の孕み腹の大きさと重さを、ちひろもよく知っている。今にも新たな命が誕生しようとしている事実を、祐介は我がこととして実感しているはずだ。 どうか祐介には、自分の代わりに母になる喜びを味わってほしい。ちひろはそう思った。 「真理奈ちゃんは、また祐ちゃんを気持ちよくさせてあげるんだね。じゃあ、私はその間、ちひろさんと仲良くしたいな」 真理奈と祐介の会話を聞いていた瑞希が、ちひろの元へやってくる。何をするつもりか視線で問うと、瑞希ははにかんでちひろの体に密着してきた。 「ちひろさん。ちひろさんの首から下は、もともと祐ちゃんの体だったんですよね?」 「ええ、そうよ。今は私の体だけれど」 「私、祐ちゃんとつき合っているんです。でも祐ちゃんの体、ちひろさんのと入れ替わっちゃったじゃないですか。だから祐ちゃんの代わりに、ちひろさんに私の恋人になってもらってもいいですか? 二人が何もかも交換するんだったら、そっちの方がいいかなって思って……」 「そ、そんなっ。瑞希、待ってくれ──ああっ、やめろっ。うぐっ」 祐介があげようとした抗議の声は、真理奈にあえなく封じられる。ちひろは瑞希の背中に手を回し、きゃしゃな身体を抱きしめた。小柄な女子高生の体は、思ったよりもはるかに軽い。ちひろは瑞希を両手でかかえ、ソファに倒れ込んだ。 「ええ、喜んで。瑞希ちゃんみたいな可愛らしい彼女ができるなんて、最高の幸せだわ。これからよろしくね」 「はい。よろしくお願いします」 「ねえ、キスしていい?」 ちひろの言葉に、瑞希は頬を赤くしてうなずく。ちひろは眼鏡を外し、瑞希と唇と触れ合わせた。初めて女と交わす接吻に、ちひろの胸が高鳴る。 (これが女の子とのキス……すごいわ。私、心まで男になっていく気がする……) 「はあっ、ちひろさん……んっ、んっ」 瑞希はとろんとした表情で、ちひろの口内に舌を差し入れてくる。最近の女子高生は積極的だと思いつつ、ちひろも舌を出して瑞希のそれに絡めた。唾液がたてる卑猥な音が、ちひろの理性を少しずつ剥ぎ取っていく。 ちひろの唾の味を心ゆくまで堪能してから、瑞希は口を離した。今度は手を伸ばしてちひろの下半身をまさぐってくる。硬くなったジーンズの盛り上がりを撫でられると、否応なく期待が高まった。 「興奮してるんですね、ちひろさん。私もです……」 嬉しそうに言って、ファスナーを開きにかかる瑞希。幼い外見に似合わぬ、手馴れた仕草だった。金属音を鳴らしてベルトを外し、ボクサーパンツの中から肉の塊を取り出した。若く力強い男性器が、ちひろの股間にそびえ立っていた。 「いやだ。私のおちんちん、もうこんなになっちゃってる……」 ちひろは感嘆の声をあげた。夫のものと比べ、今のちひろのペニスは圧倒的な威容を誇っていた。雄々しく立ち上がった男の象徴は、ちひろが祐介から譲り受けたものだ。 「うん、祐ちゃんの匂いがする。ちひろさんのものになった、祐ちゃんのおちんちん……」 呪文のようにつぶやいて、瑞希はそそり立つ一物に顔を近づける。犬が親愛の情を示すように匂いを確認したあと、小さな口を開いて幹に舌を這わせた。男性器に生温かい粘膜が絡みつき、ちひろに未知の感覚をもたらした。 「ううっ、これが男の子の感覚なの……?」 「えへへ、嬉しいな。味も匂いも祐ちゃんのだ」 瑞希の舌先が亀頭を磨き、ちひろの下腹を疼かせる。体の芯が徐々に熱を帯びていくのがわかった。ちひろはソファに体を預け、可憐な女子高生の舌づかいを楽しんだ。 「やめろ、瑞希。そんなことしちゃダメだっ」 「ダメダメ、祐介。瑞希とちひろさんは恋人同士なんだから、邪魔をしちゃいけないわ。今のあんたはあたしに逆らえないってこと、忘れてないわよね? いい加減に諦めなさい。あんまり聞き分けがないと、またあんたのミルクを飲ませてもらうんだから」 「や、やめろ。もう許してくれえ……」 テーブルの向こう側では真理奈が祐介の服を脱がし、その乳に吸いついていた。出産を控えた乳房は、既に母乳を出すことができる。重みでやや垂れ下がった妊婦の巨乳に茶髪の美少女がかぶりつき、ミルクを味わう姿は極めて滑稽だった。 「うふふ、そっちはそっちで楽しそうね。とってもお似合いよ、祐介クン」 「い、嫌だ。こんなの嫌だあっ。誰か助けて……」 女々しく泣き喚く祐介の身体は、濃厚な女の汗と乳の臭いを放っていた。首から下が二十八歳の女の体になった祐介は、既に男ではなくなっていた。ほんのりと桜色に染まった肌が、視界を介してちひろの欲望を刺激した。 「祐介クン、色っぽくて素敵よ。元は私の体だったなんて思えないわ」 ちひろの陰茎が硬度を増した。さらにひと回り大きくなった肉の槍を見て、瑞希が目を丸くする。 「また大きくなっちゃった。口の中に入るかなあ?」 「無理しなくていいわよ、瑞希ちゃん」 瑞希の髪を優しく撫でてちひろが言うと、瑞希は「大丈夫です、多分」と答えて口を開いた。鈍い輝きを放つ穂先が少女の薄い唇をかき分けていく淫猥な光景に、ちひろは生唾をのみ込んだ。 「これが瑞希ちゃんの口の中……すごい。とっても気持ちいいわ」 ちひろの賛辞に、瑞希は目を細めて口淫にふける。少女の小さな口が己の性器で満たされているという事実が、ちひろの獣性を煽った。ちひろの先端からは先走りの汁がひとりでに漏れ出し、瑞希の唾液と混ざり合った。 ちひろの期待に応えて、瑞希は口を使った奉仕のテクニックを披露する。唇で亀頭の敏感な部分を挟み込んだかと思えば、舌先で尿道口を何度も擦り、頬をへこませて体液を吸い取る。ひと回り年下の少女の淫らな技術に、まだ男としての経験が浅いちひろは翻弄され続けた。 「ああっ、瑞希ちゃん。気持ちいい。おちんちんが気持ちいいの」 えも言われぬ快感に声をあげて酔いしれていると、不意にちひろの脳裏に夫の顔がよぎった。 (そういえば、私はあの人にこんなことしてあげたことがないわね。口でされるのがこんなに気持ちがいいものだなんて知らなかったから) 望んで結ばれたはずなのに、今は自分でも不思議なほど夫婦の絆を感じなくなっていた。この場にいない夫よりも、目の前の女子高生に深い親しみを覚える。それが瑞希の恋人である祐介の肉体になっているからか、それとも真理奈の怪しげな薬物のせいなのか、ちひろにはわからなかった。ただ一つ確かなのは、今はただ少しでも長く、この美少女の奉仕を受けていたいと自分が欲していることだ。 「いいわ、瑞希ちゃん。ああっ、もう我慢できない。お腹の下の辺りがムズムズして……な、何かくるっ」 「そろそろ出そうなんですか? いつでも出して下さいね、ちひろさん」 瑞希は一旦顔を引き、媚びるような上目遣いでちひろを見やる。黒い感情がちひろを支配し、速やかな射精を促した。 「わかったわ、瑞希ちゃん。たっぷり飲ませてあげる。ううう……ああっ、出る。出ちゃうっ」 ちひろの腰が痙攣し、牡の欲求が解き放たれる。切っ先から噴き出した熱い樹液が、十七歳の娘の口内を隅々まで汚した。ちひろは瑞希の頭を両手で押さえ、初めて味わう射精の快感に酔いしれた。 「す、すごい。これが男の子の……なんて素敵なの。たまらないわ」 瑞希が苦しむのにも構わず、その口の中に思いっきり子種を撒き散らすちひろ。可憐な少女を己のものにし、散々に汚してやったという達成感が胸に満ちた。昨日まで貞淑な人妻だったちひろは、今やすっかり一匹の牡へと変貌していた。 「んっ、喉に引っかかる……祐ちゃんの濃いのでお口が一杯だよ」 口腔で多量の精を受け止めた瑞希は、とろみのある粘液を苦労して飲み下す。いまだ萎えない男性器に接吻をし、健気にも尿道に残った精液を吸い上げる瑞希の姿に、ちひろはますますいきり立つ。 「ありがとう、瑞希ちゃん。とっても気持ちよかったわ。頭の中がとろけちゃいそう」 「そうですか? 私も嬉しいです」 「それでね、もし瑞希ちゃんがよかったら……その、もっといろんなことを試してみたいんだけど、いいかしら?」 「ちひろさん、ちょっと待って」 割って入ったのは真理奈だった。声のした方に顔を向けると、全裸に剥かれた祐介の身体を、真理奈がソファの上で抱きかかえていた。もはや抵抗する気も失せたのか、祐介は魂が抜けたような虚ろな表情になって、真理奈に体を預けていた。 「ちひろさんは女の子とエッチしてみたいんでしょ? それならこいつを使ってやってよ。元の自分の体で童貞を捨てるなんて経験、滅多にできないわよ」 「そうね、それもいいかもしれない。私、祐介クンとセックスするわ」 ちひろは瑞希から離れ、祐介のもとに移動した。汗と母乳で全身がべとべとになった祐介は、濃厚な牝の臭いでちひろを誘惑する。ちひろは妊婦になった少年の体をソファに押しつけ、腹に負担をかけぬよう注意して体勢を整えた。白い太ももをぐっと開き、秘所にペニスをあてがった。 「じゃあ入れるわね、祐介クン」 「やめろ。やめろお……」 半開きの祐介の口から、かすかなうめき声がこぼれた。ちひろは構わず腰を突き出す。鉄棒のように硬い陰茎が、出産間近の膣に飲み込まれていった。 「ああ、入ったわ。祐介クン、わかる? 私たち繋がってるのよ」 「ひいっ、苦しい。頼む、やめてくれえ……」 妊婦になった少年は、ぽろぽろ涙をこぼして喘ぐ。祐介の内部が収縮し、ちひろをきつく締めつけていた。中は充分に濡れてこそいるが、動くのに難儀するほど狭い。ただでさえ臨月を迎えて膨れた胎内に、若くたくましい男性器を打ち込んだのだから当然だった。 「祐介クンの中、きついけど気持ちいいわ。こんなにみっちり締めつけて、私のことを歓迎してくれてるのね」 ちひろはゆっくり腰を前後させ、狭い膣内の味わいを堪能する。自分の動きに合わせて絡みついてくる肉の感触が、身震いするほど心地よい。女として男に抱かれるのではなく、男として女を抱くことが、これほど気分のいいものだとは思わなかった。 十七歳の頑強なペニスは、鋼鉄のような硬さで二十八歳の女陰を貫く。ちひろが腰を打ちつけるたび、祐介の豊かな乳房が大きく弾んでちひろを惑わせた。元は自分のものだったというのに、ちひろは艶かしい祐介の裸体に興奮し、鼻息を荒くして彼を犯した。 「すごい。女の中ってこんなに気持ちがいいの。素敵よ、祐介クン」 「はあ、はあっ。う、動くなあ……ああっ、あんっ」 膣奥を激しく突つかれ、哀れな祐介は悲鳴をあげて悶えた。しかし、彼もただ苦しんでいるわけではなかった。真っ赤になった祐介の顔に、わずかながら淫猥な表情が浮かんでいた。硬く盛り上がった乳頭からは、またも母乳がにじみ出る。女盛りの肉体は明らかに色めきたっていた。 乳だけではない。臨月の孕み腹も大きく揺れて、祐介の興奮をちひろに伝える。子宮の入り口を亀頭でノックすると、白い腹の一部がぽこんと膨らみ、中にいる赤子がちひろに応えてくれるのだ。自分が妊婦だったときのことを思い出し、ちひろの口元がほころんだ。 「ふふふ……こうやって奥まで突くと、お腹の赤ちゃんも一緒になって動いてくれるわ。わかる、祐介クン? 私のおちんちんが祐介クンの赤ちゃんに挨拶してるの」 「つ、突かないで。これ以上されたら、頭がおかしくなる……あひっ、あひっ」 祐介は熱い吐息と共に唾を吐き出し、己を苛む官能の誘惑に耐える。だが、それももはや限界だった。コツをつかんだちひろが腰をくねらせ、腹の裏側にある性感帯を強くえぐると、祐介はとうとう白目を剥いてよがり狂った。 「うおおおっ。お、おおっ、おふっ」 「ああ、祐介クン。祐介クンっ」 「ダ、ダメだ。もう俺──うおおっ、イク、イクうっ」 股間と乳房から多量の体液を撒き散らし、祐介は絶頂の階段を駆け上がった。狭い膣内がいっそう締まり、新鮮な精を欲する。ちひろの忍耐もそこまでだった。 「わ、私もイクわ。このまま祐介クンの中に……ああ、出るっ。出ちゃうっ」 陰嚢が大きく震えて、熱いマグマが尿道を駆け巡った。二度目の射精にちひろは歓喜の声をあげた。祐介のものだった男性器が脈動し、ちひろのものだった膣内を濃密な精液で満たした。 赤子を宿した胎内に心ゆくまで子種を注ぎ込むのは、ちひろにとってこのうえない悦楽だった。互いに夫や恋人がいる身でありながら、肉体を交換した挙句にこうして肌を重ねている。幾重にも禁忌を犯す背徳感が、最高のエクスタシーとなってちひろを魅了した。 「ああ、これが男のセックスなの。こんなにいいものだったなんて……」 「ううっ、苦しい。助けてくれえ……」 半ばうわごとのように救いを求める祐介の中から、ちひろは自分自身を引き抜く。丸く開いた膣口からとろみのある液体が溢れ出し、確かに自分は女を抱いたのだという充足感をちひろにもたらした。童貞を捨てたちひろは、急速に男としての自信を身につけつつあった。 「ふふっ、まずは一発やって満足したみたいね。ちひろさん、祐介を抱いてどうだった?」 「ええ、最高。祐介クンの体、とってもよかったわ。これも真理奈ちゃんのおかげよ。どうもありがとう」 真理奈の問いに、ちひろは笑顔で返した。真理奈のおかげで自分は男になり、女になった祐介を犯すという最高の悦びを経験することができたのだ。彼女にはいくら感謝してもし足りないと思った。 「祐ちゃん、とっても気持ちよさそうだったな。ちひろさん、次は私もお願いしていいですか?」 二人の行為を横で見ていた瑞希が、ちひろを見上げて訊いた。ツインテールの黒髪の美少女の誘いに、ちひろは当然のようにうなずいた。 「ええ、喜んで。私のココはまだまだ大丈夫だしね。瑞希ちゃんが満足するまでつき合ってあげるわ」 二度の射精を済ませた陰茎は、いまだ充分な活力を保っていた。若さは力だった。十七歳の少年の肉体を手に入れたちひろに、限界はなかなか訪れそうになかった。 「頼もしいわね、ちひろさん。それでこそ祐介と体を入れ替えた甲斐があるってもんだわ。それにしてもこのバカ、さっきからウンウン唸ってうるさいわねー」 ソファの上に横たわって苦しげに呻く祐介の脚を、真理奈が乱暴に踏んづけた。「そんなことをしちゃダメよ、真理奈ちゃん」とやんわり注意したちひろだが、ふと異変に気がついた。 「祐介クン、大丈夫? なんだか様子がおかしいけれど」 「ううん、苦しい。腹が痛い……」 ちひろは苦悶に満ちた祐介の顔をのぞき込んだ。血の気が引いて青ざめた顔は、既に絶頂の余韻を残してはいなかった。額には玉の形の脂汗が浮かび上がり、いかにも苦しそうだ。 「祐介クン、一体どうしたの? お腹が痛いの?」 「は、はい。腹がキリキリと痛むんです。ううっ、苦しい……」 「大変。それ、もしかしたら陣痛かもしれない」 「ええっ?」 ちひろの言葉に、皆は揃って驚愕した。豪胆な真理奈でさえ、一瞬、呆気に取られて祐介の顔に見入った。祐介は己の身に何が起こっているのかわからず、瞬きを繰り返していた。 「陣痛ってことは、まさか……」 「赤ちゃんが産まれる……?」 「多分ね。予定日よりちょっと早いけど、すぐ産婦人科の先生に連絡して診てもらわなくちゃ。それにタクシーも呼ばないと」 携帯電話を手に取ったちひろの姿に、祐介の顔はよりいっそう青くなる。 「あ、赤ん坊が産まれるって、まさか俺が産むんですか? そんなの絶対に嫌だ……」 「そんなこと言ってもしょうがないでしょう。お母さんになるんだったら、誰でも経験することよ。待っててね、いま病院に連絡を──あ、でも祐介クンの名前で診てもらえるのかしら?」 ちひろの頭に疑問符が浮かんだ。妊娠してからというもの、ちひろは定期的に産科に通っていた。信頼できる医師と病院を確保し、いつでも出産できるよう準備していたが、それは全て「斉藤ちひろ」の顔と名前でしたことだ。いくら首から下の肉体が入れ替わっているとはいえ、このまま祐介を産科に連れて行っても、すんなり診てもらえる保証はない。 ここはやはり、真理奈の力を借りるべきだろうか。真理奈ならば医師や助産師をこちらに都合がいいように洗脳し、奇怪極まりない妊婦の姿をした祐介を入院させることも可能にしてくれるに違いない。そう思って真理奈を見ると、真理奈は細い顎に指を当て、何事か考え込んでいた。 「うーん、とうとう出産か。でも祐介の顔と名前じゃ、たしかに病院も受け入れてくれないわよね。しょうがないから、二人の体を元に戻しちゃおうかなー」 「ほ、本当かっ !? 元に戻してくれるのか !?」 「ダメよ、真理奈ちゃん。私、今さら元に戻れないわ。だってこのままがいいんだもの」 対照的な反応を見せる祐介とちひろに、真理奈は小さな瓶を突きつけた。その中には黄色い錠剤が入っていた。何の薬かはわからないが、祐介とちひろの首をすげ替えたときに用いたような、危険な薬物に違いない。真理奈はその錠剤を一粒ずつ二人に手渡した。 「二人とも、あたしの命令には逆らえないはずよね? さあ、今すぐそれを飲んで。あまり時間がないわ」 「や、やった。これでやっと元の体に戻れるんだ。へへへ……」 「い、いやあっ。私、元に戻りたくないのに……」 ちひろは抗ったが、真理奈に支配されたちひろの身体は、持ち主の意思に反して錠剤を口の中にねじ込んでしまう。小さな錠剤は容易く喉を通り、ちひろの体の奥深くへと落ちていった。 変化はすぐさま起こった。猛烈な眠気がちひろに襲いかかり、立っていられなくなる。ちひろはソファの背もたれに手をつき、落ちてくるまぶたを必死で支えた。 (ね、眠い。これがこの薬の効果なの? 私、寝たらどうなっちゃうの……?) 睡魔はいとも容易く限界を超え、ちひろの意識は闇に沈む。おそらく、目が覚めたらちひろの身体は元の妊婦のものに戻っているだろう。それだけは嫌だと心の中で叫びながら、ちひろは深い眠りについた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 冷たい風が身を切るようだった。授業が全て終わった放課後、真理奈は自慢の長身を縮めて冬の寒さに耐えながら、自宅があるマンションにたどり着いた。既に日は落ち、朝からずっと灰色だった曇り空が漆黒の闇に覆われていた。 真理奈は一人で帰宅したのではない。隣には祐介の姿があった。濃紺の学生服の上にダウンのジャケットを羽織った祐介が、まるで恋人のように真理奈にぴたりと寄り添っていた。 二人はマンションのエレベーターに乗り込んだ。真理奈がボタンを押した階は、彼女の家があるフロアではなかった。エレベーターを降りた真理奈は、後ろに祐介を従え大股で通路を歩く。二人が足を止めたのは、表札に「斉藤」と書かれた家の前だった。チャイムを鳴らすと、若い女が顔を出した。真理奈は片手をあげてその女に笑いかけた。 「やっほー、また来てやったわよ。元気にしてる?」 「……はあ」 女は真理奈と祐介の姿を見て、暗い顔で嘆息した。そして二人に背中を向け、家の中に入るようにと身振りで伝えた。真理奈と祐介は「寒い寒い」と口々に言って上がり込んだ。暖房のきいた家の中は適度な室温に保たれ、寒風吹きすさぶ外と比べると極楽のように思われた。 リビングに招かれた真理奈は、床に荷物を置いてソファにどっかり腰を下ろした。真理奈の隣には祐介が、そしてテーブルの反対側にはこの家の主である女が座る。 女は縁なしの細い眼鏡をかけ、水色のノースリーブのワンピースを身に着けていた。髪は黒と茶色の中間の色で、肩の辺りで切り揃えられている。目の下には隈ができ、疲れた表情をしているが、充分に美人と言っていい顔立ちだった。 女の名は斉藤ちひろ。このマンションに住む二十八歳の主婦で、真理奈とは近所付き合いを通じて親しくなった。たまにこうして訪ねては、和気藹々と茶飲み話を交わす仲だ。 「うう、寒い。今日は特別寒かったわ。早くあったかい飲み物をちょうだい。紅茶でもコーヒーでも何でもいいからさ。ついでにお菓子もお願いね」 「ふざけんな。なんで俺がそんなことしなきゃなんねえんだ。どうしても飲みたかったら自分で淹れろ」 と、ちひろは真理奈に言い返した。柔和な顔立ちに似合わない乱暴な口調だった。真理奈は肩をすくめ、「そんなこと言わないでよ。ホントに寒いんだからさ」と重ねて要求した。 それを見た祐介が立ち上がった。「私がやるわ。祐介クン、そこをどいて」と言ってちひろをソファに座らせ、迷う素振りも見せずに戸棚からコーヒーの容器を取り出す。他人の家だというのに、どこに何が置いてあるか知っているかのようだった。 「さすがちひろさん、気が利くわね。どっかの役立たずとは大違いだわ」 「くっそ。この女、マジで殺してえ……」 ちひろは敵意の眼差しで真理奈をにらみつけたが、真理奈はいささかも気にしない。悔しそうに唇を噛むちひろを眺めて楽しんでいると、祐介が湯気の立つカップを運んできた。 「それにしても、今日はホントに寒かったわね。少しだけど雪も降ったし、大変だったわ」 と、祐介。彼の発言も、ちひろと同じく奇妙だった。こちらは凛々しい少年らしからぬ、女のような柔らかな言葉づかいだ。ちひろはそんな祐介にうなずき、淹れたてのコーヒーに口をつけた。 「そうですね。俺も買い物に行こうとしたんですけど、雪が降ってたんでやめときました。冷たい雪の中、赤ん坊を連れて行くわけにはいきませんから」 「それなら、車を使えばよかったのに。速いし荷物も運べるし、車は楽よ」 「無茶言わないで下さい。俺に車の運転なんてできませんよ」 「あんなの簡単よ。練習したらすぐできるようになるわ。今の祐介クンは公道を車で走れる身分なんだから、試しにやってみたら?」 「遠慮しときます。俺、事故を起こしたくはありませんから」 ちひろはかぶりを振った。彼女は自動車の運転免許を持っており、車での買い物やドライブの経験も豊富なはずだ。だが、今のちひろは車に乗る気がないようだ。運転する気がないというよりも、できないのだ。 真理奈と祐介が熱いコーヒーで体を温めていると、部屋の隅で赤子の泣き声があがった。ちひろは慌てて立ち上がり、ベビーベッドから乳児を取り上げる。まだ生まれて間もないのだろう。白いベビードレスに包まれた小さな乳児を、ちひろは軽々と抱き上げた。 「む、これはおむつじゃないな。また腹が減ったのか? お前、女の子のくせに食い意地が張ってるなあ……」 ちひろは自分が着ているワンピースの襟元を引っ張り、豊かな乳房をさらけ出した。授乳服の布地は伸縮性に富み、赤子に乳をやるのが楽なようにできているのだそうだ。ぶつぶつ文句を言いながらも赤子の口に乳首をあてがう若い母親の姿に、真理奈は目を細めた。 「ふふっ。なんだかんだ言って、頑張ってママしてるじゃない。お似合いよ、祐介」 「うるせえ、クソ女。俺は一日でも早く、元の体に戻りたいんだ。頭のてっぺんからつま先まで何もかも、俺たちを入れ替えちまいやがって……ううん、飲んでる。赤ん坊が俺のおっぱいを飲んでる……」 乳を吸われ、ちひろは顔を火照らせた。真理奈と祐介は話すのをやめ、じっと授乳に見入る。もともと決して小さくなかったちひろのバストは、妊娠と出産を経て、よりいっそう膨らんだように思われた。砲弾のような形の巨大な乳房には、愛しい我が子に飲ませるための多量のミルクが詰まっているのだ。 長い時間をかけて、ちひろは乳児の腹を満たした。抱いた腕をそっと揺らすと、乳児は満足したかのように再び眠りについた。ちひろは我が子の髪を優しく撫で、ベビーベッドに横たえた。 その様子を見ていた祐介が微笑んだ。 「お疲れ様。素晴らしいお母さんぶりだわ、祐介クン。私なんかよりよっぽど似合ってる」 祐介に褒められ、ちひろは赤面して恥じらう。 「そ、そんなことより、いい加減に俺の体を返して下さいよ。こいつが生まれてから、もう一月近くになるじゃないですか。これ以上入れ替わったままでいるの、俺はもう嫌ですよ」 「もう、まだそんなこと言ってるの? もう元には戻らないって決めたじゃない。その子だってママがいきなり別人になっちゃったら困るわよ。ねえ?」 祐介は不敵な笑みを浮かべてちひろに近づく。ちひろの顔に怯えの色が浮かんだ。祐介はちひろの細い腕をつかむと、そのまま彼女の体をソファの上に押し倒した。ちひろの悲鳴があがり、縁なしの眼鏡が音をたてて床に落ちた。 「な、何をするんですか。やめて下さい!」 「何って、エッチに決まってるじゃない。まだお母さんの自覚が乏しい祐介クンに、早くその体に馴染んでもらうためよ。ここのところ毎日してることだから、もう訊かなくてもわかるでしょう?」 「い、いやだ。放して。ああっ、ダメっ」 ちひろの抵抗も空しく、力で勝る祐介は容易く授乳服を剥ぎ取ってしまう。出産を済ませたちひろの体は、妊娠前の細いシルエットを取り戻しつつあった。あらわになった白い肌に、祐介が舌を這わせる。ちひろの声が高くなった。 「だ、駄目ですっ。いや、いやあああっ」 「うふふ、いけない奥さんだわ。夫も子供もいるのに、こんなに若い間男を作っちゃって」 「ふざけないで下さい。俺はこんなことしたくないのに──そ、そこはダメっ。やめてえっ」 「どう? 女の体もいいものでしょう。もうちょっと素直になったら、もっと気持ちよくしてあげるわよ」 高校生とは思えない余裕とテクニックで、祐介はひと回り年上の女を愛撫する。はじめは嫌がっていたちひろだが、二度、三度と小さな絶頂を繰り返すと、次第に抵抗することをやめ、ただ甘い声をあげるだけになった。 「あんっ、ああんっ。ち、ちひろさん……」 「いやらしい顔をするわね、祐介クン。私のコレが欲しいんでしょ? いいわ、たっぷりご馳走してあげる」 祐介はちひろの両の乳房をわしづかみにし、獣のようなバックスタイルで挿入を始めた。ちひろはベビーベッドの柵を握って自分の体を支えたが、祐介に強く腰を打ちつけられると、ベッドを大きく揺らしてしまう。 「ち、ちひろさんっ。やめて、赤ちゃんが起きちゃう──ああ、あんっ。いきなりこんな、激しいのっ」 「祐介クンのココ、私のおチンポをおいしそうにくわえ込んでるわよ。赤ちゃんを産んだばかりでガバガバなのに、もう次を妊娠したいの?」 「言わないでえ。こんなにされるとおかしくなっちゃうからあ……あう、あううっ。俺のおマンコ、ズボズボされてるのおっ」 ちひろは涙を流し、無意識のうちに腰を振って男子高校生のペニスを堪能する。連日のように祐介に犯された体は、今では彼のものを喜んで受け入れてしまうようになっていた。母乳の滴る乳房を弾ませ、犬のような浅ましい姿勢で夫以外の男と子作りに励む主婦の姿に、真理奈は頬を緩めた。 「ふふっ、祐介とちひろさんが相思相愛の仲になって、あたしも嬉しいわ。特に不倫の関係ってところが素敵よね。祐介が二人目の赤ちゃんを身篭るのも、そう遠いことじゃなさそうね」 全ての元凶である加藤真理奈は、頭の中身が入れ替わっている男女を眺めてほくそ笑む。何もかもがうまくいって最高の気分だった。他人の心と身体をもてあそんで悦に入る真理奈の歪んだ欲求は、今、完全な形で満たされたのだった。 「さあ、中に出すわよ、祐介クン。私の赤ちゃんを産んでちょうだい」 「は、はい、産みます。俺、ちゃんと孕んで産みますっ」 「ああ、出るっ。祐介、出るわっ」 「ち、ちひろっ。おおっ、俺イクっ。またイクっ」 自らの運命を真理奈に狂わされたちひろと祐介は、共に歓喜の表情で絶頂を迎える。どちらの顔にも幸福と狂気が溢れていた。二人に激しく揺らされ、今にも壊れそうなベビーベッドの上では、何も知らない幼子が起きることもなく、すやすやと眠り続けていた。 前章に戻る 一覧に戻る |